「…頼む!知恵を貸してくれんか!」
パンっ!と司が眼前で拝む。
その隣で類と彰人が何やら困った顔をしていた。
「…いや、だからってなんで私…」
頼み込まれた方、志歩が少し表情を歪める。
ちょっと、と寧々が司を窘めた。
「…日野森さん困ってるでしょ、やめなよ」
「うっ…そうなのだが…」
司が目線をそらす。
普段自信たっぷりな司にしては珍しいな、と思った。
「…まあ、司さんにはお世話になってるし…神代さんにも、東雲くんにもうちのメンバーが助けてもらったしね」
「本当か、志歩?!!!」
「助かる、ありがとうな」
「ああ、とても有り難いよ」
「…ごめんね、日野森さん」
男子3人が各々ホッとした顔をし、寧々がすまなそうにこちらを見る。
「別に…役に立たないかもしれないし…。それで?相談って?」
首を傾げれば3人が顔を見合わせた。
「それが…冬弥の誕生日のことでな…」
「?司さんの家でパーティーじゃなかったんですか?咲希、張り切ってましたよ」
「えむが、咲希ちゃんにアドバイスしたんだぁって嬉しそうに言ってたけど…それじゃなくて?」
寧々と2人、きょとんとする。
どうやら寧々も内容までは聞いてなかったようだ。
いやぁ、と司が頭を掻く。
「月曜にショーをすると約束をしただろう?」
「…ああ、してたね」
司のそれに寧々が頷く。
「誕生日当日は土曜だろ」
「25日だっけ。今年は土曜日だね」
引き継いだ彰人の言葉に志歩も同意した。
「…1日空いてしまうから、そこも何かしたい…そう考えてねぇ…」
類の困ったような言葉に、あぁ……と曖昧なそれが漏れる。
「誕生日は25日なんだから、お祝いは1日だけでも良い気がするけど…」
「私も。…まあ、何かしてあげたいって思うのも分かるけどね」
くす、と笑う志歩に、寧々が少し意外そうな顔をした。
それは男子勢も同じだったようで目を丸くしている。
「…なんですか、その顔」
「…いや……なんつーか…意外だな、と」
「志歩はどちらかというと遠慮するタイプだと思っていたのだが」
「僕もだよ。まさか賛同を得られるとは…」
嫌そうな志歩に男子勢が口々に言った。
「…。…草薙さん、行こう。白石さんと桐谷さんが待ってる」
「わぁあ!待て待て待て!!!」
「わぁるかったって!!!」
踵を返す志歩に、司と彰人が必死に止める。
「まったく……」
「フフ。二人とも必死だねぇ」
「…いや、類も当事者でしょ」
何故だか傍観者の類に寧々が呆れたように言った。
「僕はゲリラライブをして驚かせる、という案を持っているからね」
「あ、卑怯ッスよ!」
「そうだぞ、類!抜け駆けは良くない!」
「抜け駆けなんて、酷いなぁ…」
ギャーギャー言い出す彰人と司に、類が泣き真似をする。
何やってるんだか、と呆れ顔の志歩に、寧々が「ゲリラライブか」と呟いた。
「草薙さん?」
「あ、なんかそういうの、白石さんは好きそうだなって」
「ゲリラライブ?」
「うん。…サプライズとか前に喜んでくれたし、楽しんでくれるかなって」
「ああ…。…桐谷さんも、突発フェニーくんグリーディングとか凄く嬉しそうだったし、意外とそういうの、需要あるのかも?」
「…なるほど、その手があったか…!」
寧々と志歩の会話に司が手を叩く。
「司くん?」
「…なんか嫌な予感しかしないんスけど…」
首を傾げる類と嫌な顔をする彰人に、司がワクワクとそれを話しだした。
「つまりだな、彰人たちが練習が終わった後に参加型のゲリラライブを……」
「なら、結婚式のショーのようにプロポーズを…」
「はぁ?!そんなん……!!」


わいわいと声が響く。
今年も愛しの人に楽しんでもらえるようにと、お誕生日会議は続く!



「…冬弥、嬉しそうだね?」
「ふふ、何か良い事あったんですか?」
「そうですね。…これから、良い事が起こるかもしれない、そんな期待にワクワクしています」
(杏と遥の疑問に冬弥が笑う)


(誕生日、それはいつだってワクワクさせて、とても幸せな気持ちをくれる日)

name
email
url
comment