司冬ワンライ・お花見/手作り弁当

ここ数日、暖かい日が続いていた。
桜の花もぽつぽつと色づき始め、春なのだなぁと司は高い空を見上げる。
「少し早いが花見も良いかもしれんなぁ」
「…お花見、ですか?」
隣りに居た冬弥が首を傾げた。
考えが口に出ていたらしい。
「ああ。ここ数日、暖かかったからな。桜も咲いてきたし、新学期になれば忙しくなるだろう?」
「…そうですね。ゆっくりと、外で食べるのも良いかも知れません」
「そうだろう?!そうと決まればやはり、弁当をどうするか…」
ふむ、と悩み始める司に冬弥は小さく肩を揺らしていたが、あの、と声をかけてきた。
「?どうした」
「…お弁当、俺が作ってはいけないでしょうか?」
「何っ?!冬弥が?!!」
冬弥の申し出に司は目を丸くする。 
彼はあまり料理をしたことが無い。
確かにこないだのカップケーキは美味しかったが…。
きっと、花見をするなら、と冬弥なりに考えてくれたのだろう。
とても有り難いし嬉しいと思う。
だからこそ。
「そうだな…。ならば、一緒に作らないか?」
「え?」
司のそれに今度は冬弥がきょとんとする。
そんな彼に司は特別な笑みを向けた。
「オレも、冬弥と共に食べる弁当を作りたいんだ!」



「おお、よく来たな!」
「…お邪魔します」
出迎えた司に冬弥がぺこりとお辞儀をする。
具材を持ってきてくれた冬弥に礼を言い、キッチンへと向かった。
二人が作ろうとしているのはサンドイッチだ。
これならばすぐ出来るし簡単だからである。
作るのも、楽しそうだし。
「うちは卵にマヨネーズとマスタードをいれるんだ。これだけで風味がだいぶ変わるぞ」
「そうなんですね…!」
卵を茹でながら他の具材を用意する。
包丁の使い方も以前に教えてもらったんだと冬弥は嬉しそうに笑った。
彼が楽しそうで良かったと、司は思う。
「冬弥、少し味見をしてみるか?」
「!…では、少し」
口を開ける冬弥に、司は小さく笑いながら潰した卵を入れてやった。
表情を綻ばせる冬弥に司も思わず笑顔になる。
キッチンに、少し開けた窓から春風が吹き込んできた。


ほら、もうすぐ春が来る。


「ただいま、お兄ちゃん、とーやくん!お花見するんでしょ?飲み物買ってきたよー!」
「おかえりなさい、咲希さん。ありがとうございます」
「ナイスだ、咲希!ありがとうな!!!」

name
email
url
comment