司冬ワンライ・セカイに響け!

今日はとても大きな会場でショーがあった。
非常に盛り上がり、舞台上から見える観客たちの顔はきらきらとしていて、こういうのが役者冥利に尽きる、というのだろうな、と思う。
皆がわくわくしていて一心に手を振ってくれる、この胸に湧き上がる想いを幸福と言わずなんと呼べば良いのか。
「…司先輩!」
「…おお、冬弥ではないか!」
ふと愛しい恋人の声が聞こえ、司は思い切り手を振った。
そういえば彼も同じ会場でライブをしているのだと言っていたっけ。
リハーサルだけ少し覗いたが本当に、ゾクゾクするくらい凄かった。
勿論、ショーとはまた違った種類の感動なのだが。
「お疲れ!今終わったのか?」
「はい。司先輩もお疲れ様です。最後の少しだけ見ることが出来て…。やはり司先輩のショーは素晴らしいと再認識しました」
「そうか!それは何よりだ。…オレも、冬弥たちのライブを少しだけ見ることが出来た。歌も勿論良かったが…冬弥もあんなに良い表情で歌えるようになったのだなぁ」
笑い、頭を撫でると嬉しそうな表情の冬弥が、「ありがとうございます」と言う。
「是非また、ゆっくり聴きに来て下さい。…最高のパフォーマンスで先輩をお出迎えします」
「それは楽しみだ。期待しているぞ?」
「…!はい」
キラキラした表情の冬弥が頷いた。
歌に、希望に満ちたその顔で。
彼のそれを見ていると何だか歌いたくてうずうずしてしまう。
本番は大成功で、でもまだ物足りなくて。
二人でこのセカイに歌を響かせる事が出来たら、幸せだろうなと、そう思った。
「なあ、冬弥。少し歌わないか?」
「え?」
「小さい頃はよく一緒に歌っただろう」
司の誘いに、良いですね、と彼は笑う。
俺も歌い足りませんでした、と、そう言って。



二人きりのセカイに歌が響く


観客は互いだけで、それでもとても幸せで


ずっとずっとこうしていたいと、その想いを音に乗せた

(貴方に、セカイに響け、恋の歌!)

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