鬱的花言葉で1日1題・ザカセイ(紫露草/アリウム・フラフロSSS

なぁ。こわい、こわいよ
『だいじょうぶ、だいじょうぶだよ。おれがいるから』
・・・うん
『だから・・・はやくかえってきて』
ここでまっててくれる?
『もちろん。ここでまってる。ずっとまってるよ、』
・・・。・・・おれ・・・がんばるよ。まっていてくれる、から
『・・・なぁ』
?なに、

『・・・おれだってこわいよ、セイリオス』
だいじょうぶ。きっとかえるよ、ロナード
『・・・うん』


『ここで、ずっとまってる』



部屋に入ると兄貴であるセイリオスが椅子に座った状態で寝てた。
・・・寝にくくねぇのか・・・?
「・・・ぅ・・・」
しげしげと見つめていると、兄貴が苦しそうな声を上げる。
起こすかどうしようか迷った挙句、そっと髪を弄ぶに留めておいた。
変に起こすと兄貴、すっげ不機嫌になるしな・・・。
オレみてぇな下っ端に弱いところ見られんのが嫌なのかね。
兄貴がこういう表情してる時は・・・大概は此処に来る原因となった時の夢を見るそうだ。
辛いか辛くないかって言ったら辛いと思うんだが、兄貴には何か思うところがあるらしい。
もうちと弟であるオレを頼ってくれても良いと思うんだけどなぁ。
「・・・ぁ・・・」
「おぅわ。はよッス、兄貴!」
「・・・ザカリー」
取り繕うようにぼぅっとしたナイトブルーの瞳に笑いかける。
兄貴にこう呼ばれるとオレは『ケイン・リバース』から『ザカリー・ファラン』に戻る事が出来んだ。
「どうしたんで?こんなトコで寝るなんて兄貴らしくもない」
「・・・」
顔を覗きこんでも、兄貴は無表情で。
・・・や、いつもこんなんちゃあこんなんなんだが。
らしくは、ない。
「兄貴ー?」
顔の前で手を振ってみると、びくっと身体を揺らしてオレを見た。
腰まで伸びた碧い髪がさらりと揺れる。
「夢、ですかぃ?」
「・・・ああ」
笑いながら問いかけたそれを意外にも肯定されてオレはちょっと面食らった。
「・・・死に別れた、双子の兄の夢・・・」
ぽつりぽつりと呟かれたそれはオレの知らない事実で。
・・・それを知らないと抗議してもしょうがない事だけど・・・兄貴、兄弟が居たのか。
「恐らく・・・向こうは俺がもう死んだと思っているだろうな・・・」
「・・・」
「仕方のないことだ」
自嘲気味に笑う兄貴はすぐに消えてしまいそうだった。
なんだ。
なんなんだ。
知らない。
こんな兄貴は知らない。
オレの知ってる兄貴はもっと強くて、もっと・・・。
「兄貴には」
視線を落とす兄貴の手を、思わず強く握る。
「兄貴にはオレがいる!!」
「・・・ザカリー」
目を見開く兄貴にオレは詰め寄った。
怒られていい。
今は、今だけは。
「・・・オレが、兄貴を護る、から」
「・・・フッ」
真っ直ぐに見つめていると、兄貴がおかしそうに笑った。
「俺を護る?・・・もっと強くなってから言え」
強気でそう言うのは・・・オレのよく知る兄貴、セイリオス・ファランの姿。

兄貴

なあ、兄貴


オレ達は本当の兄弟じゃない

そんな事は分かってる


でも、それでも

兄貴の悲しみを、少しでも掬ってあげたいと思うのは

寂しい思い出から救い出してあげたいと願うのは



オレのエゴなんだろうか


ーー
ザカセイ・寂しい思い出/無限の悲しみ

鬱的花言葉で1日1題・ザーロナ(紫露草/キングサリ・フラハイSSS

『なぁ。こわい、こわいよ』
だいじょうぶ、だいじょうぶだよ。おれがいるから
『・・・うん』
だから・・・はやくかえってきて
『ここでまっててくれる?』
もちろん。ここでまってる。ずっとまってるよ、
『・・・。・・・おれ・・・がんばるよ。まっていてくれる、から』
・・・なぁ
『?なに、』

・・・おれだってこわいよ、セイリオス
『だいじょうぶ。きっとかえるよ、ロナード』
・・・うん

『だから、ここでまってて』





部屋に入ると、変な体勢でロナードが寝てた。
・・・ベッドで寝たほうが楽だと思うんだけどなぁ・・・。
「・・・ぅ・・・」
ロナードが苦しそうなうめき声を上げる。
悪い夢、見てんのかな。
起こしてやろうかとも思ったけど、さらりとした髪を弄ぶに留める。
大概、こういう時のロナードは魔殖された時の夢を見てるって前言ってたから無意味に起こさないようにしてんだ。
・・・っていうか前起こしたら「起こすな」って、本人から言われたからだけど・・・。
嫌な夢は見たくないってのが普通なのに、ロナードは違うのかな。
・・・なんか、な。
「・・・ん・・・」
「・・・あ。はよー、ロナード」
「・・・ザード」
ぼんやりとしたラピスラズリの眸に笑いかけると、舌足らずに名前を呼ばれた。
「眠ぃならベッドで寝ろよなー。余計疲れんぞ?」
「・・・ああ、すまない」
肩まで伸びた蒼い髪を揺らしてロナードが姿勢を正す。
謝って欲しいんじゃねぇんだけど。
「・・・少し・・・夢を見た」
ぽつり、とロナードが呟いた。
まるで独り言の様に。
「亡くなった、双子の弟の夢を・・・」
淡々とロナードが言う。
・・・ってか、ロナード弟いんのかよっ。
「何それ。おれ知らねぇけど」
「随分昔の話だ」
「・・・そうかよ」
自嘲する様に微笑むロナードを睨んだ。
赤い空を見上げて佇んでるロナードはどこか儚い。
こんなにも強そうなのに。
なんでだろう、な。
・・・なんで・・・こんなにむしゃくしゃするんだろう・・・。
「俺はあいつの死に目見ていない。・・・確認出来なかったんだ」
「・・・」
「生きているはずはないのにな」
「・・・分かんねぇだろ」
くすりと笑うロナードの手を取る。
「ザード?」
「分かんねぇだろ!!何があったか知らねぇけど、ロナードだって生きてるじゃねぇか!」
そうだ、おれはロナードに何があったか知らない。
けど。
「・・・行こう、空に。ロナードの故郷、クラウディアにさ」
「・・・。・・・ああ、そうだな」
驚いたようにおれを見つめていたロナードがふっと笑った。
いつも通りの・・・おれが知ってるロナード。

おれはまだロナードを護るなんて大きな事言えない。
でもさ。

・・・ロナードにずっと笑っていてほしいんだ。


今ならあのもやもやした気持ちが何だったのかが分かる

おれは、


寂しい思い出に包まれているロナードを

美しいと思った自分が嫌だったんだ

ーー
ザーロナ・寂しい思い出/淋しい美しさ

鬱的花言葉で1日1題・レイイス(ルピナス/ピナス・フラハイSSS

眠るのが怖いんだ、とイスファルが独り言の様にそう言った。
「うん?」
振り仰ぐと、少し困ったようにイスファルが笑う。
「夢・・・なのかな。ゼクスはそんなもの見ないって言うんだけど」
「・・・ああ、ヴァイスもそんな事言ってたな・・・」
その言葉に、俺もこの間言われたそれを思い出していた。
イスファル達は生者である俺たちとは違って夢というのは見ないらしい。
もし見ることがあったとしても、それは生きているときの残留思念か乗っ取られている時の記憶、なんだそうだ。
「で?どんな『夢』?」
「ああ。誰の声かは分からないんだけど・・・」

少し上を向いて思い出すように言う、イスファルの『夢』はこうだ。
誰か知らない男の声で『お前は死ぬべき存在だ』と言われる。
否定をすると『人殺しの癖に』と笑われる。
ならばと肯定すると四方から剣が飛び出してくる・・・。

「・・・何、殺されたい願望?」
「そんな訳ないだろ、馬鹿」
笑いながら言う俺にぶすくれながらイスファルが言う。
「けど、そんな夢見るってことはちょっとはそう思ってることなんじゃないのか?」
「・・・え・・・あー・・・」
俺の言葉にイスファルは少し考え込むように視線を落とした。
・・・なんでそこで考えちゃうかなぁ、イスファルは・・・。
「じゃあ、さ」
にこりと笑って俺はイスファルを押し倒した。
え、とイスファルが俺を見る。
「殺されてみる?俺に」
「・・・な、にを」
怯えたように見るイスファルの首に手をかけた。
「・・・冗談は、やめ・・・」
「本気だって言ったら?」
「レイ、ナス・・・?」
引きつった笑みを見せるイスファルに笑いかけてその手に力を込める。
それでも人を殺せるほどではないけど。
いつものイスファルなら・・・俺が本気じゃないってことくらい、気付けそうなものなのに、な。
「・・・う、ぁ・・・」
ひゅう、と気管が音をたてた。
無意識なのか、俺の服を掴むイスファル。
弱々しいそれは振り払えるものだったけれど、俺はそのままにしておいた。
「殺して欲しかったんだろ?夢に見るほどに」
「・・・ちが、ぅ・・・」
すぅ、と綺麗な涙がイスファルの頬を伝う。
・・・なあ、お前はこんなことは望んでなかっただろ?


「・・・い、やだ」
ぽつり、とイスファルが呟く。
・・・嗚呼、お前は。
「・・・生きたい、生きたいよ、レイナス・・・!」
「うん、知ってる」


嗚咽を漏らすイスファルを抱きしめる。
志半ばで逝ってしまったイスファル。
きっともっと生きたかった筈なんだ。





あの山に咲く花に付けられた言葉の様に



もっと貪欲に生きていいんだよ?イスファル


ーー
レイイス・貪欲

鬱的花言葉で1日1題・がくキヨ(茜・ボカロSSS

「馬鹿なんですか何なんですか死にたいんですか」
目の前にいる可愛らしい男から酷い罵声が飛ぶ。
その頬は朱に染まっていた。
・・・ふん、意外に初心なのだな。
「口付けをしただけだろう?・・・この国では挨拶だと聞いたが」
「男同士でするものでは・・・!!」
声を荒げかけた男・・・キール・フリージスはふと口をつぐんだ。
此処が自宅だという事を思い出したらしい。
代わりに、はあ、と溜め息を吐いて何か手帳の様なものを開いた。
「・・・商談を始めましょうか?」
「ああ、そうしよう」
少し不満そうなのが面白い。
まるで野良猫のようだな、と思った。
「・・・それで?」
「分かっているだろう?我の・・・望むものは」
「勿論。・・・しかしそれ相応の物は貰う、と申し上げたはずですが?」
にこ、とキールが笑う。
目の奥が笑っていない、営業用の笑顔。
最初はそれに騙された。
そして・・・何故かこの男を手に入れたいと・・・そう願ったのだ。
勿論我が家宝・ヴェノム・ソードも欲しい。
それがこの男の元にあるならなおさらだ。
「冷たいな、キール」
「・・・馴れ馴れしくしないでください、ガスト・ヴェノム」
不服そうにするキールが面白くて手を伸ばすといとも簡単に打ち払われた。
「君は」
真っ直ぐなブラウンの眸。
「ヴェノム・ソードが欲しかったのではないのですか」
「ああ。無論だ」
そう言われ、我は目を閉じた。
初めてこの男、キールに会った時の衝撃は忘れない。

『君がガスト・ヴェノム?初めまして、キール・フリージスです』

そう、微笑む彼を美しいと思った。
・・・まあその後の誹謗中傷は散々たる物だったが・・・本人を目の前にして言うものでもないだろうに。
少し幼い顔立ちからは想像もつかなかったが娘まで居ると聞いたときは驚いた。
そして・・・その顔は幸せそうに見えて何処か寂しそうにも思えたのだ。
幸せそうな家族の一般像、それに隠れている小さな寂しさに。
我は気づいてしまった。
もしも、幸せかと聞けば不信そうな目で「何を言ってるんです?不幸せに見えますか?」と言うだろう。
・・・彼は気づいていない。
自分の、願いに。
「ヴェノム・ソードを手に入れるためだ。当主様の望む物を捧げよう」
「・・・へえ?」
目を開け、くすり、と笑う彼に近づく。
笑みを浮かべるキールの、細い腕を取って口づけた。


脳内で声がする。


その剣を取ってしまえば最後だと。


・・・お前が望む、最期だと。


「私の望む情報をくれると?・・・それとも大量の報酬?」
「・・・その・・・どちらとも違う」
媚びた目をする彼を押し倒す。
その奥の・・・寂しさをも埋めたいと・・・そう願ってしまったのだ・・・。



可愛い娘が居て、美しい妻が居て・・・幸せな家族が居る彼の


心の叫びに応えよう


「さあ、踊ろうか」

ーー
がくキヨ・私を思って・媚び・誹謗中傷・不信
*ガスト×キール

鬱的花言葉で1日1題・レンカイ(木伏/ナイトシェード・ボカロSSS

罪深いほどに美しいキミは見た時

ボクは


いつも優しげに微笑むノーマルのKAITOとは違う、冷たい笑みの男、ギルティ。
見下した目でボクを見るねこに似ているギルティ。
見つけた見つけた、ボクのねこ。
ねぇ、キミの罪を裁いてもいいですか?




その日、偶然にもギルティを見つけたボクは衝動的にぐい、と腕を引っ張って床に倒した。
「・・・っ!!!」
「・・・初めまして」
顔を歪めるギルティにボクは笑みを向ける。
「・・・ノーマルの・・・鏡音、レン」
「違うよ、よく見て」
嫌そうな顔をするギルティのドッグタグを引っ張る。
青い髪がさらりと揺れた。
「ボクはストレンジダーク」
「・・・旧作が俺に何の用だ」
ふい、とギルティがそっぽを向く。
ねぇ、ボクには振り向いてくれないの?
愛を囁いてくれないの?
どうして?どうしてどうしてどうして?
「女の子には優しいのにね。酷いね、ギルティ」
「酷い?俺が?・・・当然の疑問を発したまでだ」
ボクの言葉に、ギルティが挑発するように笑った。
それには応えず、ボクは立ち上がる。
身体を起こそうとするギルティの、細い首輪をぐっと掴んだ。
「・・・っ!!」
首に嵌まったそれを掴んでずるずると引っ張る。
「・・・め、ろ!はな・・・!!」
ひゅっとギルティの器官が鳴る音がした。
足をばたつかせて抵抗しているけどボクは気にしない。
ボクには、通用しない。
激しく咳き込むギルティを部屋に押し込んだ。
「・・・何をする気だ、貴様」
ギルティが睨む。
「何?何って?」
「・・・っ!!・・・此処から出せ!」
「ダメ、だよ」
ボクは笑ってギルティに手を伸ばした。
その手が激しく打ち払われる。
ねぇ、どうしてボクを受け入れてくれないの?
ねぇどうして?
・・・ボクは何のために存在するの?
「・・・っ!やめろ、何を・・・!!う、ぁ・・・っ!」
びく、と震えるギルティの服の中に手を入れた。
じわじわとギルティの肌を撫で上げる。
「ねぇ、怖い?」
「・・・怖い?怖くなどは、ない」
嘘だ。
怖いくせに。
キミはどうして嘘をつくの?
「ボクみたいな『旧作』にヤラれる気分はどぉ?ギルティ」
「・・・別に」
ギルティは目線を合わせない。
もう時が過ぎるのを待つ事にしたようだ。
・・・それじゃあ面白くないんだよ?
「他のレンモジュールを呼んできてあげようか。スターマインは驚くだろうね。・・・ああ、ギルティはブルームーンに見られるほうが嫌かなぁ??」
「・・・っ!!」
驚いたようにボクを見上げるギルティ。
「知ってるよ。ギルティはブルームーンが好きなんでしょう?おかしいね、『あれ』もボクと同じ旧作なのにね」
「煩い黙れ!貴様に何が分かる!!」
「名前を呼んでよ、ギルティ。簡単でしょ?」
ボクは笑う。
キミは唇を噛み締める。
「・・・もう、やめろ」
ふと、ギルティがそう言った。
手を止めると、ギルティは今までで一番の笑顔を作る。
嘘の、笑み。
イカサマの、微笑。
ボクには、分かる。
「此処から解放すれば貴様の名前を呼ぶ事を誓う」
「本当に?・・・ボクを、愛してくれる?」
「ああ」
「誰よりも?」
「誰よりも、だ」
ギルティがふわりと微笑む。
うそ、ばっかり。



嘘をつくキミは正しくない。

ボクはキミの欺瞞に騙されない。

ボクは正義です。
キミは有罪です。

罪は、裁かなきゃ。

「残念だよ、ギルティ」
「・・・う・・・っ・・・」
ポケットから取り出した白い布を押し当てる。
一瞬苦しそうにしたギルティは細い手をボクに伸ばし・・・それがぱたりと落ちた。
意識をなくしたギルティの身体をボクは抱き上げる。



狂おしいほど愛おしい華を


ボクはこの手で裁きます

ーー
レンカイ・嘘/欺瞞
*ストレンジダーク×ギルティ

鬱的花言葉で1日1題・岩坂(西洋水引・鳩彼SSS

「坂咲君は卒業したらどうするおつもりで?」
棚の薬ビンの数を数えていた坂咲君にそう問いかけると彼は怪訝そうに振り向いた。
「・・・なんです?いきなり」
「いえ。貴方も三年生なのですから、進路の事は考えておくべきでしょう?」
「・・・まあ・・・そうですけど」
かたり、とガラスの戸を閉めて彼はふっと微笑む。
「まだ詳しく考えていませんよ。・・・まあ、大学だけは行こうと思ってますけどね?」
「大学ですか。貴方は頭はいいのですから今から受験を考えても構わないと思いますよ」
「褒められてます?それ」
くすくす、と彼がおかしそうに笑った。
そうだ、彼は頭がいい。
こう私に言っているそれも真実かは分からない、彼はそういう鳥だった。

・・・ですが、頭がいい鳥ほど、利用されやすいのですよ。
貴方もそうでしょう?坂咲君。

「私が無闇に褒めたりしない事は貴方が一番良くご存知のはずですが」
「ふふ。自分で言いますか、それ」
「ええ」
性格悪いなぁ、と彼が肩を揺らせながら笑った。
「性格悪いついでにもう一つ。坂咲君、教師になられては如何です。・・・私の様に」
「やだなぁ先生。・・・本気で言ってます?」
にこ、と彼が・・・目の奥が笑っていない微笑を見せる。
「ええ、私は本気ですよ」
そんな彼に私も笑ってみせた。
彼が私を調査している事は知っていた。
そしてそれに関する『良い結果』が出ていないことも。
もし私がこの学園を出て、違うところに行くとしても彼はきっとついてくる。
それが彼の仕事であるから。


なら、此処で終わらせて差し上げましょう。
貴方の誇り高き仕事に終止符を。
・・・そして、私の元で飼い殺しにしてあげますよ。
私を追う貴方にとっては願ったり叶ったりではありませんか。
ずっと私の傍にいるのですから・・・ね。
違いますか、坂咲君。
「・・・。先生?」
笑みを浮かべて首を傾げる彼に、私は小さく笑いかけた。




この案件に結果が出ない限り、貴方は私を追い続ける


きっと、きっとどこまでも



影の様に、貴方が私から離れないのならば囲ってしまえばいい


貴方にとっては不都合かもしれませんが、私には好都合なのですよ


「坂咲君」
「なんです?岩峰先生」


・・・私だけを映す、アクアブルーの眸に絶望を





貴方に相応しい花を捧げましょう

私を追うスパイの貴方に、一輪の



「少しお話があるのですが・・・ー」
ーー
岩坂・どこまでも離れない

鬱的花言葉で1日1題・朔アル(ハイドランジア・鳩彼SSS

目覚めが悪い。
そういえば此処最近ろくな夢を見ていなかった。
「お早うございます、朔夜様」
「・・・ああ」
通常通り淡々と挨拶をするアルベールに私もただ頷いて見せる。
アルベールは私の専属執事であり・・・私を殺す殺し屋だ。
優秀な彼は私の命に背いた事等一度も無い。
ただの、一度も。
「アルベール」
「・・・はい」
部屋の窓を開けたアルベールが振り向く。
「もし・・・もしも、父様やル・ベルの者を全て殺し、私を殺してお前の命も絶て、と命じたとするなら・・・どうする?」
「それは・・・」
「・・・例えの話だからな?」
口を開こうとするアルベールに私は釘を刺した。
・・・こいつは本当にやってしまいかねないからな・・・。
「命に従う、それ以外の選択肢は御座いません」
「ほう?」
「私の雇い主は朔夜様です。当主様の命といえど、私は雇い主の命に従うまでです。そも、私には関係のないことで御座います」
一時たりとも迷わずにアルベールははっきりとそう答える。
「情の欠片もないな」
「情など、必要でございましょうか」
笑う私に表情一つ変えずにアルベールは言った。
雑務の報告をするのと変わりなく。
ただ、訥々と。
彼は語る。
「私に命令できるのは朔夜様1羽でございます。その他の命など、聞く必要もございません。私は命に従って確実に任務を遂行するだけにございます」
「・・・流石はアルベールだな」
「有難う御座います」
嫌味っぽく言った私のそれに、アルベールは律儀に礼して見せた。
ああ、そういう鳥だ、アルベールは。
だから私の傍にいることを許したのだ。
白いカーテンが揺れる。
彼の黒い燕尾服と相俟って、それは私の目にとても美しく映った。
感情などいらない、ただそこにいれば、それでいい。
「私は貴方を殺すために存在するのです。・・・違いますか、朔夜様」
「・・・ああ、相違ない」
真っ直ぐに私を見つめる瞳に私は小さく微笑んだ。








もし本当に私が死ななければならない状況になった時、この烏は私を本当に殺すだろう

恐らく、少しも迷わず

数秒と躊躇いもせず


私との契約を果たすだろう




それはまるであの庭に咲く花の様ではないか

氷の様に、美しく咲く、あの

ーー
朔アル・貴方は冷たい・冷淡・無情

鬱的花言葉で1日1題・七陽(節分草/へレニウム・鳩彼SSS

「ねぇねぇ、埋音くーん!!」
「・・・何?」
いつもの様に呼びかけたぼくを埋音くんが振り返る。
ぼくに見せるのは優しい笑顔だ。
いつも・・・いつも。
「埋音くん聞いてよ〜!あの教授酷いんだよ?ぼくの書いたレポートが間違ってるって・・・」
「君は悪くないよ、大丈夫。見せて?」
埋音くんが手を差し出す。
ぼくは教授からつき返されたそれを渡した。
早速赤いペンを出して何やら書き込みをしてる。
ふぇえ〜、埋音くんは凄いな〜。
そういえば塾の講師やってたって言ってたっけ〜。
埋音くんはぼくがどんな泣き言を言っても受け止めてくれる。
他の鳥に拒絶されても、きっと、きっと、埋音くんだけは・・・。
「・・・埋音くん」
「ん?」
きょとん、とした顔で埋音くんがぼくを見る。
「きみはぼくを拒絶したりしないよね?」
「・・・何を言い出すかと思えば」
くすくす、と埋音くんが笑った。
綺麗な黒い髪がふわふわと揺れる。
ぼくは真剣に聞いたのに〜!
「笑うなんて酷いよ〜・・・」
「ごめん、急に言うから」
小さく笑った後、埋音くんはゆっくりと笑みを見せた。
いつものように。
ぼくを、安心させるように。
「しない。しないよ。僕は君を拒絶したりなんてしない」
「・・・本当に?」
「本当だよ。信じて」
埋音くんが柔らかく微笑む。
真っ直ぐにぼくを見つめるそれは嘘をついているようには思えなかった。
ねぇ、信じていいよね?
全てを受け入れているようなその微笑みを、ぼくは信じても、いいんだよね〜・・・?
「・・・。・・・それより、レポート添削したよ。ここと・・・ここの箇所が弱いかな。資料集めて、後10ページくらい足せばもっと良くなると思う」
「えぇ〜?!!そんなぁ〜・・・。朝までかかっちゃうよ〜」
「僕が一緒にやってあげるから」

きみが微笑む。
いつもの・・・最初にぼくと会った時と同じように。




・・・薄々気づいてるよ


きみの傍らに咲く花の名前を


その花言葉の意味を


・・・それでも、ぼくはきみを・・・

ーー
七陽・拒絶/絶望の恋

レオ錦坂(鳩彼・SSS

「遊びに来てあげたよ、坂咲優夜!」
「帰ってください」
わざわざ忙しい合間を縫って来たっていうのにこれだ。
最近の子は礼儀がなってないよ、まったく!
「言っとくけど忙しいんだよ?僕は」
「じゃあ俺に構わず」
「あ、今日は眼鏡してないの」
「聞いてます?俺の話」
呆れ顔の彼の、眼鏡の無い顔をじっと見つめる。
マリンブルーの眸が直接僕を映した。
眼鏡なんかで隠さなくても綺麗な顔してるんだから、やめたほうが良いと思うけどね。
「意外と眼鏡取ると年相応だね、君」
「・・・あの?」
「そっちのほうが良いよ。可愛いし」
「ちょっと・・・!」
困った表情を浮かべて坂咲優夜が後退る。
む、僕に近寄られたくないって・・・?!
「うわっ?!!」
彼の身体がぐらりと揺れた、と感じた時には僕の身体もバランスを崩していた。
一応僕の方が大人な訳で、諸々考えると彼に僕を受け止める力があるはずもなく・・・。
「・・・っ?」
「っ!レオネ!」
坂咲優夜とぶつかった感触はなく、寧ろ誰かに抱き上げられる感覚に目を開ける。
驚いた彼の声に振り仰ぐと、難しい顔の・・・ええと、レオネ?が立っていた。
「何をしている、錦小路斗織」
「何、って・・・」
「坂咲優夜、お前もだ」
「・・・何で俺まで」
ふい、と坂咲優夜がそっぽを向いた。
気恥ずかしいのか頬が赤い。
・・・それにしても、危ない時にさっと来て二羽とも余裕で助けるこの姿勢・・・。
きゅんとはしないけど、美しいよ!
・・・きゅんとは・・・うん・・・。

今度誰かにこういうシチュエーションの漫画書いてもらおう、と頭の隅で思った。

ナイトスター双子♀

下書きですけどねーー。
可愛い!!
自分で描いて!萌える!
どういう了見!!


あ、鳩彼でちょっと企画やることになりました。
わぁあ・・・?!
楽しい企画になるよう頑張る!