にゃんしほはる

本日は2月2日である。
ただそれだけの…はずだったのだけれども。


「どうしよう、志歩ちゃん!!」
「しほちゃん、大変だよー!!」
「…。…朝から何」
クラスメイトであるみのりと、幼馴染である咲希が大声を上げて教室に飛び込んでくる。
それに若干眉を顰めた。
同じクラスのみのりはともかく、咲希は違うクラスなのだが…何かあったのだろうか。
「はっ、はる、遥ちゃんが!」
「?桐谷さんがどうかしたの?」
「はるかちゃんが猫さんになっちゃったんだよー!!」
「…。…は??」


咲希とみのりに連れられて、咲希のクラスに向かう。
そこにいたのは、猫耳が生えた遥…ではなく、いつも通りの彼女だ。
「あれ?志歩」
きょとんとした一歌と…少し驚いた顔の遥が出迎える。
「日野森さん?どうかした?」
「…いや、あの…。…桐谷さんが大変だって聞いたから」
誤魔化すように言えば、顔を見合わせた二人が困ったように笑った。
「…もー、言っちゃ駄目って言ったのに」
「ご、ごめんね、遥ちゃん…っ!」
「だってぇー!はるかちゃんが猫さんになるなんてびっくりしたんだもん!」
「ふふ、私は大丈夫だよ?」
「…どういうことなの?」
4人のやり取りを見守っていたが、何が何やらで納得がいかない。
『猫になった』のは間違いなさそうなのだが。
すると彼女はちょいちょいと手招いて志歩を呼ぶ。
素直に行けば遥は志歩の耳元に口を寄せてきた。
そうして。
「…言えにゃいの」
「…?!!」
何に驚いたら良いか分からないくらいには吃驚して目を見張る。
恥ずかしそうな遥に、あのね、と一歌が補足した。
「桐谷さん、今ナ行が猫みたいににゃって言っちゃうんだって」
「理由は分からにゃいんだけど…今は困ってにゃいし、まあ良いかにゃって」
「…いや、困るでしょ……」
軽く笑みを浮かべる遥に、志歩ははぁ、と息を吐く。
そんなの、困るに決まっているのに「文化祭でもはるかちゃんは猫さんだったもんね!」だの「そう言えば歌にもにゃんってあるもんね」だのフォローが入った。
「うん。だから大丈夫…日野森さん?」
「…私が、大丈夫じゃないんだけど」
志歩のそれに遥が目を見開く。
それからふにゃりと笑った。


2月2日に起こった、猫の魔法は


志歩にとっては頭を抱える困りごと!


(だって、可愛い恋人の可愛い姿を誰にも見せたくないし、だなんて)



「しほちゃん、はるかちゃん大好きだもんねっ!」
「ふふ、確かに、桐谷さんのそんな姿見られたくはないか」
「てっ、天馬さん、星乃さん…」
「分かるよ志歩ちゃん!猫さんの遥ちゃん、いつも可愛いけど更に可愛いもんね!」
「もう、皆うるさい…」

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