世界ペンギンの日

「じゃあ明日の練習だけどいつもの時間で…」
志歩のそれに、他の3人が、え、と声を出した。
それに志歩も眉をひそめる。
「…え、って…何か用事あった?」
「私達は用事はないけど…ねぇ?」
「うん。…志歩ちゃんは用事があるんだと思ってたから…」
一歌と穂波が顔を見合わせた。
何かあったっけ、と言う志歩に、「ひっどぉい!」と頬を膨らせるのは咲希だ。
「はるかちゃんに言ーつけてやるんだから!」
「…何で桐谷さん…。…あ」
ぷんすこと怒る咲希に、意外な名前が出てきたなと思いながら呆れ…そして思い出す。
はぁ、と息を吐いてから天を仰いだ。
「咲希!」
「咲希ちゃん!」
「あ…えへへぇ……」
途端に一歌と穂波が窘め、咲希がやっちゃった、と言わんばかりに頭を掻く。
「…何で知ってんの……」
「そりゃあ、まあ、桐谷さんとは同じクラスだし…」
「はるかちゃんが嬉しそうだったから、何かあったのかなって!」
「わたしは、ラジオで4月25日が何の日かっていうのを聞いて…。廊下で志歩ちゃんと桐谷さんが話してるのを見ちゃったから…」
志歩の疑問に三人が答えた。
秘密にしているつもりはなかったがどうやらすっかりバレていたらしい。
「…。…練習時間はいつも通りで大丈夫。私達が行くのはナイトショーだから」
ならば、と志歩は説明した。
これだけバレていたのだから、隠しておくこともないだろう。
「なぁんだ、なら安心だね!」
「そうだね。…なるべく早く終われるように、自主練頑張るよ」
「わたしも。…明日は特別だもんね」
ホッとしたように笑う咲希、やる気の目をする一歌、そしてにこにこと首を傾げる穂波。
応援されるのはむず痒いが…変に隠す必要はないか、と志歩は小さく息を吐く。
「まあね」
短く答え、志歩はその時のことを思い出していた。



「…え、水族館のナイトショー?」
呼び出した遥がきょとんとする。
「そう。…桐谷さんが良ければ、だけど」
「明日は配信もないし…大丈夫だよ。…でも、どうして…」
首を傾げる遥に、志歩は僅かに笑みを浮かべた。
「…。…前に、ラーメンの日に誘ってくれたでしょ。だから、今度は私の番」
「…!」
目を丸くする遥に志歩はチケットを振る。
告げる言葉に、彼女の表情が破顔した。
「明日は、世界ペンギンの日なんだって」



大切な記念日を、貴女がお祝いしてくれたから

私も貴女にとってきっと大切な記念日を、共に祝いたかったのです!


「…ありがとう、日野森さん。楽しみだな。世界ペンギンの日の、ペンギンナイトショー」
「…良かった。私も、桐谷さんと一緒に見に行けるの楽しみ」

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