お誕生日会議 サイド

何だか冬弥が嬉しそうだなぁとは思っていたし、彰人が歌以外で忙しそうだなぁとも思っていた。
「…っと、やっほー!草薙さん!」
「…白石さん」
声を掛ければふわふわした草色の髪を舞わせた寧々が振り返ってくれる。
「天馬先輩と神代先輩、相変わらず?」
「まぁね。…今年は何をやりだすつもりかな…」
くすくすと寧々が笑った。
そっかぁ、と笑って杏は隣に並ぶ。
「あっれぇ、珍しい組み合わせじゃん!」
明るい声にそちらを見れば瑞希が手を振っていた。
「何してんの?二人で」
「んー?お誕生日会議を見守ってる?」
「んん??」
ね、と寧々に笑いかければ瑞希は不思議そうに首を傾げる。
こちらに来て同じように教室を覗き、あー、と笑った。
「いやぁ、冬弥くん愛されてるよねぇ」
「でしょー?」
「…なんで白石さんが得意げなの……」
瑞希のそれに、えへん、と胸を張る杏に寧々が小さく肩を揺らす。
あまり邪魔をするものでもないとその場を離れようと教室に背を向けた。
二人も同じように思ったようで杏に着いてくる。
「今年は上手く行くと良いよね」
「前はケーキが3つ揃ったんだっけ?仲良しー」
「…それ、東雲くんが聞いたら怒らない…?」
「あー…彰人は怒るより嫌がりそう……」
「あははっ!確かに!!」
3人で笑っていれば通り過ぎかけた教室に噂の人を見つけ、杏はおぉい、と手を振った。
「とーや!!」
「…白石。暁山に草薙も。…珍しい組み合わせだな」
「そんな事ないよー?草薙さんとは前に一緒にセッションしたことあるんだから、ね!」
「え、う、うん」
「まっって、ボクが知らないんだけど、その話!!」
わぁわぁと話していれば冬弥は小さく笑う。
楽しそうだな、なんて笑みを浮かべる彼に杏は「冬弥だって楽しそうじゃん」と言った。
「…そう、だろうか?」
「楽しそう、というか…わくわくしてる顔してるよね」
「うんうん!弟くんたちも用意しがいがあるよねぇ」
首を傾げる冬弥に寧々と瑞希が言う。
「今年も白熱してるもんね、お誕生日会議」
「ああ…。去年は呼ばれたんだがやはりそれはプライドが許さないと」
「へぇ。それは弟くんが?」
「いや。…全員だ」
くす、と笑う冬弥に三人は目を見合わせた。
「彰人はともかく…天馬先輩も神代先輩もそんなこというのはちょっと意外かも」
「そうだろうか?司先輩も神代先輩も人を喜ばせることに関してはプロだろう。あまり観客に裏側を見せたがらない気はするが」
「…あー…言われてみればそうかもね」
「確かに…!そういう演出ならまだしも」
冬弥のそれに三人とも納得する。
それから瑞希が悪い顔をした。
「いやぁ…冬弥くん、愛されてるねぇ」
「…。…そうだな」
ふわ、と冬弥が笑う。
愛されてる自覚がある、彼の顔に杏も瑞希も寧々も笑うしかなかった。
なるほど犬も食わないとはこういう事をいうらしい。


お誕生日会議の裏側で。

主役はとても幸せそう!


(ごちそうさま、なんて心の中で手を合わせたのだった)


「おい、冬弥。待たせ…なんでお前らが」
「おや、珍しい組み合わせだ」
「おお!三人とも、一緒にお祝いするか?」
「「「遠慮しときまーす」」」

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