しほはるワンドロ 【身長差】・【このままで】

志歩は何度か見てきた紙に目を落とし小さく息を吐く。
何度見たって結果は変わらなかった。
それはそうだろう。
…それは、そうなのだけれど。
「…伸びてない」
ムス、と志歩は言葉を零した。
この結果は不満でしかない。
まあ特別な努力をしたわけではないのだけれど…。
「あら、どうしたの?しぃちゃん」
「え?ああ、お姉ちゃん」
声に振り返れば姉である雫が首を傾げていた。
夕食だと呼びに来たのだろうか。
「…ねぇ、ちょっと聞きたいんだけど、良い?」
「まあ!勿論よ!どうかしたの?」
「…。…お姉ちゃんって、身長伸ばす為に何か特別にやってた事って、ある?」
嬉しそうな姉に志歩は意を決して聞く。
きょとんとした雫は悩みながら上を向いた。
「うーん…特にやっていたことはないわねぇ。…あ、遥ちゃんが、ストレッチをして身体を柔らかくすれば身長伸びるんじゃないかって言っていたわ!」
「…桐谷さんが?」
「ええ!教えてもらったみのりちゃんが、今年は1cm伸びていたって喜んでいたから、効果はあると思うの!」
にこにこした雫が聞き捨てならないことを言う。
そんなことを言われたらプライドを捨てるしかなかった。
「…。…お姉ちゃん、お願いがあるんだけど……」



「日野森さん!」
「…桐谷さん」
遥が明るく手を振ってこちらに駆けてくる。
そういえば収録をこなしてから来ると言っていたっけ。
何だか悪いことをしてしまったかもしれない。
「良かった、間に合って。…はい、これ。ストレッチのやり方を書いたノートだよ」
「忙しいのにありがとう」
「どういたしまして。…ふふ、直接聞いてくれたら良かったのに」
ノートを受け取れば遥がにこにこと笑った。
何だか楽しそうな彼女に、「…それはちょっと…」と言葉を濁す。

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