司冬ワンライ・指先から伝わる/紅潮

そういえばもうすぐクリスマスだ。
イルミネーションきらびやかな街並みを見ていると笑みが溢れてくる。
賑やかなのは嫌いじゃあなかった。
寧ろ好きな方である。
「…む」
ふ、と、カバンからスマホのバイブ音が聞こえた。
何だろうかと取り出すとメッセージが1件目に飛び込んでくる。
「…これは」
目を見張り、司は来た道を走った。
吐く息も白く、切る風も冷たい。
だが構わなかった。 
「…冬弥!」
「…?!司先輩?!」
驚いた様子の彼の手を取る。
「すまない、待たせてしまったな!ああ、こんなに冷たくなってしまって…」
「そんな…こちらこそすみません。急がせてしまいましたか?」
「気にするな!寒空に大切な恋人を待たせる訳にはいかんだろう?」
心配そうな冬弥に司は笑った。
彼の頬が紅く染まる。
そんな冬弥の紅潮にそっと指先を滑らせた。
冬の夜、そんな日常が愛おしい。
…改めて、好きだな、と噛み締めた。


「ところで、直接伝えたい用事とはなんだ?」
「ええと。…クリスマス、もし予定が宜しければ…デートを…しませんか?」

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