しほはるワンライ/スポーツの日・いざ尋常に

本日はスポーツの日である。

「…んー!楽しかったね、日野森さん!」
ふわ、と遥が微笑む。
そうだね、と志歩も軽く笑って頷いた。
珍しく二人とも休みだった、ということもあり、遥の誕生日に約束したペンギンカフェに遊びに来た帰り道。
誕生日からは随分と過ぎてしまったがそれでもまあ彼女の晴れやかな顔を見、来てよかったな、と志歩は思う。
何だかんだ遥の明るい顔が好きなのだ。
今日は志歩も…楽しかったし。
「まさかコウテイペンギンパフェがお誕生日さま仕様で、マント付けてるとは思わなかったな」
「うん!私もびっくりしたよ。…すごく…可愛かった」
ほう、と息を漏らす遥に、志歩はくすくすと笑う。
「ところで、桐谷さんは今日チートデーなんだよね?明日からはまた戻すの?」
「…そうだね…。今日食べた分はしっかり取り返さないと」
「そっか。なら、ちょっと体動かして帰る?」
「え?」
きょとんとする遥へと志歩はとあるチケットを見せた。
あ、と遥が声を上げる。
「スポジョイパークの割引チケット!」
「そう。実は今日までなんだよね。でも1人で使う気にもなれないし。スポーツの日ってことで…どう?」
「いいね。日野森さんなら良い対戦相手になりそう」
自信満々に遥が頷いた。
お手柔らかにお願いね、と志歩は言いながらチケットをカバンに仕舞い込む。
「あんまり手を使わないのにしようか」
「そうしてもらえたら助かるけど…何かある?」
「うーん、ローラースケートは?」
「あー…コケた時がちょっと怖いな…。それなら、フリースローの方が…」
わいわいと二人で話し合いながら志歩は少し嬉しくなった。
遥が自分の…ベースを弾く手を大切に思ってくれることに。
「よしっ、3本勝負だね」
「そうだね。…負けないよ、桐谷さん」
「私だって。…そうだな、もし負けたら罰ゲームでも何でも受けるよ」
「本当に?言ったね??」
「もちろん」
遥が強気に笑う。
勝ち誇った顔の、志歩の可愛いお姫様。
「なら負けた方は勝った方の言う事を何でも一つ聞く、ってことで」
「そんなので良いの?」
「…随分余裕だね」
「ふふ、まあね」
にこ、と笑う遥。
確かに彼女は男子に張り合えるほど運動神経は良いが。
志歩だって負けられない理由がある。
だから負けない。
「いつまでも余裕ぶってたら足元掬われちゃうよ」
「ふふ、ご忠告ありがとう、日野森さん」

二人して笑い合う。


さあ、尋常に、勝負!!



「…待って、日野森さん。あのペンギンのぬいぐるみ可愛い…!」
「え?……!!隣のうさぎのぬいぐるみも可愛い…!」
「…ちょっと休戦しない?」
「…うん、ここは共同戦線を結ぼう、桐谷さん!」

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