すげー酒飲みみたいだけど

実はそうでもないですよ(笑)
長編書くと何か酒載せるよな、ここに・・・。

そんな、あなたの声優は誰?ったーで「森田成一」だった桜井が通りますよっと。
・・・またか!!また旦那か!!!
嫁好きすぎるというトコしか共通点ないけどいいですか!!!←

神様相関図のロディン→レブは「リア充爆発しろ」でいいt(ry
・・・えっと、うーん、「偉そうな女」とかかなぁ。
ロディンさんはどういうイメージなんだろう、私ww



今夜の崎本家
マスタ「時にレンさん」
レン「何、マスター。改まって」
マスタ「・・・明日は雛祭りな訳だが」
レン「え?ああ、そだね。ミク姉ぇとかリンとか騒いでんじゃん」
マスタ「・・・頼みがある」
レン「だが断る」
マスタ「まだ何も言ってないだろ」
レン「嫌な予感しかしない、っつかどうせ兄さん関連だろ!」
マスタ「や、カイトは割りと頼むと何でもやってくれるから平気なんだけどな」
レン「やっぱ何か頼むのか」
マスタ「一緒に敦の家に来てくんね?」
レン「・・・なんで」
マスタ「先生に着物着てもらうため!」
レン「そっちかよ!!!」
そんな訳で雛祭りはここで絵を曝すことになりました(笑)
時間出来たら文章も書くよ!!

明日から

3月ですね!!
・・・それまでに終えることが出来てよかったよまったく。



ザド「レイナス酷い」
ラナ「レイナス酷い」
レイ「え、ちょっと待って何俺の所為?!!」
ザド「イスファル可哀想」
ラナ「お姉ちゃん可哀想」
レイ「ちょ、ロナードさん何とかして」
ロナ「・・・レイナスが悪い」(笑いを堪えてる)
レイ「あ、ロナード酷い。そこは架空物語だって言ってくれる所だろ!!俺の為に!」

はい、そんな訳で連載終了しましたーわー!
後書きなんかはブログの方で。

・・・画像?気にしちゃダメだと思うよ(にこっ)

或る詩謡い人形の記録〜9〜

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ーーーーーーー
あれから数日。
街の惨状は悪くなる一途を辿っていると牢の中で聞いた。
その一端は魔獣が人々を襲っているのもあるらしい。
夫婦の拘束から放たれた魔獣は必然的に町に下りたのだろう。
ゼクスの科学とレイラの魔力で封じ込められていた魔獣が自由になったのだ、当然といえる。
その所為で被害が増大し、事の深刻さを増しているようだ。
あの夫婦自体が魔物になったという噂もあった。
お互いの奪われた腕と目を人々からもぎ取り徘徊しながら王宮を探しているという。
・・・しかしそんな事どうでも良かった。
王に愛されない自分には関係ない。
この世界に存在する意味など、ないのだ。
くすくすとイスファルが狂ったように笑い続ける。
気味が悪い、と看守が顔を顰めた。
「・・・気味が悪い?君が悪い?あははっ、なんとでも」
蒼の眸が看守を見る。
それは虚空で濁っていた。
気高く意志が強い、それでいてまだ可憐な少女、という彼女の面影はもう、ない。
「ねえねえ、三日月。私の手、汚れてる?」
牢の中に彼女の声が響いた。
凛としたイスファルの声とは違う、聞いているものが狂ってしまいそうな声で。
まるで呪詛のような意味の無い言葉を永遠と。
彼女は今日も様々なものに問いかけている。
「ねえねえ、太陽。私の血は赤い色かしら?」
「煩い、この『大逆の魔女』!!」
看守の声が牢屋に響いた。
彼らも限界なのだろう。
疲れきった目を怒りに震わせて牢に近づいてくる彼らに、かつて名将と呼ばれた彼女は気にも留めず返事が返ってくることのない質問をし続けた。
作られた笑顔を貼り付け、彼女は何もない空に向かって今日も問いかける。
「ねえ、ねえ、***」
白い手を伸ばしにっこりと笑う、雪菫の少女。
「私は誰かに愛されていますか?」






或る詩謡い人形の記録〜9〜






そんなある日の事、王に呼ばれているとイスファルは牢を出された。
処刑台にでも送られるのかと思ったが連れて来られたのは何故か聖堂であった。
神の前で懺悔しろと言うことだろうか、と訝りながらイスファルはその重い戸を開く。
「・・・王・・・様・・・?」
細い彼女の声が聖堂に響く。
「レイナス王・・・?」
彼女が『殺した』はずの『歌姫』を抱いてレイナスは何かを呟いていた。
その姿を見て強烈な不安に駆られたイスファルが「レイナス!」と声を出す。
「・・・ああ、イスファル。来たんだな・・・」
ゆらりと声のした方を見たレイナスが力なく言った。
にこり、と彼が嗤う。
「・・・っ!!!」
凄い力で突き飛ばされた。
気道が圧縮される。
レイナスが馬乗りになっているのだと気付いた時にはもう遅かった。
「お前が命を奪った歌姫・・・その代わりになってもらおうか」
低い声が聖堂に響く。
それだけで殺されそうだった。
「・・・なに、を・・・」
身体が震える。
床に手足を縛り付けられ、イスファルはゆらりと立ち上がるレイナスを怯えた目で見つめた。
レイナスに殺されるのなら構わないと思う。
その、末路を辿るだけの『罪』があると、イスファルは知っていたから。
しかし・・・この異様な空間と、何よりレイナスの貪欲な眸が怖かった。
何かに取り付かれているようにレイナスがイスファルの周りを動く。
儀式めいたことをしている、と気付き、彼女は身体に傷がつくのも構わず暴れた。
「何が言いたいか分かるか?」
「・・・いやっ、いや・・・なに・・・」
「『歌姫』の命となれ、雪菫」
「・・・え・・・?」
その言葉に、イスファルは動きを止める。
にたりと嗤ったレイナスが棒を投げ捨てた。
おそるおそる周りを見ると何かがイスファルを取り囲んでいる。
ああ、魔方陣の一種かとぼんやりと思った。
「・・・君は・・・ぐ・・・りから・・・るから・・・」
離れたところに座り込んだレイナスの小さい声が途切れ途切れになって聞こえてくる。
動かない歌姫を抱き上げたかと思うとすぐに見えなくなった。
入った時に長細い箱があったのを思い出す。
あれは棺でそこに歌姫が寝かされたのだろう。
・・・儀式の準備が、整ったのだ。



王は事の外魔術に関して、無知だった。
『ニア』を起こすのに必要なのは『イスファル』の命だけではないと。
・・・レイナスが容赦なく殺すことを命じた、あの偉大なる魔道師の力も必要である事を。
彼は無鉄砲だった。
ニアの命を、笑顔を、ただ護りたかった。
それ故に目の前に打ち震える少女の思いに気付く事はなかった。
・・・もう、永遠に。



ナイフが振り下ろされる。
虚空を映すイスファルの眸に紅いものが映った。
「いやぁぁあああっ!!!!」
意思から反して喉元から絶叫が出る。
それはまるで別のものの声を聞いているようだった。
苦しい、痛い、怖い・・・辛い・・・?
様々な『モノ』が彼女の中を駆け巡る。
それらを別次元のものに思う彼女には全てがスローモーションに見えた。
細く白い手が空を切る。
その手はどうやってあの重い剣を持っていたのか不思議になるほどに細かった。
(歌姫ならこの人は愛してくれるかな・・・)
光が少女達を包む。
王は笑顔だ。
ああ、歌姫などどうでもいい。
世界も、歌も、魔物も、何もかも。
貴方が笑顔ならそれだけで・・・ー。
想う彼女の視界が翳む。
意識が途切れる。

(次は・・・愛する人の・・・ために・・・詩、を)







その後王国は滅びた。
何が引き金であったのか、それは誰にも分からない。
ただ、伝承によれば・・・『処刑』された雪菫の少女は確かに笑顔であったという・・・。







一人の男を想い、彼の為だけに尽くした少女の、狂った愛の物語


〜終〜

或る詩謡い人形の記録〜8〜

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ーーーーーーー
「・・・歌姫、様」
「・・・貴女と直接逢うのは3度目ね、雪菫」
空に近い塔、雪菫は微笑む歌姫の前に居た。
「・・・一度はどこか、まだ私は教えてもらっておりませんけれど」
「ふふ、そうだったかしら。・・・それで」
輝く黄土色の眸がイスファルを見る。
全てを悟ったような眸だな、とイスファルは思った。
「私は『殺され』るの?」
「・・・そうですね、そうなります」
「・・・そう」
歌姫が儚く微笑む。
硬い表情をふっと崩したイスファルは事の詳細を歌姫に説明し始めた。
その内容に最初こそ驚いていた歌姫だったがすぐにくすりと笑う。
「いいの?」
「・・・それが、王の為ならば」
歌姫の問いかけにイスファルが笑った。
「・・・じゃあ、『殺して?』」
「はい」
両手を広げる少女に彼女も剣を抜く。
これで歯車は元に戻ると・・・王が元の平和を愛する彼に戻ると、そう信じていた。







或る詩謡い人形の記録〜8〜










カラン・・・という音を立てて剣が落ちた。
目の前には二つに裂かれたピンクのドレス・・・少女は『死んだ』のだ。
秘密を共有したような笑みを浮かべ、少女達は手を取り合う。
「これで私は『死んだ』のね?」
「ええ。そして私は反逆者です」
「王の為に」
「王の為に」
言い合って少女達は無邪気に笑った。
これから起こる悲劇など、彼女達は知る由もなく、ただ王の為を思って。
彼女達は微笑み合う。
「街は変わってしまったわ」
ふと、窓の外を見た歌姫は悲しげな表情を浮かべた。
「雪は血の色に染まって。地面が見えないほどに人々が重なって。・・・家が瓦礫となって」
ふわりとクリーム色の髪が揺れる。
「もう私が好きだった街はここにはないのね」
「・・・歌姫様・・・」
歌姫の言葉に雪菫も目を伏せた。
視察で訪れた街の人々は誰も彼も優しかったのを思い出す。
お嬢さん、と呼んでくれた声を懐かしく思った。
・・・もう、先日の殲滅でそこは跡形もなく消えてしまったけれど。
「貴女の名前、聞いて良い?」
歌姫が笑う。
「何時までも雪菫、じゃダメだと思うの」
「・・・イスファル、です」
「イスファル、素敵な名前」
「貴女は?」
久しぶりに呼ばれる名前の心地よさに頬を緩めたイスファルが問いかけた。
「・・・私は、ニア。人々はウェブと呼ぶけど」
「?何故です?」
「さあ?そういう『名称』だからじゃない?」
意味深に笑うニアにイスファルは純粋に首を傾げる。
「・・・ニアのほうが、素敵だと思うのに」
「有難う、イスファル」
歌姫が微笑んだ。
ただ静かに。
苦しそうな笑みは病気の所為かそれとも別の何かか。
それはどこか雪菫の・・・あの雪山で見せたイスファルの笑みに似ていた。







ニアと別れ、イスファルは裏門へと急いだ。
誰も居ないことを確認する為である。
ふと森で青年に言われた言葉を思い出した。
このまま逃げてしまおうかと門の向こうを見つめたイスファルは頭を振って自嘲の笑みを浮かべる。
王について行くと決めたのだ。
最期まで共にすると。
それがどんな未来であろうとも、構わなかった。
そこから裏庭へと足を向けた時・・・誰かの足が見え、イスファルは足を止める。
「・・・え?」
最初は兵士か民衆だと思った。
今の城内では誰が死んでいてもおかしくない。
だが。
そこで倒れていたのは。
「・・・そんな、・・・何故」
イスファルの顔が青ざめる。
裏切られた、という思いが一瞬頭に過ぎった。
「・・・歌姫・・・さ、ま?」
イスファル自身が『殺した』はずの歌姫がここで『死んで』いる等、『有り得ない』。
何故、どうして、という思いが駆け巡る。
病が急に重くなった?誰かに殺された?まさか自害した・・・?
呆然と立ち竦む彼女を現実に引き戻したのは、歌姫を想う・・・そして雪菫が愛する人の声だった。
「イスファル、何をしている・・・?!!」
「っ?!」
低い声に彼女は振り返る。
怒気なんてものじゃない、凄まじい怒りを滲ませたレイナスがそこに立っていた。
歌姫を『殺され』たのだ。
当然といえる。
「・・・レイナス、王」
そう、ばれてしまった。
・・・なら。
「・・・歌姫を殺したのは、私です」
静かに、そう・・・告げた。
「・・・何?」
「歌姫を殺したのは私だと言ってるんです。・・・貴方の大切な歌姫を殺したのは私だと・・・!!」
「・・・こいつを地下牢に連れて行け!!!!」
壊れたように言う雪菫にレイナスが言い放つ。
たちまち城の者がイスファルを取り押さえ、呪いの様に言葉を紡ぐ彼女を引きずって行った。


「・・・犯人ではないくせに・・・だが」
レイナスは彼女が行った後を見つめる。
血に狂ってからレイナスが久々に見せる、歪んでいない表情で。
まるで魂の抜けた抜け殻の如く抵抗もしない少女に王は届かない最後の声をかけた。
「お前も同罪なんだよ、雪菫」

或る詩謡い人形の記録〜7〜

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ーーーーーーー
「酷い・・・なぁ」
ゆらりと覚束無い足取りで少女は歩く。
血と涙で澱んだ地を、漂うように、あてどなく、少女は歩き続ける。
・・・門は、開いてしまったのだ。






或る詩謡い人形の記録〜7〜







歌姫の病は良くなるどころか悪くなるばかりで、それに比例したように王が行う民衆への虐殺は止まらなかった。
たった一人の少女を延命する術を探す為に王は多くの国民の命を奪ったのである。
彼は歌姫に託けて真っ白な雪が紅に染まる様子に酔いしれていたのだ。
何が王を変えたのかは分からない。
彼女を救えないと知った絶望か、刻一刻と命のタイムリミットに近づく焦りか。
しかし、本当に歌姫を救いたかったのなら、もっと他に方法があったはずだった。
それでも彼は人々に剣を向けたのである。
嘗ての優しく平和を愛する王では考えられない、と民衆は嘆いた。
終わらない戦いにその嘆きはやがて疲労と共に多大なる怒りへと移行していく。
日増しに暴動や反逆が強くなり、それを鎮圧するための抗争に、大臣達は頭を抱える日々が続いた。
「・・・レイナス王、もう止めましょう」
疲れた顔でイスファルが進言する。
自国への襲撃は4度、隣国や他国へのそれはもう9度目にもなっていた。
「こんな事をして歌姫様が救われるとお思いなのですか?!・・・自国の民を救えない人が一人の女性を救えるとは思えない」
「・・・雪菫」
ゆらりとレイナスが立ち上がる。
既に彼はイスファルを名で呼ぶことがなくなっていた。
「お前は俺に従っていれば良い」
「王様!」
「煩い!!!・・・彼女を白き門に連れて行かれてたまるか・・・」
薄く嗤って王は言う。
狂った王は少女を傷つけることしか出来なかった。
「お前は俺のために剣を振るえば良いんだ。それがお前の存在価値なんだから。そうだろ?雪菫」
「・・・王様・・・」
雪菫の悲しげな声が響く。
暴挙を繰り返す王の耳には、誰の言葉も・・・腹心である雪菫の少女の言葉でさえ・・・届かなくなっていた。





「雪菫様、我が軍はもう救いがありません!」
「軍だけではない、この国自体が危ういのです!」
「このままでは確実に滅んでしまう・・・!!」
兵の願いは悲痛だった。
嘗てイスファルを兵に入れることを躊躇した大臣でさえ、彼女に縋るしか術がなくなっていた。
しかし、もう彼女の言葉も届かない今、どうすることも出来ない。
「雪菫様!!」
「・・・分かった」
急かすような声にイスファルは覚悟を決めた。
・・・もう、こうするしか方法が、なかったのだ。
「狂う王のために」
雪菫が目を閉じる。
何を言われても、どれだけ傷つけられても少女の気持ちは街に降る雪のように真白で変わらなかった。
愛しい人を救いたい。
その為には・・・誰を・・・無論自分も・・・犠牲にしても構わなかった。
「・・・歌姫に永久の眠りを!!!!」
剣を高く突き上げる。
自分はどうなっても良い・・・王を救うため、ただそれだけだった。


彼女は唯・・・イトシイヒトノタメニオノレノケンヲトッタダケ。

或る詩謡い人形の記録〜6〜

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ーーーーーーー
客間に居たのは王の客人であるクローズクローズ氏の妻とその子供達であった。
夫のゼクス・クローズクローズは科学者で妻のレイラ・クローズクローズは強大な魔道師という才能溢れる夫婦である。
二人とも王宮勤めだがイスファル自身も最近戦線に出ていることが多く会う機会は少なかった。
「お久しぶりです、レイラさん」
「・・・おお、雪菫か」
「・・・止めてください、その呼び方」
むぅ、と拗ねて見せるとレイラは赤い髪を揺らして「すまん」と笑う。
彼女の腕には二人の子どもが抱かれていた。
「・・・お子さん、可愛いですね」
「・・・ああ。双子でな。こっちが娘でこっちが息子だ」
二人の、白に程近い銀の髪と息子の瞳の色は父親似だろうか。
きゃっきゃと笑う娘の瞳は紅く、母親に似ているのだということが伺われた。
「何ヶ月ですか?」
「もう7ヶ月になるよ」
「そうですか」
早いですね、とイスファルは笑う。
「お前とも会ってもう2年になるな」
「・・・はい」
レイラの言葉にイスファルも頷いた。
2年前、殺されかけたイスファルを助けたのがレイラだったのである。
戦場でレイラと出会い、言葉を貰ってイスファルは変わったのだ。
「・・・お前の、王への忠誠心は噂に聞いている」
「・・・」
「忠誠は過ぎると自分のエゴになる。ほどほどにな」
「・・・。・・・は、い・・・」
レイラの言葉にぼんやりと頷く。
そう言われてもイスファルの忠誠心は揺らぐことはなかった。
それが自分に出来ることだと信じきっていたから。
・・・その、忠誠心と言うレイナスへの愛が未来の歯車を狂わせていることに、イスファルは気付けなかった。





或る詩謡い人形の記録〜6〜






「・・・今、なんと・・・?」
レイラが夫と足早に王宮を去った後、王室に呼ばれたイスファルを待ち受けていたのは信じられない命令だった。
「何度も言わせるなよ」
冷たい目でレイナスが睨む。
「・・・夫婦を、殺せ」
「・・・、な、ぜ・・・ですか・・・」
「ゼクスは俺の命令を拒んだ。王命に従わないものは死罪が当然だと思わないか?」
そう言って嗤うレイナスは残忍な目をしていた。
「奴は武器を作ることを拒否したんだよ!俺にたてつく奴は要らない、そうだろう?」
「・・・レイナス、王」
イスファルの悲しい声が響く。
レイナスはもう優しい王の風貌すらなくしていた。
血に酔い狂った王は数年の間に酷く歪んでいたのである。
「お前は俺を裏切ったりしないだろ?雪菫」
「・・・勿論・・・王の、仰せのままに」
王の言葉に、イスファルはただ跪いて頷くしかなかった。
大きな鏡に映る少女が涙を流したことに・・・娘に心を奪われた王は知る由もなかったのである。




暗い森の中、ゆらりと松明が揺れた。
数人の兵が夫婦の家へと押しかけたが既にそこはもぬけの殻だったのである。
思わずホッとした自分を、イスファルは恥じた。
これから殺そうとしているのに・・・この感情は王への反抗心と同じだ、と。
段々暗闇にも目が慣れ、イスファルは松明を消す。
小さな明かりでも、命取りになるのだ。
現に多くの兵士が命を落としている。
彼らの強さを見せ付けられている、と思った。
ガサリと音がする。
剣を抜き、そちらへと刃先を向けた。
音がしたほうを睨み、イスファルは駆け出す。
視界にちらりと映る白と赤の服・・・夫婦だ。
走るスピードを速める。
ゼクスは罪人、一緒になって逃げたレイラも同罪だ。
だから自分には殺す義務がある・・・そう己のしていることに正当に論理付ける。
そうでもしなければ狂ってしまいそうだった。
「・・・そこまでです」
「・・・っ!」
開けた場所に出た後、イスファルは家族に向かって剣を突きつける。
「クローズクローズ氏、及びクローズクローズ夫人。王命に従って、貴方方に処刑を」
「・・・イスファル」
レイラの声が響いた。
止めるゼクスを振り切ってレイラが歩み寄ってくる。
「私が言ったくらいではお前の王への忠誠心は変わらんか」
「はい。・・・私が居なくなっては王は本当に壊れてしまう・・・貴女もそうでしょう?」
泣きそうな笑顔でイスファルは笑いかけた。
「それに、私に護るべき人のために生きろと教えてくださったのは貴女です」
その言葉に、そうだな、とレイラも笑う。
「・・・なら、殺せ」
「レイラ!!」
「お前と私達は相容れない。そうだろう?」
「・・・はい」
ゼクスの叫びが森に響き渡った。
剣を構える、イスファルの声が小さくこぼれる。
・・・紅いドレスの彼女がぐらりと傾いた。
柔らかく微笑むレイラの目から光が消える。
イスファルの耳に、子どもを頼む、という最期の声が届いた。
「・・・きっさまぁああ!!!!」
「っ!!」
目の色を変えてゼクスが向かってくる。
手にはナイフがあった。
それをかわし、彼女はゼクスの腕に向かって剣を振り上げる。
「ぁああっ!!!」
どちらの悲鳴か分からない悲痛な声が森を包んだ。
「・・・ふ、ははっ、ははぁ・・・ぅあああっ・・・」
どさりと崩れ落ちるゼクスの身体。
天を仰ぎ、イスファルは笑い声とも泣き声ともつかない声を上げた。
静かな森に、その声と呼応するように・・・己の両親との別れを告げる、子供達の泣き声が響く。
どのくらいの時が経ったのだろう。
「雪菫!!」
駆けてきたのは雪山の戦いで声をかけた、あの青年だった。
彼だけでも生きていてくれたとイスファルは安堵する。
「無事だったんだな」
「・・・」
ほっとした様子を見せる彼にイスファルは微笑んだ。
「・・・お願い」
目の前の青年に双子を預ける。
何か言いかけようとする青年に背を向けた。
「逃げて」
「・・・え?」
「その子たちと一緒に・・・お願い」
「何言ってんだよ?!あんたも・・・」
「そういう訳にいかない・・・分かるだろうっ?!私は・・・『雪菫』なんだ」
振り返り、彼女は笑う。
静かに、ただ美しく。
「・・・」
「・・・ダークエレンの森の奥に小屋がある。あそこなら魔獣は居ないし軍も捜索の範囲外、だから」
「・・・分かった」
青年が頷いた。
「なあ雪菫!・・・この戦いが終わったらおれの下に来いよ!!!」
立ち去ろうとするイスファルに、かけられる青年の言葉。
「おれ、待ってるから」
「・・・戦いが、終われば・・・きっと」
真摯な青年にイスファルは微笑んで見せた。
ただ、この約束は守られる事はないのだと・・・二人は薄々気付いていた。
国は取り返しもつかないほどに傾いていたのだ。





闇が、空を包む。

終焉へと向かって、歯車は動き出す。

或る詩謡い人形の記録〜5〜

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ーーーーーーー
手短に王に報告を済ませ、イスファルは歌姫が居るという塔へと向かった。
報告の際も何所か上の空だった王にイスファルは内心で溜め息を吐く。
恋をした事もないのだから夢中になるのはイスファルでも分かった。
しかし、それに溺れてどうするのだ、と思う。
そういうことに興味がないといっていた王からすればこれは非常事態に近い珍しい事ではあるが。
「・・・跡継ぎの心配をしなくていいから、まあいいんだけど・・・」
以前より言われていた問題とは別に浮上したそれに、イスファルは一人ごちる。
暗雲漂う未来が見えた気がして、イスファルは再び溜め息を吐いた。





或る詩謡い人形の記録〜5〜





「・・・失礼します」
塔の一番上の階、小さな部屋に彼女は居た。
質素な部屋に、まるで監獄塔の様だな、と思う。
尤も、それに近いようなものはあるだろうが。
「・・・歌姫様でいらっしゃいますね?」
「貴女が、雪菫?」
問いには答えず、クリーム色の髪をふわりと揺らして彼女が笑う。
「・・・いかにも、私は雪菫と呼ばれております」
「会うのは2度目かしら」
「・・・?いえ・・・」
「ふふっ、まあいいわ。ねぇ、王様はどんなご様子なの?」
椅子を勧めながら彼女が無邪気に聞いた。
それに会釈をして腰掛けながら当たり障りのない答えを返す。
「貴女様の事を気にかけていらっしゃるようでした」
「・・・そう・・・。王様が・・・」
途端に歌姫が辛そうな表情をした。
国民から慕われる王の一心の寵愛に、何か不満な点でもあるのだろうか?とイスファルは訝しむ。
「・・・?あの・・・」
「・・・気にしないで。・・・王様にも・・・私の事は気に病む事はないからって伝えてほしいの」
ふわりと歌姫が笑った。
「そんな。・・・王との身分の差を心配されて?」
「まさか。違うわ」
「では、何故・・・」
「ああ、私の事聞いていない?」
狼狽するイスファルに少女が笑う。
・・・告げられた一言は、衝撃に値するものだった。
「私、余命が少ないのよ」
「・・・え・・・?」
「どんな医者でも治せない・・・ううん、『なおせる訳がない』の」
少女は笑う。
・・・辛そうな、作った笑顔で。
「だから、王様の傍にいることは出来ないわ。・・・どうやったって同じ事」
その横顔は何かを秘めているように見えた。
「でも王様はどうにかして私の命を救おうとなさるでしょうね。きっと、どんな手を使ってでも。・・・あの方はそういう人じゃないかしら」
「・・・」
イスファルは無言で立ち上がる。
歌姫の言うことは的を得ていた。
王はこの歌姫を救おうとする。
国中の医者をかき集めて・・・例え誰かに止められようともやめないだろう・・・絶対に。
出て行く寸前、イスファルは振り返った。
「・・・一つだけ、お尋ねしても?」
「どうぞ」
「何故・・・このような場所に居られるのですか」
イスファルの目をまっすぐに見返して歌姫は笑う。
・・・何かを示唆するような、笑顔で。
「街が・・・大好きな街が一望出来るからよ」



・・・あれから数ヶ月の月日が流れた。
あの日、歌姫の言った事は当たっていた。
王は不治の病を患う歌姫を救おうと延命の術を探し出すのに躍起になり始めたのである。
毎日数百の医者や薬売りが城を訪れた。
しかし歌姫の病を救うことも、その病名が何であるかさえ分からなかったのである。
次第に、村人が医者を匿い始めた。
レイナスは娘を救えなかった医者を全て死刑に処したからだ。
村の医者を殺されては敵わないとする人々がその選択を選ぶのも止むを得ない。
王は、そんな人々を弾圧した。
医者を匿う村ごと滅ぼしにかかったのである。
レイナスが殲滅した町や村は十数にも及んだ。
平和な国はものの見事に存在を消したのである。
「・・・そんな事をして何になるのです」
ある国の制圧を担当し、その報告をしていたイスファルが堪えかねたように王に訴えた。
「煩いよ、雪菫」
「レイナス、歌姫様はそんな事・・・っ!!」
「・・・煩いって言うのが聞こえなかったかい?雪菫」
「・・・っ!」
イスファルを見る冷たい目。
彼女はぞっとしてへたりと座り込んだ。
優しい王は、もういない。
それでも・・・ああ、それでも彼女はレイナスが好きだった。
王が歌姫を救うというのなら、例えそれがどんなやり方だとしても、イスファルはそれについていくしか方法がなかったのである。





・・・そんな、ある日の事。

或る詩謡い人形の記録〜4〜

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ーーーーーーー
国境間の争いは中々冷戦を窮めているようであった。
お互いがお互い相手が攻撃してくるのを待っている状態なのだろう。
攻撃されないのはいいがそれでは埒が明かない。
「・・・分かりました」
自国の大将から報告を受けたイスファルは凛とした声で一言そう告げた。
「私が、行きます」
「・・・そうか」
その選択肢しか残していないくせに。
イスファルは頭の隅でそう思いながら立ち上がり、この紛争のために急遽設置されたというテントを出る。
「・・・おい、雪菫!!!」
呼び止めたのはまだ若い青年兵だった。
入ったばかりだろうか、軍服も何所か着慣れていない様子にイスファルは表情を和らげる。
青年の方も呼び止めたはいいがどう声をかけたら良いのか判らない様で、どこか戸惑った顔だ。
「・・・あんたがそんな・・・」
「・・・汚れ役は、なれておりますから」
青年の言葉を遮る。
どこか泣きそうな表情でイスファルは微笑んで見せた。





或る詩謡い人形の記録〜4〜





雪山の天候は変わりやすい。
先程まで晴れていた筈の国境付近は吹雪だった。
敵国とのこの冷戦状態も一つは吹雪が関係しているともいえる。
「おい、何かあったら知らせろ」
「yes,sir」
少し仮眠を取るか、と一緒に見張っている兵にそう告げて男は臨時テントに戻った。
早いうちに片が着くと思っていただけにこの有様は己に呆れてしまう。
結果次第で自分の身も危ないかもしれない・・・などと考えていた、その時。
「・・・あ、あの・・・」
「・・・っ?!誰だっ!!」
「・・・すっ、すみませんっ!!・・・道に迷ってしまったのですけど・・・」
銃を向けた先に居たのはどこかおどおどとした少女だった。
くせの強い黒髪、吹雪の後の空のような色の瞳、黒くふわりとしたフレアスカートのワンピースを纏い、小さなカバンを持った少女は今にも泣きそうである。
普通は侵入者は殺すか本部に突き出すかをしなければならないが男はそれを躊躇った。
こんな少女が何かをするとは思えない・・・という建前、無論本音は己の欲望、ただそれだけである。
「あの、・・・少し此処にいさせてもらえませんか?」
「・・・此処がどこだか、分かっているのか?」
「・・・は、い・・・」
少女が俯いた。
「・・・なんでも、します」
小さな声で言う少女にニッと笑う。
戦場において中々『女』はいない。
まして此処は雪山だった。
こんな上玉の『女』は久しぶりである。
「・・・何をすれば良いか、分かってるんだろう?お嬢さん」
男は笑う。
少女の身体を引き寄せて。
・・・彼は欲望に駆られていた。
だから気付かなかったのだ。
震える可愛らしい少女が、大凡その場の雰囲気に似合わぬ笑みを浮かべた事に。

・・・自分の命が、此処で終わってしまう事に。

ダンッという銃の音が続けて響き渡った。
「何事だ!!!!」
テントに兵が集まってくる。
空に向かって撃ち上げた銃を投げ捨て、愛剣に紅い血を纏わせて綺麗な笑みを浮かべていたのは、雪菫その人だった。
「その容姿、風貌・・・まさか、貴様!!」
「・・・無名の知将、雪菫・・・?!!」
「きっさま・・・いつのまに!!!!」
「大将の首は頂いた・・・後は貴様らを倒すのみ」
たんっと軽い音を立てて少女が驚きに目を見張る敵に向かって駆ける。
目にも止まらぬ剣捌きを見せてイスファルが笑った。
あの銃の音を引き金にして自国の軍も攻撃を開始したらしい。
「我が国に勝利を!!!」
剣を突き上げる可憐な少女。
敵陣、雪の中を舞う彼女は、『雪菫』と呼ばれるに相応しかった。









勝利を収め帰還したイスファルを待っていたのは民衆からの歓喜の声だった。
それ以外には何もない。
・・・王の、迎えも。
「・・・?」
公務が立て込んでいるのだろうか?
それにしては何も言ってこない、と思いつつ報告の為に王室へと訪れた時だった。
「イスファル・・・様」
おどおどと声をかけたのは王御付きの侍女である。
イスファルの事を名前で呼ぶのは王と、この彼女だけだ。
「どうかした?」
「・・・王様が・・・」
「・・・?王様がどうかなさったのか?」
「ええ・・・その」
部屋の中をそっと覗いた侍女は小さく溜め息を吐き、驚くべきことを告げた。
「・・・恋煩いなのです」
「へ?」
「ですから。・・・レイナス王は今恋煩いなのですわ」
「・・・こっ、恋煩いぃ?!」
侍女の言葉にイスファルらしからぬすっとんきょうな声を上げる。
「イスファル様!」
「・・・え、ああ・・・すまない。・・・で、そのお相手は・・・」
慌てた侍女の声にイスファルも落ち着きを取り戻し、小さな声で聞いた。
その問いに侍女は心底困った表情をしてみせる。
「・・・それが」
窓から見える高い塔を見上げて彼女は名を告げた。
「あの、歌姫様です」

或る詩謡い人形の記録〜3〜

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ふわ、と白いワンピースの裾が翻る。
「こんにちは、おばさま」
「あら、また来てくれたのかい、お嬢さん」
大らかな様子が見た目にも分かる屋台の女主人がにこりと笑った。



或る詩謡い人形の記録〜3〜

「ええと・・・」
「ミートパイ、だろ?」
「・・・はい」
良く分かった様子の彼女に少女も照れた様に笑う。
何時も買うから覚えられているのだろうと思いながらふと遠くから聞こえる喧騒に後ろを振り返った。
「・・・あれは一体・・・?」
「おや、知らないかい?今此処では戦場に現れた勇者の話で持ちきりなんだよ。『無名の知将、雪菫』のね」
「・・・あんな騒ぎになるほどの?」
「誰も姿を見た事がないからね。実は男なんじゃないかとかそもそもそんな奴はいないんじゃないかとか」
少女にパイの包みを手渡しながら女主人が笑う。
「まああいつらは主に雪菫の素顔が気になってるのさ。あれ程の武勲を挙げる女だ、美しさとは程遠いだとか・・・本人が聞いていれば卒倒するような事を言ってるよ」
女主人の言葉に少女は苦笑した。
やはりこの格好で来て正解だった、と空を仰ぐ。
何時も視察の時は普通の少女に見える格好で来ているイスファルだ。
城の者だとばれては色々と面倒だからである。
「いやいや、雪菫は可憐な美少女だという噂もあるぞ?お嬢さんのようにな」
「え?」
きょとん、とした表情で振り向くと大柄な男が笑いながら立っていた。
「アンタ、どこほっつき歩いてたの!!」
「あで、そう言うなよ!・・・ちゃんと仕入れてきたって!」
そんな男の耳を引っ張る彼女・・・どうやらこの夫婦は彼女の方が実権を握っているようだ。
目の前で繰り広げられるそれにイスファルはくすくすと笑う。
「お嬢さん、仕入れてきた林檎でアップルパイを作ってあげよう。どうかね?」
「ええ、じゃあ・・・お願いします」
慌てたように言ってくる男にイスファルも笑って答えた。
もう、という女主人も呆れた表情ながらどこか優しい。
こうやって夫婦というものは成立していくのだろう。
「『雪菫』の話以外、特に変わったことは?」
「ないねぇ。余所者は『雪菫』がおっぱらってくれるし、何より王の政治力が良いんだろうね。かつてないほどに安定してるよ。・・・魔獣が降りてこないのも大きいしねぇ」
女主人の話にイスファルも顔を綻ばせる。
民衆から直接話を聞けるのは良いことだし、何より平和だと分かるのが良かった。
「歌姫様もいらっしゃるしなぁ」
「・・・歌姫・・・様?」
作業が終わったのだろう、話に加わる主人のそれにイスファルは首を傾げる。
「どこから来たのか知らんが澄んだ歌声をお聞かせくださる・・・女神のような方だよ」
男がそう言って笑った。
言ってみれば街のアイドルという所か。
「ほい、お嬢さん。出来立てほやほやのアップルパイだ」
「有難う」
暫く歌姫の話を聞いていると店の奥に引っ込んだ主人が豪快な笑顔で渡してくれたそれを受け取る。
代金を支払ってお礼を言ってから、イスファルは踵を返した。
街の人混みを潜り抜け、路肩に止めた馬車に乗り込む。
「・・・遅かったな、イスファル」
「・・・。色々話を聞いてましたから」
「『雪菫』の酷い噂?本物はこんなに美しいって言うのに」
「・・・馬鹿言わないでください」
レイナスの、王とは思えない軽口にイスファルは呆れたようにそう返し、ローブの袖に腕を通した。
明日戦地へと赴くイスファルの用意と視察も兼ねてレイナスと共に街へ出てきたのである。
王室に篭りっぱなしのレイナスも良い気分転換となっているようだ。
イスファルは居住まいを正してから先程屋台で買ってきたそれを齧りながら話を掻い摘んで報告する。
「・・・やっぱり魔獣が降りてきてたのか・・・。あの夫婦に頼んで正解だな」
イスファルの話から取り上げたのはやはりそこだった。
王としても気になっていたらしい。
「しかし今は出てきていないようです。・・・あの夫婦の力が大きいのでしょう」
「でも油断は出来な・・・。・・・?!」
言いかけたレイナスがふと止まり、馬車の窓から身を乗り出した。
「これ、は・・・」
「・・・っ、レイナス王!」
突如として馬車を降りるレイナスにイスファルも慌てて追いかける。
脇目も振らず走るレイナスをイスファルはローブをたくし上げ、彼を見失わないように必死になって走り続けた。
「・・・レイナス、・・・さ、ま・・・?」
突然レイナスが止まる。
その先には人だかりが出来ていた。
問いかけるイスファルを無視してレイナスが人垣を掻き分けた先、彼らの中心に居たのは可愛らしい様子の少女である。

どこか人間離れした少女だった。
クリーム色をしたボブショートの髪がふわりと揺れる。
ふわりとその場の空気が揺れるのを感じた。
ソプラノともアルトともつかない声が音と共に言葉を紡ぐ。

・・・美しい。
そうとしか表現出来ないほどの歌声は心にスッと染込んできた。
どういう意味を持つ歌詞かも分からない。
しかしそんな事はどうでも良くなる、体中を歌声が包んでいくような感覚をイスファルは覚えた。

歌には不思議な力があるという。
慈愛の力もあるが・・・歌に魅了された王族が滅んだという話も、聞いた覚えがあった。
言葉では説明が出来ないような力があるのだろう、とイスファルは思う。
隣に立つレイナスの顔が輝いていた。
彼女の歌の力に魅了されてしまった・・・そんな表情で。
こちらに気付いたのか少女が詩を紡ぐ途中にふわりと微笑んだ。







その笑みの持つ、本当の意味を彼女は後々知ることになる。

この歌姫と王の出会い・・・これが正常だった歯車を狂わせて行くという事をー・・・。

或る詩謡い人形の記録〜2〜

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光り輝く王宮の一部屋。
そこに城の者殆どが集まっていた。



或る詩謡い人形の記録〜2〜



「隣国との争い・・・先日の件で懲りたと報告があったが?」
会議室の一番奥、じろりと睨むのは先程までイスファルといたレイナス王だ。
やはり大臣が多く集まるこの場では雰囲気がまるで違う。
一応王の立場は理解しているという事か、とイスファルも小さく嘆息した。
すい、と前を見ればレイナスに睨まれた大臣が身を縮ませている。
歳若いレイナスに媚び諂う彼等が何だかおかしかった。
「・・・はっ・・・国境付近には常に軍を配備しておるのですが・・・。何分相手はこちらより雪山には慣れております。・・・故に・・・」
「それだけではあるまい?」
大臣の報告にレイナスが軽く笑ってみせる。
「相手はこちらを甞めている・・・違うか?」
「・・・仰る通りで」
レイナスの言葉は事実だった。
隣国はこちらの戦力を甞めきっている。
・・・ただ一人、イスファルを除いて。
彼女がいなければこの国はとうに滅びていたはずだ。
「しかし・・・!」
「ではどうしろと?戦力は埋め様がない、事実であろう」
先程から同道巡りである。
小娘なんぞを軍に入れたくない大臣達と、その彼女の戦力を期待している王と民衆との意見で真っ二つに割れているのだ。
「・・・戦地に赴いてくれ。明朝、すぐ」
「・・・はっ」
レイナスの椅子のすぐ後ろに控えていたイスファルは告げられた命に敬礼して応える。
先程報告していた大臣が睨んでいたのを、彼女は醒めた目で見つめた。

「雪菫・・・ただの小娘の癖に」
会議後、早々に王が出て行った後を追おうとしたイスファルをそんな言葉で呼び止めたのは先程の大臣だった。
「ええ。それは紛うことなき事実です。しかしその小娘にも貴方方は敵わないのでしょう?」
「・・・くっ・・・」
くすりとイスファルが笑う。
「野心が強いから隙が生じるんじゃありませんか?私は権力も財産も要らない。ただ王の為に剣を取ってきた・・・」
ふっと王の背中を見つめ、少女は小さく微笑んだ。
大臣に向けた笑みとは違う、本当の笑みを。
すぐに戻した質の違うそれで、イスファルは再び大臣に笑いかける。
「私が気に食わないなら追い出されても結構です。・・・もっとも、国がどうなっても構わないなら、ですけれど」
「貴様・・・」
「・・・では、私はこれで」
彼女の言う事は尤もなのだろう、言い返す様子も見せない大臣に嫌味なほどに綺麗にお辞儀をして見せ、イスファルは王の後を追った。