夜逃げ常習犯レン×盲目のベビーシッターKAITO(ボカロSSS

しまった、バレた。
そう独り言を洩らしてレンはまあいいかと立ち上がる。
事が発覚する前に逃げる・・・いつものパターンだ。
「夜逃げはそろそろ勘弁したいんだけど・・・っと、リン!」
暗い部屋の中、双子の姉を呼ぶ。
大体この事態を引き起こしたのは彼女なので道中しっかり謝ってもらう必要があった。
「リン?おい、リン!」
いつもならすぐ飛び付いてくるはずのリンが来ない。
首を傾げながらもレンは小さなペンライトの先に光を灯した。
「何やって・・・。・・・は?」
姿を認め声をかけようとし・・・思わず固まる。
リンは双子・・・つまりレンとは同じ年齢のはずだ。
だが。
不思議そうな顔でレンを見上げているのは。
紛れもなく。
「赤ちゃん・・・?」
呆然と呟く。
幼女が包まっているだぼだぼの服は確かにリンのものだ。
間違えようもない。
「・・・って、固まってる場合じゃない!」
ガタン、という音にレンははっと我に返った。
事が事だ、いつ家に押しかけてくるか分からない。
取り敢えず、とリン(であろう幼女)を抱え上げ、レンは作っておいた裏口の戸を開けた。
「此処が見つかんのも時間の問題・・・うぉあ?!」
「うわっ」
飛び出そうとした瞬間、誰かとぶつかりよろけた。
もうバレたと一瞬ひやりとしたがそうではないらしい。
「わりぃ!大丈夫か、あんた」
「あ、はい。・・・なんとか」
手を差し出すと尻餅をついている相手は笑みを浮かべながら答える。
あれ、と思った。
「・・・っと・・・。ほら、手ぇ出して」
「はい」
出された手をぐっと引っ張って立ち上がらせる。
相手・・・蒼髪の青年は思った以上に軽かった。
「悪かったな」
「いえ、こちらも悪いですし」
にこりと笑う青年に落ちていた大きいボストンバックを手渡す。
それはあまりに不釣合いに見えた。
「なあ、それ何入ってんの?」
「ああ、これですか?・・・っと」
レンが覗き込んだ瞬間、リンがぐずりだした。
今はともかく、これ以上大きな声で泣かれるのは拙い。
「うわっ、ちょ、もう・・・」
「・・・お腹がすいているんじゃありませんか?」
「へ?」
青年の思いがけない言葉にぽかんとそちらを見る。
ちょっと待ってくださいね、と青年は微笑み、バックの中から何かを取り出した。
その場に座り込み、何やらかちゃかちゃとやっていた青年がレンを見上げる。
「どうぞ」
差し出されたのは哺乳瓶だった。
ぎこちなく礼を言って受け取り、リンの口元に近づける。
しかし、それ以上がどうやって良いか分からなかった。
「・・・ええと、お願いしていいッスかね・・・?」
「いいですよ」
微笑む青年にリンと哺乳瓶を渡した。
柔らかくリンを抱っこした青年はレンとはまったく違う手つきでミルクを飲ませていく。
「すげぇ・・・!プロみたい!」
「あはは、有り難うございます。一応、ベビーシッターをやっていたもので」
にこやかに言う青年にレンはなるほど、と思う。
「そういやあんたどっから来たの?」
「・・・。向こうの、お屋敷です」
「向こうって・・・斜向かいの豪邸?!!」
「はい」
寂しそうに青年が微笑んだ。
「あなた方は、何処かへ行かれるのですか?」
「・・・え?あ、うん・・・まあ」
今度は青年から聞かれ、レンは曖昧にそう答える。
「でしたら、一緒に連れて行ってはくれませんか?」
「へ?」
きょとんとするレンに青年は飲ませ終わった哺乳瓶をカバンに戻しながら少し困ったように言った。
「実は・・・あの、気づいているかもしれないんですけど、目が見えなくて。それで、外に出る必要のないベビーシッターとして雇っていただいていたのですが、どうしても、その、男性、というか・・・旦那様が苦手で」
「・・・で、逃げ出してきたの?」
「・・・そんなところです、かね」
曖昧に微笑む青年の青い目には確かに光がない。
成る程、今までの行動全てに合点がいった。
「・・・あの、さ」
「はい?」
「旦那様が苦手ってさ・・・」
「はい」
首を傾げるいたいけな青年にドキドキしながらレンは切り出す。
豪邸に住む男、外に出られない青年・・・。
思春期の少年がする想像ではさもありなん、目の前の青年に言えないあれそれが頭を駆け巡る。
「ぐ、具体的には・・・!」
「その・・・低い声が、苦手で」
「・・・あ、そうッスか」
照れたように言う青年にレンは「ですよねーー!」と思いながらもそう返した。
「それで・・・あんた何処に逃げる気だよ?」
「・・・それは・・・まだ」
困ったように青年が笑う。
あまり計画性は無いらしい。
よくそれで逃げようと思ったものだ。
『おい、いたぞ!!』
「・・・んげ」
突然響く声と照らされる光にレンは嫌そうな顔をした。
どちらの追っ手かは分からない・・・が誰かにばれてしまったらしい。
「取り敢えず、こっち!」
「え、あ、はい!」
座り込んだままの青年を引っ張ってレンは走り出した。
なりふり構っていられない。
取り敢えず走り続け、近所の公園に逃げ込んだ。
「・・・あー・・・もー・・・」
息を整え、脱力しながら隣の青年を見る。
「・・・大丈夫?」
「・・・は、い・・・」
彼のほうも息を整えながら弱々しく微笑んだ。
ここまで来てしまっては仕方がない。
じゃあ此処からは別行動、とも言えなかった。
「おれは鏡音レン、そっちはリン。訳あって夜逃げ中。あんたは?」
「・・・カイト、始音カイト、です」
「ん、カイトな。取り敢えず3つくらい隣の町に行きゃ大丈夫だろ、あそこでかい病院と研究所があるし、リンを見てもらえるかもだし・・・」
「あ、あの・・・?」
「カイト。そこまで一緒に逃げよう。おれはあんたのサポートをするからあんたはリンの世話をしてくれ。どうだ?」
「・・・はい!」
レンの提案に青年・・・カイトがぱあ、と微笑む。
カイトの腕の中でリンがきゃっきゃと笑った。
「それじゃあ宜しく、カイト」
「こちらこそ。宜しくお願いします、レン君」
差し出された手を握る。
この青年と一緒なら夜逃げ人生も悪くないかな、と思った。
ーー
診断メーカーで出た『盲目のベビーシッターと夜逃げ常習犯のご近所さんが、強制的に運命共同体になってしまう話』 でした。

幼児化っ(カイカイ・ボカロSSS

「何、これ・・・」
引きつった表情でホワイトブレザーが呆然と呟いた。

天使がいる。

一瞬はそう思ったものの、頭を振って打ち消した。
確かに子どもというのは天使だと評される場合もある。
しかし、これは別だ。
「由々しき事態、と言ったほうがいいんでしょうか」
「・・・かな」
何とも曖昧な表情で【彼ら】を見るスミレにそう返す。
同じカイトモジュールでこんなことをするのはただ一人。
「ジーニアス先生!」
「ん、どうしたのかな、ホワイトブレザー君?」
「どうしたのかな、じゃないですよ、なんですかこれ!」
人の良い笑みを浮かべるジーニアスに抗議し、【彼ら】を指差した。
途端に、それが意地の悪いものへと変わる。
「私の最高傑作です」
「人のモジュールで遊ばないで頂けますか?・・・大体、先生にはギルティさんがいるでしょう」
憮然としたようにスミレが誇らしげなジーニアスに言った。
「サンプルは多い方がいい」
「時雨は僕のなんですけど」
「クラシックはぼくのです!」
不満そうなスミレとムッとした表情のホワイトブレザーが同時に言い放つ。
不問なやり取りが行われているとは知らず、【彼ら】・・・ジーニアスの薬により幼児化したギルティ・クラシック・時雨の3人はすやすやと眠り続けていた。

桜井さんの言い訳タイム

・すとろにゃるてぃってなんですか
 →ストレンジダーク×ロリでにゃんこなギルティです。

・ロリってことは女の子なんですか
 →違います、男の子(5歳)です。

・どういう状況なんですか
 →ストレンジダークはギルティと一緒に住んで(拉致監禁して)ます。

・なんで中途半端においてあるんですか
 →書きたいところだけ書いて飽きたからです。

・需要あると思ってるんですか
 →完全なる俺得です。

・続きどうするんですか
 →要望があれば。

・本家の更新しないんですか
 →もう少し待ってください。

・最近何してるんですか
 →バイトして余裕が出来たのでうっかり子安遊佐なBLCD買いました。

・馬鹿なんですか
 →割りといつもです。

あーる15なすとろにゃるてぃ(ストレンジダーク×ロリにゃんこギルティ・ボカロSSS

白い部屋で小さなギルティが、寝てる。
足を折りたたんで・・・まるで猫みたいに。

ギルティ、自由なノラネコ。

誰にでも媚を売って、誰にでも愛を囁く罪深い猫。

ボクはそれをユルサナイ。


「・・・。・・・起きて、ギルティ」
「・・・うる、さい・・・。・・・っ?!!」
うっとうしそうにボクの手を払おうとするギルティのドッグタグを引っ張った。
目を見開くギルティに顔を近づける。
「ねぇ、どうして『あれ』について行ったの?」
「・・・にゃ、に・・・?」
困惑しきったようにボクを見上げるギルティ。
黒い耳が不安そうに寝てしまっている。
・・・ふぅん、分からないんだ?
なら分からせてあげる。
・・・キミの、身体で・・・ね。
「知ってるんだよ。キミが『あれ』について行ったのは」
「・・・あ、れ・・・?」
「そう、あれ」
「・・・。にゃにをいっているのか、りかいできん。あたまがおかしくにゃったのか?このできそこにゃい」
馬鹿にしたように・・・まるで強がるようにギルティがせせら笑う。
・・・そう。
そんな態度、とるんだ。
ギルティが素直に謝るとも思ってなかったけど。
でもね。
だったら、ボクにも考えがあるよ。
「・・・おろせ、にゃにする!!!!」
ドッグタグから手を離して抱き上げる。
「何が欲しかったの?ねえ、ギルティ」
優しく囁きながらボクはギルティの服を捲りあげ、手を振りかぶった。
「・・・にゃ、んの・・・はにゃ・・・あ、ぁああああっ!!!!!」
しらばくれようとするギルティのお尻に向かって手を振り下ろす。
パァン、と激しい音と共にギルティの悲鳴が響いた。
「今なら許してあげる。・・・言って」
「し、らな・・・。・・・っ、は、ぁああっ!!!」
「嘘は吐いちゃいけないよ。・・・そう言ったよね?」
「・・・あ・・・きいて、にゃ・・・うあぁあ!」
パン、とギルティが否定する度に叩く。
長い尻尾の毛が逆立った。
振り返って、ギッと鋭い目でボクを睨むギルティ。
「・・・くず、こ、の・・・しね・・・っ!!」
「・・・その口が言うの」
相変らずだなぁと笑いながらボクは手を振るった。
小気味いい音が部屋に響く。
数度叩いたところでギルティの小さな身体から力が抜けた。
ベッドの上に下ろして潤んだ瞳で悔しそうに見るギルティの顎を持ち上げて目線を合わせる。
「・・・う・・・は・・・っ」
ギルティの薄い肩がびくりと揺れた。
「食べ物に釣られたの?ギルティ」
「・・・ひっ!」
黒い耳を噛む。
体を大きく揺らしたギルティは止めろ嫌だとうわ言の様に呟いた。
「アイスが食べたいならそう言えばいいのに」
「・・・っ、き・・・さま、にゃにす・・・っ!!」
腰を上げさせるとぞっとしたようにギルティがボクを見上げる。
力が抜けきったギルティはもう抵抗する余裕もないみたいだ。
それでも虚勢でボクを罵倒し続けてたけど。
ねぇ、ギルティ。
ボクが子どもだからって手加減すると思ったの?
そんな訳ないじゃない。
ギルティはボクのモノなんだよ。
それが分からないんなら・・・どうなるか、教えてあげなくちゃ。

そうでしょう?

ボクの可愛い飼い猫さん。

「アイス、たくさん食べさせてあげる」
ボクは笑いながら悲痛な声を上げるギルティのそこを指で押し開いて押し当てた。

DIVA-fにそんな機能はありません(ストレンジダーク×ロリにゃんこギルティ・ボカロSSS

ガラガラガッシャーン!

何かが盛大に倒れた音にボクは振り返った。
此処にはボクしかいないはずだから、誰かが何かを倒した、なんて事はないはず・・・。
・・・あ、ギルティがいたっけ、そういえば。
「ギルティ、何して・・・。・・・」
扉を開けると見覚えのある黒い服の中にボクの記憶の中のギルティより随分小さい・・・所謂子どものギルティが居た。
それに、頭の上で黒いのがピコピコ動いてる。
・・・ええと・・・?
「・・・ギルティの、隠し子?」
「そんなわけあるか、ばか!!!!!」
腰をかがめて聞いてみるといきなり叩かれる。
まったく、手が早いんだから・・・色々。
まあこれでギルティ本人だって分かった。
「何があったの?」
「しらん」
ふいっと眼を反らされる。
ギルティは本当に嘘が下手だね。
「・・・にゃんだ」
「別に」
見つめてると物凄く睨まれた。
舌足らずなギルティにそう言って・・・背中から見えかけれしてるのを掴む。
「みぎゃっ?!!!!」
「痛いの?そもそもこれ何」
びっくぅ!とギルティの身体が跳ねた。
小さな身体がぷるぷる震える。
「・・・し・・・」
「し?」
「しっぽだ、このくそださく!!!」
あ、怒られた。
顔を真っ赤にして怒る小さなギルティは可愛いけどね。
三角の黒い耳に同色の尻尾・・・ああ、これは。
「・・・本当に猫になったんだ、ギルティ」
「っ、さわるにゃ!」
頭を撫ぜようとするとぺしっと手を払われる。
・・・まあ、いいけど。
そういえば最新作にはネコミミ・尻尾を着けられる機能がついてるって、誰かが言ってたっけ。
それにしても。
「最新作って体が小さくなる機能までついてるんだ」
「そんにゃわけないだろっ?!」
ペシ、と尻尾が床を打つ。
なんだ、違うのか。
ちょっと残念。
「きさまのしわざかとおもっていたが」
「ボクはそんなことしないよ。ボクが使う薬は限られてるもの。そんなむやみやたらに使ったりしない」
「そもそもつかうな!!」
黒い三角の耳を平行に寝かした小さなギルティが怒鳴る。
「ボクはそのままのギルティが好きだよ」
「うるさいわ」
物凄く不機嫌そうに小さな黒猫が言う。
それにしても。
ギルティ曰く、この身体になったのは新機能の所為じゃない。
加えてボクが行った事でもない。
と、すればギルティは誰にやられたんだろうね????
此処にはボク以外にはいないはずなのに。
おかしいね、ギルティ????
ちょっと聞いてみる必要があるかなぁ????
ねぇ、僕の小さな飼い猫さん?

・・・ギルティはボクの玩具なんだし、さ。

(ボク以外の人(モジュ)についていくのは許さないよ?)

「ところで」
「?!!」
睨むギルティを高く抱き上げる。
黒いズボンが床に落ち、プラーン、と足と黒い尻尾が揺れた。
「あ、やっぱりはいてないの」
「・・・っ、おろせ、このきゅうさくがぁああ!!!!」

インテお疲れ様でした!

優夜さんと陽鳥さんでご挨拶。
なぜか知り合いが沢山いたインテでした(笑)

ありがとうございました!!

後書きだったりなんだったり

ラジバンダリ!(懐かしいな)



1日1題、終わりました〜。
たまーに「・・・今日何日だっけ・・・?」ってなったりしつつ日付操作が合ったりしつつ(笑)ちゃんと続けられて良かった!!
あ、タイトルの花言葉は診断メーカーのをお借りしましたよ!
日替わりなので今は違うのが出ると思います。
このタイトルは7月31日付の分ですので、ご了承を。


そんな訳で、

1日目・七陽→お題が出て一番書きやすかったのがこれ。相互依存っぽい感じ
2日目・朔アル→お題の奇跡な、これ!1つなのはもう一個の奴が合わなかったから。感情の起伏がないアルベールさん難しいよぅ;
3日目・岩坂→乙女ルートの序盤とかなんかその辺。鬱って言われて一番書きやすいCP
4日目・レンカイ→崎本家のレンとカイトではこのお題は難しくて急遽。書くのは一番楽しかったです(笑)なぜか好評でした
5日目・がくキヨ→小坂さん家の二人でも書けたんだけど、突発的に思いついたので。表面上は幸せそうだけど根本が寂しそうなのを見抜いたガストさんと気付いてないキールさん
6日目・レイイス→レイナスが!クズ!!()花が二つなのに花言葉が一つなのはミスじゃなくてどっちも同じ花言葉だから。生きる事に対して貪欲になって欲しかった
7日目・ザーロナ→8日目のザカセイと対。消えてる会話は二つを関連させると見える・・・仕組みなんだけどケータイからは丸見えなんですよね(笑)
8日目・ザカセイ→びっくりだろう?私もだ。まさか全く同じものが出るとは思わなくて・・・!色々奇跡を起こしてくれます。ザカリーの口調ェ・・・(やれよ)
9日目・イチウリ→本編見てないのであれなんですけ、ど・・・。現実を見ないと、と焦ってる雨竜さん
10日目・ヒュロイ→エドロイかハボロイか迷って。最後は夢オチか回想オチか、はたまた・・・。まあ、読み手次第ということで


画像は恒例・酒の写真!(笑)
友達と花火見たんだよって言う。

鬱的花言葉で1日1題・ヒュロイ(コリアンダー/タツナミソウ・鋼SSS

野郎ばっかの戦場で

お前は一輪の華だと、そう思った






中央司令部よりすこし小さい、東方司令部を見上げる。
此処に来るのも久しぶりだ。
「よぉー、ロイ!」
「・・・ヒューズ」
司令室で珍しくも仕事をしているロイに手を上げて見せると、途端に嫌そうな顔をした。
「来るときは連絡くらいしろとあれほど・・・」
「いやぁ、悪ぃ悪ぃ!!」
ロイの文句を聞き流しながらソファに座る。
そんな俺に小さく溜め息を吐いたロイが立ち上がって、俺の前に座った。
「急用か?」
「いや?ただの休暇」
ニッと笑うとはあ、とあからさまな溜め息を吐く。
こいつにしちゃ珍しくノリが悪いみてぇだ。
「・・・休暇くらい家に帰ってやれ。グレイシアが悲しむぞ?」
「その、グレイシアが今旅行中なんだよ。あ、写真見る?」
「いらん」
きっぱり。
ロイはこういうやつだ。
昔から変わらんなぁ、まったく。
「・・・お前に会ってもう15年になるな」
「・・・ん、ああ、そうだな」
いきなり何だ、と言わんばかりにロイが俺を見る。
「お前さん、目標には近づけたか?」
「・・・さぁな」
俺の問いに、くすりとロイが笑った。
その微笑みは今まで見てきた女性のどれより綺麗で。
ああ、ロイ・マスタングだ、と思う。
「で?俺以上の男は見つかったか?」
「なんだ、『俺以上』とは。・・・まああれだな。ハボックは見込みはあるがまだまだ、といったところか」
ロイが顎に手を当てながらそう言った。
・・・あのわんこ、相変らず振り回されてんのな・・・。
「エドは?」
「技術こそ見込みはあるが性格に難有りだ。もう少し落ち着くべきだと思うが」
「はぁはぁ。相変らず辛辣ねー、ロイちゃん」
「煩い。・・・大体お前は何をしに来たんだ・・・」
呆れた目で俺を見るロイに笑いかける。
黒い瞳に黒い髪。
同い年に見えない童顔の。
可愛い可愛い俺の、親友。

「・・・暫く嫁にやれそうにないな、こりゃ」
「はぁ?エリシアか?」
「なーんでもねぇよ」
首を傾げるロイの髪をくしゃりと撫でた。
ハボの野郎も、エドも、きっとこいつの助けになる。
俺がいなくても、こいつはやっていけるだろう。
それでも、俺は。
「・・・お前さ、タツナミソウって知ってるか?」






ずっとお前を護ってきたんだ


2人がこいつを知らない時から・・・ロイと初めて出会った時から、ずっと






・・・なぁ、ロイ


お前のためなら命を捧げて見せるよ


お前はそれを望まないとしても


それがお前の願いに繋がるのなら


「大佐!」
「おおい、大佐!」
「・・・ああ、すぐ行く!」

花が揺れる


まるで、そこに誰かがいたかのように


ーー
ヒュロイ・辛辣/私の命を捧げます

鬱的花言葉で1日1題・イチウリ(斑のカーネーション/ヘムロック・鰤SSS

お前はいつも俺を拒絶する

そう、いつだって


「僕に近づいてくるな、黒崎」
暑い、とイラついた一言を俺にくれる石田。
こいつはいつだってそうだ。
「いいじゃねぇか、別に一緒に帰るくらいよ」
「嫌だ」
「即答してんじゃねぇ!」
じろりと睨む石田に俺も言い返す。
「暑いっていってるだろう?余計に周りの気温上げないでもらえるか、黒崎」
「暑ぃのは俺の所為じゃなくて夏の所為だろーが」
「そういう事言ってるんじゃないんだよ、僕は」
石田の黒い髪がさらりと揺れた。
なんでこいつは俺の言葉を全部否定してかかんだろうな?
黙ってりゃ可愛いもんなのによ。
「なぁ、石田ぁ・・・」
「・・・君は」
呼びかけた途端、前を行く石田の足がぴたりと止まる。
「自分が死神だと自覚しているかい?」
そう、俺に尋ねる石田の表情は俺からは見えなかった。
・・・ええと、死神だと自覚してるか?
「なんだよ、いきなり」
「いいから」
有無を言わせない石田の声はいつになく真剣で。
真面目に答えねぇと、と思った。
「・・・。・・・自覚は、してる。そりゃ最初は訳分かんなかったし、力失ったりなんだりしたけどよ。俺はこの死神の力を持って多くの奴を護りてぇと思ってるぜ。勿論、おめぇもな」
「・・・そう」
俺の答えに石田は一言だけ返してまた歩き出す。
・・・なんなんだ、一体。
「おい、石田」
「・・・」
「なぁって」
「・・・」
「石田!!」
呼びかけても返事もしねぇ石田にイラついて肩に手をかけた・・・途端。
「五月蝿いなぁ!!」
石田が怒鳴る。
・・・えっと。
「・・・なんで泣いてんだよ、お前」
声にも出さずに紺の目に涙を溜めた石田に俺はぎょっとした。
思わずその頬に触れかけた手を振り払われる。
「・・・君、は」
まっすぐに石田が俺を見つめた。
初めて会ったときと同じように。
・・・数年前と変わらない表情で。
石田が俺を見る。
「滅却師と死神が根本的に相容れないと知っていて言っているのかい?僕も君も望まないにも関わらず敵になる可能性があるかもしれないのに?・・・君が僕を殺すことがあるかもしれないと、そこまで覚悟しているのか、黒崎」
「・・・石田」
「100%ないとは言えない。それは君も分かっているだろう」
「・・・ああ」
石田のそれに、俺は頷く。
数年間の出来事は俺の価値観を丸ごとひっくり返させた。
「日常が非日常に変わる。有り得ねぇことじゃない。味方だった奴が敵になる可能性もある。・・・けど、例えてめぇが敵になったとして、俺の元から離れても、俺はお前を助けに行く」
「・・・それで君が命を落としたとしても?僕は嫌だよ。君がいなくなるなんて」
「それは俺も同じだ。だからこそ、そんな後味の悪い結果にさせねぇ」
日差しが照りつける。
暑さの所為か、薄い石田がさらにぼんやりと霞んだ。
「なぁ、石田。俺はお前を絶対に護る。・・・だから」
「・・・だから、何。僕が居なくなったら君は何も出来なくなる。誰かに背中を押してもらわなきゃ・・・何をしていいか分からなくなる」
「昔はな。今は違うさ」
「違わないよ。もし僕が死んだらどうする?君も死ぬかい?僕がいない世界で君は生きていけると?・・・僕はいつ死んでも構わなかった・・・君が現れて、僕に情をかけるまでは」
いつもより石田は饒舌だ。
暑さの所為で何も言葉が出てこねぇ。
・・・暑さの所為?
いや、違う。
これが、事実だからだ。
「・・・君はずるいよ。僕は君の重荷になりたくない。君の為に泣く人を・・・見たくはないのに」
僕の気も知らないで、と泣く石田を、俺は抱きしめる事も出来ない。
細いその身体に触れようとした俺の手は、途中でだらりと落ちた。


嗚呼、そうかもしれない


こいつがいなくなったら俺はきっと何も出来なくなる



風に吹かれる、その花の言葉の様に



俺にとってお前は


ーー
イチウリ・拒絶/貴方は私の命取り