司冬ワンライ/聖夜の夢・もういくつ寝ると

今日はクリスマス。
「…冬弥!」
「…!司先輩!」
フェニックスワンダーランドの大きなツリーの下、僅かに微笑んだ冬弥の元に駆け寄る。
「すまん!待たせた!」
「いえ。…クリスマスショー、お疲れ様でした」
「ありがとう!今年は去年とは違った演出にしてみたんだが、どうだ?」
「はい、とても素晴らしかったです。特にプロジェクションマッピングでサンタが10人に増えたのは驚きました」
「うむ、そうだろうそうだろう!」
寒さか興奮か、頬を紅く染めて感想を伝えてくれる冬弥に、司は高らかに笑った。
今年のショーも自信しかない。
だが、冬弥から改めて伝えられると中々に嬉しいものがあった。
「っと、ずっとここにいては身体が冷えてしまうな。何か飲み物でも飲まないか?フェニックスワンダーランドのグリューワインは未成年者でも飲めるようにしているらしい」
「…それは、気になりますね」
司の言葉に冬弥が小さく考え込む。
少し逡巡していた彼が「飲んでみたいです」と笑った。
決まりだな、とその手を取る。
「…!」
光の中、手を繋ぎ指を絡めれば冬弥は僅かに目を見張り、それから優しい笑みを浮かべた。
「?どうした?冬弥」
「いえ。…何だか夢のようだな、と」
「夢?」
首を傾げると冬弥はこくりと頷く。
「聖夜の夢、というのでしょうか。イルミネーションの光の中、司先輩と手を繋いで歩く事が出来るというのは幸せだと思いまして」
「…冬弥」
「先程までショーの中で輝いていた先輩が、今は俺と共にいてくれるのが、嬉しく思います」
「…。…何を言う」
心底幸せそうな冬弥の手を、司はぎゅっと握った。
それは今だけの幸福などではなく、これからも続いていくのだと伝えるために。
「その幸せは、当たり前のものだ。…オレは冬弥の恋人なのだからな」
「…!司先輩」
「クリスマスも、年末年始も、行事など関係なく、共にいる。だから冬弥もオレと共にいてくれないだろうか?」
握った手に口付ける。
冬弥が頬を染めながら、はい、と頷いた。



もういくつ寝ると何がある?


(もういくつ寝なくても、彼との幸せはいつも傍に!)



「先輩、グリューワインを飲んだ後のマグカップは貰えるそうです」
「ほう!ツートンの夜空の色に煌めく星か。まるでオレたちのようだな!」
「はい。…いつか本物のグリューワインをこのマグカップで飲んでみたいです」
「そうだな。…その時はオレが作ってやろう。愛を込めて、な」

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