マキカイバースデー

「…よっ」
ひらりとカイコクが手を振る。
毎年律儀に欠かさずやってくる彼はやはり優しい人だなぁと思った。
「誕生日、おめっとさん。逢河」
「…。…ありがとう、カイコッくん」
ふわ、と笑う彼はいつもの表情とは違う。
勿論いつも見ている表情も好き、なのだが。
「…カイコッくん」
「?なんでェ」
きょとんと彼がこちらを見る。
普段よりも幼く見えるそれに、マキノも微笑んだ。
やはり彼が好きだなぁと思う。
強くて、優しくて。
「…好きだよ」
「?!いっ、いきなり、何を…っ!」
彼の髪を持ち上げてキスをすると途端に狼狽え出した。
そういえばカイコクはストレートに弱かった…気がする。
「?今日は、バレンタインでも…ある、から」
「え?ああ、そういやァそうだったか」
「だから、伝えたくて」
「ああ…なるほ…とはならねェ…こら、逢河!!」
カイコクが怒鳴る。
マキノがぎゅうと抱きしめたからだ。
愛を伝える日に、普通の想いすら伝えられない自分が、誕生日を迎えるだなんて何とも皮肉だと思っていたけれど。
「…ったく、お前さんは本当ストレートだよなァ…」
何かを諦めたらしいカイコクがへにゃりと笑う。
それから髪に手を伸ばしてきた。
「…カイコッくん?」
「俺ァ逢河のそーいうトコが気に入ってんだ」
柔らかい笑みで、彼が言う。
愛を伝えるそれなんてない、だが心からの言葉。

ただそれを受け取れるだけで…良いと、そう思った。


「…もう一回…」
「はいはい。…誕生日おめっとさんな、逢河」

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