KAITO誕

どうも、鏡音レンです。
本日は…。
「あ、レンくん、こんにちは!」
「…って、カイコさん」
ふわふわと手を振るのは兄さんこと始音KAITOの先天性女性型亜種、始音KAIKOさんだ。
兄さんとよく似ていて、特に笑った顔がそっくりだったりする。 
「どうかした?ルカ姉ぇならミク姉ぇと買い物という名のデートに行ったけど」
「ふふ。相変わらずミクちゃんとルカちゃんは仲良しだね」
「まあ……な…?」
にこにこと笑うカイコさんに曖昧な返事をした。
あれは仲良いってのを超えてる気がするんだけども。
「あ、じゃあ私達もデートしない?」
ぱあっと表情を輝かせてカイコさんが言う。
頷きそうになって…思わず固まった。
デート?
デートっつった?!
「なっ、なんで…!」
「?だって今日は私の誕生日だから」
きょとんとするカイコさん…いや、無理あるだろ!
「流石にミクオに怒られんの、おれ、やだよ」
「ミクオくん、そんなことじゃ怒らないよ?」
「カイコさんはミクオの怖さ知らないからだって…」
首を傾げるカイコさんに思わず呆れた。
ミク姉ぇこと初音ミクの先天性男性型亜種、初音ミクオはこのカイコさんが大好きなんだよなぁ。
まあ気持ちは分からんでもないけど。
「…それに、ミクオが何も言わなくてもおれはカイコさんとはデートしないよ」
「そうなの?」
笑いながら言えばカイコさんはちょっと意外そうな顔をした。
「レンくん、優しいからデートしてくれると思ったのにな」
「それは優しさじゃないじゃん。本当の優しさはさ、自分の好きな人を傷つけないように断る勇気だと思うから」
楽しそうなカイコさんにそう言って改めて向き直る。
「なので、おれは兄さんを裏切ることは出来ないので、ごめんなさい」
「ふふ、分かりました」
頭を下げるとカイコさんはにこにこと言った。
一応おれに振られたはずなのに、何だか機嫌が良くて。
「…ほら、だから言ったでしょう?」
「……へ?」
にこ、と笑ったカイコさんが後ろを振り返る。
…え、なに。
「レンくんは私よりカイトさんを取るって」
「あはは。まさかこんなに愛されてるなんて思わなかったなぁ」
「は?え?なに??」
明るい声で出てきたのは…上機嫌な兄さんで。
「ふふ、ありがとうね、レン」
「どう…いたしまして…?」
「姉さん!!帰るよ!?」
「はぁい!…じゃあ、良い誕生日を、カイトさん!」
「うん、カイコさんもね」
ミクオの鋭い声にカイコさんがスカートをひらめかせて手を振り、部屋を出る。
それに兄さんがひらひらと振り返した。
「…わっ、レン?」
「…。…そーいうの、やめろよな」
そんな兄さんに抱きつく。
思ったより子どもっぽい声になったけど、もー気にしていられなかった。
「ごめんね?…でも、レンに愛されてるって分かって嬉しかったよ」
「んなことしなくても、愛してるっつってんじゃん」
楽しそうな兄さんに言えば、そうなんだけど、とまた笑う。

17年目の誕生日。



存外愛されたがりの兄さんに、生まれてきてくれてありがとうと、持てるだけの愛を伝える日!



「今すぐ愛してやろうか?」
「それはまた夜に…ね?」

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