司冬ワンライ・特別な想いを/変わらない場所

「…よしっ、こんなものだろう!」
掃除機をかけ終わった司は汗を拭う。
今日は冬弥を招いてホームパーティをする日だ。
朝から念入りに掃除をしていたが…そろそろ飾り付けや料理の支度をしなければ間に合わないだろう。
「…そういえば」
ふとあることに気付いて司は目を細めた。
昔、冬弥が家に遊びに来る日は同じように掃除をしていたこと。
何処か怯えたような顔をしていた冬弥が笑顔になってくれた時、すごく嬉しかったこと。
その為にどうするべきか遅くまで考え親に怒られたこと。
…きっとあの時から冬弥が好きだったこと。
どうすれば冬弥が笑顔を見せてくれるか、そればかりを考え、本当に笑ってくれた時はとても嬉しかった。
その時に感じた胸の高鳴りは、ショーをしていても得られなかったものだ。
これはきっと特別な想いで…彼にしか抱かないもの、なのだろう。
冬弥は司の家を変わらないと言ってくれるが、それは司も同じだった。
この場所で、彼が笑みを見せてくれる。
いくつになったとしても高鳴る気持ちは変わらない。
小さな司が必死になって家を掃除した…あの日と同じ。
冬弥にとっても、安心できる場所であれば、と司は思うのだ。
夢を追い続ける場所とはまた違う、ホッと出来る場所であれば良いと。
「お兄ちゃーん!ランチョンマットどこだっけー?」
台所から咲希が呼ぶ。 
今行くぞ!と返し、司はコンセントを抜いた掃除機を持ち上げた。
今はただ、愛しい人を迎え入れる準備を、急がなければ。


「えっと、アタシがこっちでお兄ちゃんととーやくんが反対側、っと」
「そういえば、なぜこの配置なんだ?」
「??…だって、昔から二人とも隣にいるとすっごく幸せそうなんだもん!」

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