司冬ワンライ・夜ふかし/寝不足

「…ふあ……」
暖かな陽気に司は大きな欠伸をする。
昨日うっかり夜ふかししてしまって少し寝不足なのだ。
眠気の要因は昼食が終わったから、というのもある。
昼休み、昼食前は体育だったこともあり、欠伸が出るのも仕方の無いことだった。
「…少し寝るか……」
小さく呟き、司はスマホでアラームを設置してからごろりとベンチに寝転んだ。
多少行儀も悪いが致し方がない。 
眠気には勝てないのだ。
「…む?」
ぼんやりと行き交う人々を見ていると一人の人物が目に入った。
「…冬弥!」
身体を起こし、司は手を振る。
冬弥も気が付いたのか、驚いたようにこちらを見た。
司の元にやってきた目には涙が浮かんでいる。
それを見た司はニヤリと笑った。
「…冬弥も欠伸をするのだな」
「…やはり見られていましたか」
冬弥が恥ずかしそうに言う。
実は見つけた冬弥は口元を手で押さえていたのだ。
いつもよりぼんやりしていたから、恐らく眠いのだろう。
何だか悪いことをしたな、と思った。
…彼が寝不足なのは司のせいなのだから。
「すまんなぁ、オレのせいで夜ふかしをさせてしまって」
「いえ。俺もとても…良かったので」
少しはにかんで冬弥が答える。
そうか、と司は笑った。
「冬弥、良ければ一緒に昼寝をしないか?」
「え?」
「寝不足だと午後からのコストパフォーマンスにも関わるだろう」
「…なるほど。しかし、狭くありませんか?」
「オレは構わんぞ!」
「…わ」
首を傾げる冬弥の手を引き、腕の中におさめる。
そのままごろりと横になった。
途端に眠気が襲ってきてうとうとと微睡む。
春の陽気と冬弥の体温の心地良さに司は目を閉じた。


夜ふかしした次の日の、特別な時間


(たまには寝不足も良いかもしれないね?)



「…司センパイと…冬弥?あんなトコで何やってんだ?」
「ああ。司くんが青柳くんから借りた小説を読み終わって感想合戦で夜ふかししたと言っていたから…睡眠を取り返しているのかもしれないねぇ」

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