しほはるワンドロワンライ・傘/雨上がり

今日は朝から雨だった。
放課後までには止むかと思ったが…仕方がない。
最近買ったばかりの傘を開いた。
ぱしゃりと雨降る中に足を踏み出す。
「…日野森さん!」
「…。…桐谷さん」
傘に当たる雨粒をかき消すように声が聞こえた。
振り返ると遥が傘片手に駆けてくるのが見える。
立ち止まり、追いつくのを待った。
「良かった、間に合って」
「そんなに必死にならなくても…」
傘越しで彼女がふわふわと笑うから、志歩も小さく肩を揺らす。
「でも、日野森さんとはクラスが違うから、帰り時間もなかなか合わないし…一緒に帰れるなら、帰りたいなって」
可愛いことを言う遥に、もう、と笑った。
「雨なのに?」
「雨だから、だよ」
無邪気に遥も微笑む。
「雨って、人によっては憂鬱じゃない?だから、少しでも…好きな人と一緒にいたいなぁって」
人差し指を自分の唇に当ててパチリとウインクをする彼女に、敵わないなぁと思った。
「…ま、雨だとこういうことしてもバレないしね」
「え…」
そう言って遥の手を握る。
目を見開く彼女に、キスされるかと思った?と意地悪く聞いてみた。
「まあ、ちょっと…だけ……」
傘越しに染まる、遥の耳。
意外な反応に、志歩も思わず目を見開く。
「なんでそんな反応なの…」
「だ、だって…」
呆然とする志歩に、遥が頬を膨らませた。
途端に、二人して吹き出す。

雨、あめあめ梅雨の季節。



たまにはこんな雨の日も。



「あ、雨上がったね、日野森さん!」
「…うん、そうだね、桐谷さん」

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