司冬ワンライ・おにぎりの日/こだわり

今日は誰が言い出したかおにぎりの日だという。
そんなことを思い出しながら廊下でたまたま出会った冬弥に話していたら、彼の目がきらきらと輝き出した。
「…おにぎりの日、ですか」
「ああ、そうらしい。ニュースのバラエティーコーナーの一場面で言っていただけだから、詳しいことは分からんが…」
「…そう、なんですね…」
なるほど、と考え込む冬弥に、どうしたんだろうかと思いつつ…もしかして、と思い当たったことを口に出す。
「…もしかして…作ってみたいのか?」
「…!な、何故…!」
驚いた顔の冬弥に、やはりか!と司は笑った。
最近は色んな経験をしてみたいと意気込んでいるから、もしやと思ったのである。
画してそれは当たっていたようだ。
「よし、ならば今日の放課後に一緒に作ってみるか!」
「よ、良いんですか??」
「ああ!冬弥が作ってみたい、最高のおにぎりを作ろうではないか!」
再び目を輝かす冬弥に、司は笑う。
なんだか、司までわくわくしてしまって、すぐにでも駆け出したくなった。
…流石にそれをするのはまだ授業があるから憚られるけれど。
だから、ぐっと我慢して、では、と手を挙げた。
「また、放課後にな!」


今日は司も冬弥も練習はなかったからすぐに落ち合い、そのまま買い物に出かけた。
材料にもこだわり、二人で吟味しながら揃えたから、準備は満タンである。
「では、作っていくか!」
「…はい!」
エプロンを着け、冬弥と気合を入れた。
米を炊き、中身を作っていく。
「ふむ。包丁捌きが上手いな」
「…いえ、以前教えてもらったことがあって…まだまだです」 
小さく笑う冬弥は何だか嬉しそうだ。
そうこうしている内に米が炊け、いよいよ握る番になる。
「…む…これは…なかなか……」
冬弥が綺麗な眉を寄せた。
どうやら少し思っていたのとは違ったらしい。
司から見れば綺麗だと思うのだが…きっとこだわりがあるんだろう。
「少し良いか?」
「!」
背後から手を添え、共に握る。
「…どうだろう」
「とても綺麗です!流石司先輩ですね!」
きらきらと、とても嬉しそうな冬弥に、司も心が温かくなった。



本日はおにぎりの日


二人で作るおにぎりは、きっと幸せの味


「よし、どんどん作って行くぞ!」
「!はい!!」

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