類冬 類バースデー

冬弥が何か悩んでいるらしい。
らしい、というのは幼馴染でありショーキャスト仲間の寧々が練習に遅れて来たことがあったからだ。
その際彼女は「…青柳くんの相談に乗ってたの」というだけで。
それに一番反応しそうな司やえむが「そうなのか」「解決したら良いね!」くらいだったのは気になったが…類もその時はそうだね、と言うに留めた。
寧々が相談に乗ったのなら大丈夫だろう。
その後も、瑞希や杏が相談に乗っているのを見た。
余程何かに困っているのだろうか。
少し聞いてみようかとも思ったのだが、思い止まった。
彼にだって聞かれてほしくないこともあろう。
何かあれば相談にも来るだろうし。

そうして、数日が経った。


その日は類の誕生日だった。
練習日に突然お祝いされて大層驚いたが、やはり良いな、と思った…そんな帰り道。
冬弥に呼び出され、共に帰路を歩いていた。
「…それで、どうしたんだい?」
他愛ない話をしていたが、いつまで経っても冬弥が話を切り出さないから、代わりに類から話し出す。
あまり遅くなっても彼の両親が心配するだろうし。
「…。…神代先輩」
「うん、何かな?」
改まって冬弥が類を見る。
同じように彼を見ると、少し迷っていた冬弥が抱きついてきた。
「?!青柳く…?!」
「…お誕生日、おめでとうございます。神代先輩」
「…え?」
耳元で聞こえる、お祝いの言葉。
そうして。
好きです、と小さな声が…届いた。
「…青柳くん」
「俺は、何か形に残るものが、と思ったんですが…そっちの方が良いとアドバイスを受けまして」
少し困ったように冬弥が言う。
してやったりと笑う彼女たちの顔が浮かんだ。
…全く、とんだサプライズだ。
「…?神代先輩?…わっ」
「嬉しいよ。…最高のプレゼントだ」
抱きしめ返し、類は告げる。
ストレートな彼の愛の言葉は、一生のプレゼント。



「もう一回言ってくれるかい?」
「…もちろん。今日は神代先輩の誕生日ですから」


(綺麗に微笑む可愛い後輩兼恋人が、誕生日以外でもそう言ってくれるようになるのは、また何れかの話)

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