猫の日マキカイ

今日は猫の日なんだって

うとうとしていた意識の外で

誰かがそう言っていた


随分暖かい日だな、と思った。
もうすぐ2月も終わるのだからそういうもの、なのだろう。
…まあ、この場所に『季節』なんかは関係ないのかもしれないが。
どちらにせよマキノにはあまり関係なかった。
ただ、いつも通りの日常…であれば良いと思うから。
「…逢河?」
声をかけられ、マキノはゆっくりとそちらを向く。
ゲノムタワーの一番日当たりが良い場所に陣取ってひらひらと手を振る男。
鬼ヶ崎カイコクがそこにはいた。
「…カイコッくん」
「珍しいねェ。…逢河も日向ぼっこかい?」
彼が笑う。
機嫌が良いと思ったら先程からこの良い場所を独占していたらしかった。
「逢河なら入れてやってもいいぜ」
ほら、とカイコクが座っていた場所を少しずらす。 
わざわざ逢河なら、と言ったということは他の人ならテリトリーに入れる気はなかったのだろう。
そも、声をかけるかも怪しい。
まあ彼の場合は、カイコクが声をかけなくても他の人から声をかけられそうだな、とは思うが。
「…。…おじゃま、します」
「ん、どーぞ」
一応声を掛ければ彼は短く言ってまた窓の外に目をやった。
外の景色に特別何かがあるわけではない。
いつもの風景が、カイコクの綺麗な瞳に映っていた。
何だかそれが「良いな」と、漠然と頭に浮かぶ。
ふと、マキノはある光景を思い出した。
窓からじぃっと外を見つめていた…愛猫のことを。
「…モシカちゃん」
「?どした、逢河」
きょとん、と彼がこちらを向く。
風に揺れる彼の黒い髪。
ゆわりと、赤い紐がしっぽのようにゆらめいた。
「…。…カイコッくん、似てる…ね」
「は?何でェ…ちょ、逢河?!!」
眉を顰める彼の肩口に顔を埋める。
慌てたようなカイコクの声がどこか心地良くて。

彼は何だか猫に似ているな、なんて思いながらマキノは夢に沈んだ。


カイコクは猫に似ている。

ツンデレなところ?
自由なところ?
…どれでもない。

彼が猫に似ている、そう思うのは。

(マキノのことを包み込んでくれるところ)


「おい、こら、逢河!起きてくんなァ!」
「……ぐう」

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