ミクの日

どうも今晩は、鏡音レンで……。

「レンくぅうん!!!聞いてよ、酷いんだよ、マスターが!!!!」

…どうやらおれは今日も巻き込ミクルカされるようです。


「…。…で?どうしたのさ、ミク姉ぇ」
「明日はミクの日じゃない?」
「…ああ、ミクの日だな」
ミク姉ぇが真剣に言う。
他の人からすれば何を言ってるのかと思うが、この姉に至ってはそんなこともなく。
3月9日、語呂合わせでミクの日。
誕生日と並んで、世界中がこの電子の歌姫を祝う日になっている。
「ミクの日ならミクをお祝いして然るべきじゃない?」
「腹立つけど、まあ一般的にはそうだな」
「マスターが、24時間ミク番組をやるとか言い出した」
「…おう……」
真剣なそれに、おれは言葉を失った。
相変わらず突拍子ねぇな……。
まあ、それを許されるってのがミク姉ぇの存在、なんだろうけど。
「24時間っておかしくない?!」
「別に、色んな『初音ミク』がいるんだから、出るのはミク姉ぇだけじゃないんだろ?」
「そうなんだけどぉお…!」
うがぁあ!とミク姉ぇが頭を抱える。
…多分世界中を探してもこんな初音ミクはうちだけだろうな…。
「ミクの日なんだからミクのお願い叶えてくれても良くない?!」 
「割と叶えられてんじゃん」
「何を見てそう思ったの?!レンくんは!」
ミク姉ぇがおれを睨んできた。
わぁい、ミク姉ぇ怖ーい!
それなりに恵まれてんのに何言ってんだか、って感じなんだけどな、おれからしたら。
「兄さんがお弁当作ってたけど、あれ、ミク姉ぇのだろ?」
「え?お兄ちゃんのお弁当?!」
おれの言葉にミク姉ぇがころっと態度を変えた。
ったく、現金なんだからさ?
「楽しみだなぁ!お兄ちゃん、最近お菓子以外もプロってきたし」
「なー。兄さんはどこに向かってんだか」
「歌って踊って料理が出来るボーカロイドかぁ…って、お兄ちゃんの話は良くてね?!」
ニコニコしていたミク姉ぇがバンっと机を叩く。
あ、気付いた。
「レンくんが好きなゲームに出てくる子も言ってたでしょ?好きな人には笑っていてほしいって」
「好きな人とは言ってねぇけど…っ?!」
「私は!!!ファンのみんなだけじゃなくてルカちゃんにも笑っていてほしいの!!!」
勢い良くミク姉ぇが言う。
「ミクの日に一緒にいれないって知った時、ルカちゃんが一瞬寂しそうな顔したんだよ?!そんなのってないじゃん!」
「…いや…」
「ルカちゃんはそんなこと言わないけどさぁ…!出来るだけ一緒にいたいでしょ?!好きなんだもん!いつ、どんな時でも一緒にいたいの!」
真剣なミク姉ぇのそれはもはやプロポーズだ。
それ、そのまま本人に言えば良いのにな?
「じゃあ一緒にいれば良いじゃん」
「だからぁ…!」
「ミクの日だからって、ルカ姉ぇが一緒にいちゃいけないとか、言われてなくね?」
おれの言葉にミク姉ぇがその手があったか!といった顔をする。
「…そっか、そうだよね」
うん、とミク姉ぇが頷いた。
ありがとう!と笑ったミク姉ぇがバタバタと部屋を出る。
その様子は恋に一途な16歳、って感じだ。
ったく、騒がしいんだからさ?


本日ミクの日。


世界的な電子の歌姫、初音ミクは。



(どうやら巡音ルカに恋してる!)



「…レンでしょ?ミクにルカと一緒に番組行けばって言ったの。俺に二人分のお弁当頼みに来たよ」
「兄さん。……さて、何のことやら」

name
email
url
comment