ヤミナベ!!!

「なあ、彰人。闇鍋って知っているか?」
ワクワクした顔の冬弥がそう言うから一瞬ぽかんとしてしまった。
また何を教わってきたのだろうか、相棒兼可愛い恋人は。
あれだろ、と彰人は色んな思考を巡らせながら言葉を探す。
「自分の好きな具材を持ち寄って見られないように鍋に入れて食うってやつだろ」
「そうだ。…俺達もやってみないか?」
「…はあ…?」
楽しそうな冬弥に彰人は眉を寄せた。
目を輝かせる彼には申し訳ないが流石に闇鍋はいただけない。
鍋の具材を持ってくるならともかく、違うかもしれないのだ。
それこそ鍋に合わない具材を持って来られてしまえば悲惨だろう。
「つーか、何で闇鍋なんだよ。普通の鍋で良いだろ」
「それはそうなんだが…。…楽しそうだな、と」 
「オレは楽しそう、より美味いもん食いてぇけどな」
息を吐き、彰人はずいっと冬弥の方に顔を近づける。
驚く冬弥にあのな、と忠告してやった。
「…クッキーやらケーキやら、オレらが一番好きなものを鍋に入れたら悲惨だろ」
「…。…確かに。それでは鍋ではなくなってしまうな」
くす、と笑った冬弥は「リンなら、甘くても良いじゃん!と喜びそうだが」と言う。
「リンはな。…お前は違うだろ」
「まあ…そうだが。それが闇鍋の醍醐味なら…?」
「別に闇鍋に拘る必要もねぇし。…まずは普通の鍋でいいんじゃねぇの?」
笑いながら彰人は冬弥の頬に手を添えた。
「それに、本当に好きなものをぶち込むならお前を入れなきゃなんねぇだろ」
「…!…ふっ、その発想はなかったな」
目を見開いた後、くすくすと冬弥が笑う。
「彰人に食べてもらえるなら、鍋の具材にもなるが」
「馬鹿言え。…オレはそのままのお前が好きだよ」

二人で笑い合い、どちらともなくキスをする。


甘い甘い鍋パーリィは、二人だけの味!

(さあ、覚悟を決めて召し上がれ?)


「つか、どっから闇鍋が出たんだ?」
「ああ。ミクが、好きなものだけ詰め込めるなんていいじゃん、と」
「っし、すぐ止めに行くぞ!!」

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