司冬ワンライ・三周年/新学年

今日から新学年だ。
何だか気分まで違ってくる気がして司は空を見る。
いや、学生生活最後の年になったのだ、気分が変わるのは当然だろう。
「…司先輩!」
と、聞こえてきた愛しい声に司は振り返った。
ふわりと微笑んだ冬弥がこちらにかけてくる。
「おお、冬弥!おはよう!今日から新学年だな!!」
「おはようございます。…俺も二年生になったのだな、と実感していたところです」
「そうだなぁ。…ふむ、冬弥も今年は先輩と呼ばれる学年になったのだな!」
「…そう、ですね」
明るく笑い掛ければ彼は若干眉を下げた。
何か困らせるようなことを言ってしまったろうか。
「どうしたんだ?」
「いえ。…皆にとって…司先輩のように良い先輩でいられるかと少し不安で…」
そんな事を言う冬弥に目を丸くしてから、冬弥は真面目だなぁと頷く。
それから、そうだな、と少し上を見た。
「冬弥なら大丈夫じゃないか?…図書委員をしている友人たちがしっかりしているからつい頼ってしまうと言っていたぞ。後輩が出来ても大丈夫だろう」
「先輩方が…。そうでしたか」
司のそれに冬弥がホッとしたように笑う。
そういえば、中学の時もそんな悩みを口にしていたか。
「冬弥の、先輩になれるかどうかの悩みも三周年だなぁ」
「三周年…。言われてみればそうですね」
くすりと冬弥が微笑む。
きっと彼も思い出したのだろう。
確かその時は冬弥には冬弥の良さがあるのだから、それを見た後輩がきちんと判断して付いてきてくれる、と言った気がする。
だが今は。
「まあ冬弥なら大丈夫だろう。冬弥にも目標が出来た。目標に向かって直向きな先輩を、後輩はきっと見ていてくれるだろうからな。…それに」
「…!」
「オレも、良い先輩、とは限らないだろう?」
綺麗な指に口付けて司は笑った。
後輩を誑かすなんて先輩としては悪い方に入るだろうが何せ司のそれは純愛だ。
それくらいは赦してほしい。
「…司先輩は、俺にとっては最高の先輩で…」


最高の恋人です、なんて言う、冬弥の声。




溶けた空は青く突き抜けていて、新学年が始まるに相応しい色を、していた。

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