「ねぇ、日野森さん!脇腹が弱点って本当?」
放課後、偶然中庭で会った遥が嬉しそうに笑って駆けてきたと思ったら思っても見なかったことを言われて思わず固まってしまった。
「?日野森さん?」
「…あ、ごめん。…って、誰からその情報…!」
「ふふ、内緒」
詰め寄る志歩に、遥はにこにこと微笑む。
本当にこのアイドル様は。
「で?本当?」
「…。…内緒」
わくわくと聞いてくる彼女に、志歩はそっぽを向いた。
あ、ズルい、と遥が頬をふくらませる。
「当たり前でしょ。…好きな人にわざわざ自分の弱点晒すわけないし」
「…!」
志歩の発言に遥が目を見開いた。
綺麗なそれに吸い込まれそうになる。
「…何」
「…。…ううん、何でもない」
くすくすと笑う遥に、何それと眉を寄せつつ、ふと志歩は悪い笑みを浮かべた。
「私の弱点を知りたかったら桐谷さんの弱点を教えてもらわなきゃね」
「え?私?」
きょとんとした遥が少し上を向き…綺麗な笑みを見せる。
「ないよ。だってアイドルだもん」
「…何その理屈…」
何故かドヤ顔の遥に、志歩は思わず笑ってしまった。
存外子どもっぽいのだ…この国民的アイドル様は。
「いいよ、身体に聞いちゃうから」
「…もう、日野森さんってば…」
とん、と壁に押し付けても彼女はくすくすと笑うだけで。
何だか悔しくなった。
自分ばかりが焦れている気がして。
「…好きだよ、桐谷さん」
「私も好きだよ、日野森さん」
微笑む彼女に、こっちは本気なのにな、と息を吐いた。
どうやらまだまだ敵わないらしい。
「桐谷さんの弱点、見つけたかったのにな」
離れながら言う志歩に、遥が綺麗に笑む。
それだけで、まあ良いかと思った。

どうやら、志歩はこの微笑みも、弱点らしい!




「…もう、敵わないな……」
「?何か言った?桐谷さん」
「…ううん、何でもないよ、日野森さん」

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