伝えたい気持ち(ボカロ ミクルカSSS(ちょこっとグミリリ)

ルカちゃんが、冷たい。
スタジオからの帰り間際、ケータイに伸ばしかけた手を戻しながら私はそういう結論に至った。
そりゃあね?
ミクちゃんだって最初は声が聴こえなかったのかなーとか、忙しかったのかなーと思いましたよ?
でも、でも、お姉ちゃんやリンちゃんに接する様子を見てて思ったのよね。
あからさまに、避けられてると!!!
「・・・はあ」
「?どうか・・・したの?」
溜息をつく私に声をかけてきたのは、流れる金髪をふわりと揺らすリリィちゃんだった。
最近になって私たちにも敬語が取れてきたのよね、リリィちゃん。
最初はカチコチに緊張してたんだから。
ちょっとは友達と思ってくれてるってことだよね?
えへ、嬉しいな。
「リリィちゃん」
「疲れた時にはすっぱいものがいいって先生言ってたよ。・・・食べない?」
にこりと微笑んで黄色い飴玉を差し出してくる。
ああ、優しいなぁ・・・!
「ありがと。・・・ねえ、ルカちゃん見なかった?」
「ルカ・・・さん?ねぇねと出かけていったのは見たけど」
「グミちゃんと?!!」
リリィちゃんの言葉に私は思わず食いついてしまった。
「え・・・う、うん」
「どこに行くって?!」
「さ、さあ・・・?そこまでは、聞いてないけど」
「そ、そっかぁ・・・」
びっくりしつつそう言ったリリィちゃんに私は肩を落としながら言った。
そっかぁ、グミちゃんとお出かけかぁ。
「大丈夫?」
「んー・・・。・・・ねえ、リリィちゃんは不安じゃない?」
「え?」
きょとんとするリリィちゃんはそれからちょっと上を向いて。
「ねぇねとルカさんでしょう?大丈夫じゃないかな?」
「・・・自信あるんだねぇ」
ふやぁと笑うリリィちゃんに私も笑顔になる。
「え、あの、自信あるっていうか!ルカさんはなんていうか、一途そうっていうか!ねぇねもだけど、その・・・!」
「うんうん。リリィちゃん一筋だもんね、グミちゃん」
あわあわするリリィちゃんが可愛い。
世間のクールなイメージとは大幅にずれてるぞー、リリィちゃん。
「ミクちゃん!」
「ごーめーんー!でも、リリィちゃんもグミちゃん、大好きなんだね」
「そ、そりゃ・・・」
「私がなぁに?」
「グミちゃん!」
「ね、ねぇね?!」
振り返ると意地悪そうに笑うグミちゃんがいた。
「ねぇねってば、お出かけじゃなかったの?」
「うん、まあね。他にも行ってみるって」
リリィちゃんにそう言って、それから私の方に顔を近づけてにこぉっと笑う。
え?え??
「愛されてるねぇ」
「ちょ、グミちゃん?」
「帰ろー、リリィちゃん!」
「え、ええ?!ねぇね?!!」
ぐいぐいとリリィちゃんの背中を押しながらグミちゃんが私にウインクをして見せた。
ど、どういうこと??
どういうことなの?!!



「・・・たーだいまぁ・・・」
「あら、お帰りなさい。ミク姉さま」
なんだったのかなぁとずっと悩みながら玄関の戸を開けると、微笑んだエプロン姿のルカちゃんが出迎えてくれた。
あ、今日は編み込みのお団子なんだ。
可愛いなぁ・・・。
・・・ん?
「ルカちゃん?!!」
「は、はい」
思わず大声を出す私にびく、と肩を揺らすルカちゃん。
「か、帰ってたの?」
「はい。遅くなってすみません」
ふわっと笑うルカちゃん。
あーびっくりした。
そういえば今日まともな会話ってこれが初めてじゃない?
「ううんー。何してたの?」
「今ですか?ケーキ作ってました」
「ケーキ?」
「ええ」
くすくす笑いながらルカちゃんがリビングの扉を開ける。
甘い香りがふわりと広がった。
「今年はネギケーキにしてみましたの」
「ネギケーキ!」
その言葉に私はテンションが上がる。
ルカちゃんのネギケーキ美味しいんだよねー!
・・・あれ?ケーキ?
なんでケーキ??
「やっぱり忘れてましたのね」
「へ?」
ぽかんとする私にルカちゃんが微笑む。
「ミク姉さま、お誕生日おめでとうございます」
お、誕生日・・・?
私の?
「ああ、そっか!」
「ミク姉さまってば」
3秒かかってやっとそう言った私にルカちゃんがくすくす笑った。
「それで朝からいなかったの?」
「ええ。何にしたらいいのか分からなくて。それで」
微笑むルカちゃんに、やっと合点がいく。
そっかぁ、避けてるわけじゃなかったんだぁ。
「ありがと、ルカちゃん」
「いえ。・・・あの、ミク姉さま」
「んー?な・・・」
に、と言おうとした私に、ルカちゃんが抱き付いてくる。
うぉおおおああああ何?!!何これご褒美?!!!
「・・・好き、ですわ」
「・・・!」
耳に聞こえる小さな声。
ああ、もう、ルカちゃんってば。
「うん、私も!私もルカちゃん好き!好き大好き愛してる!!!」


ひとしきりぎゅってした後、顔を見合わせあって笑う。


ねえルカちゃん。
私、今日が一番幸せだよ!!





「そういえば、どうしてお団子にリボンいっぱいついてるの?」
「お団子はカイト兄さまにやっていただいたんですけれど・・・。皆様に相談したらこれが一番喜ぶのでは、と」

後書きだったりなんだったり

3回目!(くどい)
最近ヤンデレのスパンが短いです、そもそもヤンデレのスパンって何だ。
言うてな・・・ヤンデレ(鬱)の引き出しそんなないんやで・・・。
七陽はがくキヨ書いたのでお休みです。
ザードも今回お休みです。
10組って意外と難しいんですよねーー。
相変わらず、診断メーカーより。
3章だよ!
割とサボってすいません、忙しかったん・・・。
7月31日診断分と7月21日診断分と合わせて選びました。
今はたぶん違う物が出るのであしからず。
1章2章も合わせてお楽しみいただければ。




そんな訳で、

1日目・CA→人間嫌いA弥くんとA弥に無視されたら何するかわからない系ヤンデレC太。実は!書いてる途中で消えました!!!!偽者C太さんを出すのが好きです二重人格好きな、おまえ!(受けも攻めも)こう、ぷっつん行きそうなんだけど頑張って理性で抑えてる系C太さんが好きです
2日目・レイセイ→童心少女と大人世界!(違う)幼少期にしても良かったんですけども。セイリオスが居るからロナードは自分のところに戻ってこないと思ってるヤンデレイナス
3日目・アルロナ→続ける気はなかった(笑)レイセイの別視点みたいな感じかな?ロナードがいるからセイリオスは不幸なんだって思ってるヤンデレじみたアルバートさん
4日目・ザカイス→薄幸の美人・イスファルに恋をしたザカリーさん。ログ化したのかといえばまあそういうわけでもなく、な・・・うん、深く突っ込まんといて・・・(考えてない)今回イスファルが余裕なのは後輩ができてちょっと嬉しいからです。ディリウスのこともあるし・・・みたいな・・・イスファル逃げてちょう逃げて
5日目・レンカイ→崎本家のレンとカイトは今回もお休みです、あの二人鬱とかヤンデレ合わないんだもんよ・・・。ところでパンキッシュ怖い(誰の所為だ)フォロワーさんにどの花言葉が読みたい?って聞いた結果がこれだよ!!オンザロックさんは言うなれば猫カフェの猫のような人だと思ってます(見た目完璧愛想良し、でも小悪魔)別れる宣言したのは裏で糸を引いてる人がいる・・・といいなぁ・・・(願望)
6日目・がくキヨ→どうしてこうなったのか私にも分かりません(てめ)小坂さん家のがくぽとキヨテルでも多分書けた。うちのボカロパラレル(二つの物語)仕様にしようかとも思ったんですけど、不親切設定だったのでやめました。どっちせ不親切ですいません。悪ノ大罪より、ガモン・オクト(庭師)とセト・トワイライト(科学者)です
7日目・岩坂→現世のあいつらそろそろネタなくてな・・・。恋するイワシャコ(CV子安)・・・すてきな響き・・・!洗脳ネタは一度書いてみたかったので満足
8日目・エドハボロイ
9日目・フレユリ
10日目・イチウリ

背景画像は!!!!恒例☆酒の写真!!!!!
大学の友達と飲んだのでした。
やべぇ、色がちょうレンカイ。

鬱的花言葉で1日1題3章・イチウリ(向日葵/鬼百合鰤SSS

ーー
イチウリ・私は貴方だけを見つめています・高慢/侮蔑・嫌悪

鬱的花言葉で1日1題3章・フレユリ(桑/イソトマ・TOVSSS

お人形さん
なまじ綺麗な顔でまったくもって動かない、彼を評するにはまさに相応しく。
お人形さん。
僕だけのお人形さん。
微笑みながら彼の髪をもてあそぶ。
ねえ、いつまでそうしているつもりなんだい?
いつになったら起きるのかな?
ねえ、聞こえてるんだろう?
ねえ
昔みたいに笑ってよ!
強気な笑みで僕に手を伸ばしてよ、ねえ!







ーー
フレユリ・共に死のう/狂愛・猛毒

鬱的花言葉で1日1題3章・エドハボロイ(クロトン/イラクサ・鋼SSS

ーー
エドハボロイ・残酷・中傷・悪口・悪意/妖艶・嬌艶 

鬱的花言葉で1日1題3章・岩坂(ハリエニシダ/黒百合・鳩彼SSS

悲しい目をした綺麗な男。
そんな男を自分のものにできたら。



「くく。威勢よく飛び込んできた割にはあっさり捕まりましたねぇ、カインくん?」
「・・・はっ、貴様に俺の何がわかる」
せせら笑いながら私を睨む彼。
おや、随分と余裕があるのですね。
「学習しませんねぇ、貴方も」
「うるさい!」
「・・・そんなに弟が大切ですか」
嗤うと、彼の瞳がびくりと揺れた。
ああ、当たりか。
本当にわかりやすい。
・・・まあ、ある意味純粋なのかもしれないですがね。
「私に逆らわない方がいい。・・・貴方もそれはよく痛感しているはずですが?」
それとも、と私は嗤う。
「躾が、足りませんでしたか」
引きつった表情をする彼に私は顔を近づけた。
捕えられ、ありとあらゆる拷問を受けても彼はまだ正気を保っていた。
騎士としてのプライドか、はたまた弟を守りたいと願う一心でか。
・・・私にはどうでもよいことだ。
身動きが取れないように縛りつけた彼の、顎を指で持ち上げる。
落ちないのならば堕としてしまえばいい。
私が、この手で。
「弟君は貴方など必要としていないように見えましたが」
「・・・黙れ、ヴァレンシュタイン。この、下劣な悪魔め」
「何とでも。・・・貴方は、その悪魔の下に堕ちるしか、他ないのですから」
囁く私を、彼が見上げる。
「・・・何を、するつもりだ・・・っ!」
「おや、分かりませんでしたか?」
震え声で怒鳴る彼に笑いかけて、私は残酷な答えを突きつけた。
それはまるで死刑宣告のように。
「貴方の手で弟を・・・セエレを殺すよう、私が貴方を変えてあげると言っているのですよ」
嗤う私に、初めて彼が怯えを見せた。
「・・・ぃ、やだ、やめろ、嫌だ、い、や・・・っ!」
逃げられないと分かっているだろうに、彼が激しく身を捩る。
微々たる抵抗を封じ切って、私は嗤った。
嗚呼、もう遅い。
「光栄に思うといい。私が使命を与えてあげましょう」
ぐっと彼の頭を掴む。
白い光が、彼を包む。
「ぅぐあ、あぁあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
四肢をひきつらせ、彼が悲鳴を上げた。
つ、と蒼い瞳から涙が零れ落ちる。
それは本当に綺麗だと、私はそう感じた。
白い彼が染まっていく。
綺麗な目から光が消える。
「私に、屈従なさい。カイン・・・いえ、ナイトメア・ファンテール」
「・・・御意」
意志の無い彼が私の手に口づけた。



綺麗な彼に呪いをかけた





一生、私に縛られる呪いを











ーー
岩坂・屈従/呪い・恋
*ヴァレンシュタイン×ナイトメア・ファンテール

鬱的花言葉で1日1題3章・がくキヨ(へレニウム/にしきざ・ボカロSSS

「・・・会いたい人に会える鏡、ね」
我が小さな主人に「磨いといて!」と渡された2対の鏡を見ながら俺は溜息を吐いた。
そんなもので会えるなら苦労はしないと思うのだが。
一回なら使ってもいいよ、といたずらっぽく言われたそれを思い出し、壁に立てかける。
会いたい人、か。
・・・そうだな、処刑された自分の兄には一度会いたいかもしれんな。
つぅ、と鏡に指を滑らせる。
途端に鏡が曇った。
「・・・え?」
霧が晴れるように輝きを取り戻した中に、いたのは・・・。
「・・・兄、さん?」
「・・・は?」
思わず食い入るように中を見つめる。
セミロングの黒い髪にメガネの彼は・・・兄によく似ていた、が。
・・・違う、兄ではない。
しかし、どこかで・・・。
「・・・失礼。・・・貴方は」
「・・・。セト」
少し長い、黒に近い茶髪をさらりと揺らして彼・・・セトが言った。
「セトさん」
「さん、はいらない。セト、でいい」
鏡の向こうの彼が笑う。
「で?お前は誰」
「我は・・・ガモン」
「ガモン?ふーん、変わった名前なんだな」
彼の言葉に俺も笑って見せる。
・・・ガモン・オクトは【昔】の名だ。
今はヴェノム・ソードという【名】がある・・・が、この男には知らせずともいいだろう。
「あまり驚かないのですね」
「一応これでも驚いてるぞ。鏡に自分じゃない人が写って、しかも喋ってる。こんな非科学的なことは初めてだ」
おかしそうに笑う彼・・・セト。
随分子供っぽいのが出たな。
「っていうか敬語やめろよ。そういうの、好きじゃない」
「・・・分かった」
白い服をひらめかせつつ、そういう彼に俺は苦笑する。
・・・あまり地を出すことはないのだが、彼には出してもいいと思えた。
「仕事は?何やってるんだ」
「ああ。庭師だ」
「・・・。・・・本しか見えないけど」
「庭師が書類整理をやってはおかしいか」
「別に?」
くすりとセトが笑う。
「セトは?」
「僕?・・・科学者、というにとどめとく」
「なんだ、それは」
楽しそうに笑うセトは第一印象と変わらず可愛らしい。
「ガモン」
「ん?」
「どうして僕の姿が見える?」
「・・・そうだな」
首をかしげるセトに笑って見せる。
「我の遊びに付き合ってくれれば、教えてやる」
「遊び?」
「ああ」
俺の言葉にセトが考え込むように下を向いた。
「どんな遊びなんだ?」
「何、簡単だ」
笑って、指を一本たてる。
・・・いけないことだというのは、分かっていた。
「貴方が科学者だというのなら、鏡の中から出ることなど、容易いだろう?」
「鏡から、出る?この?」
「ああ、そうだ」
頷く俺の脳内で誰かがささやく。
セトにそう言えば、おそらく彼はやってのけてしまうだろう。
出会って数時間しか経っていないが、そんな気がした。
そして、出てきてしまえばこの日常はすべて【終わる】。
何かに怯えながら暮らすことも・・・泥沼のような日々に射しはじめた光もすべて、なくなるのだ。
「・・・いいよ」
彼が無邪気に笑う。
それはどこかあの我侭な王女に似ていた。
「その【遊び】、乗ってやるよ」




鏡の中の彼が消える。
つ、とその縁を指でなぞりながら俺は嗤った。
「やっと会えた・・・俺の・・・原悪者」

紫色の夢で見てから、心の奥でずっと気になっていた男。





俺をこんな目に合わせた最悪者に、俺は




・・・絶望的に不可能な恋をした


ーー
がくキヨ・絶望の恋/危険な遊び
*ガモン(庭師)×セト

鬱的花言葉で1日1題3章・レンカイ(西洋水引/オダマキ・ボカロSSS

好きな人ができました。


「おい、オンザロック」
「何?パンキッシュ」
「オレ、待ってんだけど」
「うん、そうだね」
にこ、とオンザロックが蒼い髪を揺らして笑う。
・・・あーくそっ、ぜんっぜん勝てねぇ・・・!
オンザロック。
駅前の雑居ビルから聞こえたピアノに引き寄せされるようにして入った、そこにこの人はいた。
女神はここにいたのかとガラにもなく思ったくらい、オンザロックは綺麗でさ。
友だちのバーで、週に2日ほど演奏に来てるんだと微笑みながら話してくれた彼にオレはすっかり夢中だった。
演奏する日は毎日欠かさず聞きに行き、何週間もかけて口説き落とし、漸く「1ヶ月のお試しで」という条件付きでOKをもらった、んだけど・・・。
「帰りたければ早く帰れば?」
「何の為に今まで待ってたんだよ、オレは!アンタのためだろーが!」
「別に待っててくれなんて言ってないもん」
・・・くそっ、ああ言えばこう言うやつだな・・・!!
そう、付き合ってみればこいつはとんでもない小悪魔だった。
外面と見てくれだけは完璧な、所謂猫かぶり。
誰にでも優しく、物腰柔らかな頼れるお兄さん。
・・・そんな印象はどこへやら、だ。
ま、そういうとこも可愛いというか何というか。
「アンタさー。ブルームーンとかレシーバーにはそんなこと言わねぇじゃん」
「んー、まあそうかもね」
ぶすくれながら言うとオンザロックが楽しそうに笑った。
一応オレに甘えてる・・・ってことでいいんだろーか。
もうちょっとこー・・・素直になってくれたって・・・。
「パンキッシュ」
「何ー?」
「そろそろ、終わりにしよう?」
「・・・は?」
唐突に告げられたそれに、オレは思わずぽかんとした。
パンキッシュ面白い顔ー、と笑ってるオンザロックはいつも通り可愛いけど、そんなのどうでもいい。
・・・今、なんて?
終わり?終わりって、何が??
「だからね、別れようって言ってんの」
「・・・はっ、冗談・・・」
「そんな冗談言わないよ、俺」
「・・・。・・・な、んで・・・」
「何でって。今日で一ヶ月、でしょう?」
きょとんと首をかしげるオンザロックはごく普通の、当たり前のことを言っているようにも見えた。
一ヶ月。
そうだ、お試し期間は、今日で・・・終わり。
「・・・それ、だけか?」
「そうだけど。・・・うーん、何て言うかね」
そう、可愛らしく笑う彼はいつも通りに見えた。
いつも通り、おれを振り回して。
そりゃもう楽しそうに。
「オレといても楽しくない?」
「楽しいとか楽しくないとかそういう問題じゃないの。そりゃ、君と居て楽しかったよ」
「なら!」
「けど、お試し期間が過ぎたからって本契約に移れるとは限らないでしょう?」
オンザロックが無邪気に笑う。
捨てられた?
オレが?
・・・まさか。
なんで・・・。
「じゃあね、パンキッシュ」
くるりと踵を返すオンザロックに思わず声をかける。
「なんで!!オレじゃ駄目だって言うのか?!!なあ!」
「・・・。五月蠅いなぁ。未練がましい男は嫌われるよ」
俺だって暇じゃないんだけど、と振り向いたオンザロックが嫌そうに言う。
まるで、もうお前の姿すらも見たくないと告げているようで。
「・・・そっか。うん、そうだな」
オレの言葉に、漸く諦めたかと安堵の表情を浮かべるオンザロック。
なあ、オレが何したって・・・?
「バイバイ、オレの『恋人』」
それから。
「・・・こんにちは、オレの、『●●』」
「・・・え?」
オンザロックが不思議そうにおれを見る。
どうやら聞こえてはいないようだ。
「何でもない」
軽く笑ってから、さっきまでピアノの上を滑っていた白く細い指を掴んで口づける。
仰ぎ見たその表情がびくりと揺れた。




お試し期間が過ぎても、本契約に移れるとは限らない。
確かにそうだな、オンザロック。
切るも切らないもあんたの自由だ。
でもさ。
・・・アンタが契約に踏みきるまでどこまでも離れないってのも、オレの自由だよなぁ?


オンザロックが出て行ってから、彼の弾いていたピアノに指を乗せる。
部屋に響く、不協和音。
彼の奏でる音とは似ても似つかない、それ。
愚劣な行為と呼ばれても良い。
先に切り捨てたのはこいつだ。
別れるだって?
そんな簡単に捨てられてたまるか。
オレは、しつこいんだよ?
なあ、オンザロック。
アンタも知ってるはずだ。




彼の綺麗な指を思い出す。


(好きな人ができました)



・・・もう、あの指がピアノを弾くことはない。


(好きな人ができました)




綺麗な歌声も、美しい音色を響かせるピアノも、オレだけに聞かせてよ。
一生、2人きりのこの部屋で。


アンタがそれを望むまで、オレはどこまでもアンタを追いかけて追いつめて貶めてやる。



オレを捨てたんだからそれは覚悟してたんだよな?


なあ、オンザロック・・・?


ーー
レンカイ・どこまでも離れない/愚劣・捨てられた恋人
*パンキッシュ×オンザロック

鬱的花言葉で1日1題3章・ザカイス(アリウム/アネモネ・フラフロSSS

・・・ここは、どこだ。
ぼんやりとした思考の中、俺は思う。
・・・ここは・・・。


「あ、起きた」
聞こえた声に俺は振り向いた。
くすくすと笑いながら黒くくせのある髪を揺らせて男が立っている。
「・・・お前は、誰だ?」
「俺?俺はイスファル=ランスヴェル。よろしく、ザカリ―=ファラン」
にこりと笑うそいつ・・・イスファルがとんでもないことを言ってのけた。
・・・なんだって?
「お前がセイリオスの弟分?」
「・・・な、んで、それを」
「ふふー、内緒」
睨む俺にはお構いなしで、そいつは機嫌よさそうに笑う。
なんなんだ、こいつ。
「ケイン=リバースって偽名もあるのか?ザカリ―のがいいのに」
「・・・っ、お前に何がわかる!」
「分かるよ」
ふわりと笑うイスファルはどことなく悲しげだった。
「・・・。ここは?」
「ここは、元ログ・ダーナ。今の名前はセルシウス」
「・・・セルシウス?」
「そう。お前たちにはフロンティアと言った方が分かりやすいか」
うーん、と考えるようにイスファルが上を向く。
「有体に言えば、死後の世界、かな」
「死後・・・?」
「お前は、死んだんだよ」
「・・・死んだ・・・?」
「ああ。お前は死んだ。もっと言えば殺された」
淡々と告げられる、事実。
殺された?
俺が?
誰に?
「思い出すよ、そのうち」
「お前は・・・」
ぐっと首を絞める。
「何なんだ、お前は!!!!人の希望を奪っておいて!何がわかる!」
「・・・わか、るよ。俺も、死んでる・・・から」
「・・・何?」
その言葉に手を放した。
せき込みながら、イスファルが微笑む。
・・・それはどこか兄貴に似ている・・・気がした。
「お前が死んだのは当然の報いだ。何の罪もない人を殺したんだから」
「・・・」
「目的を遂行するためには必要な犠牲だった?そんな訳ない。自分の快楽のためだけに殺した。違うか?」
「ああ、そうだ。それの何が悪い?」
「・・・。お前に、綺麗ごとなんて言うつもりないよ。でも、お前は殺された。それは変わらない事実だ」
ああ、そうだ。
思い出した。
俺は、殺された。
あんな、弱い奴に・・・っ。
・・・いや、それはもうどうでもいい。
そりゃ、もしあいつに会うことがあるなら今度は殺してやりたいと、思うさ。
けど、それより。
「お前は?どうして死んだ」
「さあ?なんでかな」
くすりとイスファルが笑う。
それはどこか悲しみに満ちていた。



もっと知りたい。

こいつのことを、もっと。






他のやつが知ってることを、俺も知りたいんだ。


綺麗な、無限の悲しみに満ちている、イスファルのことを。




知りたい、知りたい知りたい知りたい。


まるで病気みたいに俺を蝕む。




ああ、俺の恋した人。



俺のそばにいてくれ。

俺以外は、見ないでくれよ。


でないと、嫉妬で死んでしまうかもしれないだろ?
(もう死んでるけどサァ)



ーー

ザカイス・無限の悲しみ/病気・嫉妬のための死・消えゆく希望

鬱的花言葉で1日1題3章・アルロナ(ムシトリナデシコ/トリカブト・フラフロSSS

愛しい人に似ている、彼がいた

彼の所為で、愛しい人は俺の前から姿を消した



なあ、どうしてくれる??
なあ、どうしてくれるんだ?
・・・なあ、ロナード




「おい」
「・・・。・・・ああ」
声をかけると彼は小さく微笑んでこちらを向いた。
・・・よく似た顔でこうも違うとは。
「呼び出してすまなかったな、ロナード」
「構わん。お前こそ大丈夫なのか?」
首を傾げるロナードに俺は苦笑する。
「ああ。ミルザに知り合いはいない」

「・・・。人間嫌いなところは似てるかな」
「・・・なんだ、それ」
くすくすとロナードが笑う。
「それで?こんな話をするために呼び出したわけではないだろう?」
首をかしげるロナード。
・・・こんな話、なぁ。
ああ、ロナードにとっては【こんな話】だろう。
だが。
「?大丈夫か、アルバート」
「・・・ああ。大丈夫だ」
笑って・・・不思議そうなロナードに拳を叩きこんだ。
「・・・ぅ、あ・・・?」
「ほう。不意打ちでも立っていられるか」
「・・・アル、バート・・・?」
睨むロナードをせせら笑う。
敵意が感じられなかったのか?
嗚呼、なんて馬鹿な。
「すまないな、ロナード」
「・・・うぐ、あ・・・」
反撃する暇も与えずに斬り伏せる。
・・・殺さないようにするのは難しいものだな。

「・・・知らなかったのか?ロナード=ナイトスター」
蒼い髪を弄びながら俺は嗤う。
ミルザに伝わる、とある噂。
「牢獄塔に入った人間は、必ずと言っていいほどどこかへ消えると」
ロナードの身体を抱きかかえる。
綺麗な長髪がさらりと揺れた。
「・・・お前がいなければあいつはもっと幸せになれたんだ」



罠にかかった、ロナードに刑罰を

(闇に隠れた彼に、幸福を)


ふと目線を下げる。
嗚呼、なんだ、ここにいたのか。
歪んだ笑みで彼の濃い髪をなでた。
腕の中、寝息を立てる彼の名は。




ーー

アルロナ・罠/人間嫌い・刑罰・敵意