しほはるワンドロワンライ/冬休み・良いお年を

「冬休みは夏休みより短いですから。今年を振り返り次の目標を探す、良い休みにしてくださいね」
担任の言葉がリフレインする。
普段はあまり気にすることないのだが、何故だか頭に残った。
「…あれ、日野森さん」
「…。…桐谷さん」
帰ろうとしていたのだろう、遥が志歩を見つけて嬉しそうに駆け寄ってくる。
「日野森さんも今帰り?」
「うん。桐谷さんも?」
「そうなの。今日はみのりも愛莉も雫も用があるみたいで…。年末の生放送の打ち合わせは夜からになったんだ」
遥の言葉に、そういえば姉がそんな事を言っていたな、と思った。
生配信を見ていると楽しそうだなと思うのできっと嫌な大変さではないのだろうなと思う。
「…何だか楽しそうだね」
「そうかな。…そう見えてたら嬉しいな」
ふわふわと遥が笑った。
心底アイドルが好きなのだろうなと志歩は目を細める。
勿論志歩もバンドが好きだし練習は大変だがプロになるという夢のためにすべきことだと思うので、きっと遥もそうなのだろう。
「そういえば、うちの担任が良い休みにしてくださいって言ったんだけど。普段とあんまり変わりないよね」
「確かに。日野森さんたちは冬休みにまた強化合宿するの?」
「流石に冬休みはやらないかな…。まあ普段の練習より長くはするけどね。スタジオも年末年始は閉まっちゃうし」
「そうなんだ。…でも、学校がないと日野森さんと会う機会なくなっちゃうから、ちょっと寂しいな」
ほんの少しだけ遥が寂しそうにする。
その言葉に志歩は目を見張り、それからふっと笑った。
「なら、一緒に遊びに行けば良いんじゃない?」
「…!良いの?」
遥がわくわくしたように聞いてくる。
かわいいな、と思いながら「勿論」と言った。
「せっかくの冬休みだしね。それに、桐谷さんとはそれなりに仲良くなったと思ってるんだけど?」
「日野森さん…」
嬉しそうに遥が笑む。
「…っと、そろそろ行かなきゃ。また連絡するね」
「うん。…あ、えっと!」
スマホを見、練習時間に遅れる、と志歩は軽く手を振った。
そんな志歩に、遥が何かを言いたげに声を上げる。
「?どうかした?」
「学校で会うのは今年最後だから。…良いお年を。日野森さん」
「…!桐谷さんも、良いお年を」
微笑む遥に志歩も笑みを浮かべた。
何だか本当に良い年になりそうだと笑う。


来年はもっと彼女と仲良くなれたら、と思った。




(好きな人と良いお年を、と交わす


きっと今年は素晴らしい冬休みに!)


「…志歩、何だか嬉しそう」
「KAITOさん。…ちょっと、良い冬休みになりそうだな、と…思って」

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