本日、5月25日。
冬弥の誕生日である。
「…この半年だけは彰人よりお兄さんだな」
プレゼントを抱えた冬弥が嬉しそうに言うから、何かと思えば。
「…半年だけだろ」
「たかが半年、されど半年だ。…俺の周りは年上が多かったから、嬉しい」
「…ああ……」
機嫌が良い冬弥に、彰人も思い浮かべる。
確か冬弥には兄が二人、それから先輩と慕う司も自分たちより歳が上だ。
「司センパイ、妹がいるんじゃなかったか?」
「咲希さんか?…咲希さんは誕生日がオレより早いんだ」
「…なるほどな」
冬弥の言葉に彰人は頷く。
同級生とはいえ、一時的にでも年上になる、というのは何か特別なものでもあるのだろう、彰人には分からないが。
「んで?おニーチャンとでも呼んでやろうか?」
「…いや。遠慮しておこう」
彰人の提案にくすくすと冬弥が笑う。
楽しそうな彼の、綺麗な髪がさらさらと揺れた。
「彰人の誕生日が来た時にやりかえされてしまう可能性もあるからな」
「ねぇよ」
あっさりと冬弥の言葉を否定する。
別に、兄になりたい願望があるわけではなし。
「あくまで、対等でいたいからな。…お前とは」
「…彰人」
「相棒としても、恋人としても。冬弥とは隣で歩いていけるような関係で有りたいと思うけど?」
美しい灰の瞳が見開かれる。
そこに写り込むオレンジ色。
爽やかな風が二人の間を通り抜けた。
「…その返事は、来週でも良いだろうか…?」
「は?来週?なんで…」
うっすらと耳朶が赤い彼に、首を傾げてから慌ててスマホを探る。
誰かが言っていた。
6月の第一週日曜日。
それは……。
「…あー!…そん時はもっとちゃんとした言葉をやるから、覚悟しとけ」
「今以上にきちんとした言葉を貰えるのか」
「そーだよ。…なんなら指輪でも買いにいくか?」
「ふふ、彰人はセンスが良いから楽しみだ」
冬弥が微笑む。
その表情に、ドキリと胸が高鳴った。
蒼を溶かす蜂蜜色。
もうすぐ、夜がくる…。

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