ザクカイ誕生日

今日はクリスマスだ。
ゲームも休みの日で、クリスマスパーティだと何故だかパカが騒いでいて、変わらないなぁとユズは苦笑する。
「…ん?」
と、少し向こうに人影を見つけた。
何をしているのだろう、とわくわくしながら手を振ろうとし、止める。
「…忍霧、誕生日おめっとさん」
「ああ。ありがとう」
小さな笑みと僅かな言葉。
たったそれだけのやり取りに、ユズは目を見張る。
「いやいやいや!もっと何かあったと思うけども?!」
「っ、何でェ。路々さんかい」
「何か用か?路々森」
思わず大きな声を出すユズに、少し驚いた表情をしつつもホッと笑うカイコクと、小さく首を傾げるザクロ。
二人にとっては当たり前のやり取りなのだろうが…それではあまりに面白くない。
主にユズが。
「用はないけど。…ねぇ、今日はザッくんの誕生日なんだろ?それに、クリスマスでもある」
「ああ。それが…?」
「たまには二人で出かけてみたりしたらどうだい?」
ユズの提案にカイコクが顔をしかめた。
「寒ぃならやだ」
子どもっぽいそれにえーと言いかけ、ザクロが小さく笑うのが目の端に映る。
「まあ、鬼ヶ崎が嫌なのならば仕方がないだろう」
「ザッくん、相変わらずカイさんに甘々だよねぇ」
「?甘いかい?」
はぁと溜息を吐くユズに何故かカイコクが首を傾げた。
どうやら甘やかされている自覚はないらしい。
「えー、甘いよねぇ」
「甘やかしているつもりはないのだがな」
当のザクロに言ってみても彼は何処吹く風だ。
それはそうだろう。
ザクロにカイコクを甘やかしている自覚はないのだから。
「でもさぁ、今日はザッくんの誕生日なのにさぁ?」
「だが、特別な事をしない方が良い場合もあるぞ?」
「ん?」
それが不満なユズにザクロが僅かに笑う。
カイコクだけが一人蚊帳の外できょとんとしていた。
「それって…」
「その方が、『特別な事』が際立つだろう?」
僅かに目を細めるザクロにああそういう事、とユズも笑う。
どうやらここぞとばかりに惚気られてしまったようだ。



誕生日だからって特別感に拘ることもない。

だって、愛する人がいてくれるだけで毎日が幸せなのだから。


(そう、誕生日を迎えた彼が笑った)




「しかしまあもう二人とも夫婦みたいだよねぇ」
「路々さん、流石にそれは…」
「夫婦は早すぎるだろう。婚約もまだだからな。…今のところは」

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