司冬ワンライ・小動物/キュートアグレッション

「…ううむ………」
とある喫茶店の一角で、司は唸っていた。
メニューを見て、ではない。
目の前にいる愛しい人を見て、だ。
「…?司先輩?」
こてりと彼、冬弥が首を傾げる。
両手でコーヒーカップを持った彼は小動物のようだなと思った。
「い、いや、何でもないぞ!冬弥はコーヒーだけで大丈夫だったのか?」
「はい。ありがとうございます」
にこりと冬弥が微笑む。
そうか、と頷く司の元に、サンドイッチがやってきた。
野菜が多く入ったもので、同じショーキャストの男は目に見えて嫌そうにするだろうな、と思う。
冬弥も同じことを思ったのかクスクスと笑った。
いただきます、と手を合わせ、司はそれを持ち上げる。
サンドイッチを齧り、咀嚼していればコーヒーを飲んでいた冬弥が小さく笑みを浮かべた。
「?どうかしたか?」
「いえ。司先輩が美味しそうに召し上がっていたので…」
何故か嬉しそうに言い、ふと、あ、と声を漏らす。
「司先輩、口にマヨネーズが付いてます」
「む、すまん」
冬弥の指摘に口を拭おうとする前に冬弥が身を乗り出した。
指でその場所を拭った冬弥が、取れました、と笑む。
「…司先輩?」
その手を掴み、指を口に含んだ。
別に勿体無いと思ったわけではない。
…なかったのだけれど。
「…。…あの」
「!!す、すまん!」
「…いえ」
戸惑った様子の彼に、司は慌てて手を離した。
なんて事をしてしまったのだろう。
横にあった紙ナプキンで拭き、もう一度すまない、と謝った。
大丈夫ですよ、と笑う彼は、やっぱりなんだか小動物みたいだ、と思う。

そんな彼を食べてしまいたい、と思ってしまったなんて!!


ああ、この想いは一体何なのだろう!




『…ミク、知ってるー!キュートアグレッションって言うんだよね!』
『わわっ、声を抑えなきゃバレちゃうよ!でもよく知ってるね?なんで…』
『えっへへ、カイトにはナイショー☆』

(彼の想いはいつだってセカイに筒抜けなのです!)

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