司冬ワンライ/いいニーナの日(アイ/AI)

特別な君と 特別な日を


「司先輩」
「…ん?おお、冬弥」
声をかけてきた愛しい人にニッと笑って司は「ちょうど良かった」と呼び寄せる。
「?どうかされましたか?」
「これを見てくれ」
誘われるがままに寄ってきた冬弥に、司は開いていたそれを見せた。
覗きこんだ彼も優しい笑みを浮かべる。
「…アルバム、ですか」
「ああ!昨日掃除をしていたら見つけたんだ。冬弥にも見せようと思ってなぁ」
「ありがとうございます。…懐かしいですね」
「そうだろう、そうだろう!…それで、少しこれまでを思い返していたんだ」
ふわふわと笑む冬弥にそう言えば彼はキョトンとした。
「と、いうと?」
「これまでの十数年、長いような短いような軌跡だ。その中に幾つもの奇跡のような出会いがあった。…お前との出会いのようにな、冬弥」
司は笑う。
「冬弥と出会えた事がオレの人生を素晴らしいものにしてくれた。感謝せねばな」
彼は驚いたように目を丸くしてから僅かに微笑んでみせた。
「ありがとうございます。…ですが、俺からすれば司先輩に出会えたことがすべてで…いつもそれ以上をいただいてばかりだと思っています。俺には司先輩に何も出来ないのに」
「何を言う!オレも冬弥からたくさんの想い、アイを貰っているぞ?」
少し俯く冬弥の手をぎゅっと握る。
たくさんのものをくれた、冬弥の手を。
「…先輩」
「何が出来るとかではない。今そこにいてくれるだけで良いんだ。だから、何も出来ないなどと言ってはならんぞ?」
「…。…はい」
「それに、オレから受け取っているからと何もいらないと言うのもなしだ。きちんとわがままを言ってほしい。いいな?」
頷く冬弥に、司は先手を打った。
冬弥はきっと何が欲しいか聞いても素直には言わないだろう。
自分が、もう既に貰っていると『思い込んでいる』から。
司からすれば、冬弥からも沢山貰っている。
どちらかが多いということもないのだ。
大体、アイは貰ったからといって困るものでもなかろう。

彼が司に救われたと思うと同時に司も彼に救われているのだから。



不思議な魔法でお前に会えたんだ。
奇跡のような軌跡の中で。
だから、手を取り合って歩いていこう。

互いへの想いアイを両手いっぱいに抱えて!

さあ今日は
どこへいこうか 
何をしようか

(綺麗な彼の目に浮かんだ涙を拭って、司は笑う

頷いた冬弥を抱き締め、アルバムが風で捲れた

二人ならどこへでも行けると、何でも出来ると信じているのです)

「これまでもこれからも愛しているぞ。なあ、オレの “お姫様”!」

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