しほはるワンドロワンライ・探検ごっこ/連休

「桐谷さんって、連休もスケジュール埋まってるの?」
久しぶりに一緒に帰れた日、他愛もない話をしていたのだが、ふと気になって志歩は聞いてみた。
彼女はアイドル活動をしている。
テレビに出てからというもの、色んなところからオファーが来ているのは同じアイドルグループの姉から聞いて知っていた。
だから、連休もほとんどないのでは、と心配したのだけれど。
「そうでもないよ。ちゃんと休めるようにって配慮してるから」
「…そっか、なら良かった」
「日野森さんは?また強化練習?」
遥が首を傾げる。
綺麗な髪が風に揺れた。
「前半だけね。…あんまり詰め込んでも良いものにはならないし」
「そっか、そうだよね」
志歩の言葉に遥が笑う。
遥もストイックだから、練習の大切さも息抜きの大事さも知っているのだろう…切り替えは難しいらしいが。
「…ねぇ、もし良ければ一緒に探検ごっこしない?」
「探…なに?」
おずおずと遥からそんな言葉が出て、志歩は思わず聞き返してしまった。
…空耳だろうか?
「探検ごっこ。…鳳さんがね、街を知るためにって教えてくれたの。今まで知らなかった場所が知れるかもしれないし…どう、かな?」
遠慮がちに遥が聞いてくる。
そんな顔をされたら断れないのを知っているはずなのに。
…まあ彼女の頼みならば断ることもないのだけれど。
「…いいんじゃない?ちょっと楽しそうだし」
「!ありがとう、日野森さん!」
嬉しそうに遥が言う。
正直、この顔を見るために承諾したといっても過言ではないだろう。
「…あ、もし新しいお店とか見つけても配信とか、出来れば他の人には内緒にしててほしいんだけど」
志歩のそれに首を傾げていた遥はすぐに理解したようで柔らかく微笑んだ。
「分かった。日野森さんと私だけの秘密、だね」
「そういうこと。…良いお店が見つかると良いね」 
楽しそうな彼女の手をぎゅっと握る。



探検なんかしなくても、遥といればいつだって新鮮でワクワクするのだと


さて、いつに教えよう?


(今年はとても素敵な連休になりそうで!)



「…わぁ、見て、日野森さん。猫さんがいる純喫茶だ…!」
「…うん。可愛いかも…。ちょっと勇気いるけど、入っちゃう?」

name
email
url
comment