梅雨彰冬、しほはる

「…んげ」
コンビニから出た途端、ザァと降り出した雨に彰人は嫌な顔をした。
先程までは晴れていたのに。
だが、通り雨だろうとしばらく待つことにした。
この様子では、傘を買うほどでもないだろう。
練習に早く合流したかったが…致し方ない。
スマホを開き、少し悩んでから冬弥宛にとメッセージアプリを起動した。
『わりぃ、急に雨に降られた。雨宿りしてから行くから練習遅れる』
タタとメッセージを送信すればすぐに返信が来る。
『大丈夫か?迎えに行くか?』
『いや、待ってりゃ止むだろ』
『だが』
『心配すんな、小降りになったらすぐ行く』
そこまで打って彰人はメッセージアプリから顔を上げた。
そういえば今朝のニュースで、梅雨入りしたと言っていたっけ。
こんな天気も増えるのか、とため息が出る。
雨の様相を見るのは嫌いではないが…こう予定を狂わせられると眉間にシワが寄ってしまった。
どれくらいで止むだろうかと天気予報アプリを開こうとした時である。
「…ん?」
何かメッセージが来ていて彰人はいつものようにタップした。
冬弥からのメッセージは『彰人』とだけ表示されていて。
何だこりゃ、と思うより前に「彰人」と声が降ってくる。
「え」
「良かった、まだ雨宿りしていたんだな」
目を丸くする彰人に、冬弥がふにゃりと笑う。
手には2本の傘。
「いや、お前、なんで」
「…何故……ああ、ええと」
ぽかんとする彰人に冬弥は少し悩んだ素振りをしてからこてりと首を傾げる。
それから。
「来ちゃった?」
「…お前なぁ……」
揺れるキレイな髪に彰人ははぁあとため息を吐き出した。
まったく、誰に何を教わったのだか。
「…やはり駄目だったか?」
「いや、驚いただけだ。…ありがとな、冬弥」
心配そうな冬弥の表情に、彰人は礼を言ってからくしゃりと彼の髪を撫でる。
可愛い恋人がこうやって迎えに来てくれるなら梅雨も悪くないかもしれないな、と思った。


雨雨降れ降れ、可愛い可愛い恋人が


蛇の目でお迎え嬉しいな!

(灰色の空、落ちる雨粒、唯一の醍醐味)



「あ、青柳くん。…成功したんだね。良かった」
「桐谷さん。…ありがとう。そちらも成功したんだな」
「いや、マジで誰に何教わってんだよ…」
「何ていうか…大変だね?東雲くん」
「おう、そっちもな」

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