司冬ワンライ/距離感・ドキドキ

最近冬弥との距離が遠い気がする。
昔はもっと近かったのに、と司は体操着姿の冬弥を2階教室の窓からぼんやりと見つめた。
今は物理的に遠いが…なんと表現すれば良いだろう。
「…心の距離、か…?」
うーんと悩みかけ、今は授業中だと思考を戻す。
しかし何故そんなことを考えてしまったというのか。
最近お互いに忙しく会えていないからだろうか。
それとも…?
「…。…分からんものは聞きにいく方が良いな」
小さく呟いたと同時にチャイムが鳴る。
起立令の後、ありがとうございました!と一際大きな声で言い、教室を飛び出した。




「冬弥!」
「…!司先輩?!」
驚いたような冬弥に駆け寄る。
「久しいな、冬弥!」
「そうですね。…どうされたんですか?」
ふわりと冬弥が微笑んでくれた。
…だが。
「…なあ、冬弥。オレのこと避けていないか?」
「…え…?」
司の疑問に、冬弥はびくっと身体を震わせる。
やはり、と思いながら彼の手を握った。
「何故だ?オレのことが嫌いになったのか?」
「!違います!」
疑問をぶつければ冬弥は必死に首を振る。
どうやら嫌いになったわけではないらしい。
ならば良かったと思うのだが…では何故。
「…あの……司先輩が上級生になってから今までよりとても眩しく映り…その…ドキドキするので…少し離れようかと…」
「…は……」
小さな声に司はぽかんとする。
それから思わず笑ってしまった。
「そうか!そうなのか!」
嬉しくなってぎゅうと抱きつく。
「司先輩?!」
「いや、うん、冬弥をドキドキさせることが出来て嬉しいんだ!」



彼のドキドキが聞こえる。


司と冬弥の距離はゼロ。

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