司冬ワンドロ【身長差】 ・【成長期】

嬉しい。
これは喜ぶべき事実だ。
「はーっはっはっは!やはりオレは常に成長し続ける男!!中身も、外見までも成長してしまうとはなぁ!!!」
過去最高に格好良い格好をしながら司は皆に自慢する。
周りははいはい、みたいな反応だったが司には関係なかった。
「…司先輩?」
「ん、おお、冬弥か!!」
不思議そうな声に振り向けば体操着を着た冬弥がこちらに来ていて、司も笑顔になる。
「お久しぶりです」
「ああ、久しぶりだな!冬弥も身体測定だったのか?」
「はい。さっき視力検査を受けてきたところです」
ふわりと冬弥が微笑んだ。
彼も自分と同じ紙を持っている。
「そうか!ならば、身長も測ったということだなぁ!」
「そうですね。少し伸びていました」
冬弥の言葉に司は目を丸くする。
彼とて高校生男子の成長期、普通に考えればそうだと思うのだが…。
「?司先輩?」
「いや、すまん。冬弥も、中身も外見も成長していた、ということだな!」
「…そう、ですね」
司のそれに冬弥が微笑む。
それからふと首を傾げた。
「…俺も、ということは司先輩も…?」
「ああ。1cm伸びていたぞ!」
自慢気に言えば冬弥が嬉しそうに微笑む。
どうしたんだろうと思えば、「俺もです」と言った。
「俺も…1cm伸びていました」
「!そうか!」
「お揃い、ですね」
紙で口元を隠しながら冬弥が言う。
お揃い、の言葉に司も嬉しくなった。
そうだな、と笑い、急成長は来年に期待だな、と納得させる。
去年と変わらない身長差は、二人の関係性と同じで安心できるものだ。
しばらくこの位置を堪能するか、と司は息を吐いた。



6cmの差は

二人をつなぐ、大切な距離。



(まあ、でも、今日から牛乳は飲んでおこうと心に決めた)

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