司冬ワンライ/春の祝賀・ピュアハート

今日はイースターなのだという。
あまり日本では馴染みがないが…フェニックスワンダーランドでは大切な行事の一つとなっていた。
「…8,9,10っと…。うむ、全て集めてきてくれて感謝するぞ!これはお礼の品だ」
「わぁ、うさぎのお兄ちゃんありがとう!」
少年からイースターエッグを預かり、代わりにチョコレートエッグを差し出す。
きらきらと目を輝かせた少年が笑顔で言った。
「こちらこそありがとう、少年よ!この後も心ゆくまでイースターショーを楽しんでくれ!」
手を振りながら言う司に少年も嬉しそうに駆け出す。
やはり笑顔は良いものだ。
…と。
「…司先輩」
「…む?」
聞き慣れた愛しい声に振り向けば冬弥がイースターエッグを持って立っていた。
…何故だかうさ耳を付けて。
「とっ、冬弥?!」
「はい…えっと…やはり変でしょうか…?」
目を丸くする司に冬弥が困ったように言う。
まさか、とぶんぶんと首を振った。
「とてもよく似合っている!…だが、何故そのような格好を?」
「神代先輩が教えて下さったんです、イースターの正式な格好なのだと」
「るっ、類のやつ…っ!」
あっさりした回答に司は思わず拳を握る。
あまり冬弥に適当なことを吹き込まないでほしかった。
可愛くて愛しい冬弥はピュアハートの持ち主なのだから。
「…それと…」
む?
おずおずと話しづらそうに口を開いた冬弥に司は首を傾げる。 
まだ何か言われたのだろうか?
「それと、どうかしたのか?」
「いえ。…司先輩が、喜んでくださると聞いたものですから」
少しはにかんで冬弥が言った。
こちらが恥ずかしくなってしまうような言葉を。
「…司、先輩?」
「…。…そうだな、たしかに嬉しい。…だが、あまり可愛い事を言わないでくれ」
「え?」 
きょとんとする冬弥を引き寄せ、耳に囁く。
イースターバニーが狼になってしまったらどうする、と。
冬弥の耳が桜の色に染まる。
髪と同色のうさぎ耳が風に揺れた。

今日は大切な春の祝賀。


春の訪れを祝うイースター。


(イースターバニーがどうなったか、なんて野暮な話でしょう!)



「ほら、あのニ人なら大丈夫だったろう?レン君」
『大丈夫だったけど…うーん、一応謝った方が良いと思う…。類くん、司くんに怒られちゃうと思うなぁ……』

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