司冬ワンライ・いー肉の日/はらぺこ

くぅ、と小さな音が聞こえた。 
ちなみに言うと司ではない。
練習後ではあるが…こんなに控えめな音ではないからだ。
…と、すれば。
「…すみません」
少し赤い顔をして冬弥が謝る。
珍しいな、と司は笑った。
「気にするな!珍しくはあるが…冬弥も練習を頑張った、ということだろう?」
そう言えば、冬弥は目を丸くしてからふやりと微笑む。
そうですね、と言った冬弥に司は頷き、ぽん、と手を打った。
「ならばコンビニに行こうではないか!夕食前だが…大丈夫だろう?」
「…そ、うですね。多分夕食も食べられると思いますが…」
「よし!では決定だな!何が食べたい?唐揚げか?肉まんか?ホットドッグも捨てがたいな…」
ブツブツとホットスナックのラインナップを思い返しながら呟いていた司だが、ふと気付けば隣の冬弥が肩を揺らしている。
「?どうかしたのか?」
「いえ。…先程から呟かれるそれが肉系ばかりだな、と思いまして…」
冬弥の指摘にそうだな、と思った。
お菓子やらおにぎり、パンでも良かったが何故だか出てくるのは肉系ばかりである。
「まあ、あれじゃあないか?」
「え?」
「今日はいー肉の日、だからなあ」
笑いながら司は冬弥の腰を抱く。
食べているらしいのに細い彼の腰に不安を覚えた。
冬弥ならば大丈夫だろうが…食べさせてやらなければ、という使命感が司を襲う。

それはそうだろう。

なんたって、司も冬弥も食べ盛り。


はらぺこ高校生なのだから!!


「…うん、肉付きが良い方がやはり…」
「…?司先輩?」
「何もない!何もないぞ!さあ、コンビニに向かおうではないか!!」

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