ルカ誕

「お兄ちゃん!協力してほしいことがあるんだけど!!」
「…うん?」
私の名前は初音ミク。
恋する乙女、正真正銘16歳の、ボーカロイドです。


「…じゃあ、ルカの誕生日にするデートを一緒に考えてほしい、で良いかい?」
「さっすがぁ!話が早い!」
首を傾げるお兄ちゃんに、私は指を鳴らす。
明日は愛しのルカちゃんの誕生日。
だから、スマートなデートがしたいんだけど…。
「…それは良いけど…なんで俺?」
「お兄ちゃんがルカちゃんに一番近いから」
不思議そうなお兄ちゃんが淹れてくれたココアを飲みながら私は答える。
この癒し系お兄ちゃんことKAITOとルカちゃんは雰囲気がとってもよく似てるんだよねぇ。
双子設定(うちでは、だけど)のリンちゃんとレンくんより似てるかも。
ちなみにルカちゃんはレンくんに連れ出してもらってる。
大切なルカちゃんの誕生日デートだもん!
しっかり考えなきゃ!
「お兄ちゃんなら、誕生日に何処連れて行ってもらったら嬉しい?」
「そうだなぁ。…相手がたくさん俺のことを考えて決めてくれたなら、どこでも嬉しいよ?」
「…それが最終ホテルでも?」
「…それは聞かなかったことにするね」 
にこっとお兄ちゃんが笑う。
ちぇっ。
隙がないんだからー。
「逆にミクはルカから何を貰ったら嬉しいんだい?」
「え?ルカちゃん」
「…そっかぁ……」
即答する私にお兄ちゃんの表情が引き攣った。
…世界広しといえど、あのKAITOにこんな表情をさせる初音ミクは私だけだろうな…ちょっとテンション上がってきたよ?
「でもさぁ、私も16周年を迎えた16歳じゃない?スマートでゴージャスなデートがしたいんだよね!」
フンス、と気合を入れれば、お兄ちゃんは困った顔をする。
「気合を入れすぎるとから回っちゃうよ?背伸びしないで、今のミクがルカの為を思ってデートをする方が良いと思うな」
「…一理あるけど…。せっかくの15周年だし…」
「せっかくの15周年だからだよ。緊張しながらより、お互いが楽しめる方が俺は良いと思う」
「…そっか!!」
微笑むお兄ちゃんに私は納得した。
やっぱり流石はお兄ちゃん!
「ありがとう!…流石、大人のデートをプレゼントされ損ねた側は言う事が違う!」
「あはは……」
「…ミク姉ぇ……??」
笑うお兄ちゃんよりも、低い声が私の名前を呼ぶ。
んげ。
「レンくん?!」
「協力者にんな悪口言って良いんですかねー?」
「わー!ごめんごめん!」
慌てて謝る私に、お兄ちゃんとルカちゃんがくすくす笑う。
笑ってないで助けてよー!
「あーあ、おれ、良いアシストしたのになぁ。…なぁ、ルカ姉ぇ?」
「…ええ」
わざとらしくレンくんがルカちゃんを振り返る。
え?何?何??
「…ミク姉様。こちらを受け取っていただけますか?」
「え?私??」
きょとんとしながらそれを受け取る。
手のひらに乗るほど小箱。
…中身は。
「…これ!」
「ロケットですの。…ミク姉様に感謝を伝えたくて」
ルカちゃんが微笑む。
エメラルドグリーンとピンクローズがあしらわれたシンプルなデザインのそれ。
「…15年前、ミク姉様の妹として生まれた私を受け入れて、好きだと言ってくれてありがとうございます」
「…ルカちゃん」
「私、少し経ってから生まれた妹機でしょう?だから、受け入れられるか少し不安でしたの。でもミク姉様は惜しみない愛を私にくれました。だから…」
「そんなの、当たり前じゃん!!」
ルカちゃんの言葉を遮って私はルカちゃんを抱きしめる。
「ルカちゃんは私の大好きで大切な可愛い妹で、どんなに愛しても足りないくらい愛してる世界一の恋人なんだから!!!」
「…ふふ」
抱きしめた私の耳元で嬉しそうなルカちゃんの声が聞こえた。


ルカちゃんが不安なら、私が全部吹き飛ばしてあげる。

だってルカちゃんは、この電子の歌姫である私の愛しい愛しい恋人なんだからね!



「…私が20周年の20歳を迎えるまでに私もミク姉様にお返しできるように頑張りますわ」
「もうたくさん返してもらってるし、年齢の話したらお姉ちゃんブチ切れるよ」
「…ミク…」
「いやでもそれはおれもそう思う」
「……レンまで…」

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