残酷な幸福を(岩坂・鳩彼SSS

「岩峰先生さよならー」
「はい、さようなら」
生徒達が全員帰った事を確認した放課後、私は旧校舎の地下室に足を向けた。
階段の下、重い扉を開ける。
暗い部屋の中、小さなベッドの上に彼、坂咲君が居た。
「・・・先生」
坂咲君が笑む。
過去からは考えられないような表情で。
「いい子にしていましたか?」
「もちろん」
綺麗に微笑む彼の髪を撫でる。
ジャラリと足首につけた鎖が音を立てた。
「・・・ああ、そうだ。知っていましたか?坂咲君。今日は4月25日です」
つまり、と彼の頭に白いシーツをかける。
真っ白な検体着に包まれた彼がきょとんとした顔で私を見上げた。
「貴方の、誕生日ですよ。今日は」
「たん、じょうび」
呆けたように私の言葉を繰り返す、彼。
本来なら学園を卒業し、『仕事』に戻っているはずの彼が何故此処にいるのか。
答えは簡単だ。

私が、彼を閉じ込めた。

神経毒で弱らせ此処につれてきた彼が恐怖とクスリでこうなるまで半年かかったのだ。
私だけに縋る坂咲君。
私にだけ手を伸ばす、私が望む理想の彼に仕立て上げたのは、私だ。
「尤も・・・後数秒ですがね」
笑って、ぼんやりと私を見つめる彼の髪を撫でる。
純白のシーツに包まれた彼は、色の識別がしづらい私でも綺麗だと思えた。
「お誕生日おめでとうございます、坂咲君」
「・・・。・・・もう、過ぎてるのに?」
「後数秒あると言ったでしょう?それに、貴方の誕生日を祝っても私が楽しくないでしょう」
「ふふ、相変らず悪趣味ですねぇ」
坂咲君がくすくすと笑う。
言葉だけを見れば学園にいた頃と変わらないが、心は私の元に堕ちていた。
上辺だけの言葉を紡ぐ、綺麗な彼。
意思のない目で私を見る、彼の頬を両手で包んだ。
「大好きですよ、岩峰先生」
「エイプリルフールはとっくに過ぎましたよ?坂咲君」
私は笑う。
彼に顔を近づけて。
深い海の様に濁った目に、歪な笑みの私が映った。


偽りの結婚式を挙げましょう


私の手に堕ちた貴方と、過去にしがみ付いた私と




今日という日が最も残酷な日になるよう


・・・貴方が誰かの手によって、救い出された後も私を思い出すように




それこそが、真の絶望というものです

ねぇ、そうでしょう?



私はそれが見たいのですから






永遠に、貴方は私のモノなのですよ

書くかもしれないし書かないかもしれない鬱的花言葉お題

*朔優に相応しい花は『節分草(拒絶)』か『紫露草(寂しい思い出)』です。
*がくカイに相応しい花は『カリフォルニアポピー(私を拒まないで)』か『ハリエニシダ(屈従)』です。(庭師×歯車)
*ユーリに相応しい花は『トクロン(妖艶・嬌艶)』か『菊(私を信じてください・破れた恋)』です。(フレユリ)
*A弥に相応しい花は『早乙女花(人間嫌い)』か『コケモモ(冷淡・反抗心)』です。(CA)

後書きだったりなんだったり

もうええわ!!

2章です。
ちなみに1章というかなんというか前のやつはこちら

1日1題、終わったよやったね!
2日くらいサボってすいません、忙しかったん・・・。
鬱的花言葉なのにヤンデレが多いのは仕様です嘘です趣味ですすいません。
あ、タイトルの花言葉は相変らず診断メーカーのをお借りしましたよ!
日替わりなので今は違うのが出ると思います。
このタイトルは3月31日付の分ですので、ご了承を。


そんな訳で、

1日目・CA→相互依存っぽい感じなCAちゃん。もうこの二人は公式が最大手だからなあ!C太に囁いているのは偽者C太
2日目・レンカイ→崎本家のレンとカイトではこのお題は難しいってか崎本さんちの子は鬱似合わない気がしてうにゃうにゃ。最初は普通のレンカイだったんだよ!元のより未来がありそう、だそうです
3日目・レイロナ→フロンティアの後かな?ヤンデレイナスマジ。レイナス(1期レイナスベース)を唆してるのはレイアス(4期レイナスベース)
4日目・ザーイス→4期とフロンティアの間。書いてて一番うわぁああ!!ってなった。幸せになれよぅ;;狂ってしまうなら一緒に死のう?ってお話
5日目・アルセイ→フロンティア後。一番鬱っぽい話ですかね。アルバートこれであってます、か・・・(だからやれよ)
6日目・岩坂→一番書きやすかったです(笑)ひよこちゃんが保健委員に入らなかったらこうやってひっそり殺されるんだろうなぁ、と。生きて強い意志のある優夜さんが徐々に息絶えていくのを見たい悪趣味な岩峰ちゃん
7日目・七陽→相変らず相互依存な七陽ちゃん!原作では気付いてないけど、陽鳥ちゃんのあれそれに気付いてて、でも何も言わない文系ちゃん、っていう個人的理想を詰め込んだ
8日目・フレユリ→フレユリちゃん!!漫画ベースです、漫画しか持ってないとも言う!(てめぇ)目を離したらどこかに行ってしまいそうなユーリを閉じ込めたい系フレン
9日目・イチウリ→本編見てのこれだよ!!(本誌は読んでない)多分色々設定を作ってますね、すいません。他人に依存したくない雨竜と例え世界が崩壊しても彼を護りたい一護の共依存
10日目・アルロイ→エドロイかハボロイか迷っ(ry どっちも選ばないのならいっそ!!っていう。アルフォンス怖いわ!!自分で言う!!!←


背景は酒の写真だよ、恒例だね!!!
アルコール度数はそんなに高くないです、ヨーグル。

後、300記事目でした、わぁ。
これからもよろしくお願いしまっす!

鬱的花言葉で1日1題2章・アルロイ(節分草/葡萄・鋼SSS

「まさか、君と酒を飲む日がこようとはな」
くすくすと目の前の彼が楽しそうに笑う。
「ええ、本当に」
僕も笑って、グラスにお酒を注いだ。
元の身体に戻って数年。
月日が経つのは早い。
「あの、大・・・あー・・・」
「大佐、でも構わんよ?」
「そういう訳にも・・・ロイさん」
悪戯っぽく言う大佐・・・じゃない、ロイさんに僕は笑ってみせる。
結構な歳なのに、ロイさんはいつまで経っても若くて可愛い。
・・・そう、昔から。
もう随分経つのにこの名で呼んでしまうのは・・・僕が『あの頃』に執着しているからなのかな。
「・・・ロイさんは」
グラスを握り締める。
カタリと中に入った氷が落ちた。
「兄さんとハボックさんのどちらが好きですか?」
「?なんだね、急に」
「答えてください」
首を傾げるロイさんに僕は俯いたままそう言う。
おかしな子だな、とロイさんが笑った。
「どちらも好きだよ。・・・もちろん君も」
「そういうのはいいんです。二人のうち、どちらを愛していますか?」
真剣に問う僕に、少しの間を置いてロイさんは口を開いた。
「・・・どちらも、大切だ」
にこりと彼が笑う。
「二人とも大切に想っている、というのはいけないことかな。エドワードもハボックも承諾している。納得はしていないかもしれないが」
小さく笑って言った、ロイさんの言葉は真実だった。
兄さんは「ホントにあの大人だけは」と文句を言いながらも妥協してる。
ハボックさんも笑いながら「そういう人だからなぁ」って言っていた。
でも、そんなのおかしい。
そんなの・・・マチガッテル。
「アルフォンス、君には理解しがたいかもしれないな」
「・・・ロイさん?」
「理解してもらわなくてもいい。ただ、そういう人もいるという事実があるということを頭の角に置いておいてほしいと、私は思っている」
ロイさんがグラスを煽る。
「・・・。・・・例えそれで、僕に理不尽な怒りをぶつけられても?」
「君がそんな事を?」
くすくすと笑って、そうだなぁと上を向いた。
「もし、そんなことがあるなら・・・私は君の全てを受け入れるだろうね」
彼が笑う。
今まで見た、どんな顔より優しく。
・・・それで、良いと思ってるんですか?
(嗚呼、何て甘い人)


宵闇が訪れる


僕の中の何かを蝕んでいく


「全てを受け入れる?聖母にでもなったつもりなんですか?」
「アル・・・フォンス・・・?」
「これだから貴方は」
きょとんとするロイさんの首を締め上げる。
「・・・ぅ、ぐっが、ぁ・・・!!」
「ねぇ、ロイさん。僕を否定して。僕を拒んで」
苦しそうに喘ぐ彼に囁いた。
白く細い腕が宙を彷徨う。
ひゅう、と気道が音を立てた。
「ほら、早く僕を拒んでください。でないと壊れちゃいますよ」
「・・・っ!」
綺麗な手を僕の腕を掴む。
「・・・め・・・や、めろっ!!!」
声が聞こえた、と思った瞬間、僕の体は突き飛ばされていた。
ほら、拒絶する事だって出来るんじゃないですか。
「もう酔ったのか?そういう酔い方は少し考え物だな」
「酔ってる?ロイさんはそう思うんですか?」
「・・・これが君の怒りか?」
「ええ」
僕はにっこり笑う。
「此処には兄さんもいない。ハボックさんもいない。・・・護衛くらいつけておけばよかったんじゃないですか?」
「・・・。・・・君程度には負けない。自信があるからね」
「そう、ですか」
挑発的に笑うロイさんに僕は静かに言った。
震えているのに何を大人ぶってるんですか?
ああ、『大佐』はそういう人でしたよね。
兄さんとよく似た性格で、ハボックさんと同じように僕を子ども扱いして。
「ふふ、あはははははは!!!!!!!!!!!」
大切な人に愛されたいと願うのは・・・貴方だけじゃない。
僕だって、同じ。
でも、ね、『大佐』。
貴方がそう呼ばれているときから貴方は僕を見てくれたことなんて一度もない。
だから。
「ねぇ、『大佐』」
ぞっとしたように僕を見るその人に僕は近づく。
「く・・・くるな!!」
悲鳴に似た声。
僕を拒絶する・・・声。
「僕と壊れてしまいましょう?」
嗤いながらロイさんの黒い髪をつかむ。
そのまま葡萄酒の瓶を口に押し込んだ。



二人が愛してくれる?


そんなの僕が許さない





そんなぬるい関係を、僕は壊して



それから・・・そう、僕だけのものにしてしまいたい





彼の漆黒の眸に僕が映る。
その顔はとても酷い顔をしていた。


ーー
アルロイ・拒絶/宵と狂気

鬱的花言葉で1日1題2章・イチウリ(ヒーザー/赤の鳳仙花・鰤SSS

お互いに一人ぼっちだった。


それゆえに惹かれた。

言えばそうかもしれない。



「僕に触れるな」
石田に触れようとした瞬間、一切の視線も向けられずにそう言われた。
「石田ぁ」
「邪魔」
にべもなく投げつけられた言葉に思わず引きつる。
邪魔って、こいつは・・・。
「それはねぇんじゃねぇの?」
「煩いなぁ」
頭を撫でようとしたところで避けられた。
いつも厳しいやつだけど今日は特に厳しいな・・・。
「なぁって」
「・・・。聞くけど」
ややあって石田が振り向いた。
「君はどうして僕に触れようとする?」
「は?」
「答えろ」
分厚い本を閉じて石田が立ち上がる。
どうして、って言われてもな・・・。
「特に理由とかねぇよ」
「つまり、君が触れたいから触れる、そういうことか?」
「ま、まあな」
しどろもどろに言うと、石田はじろりと俺を見て。
「自分勝手、横暴、クズ」
「・・・てめぇ!」
吐き捨てられるそれに俺は思わず立ち上がった。
こいつ・・・悪口言いたいだけじゃねぇか!
「おま、さっきから黙って聞いてりゃ好き放題・・・!」
「いいかい、黒崎。よく聞け」
詰め寄る俺に、石田がずいと顔を近づける。
なまじ綺麗な顔をしてる・・・それに俺は、弱い。
仕方がなく口をつぐんだ。
・・・珍しく真剣っぽいし、な。
「僕は孤独だ。今更それは変えられない」
行き成り言われたそれに俺はぽかんとする。
孤独?
何、言って・・・。
「石・・・」
「黙って聞け」
むす、と石田が俺を遮った。
「滅却師とはそういうものだよ。仲間では行動しない。いつも一人だ。それが普通なんだ。・・・それを、君は・・・!」
石田が俺を見上げながら睨む。
「触れてみたいから手を伸ばす?そういうところが嫌いなんだよ、僕は!」
「・・・」
「ずっと一人だった。あの時から・・・師匠が亡くなってから、ずっと。・・・それなのに」
言葉を紡ぐ石田は何処か泣きそうな顔をしていた。
「・・・今更、優しくされても困る。君には、触れられない。だって」
君に依存してしまう、と小さく言う石田に手を伸ばす。
「君に、死神に依存するという事がどういうことだか分かるか?」
真剣な表情に思わず手を止めた。
滅却師が死神に依存するという事、それは。
「・・・世界の、崩壊」
「そう。例えば僕が君に拠り所を見つけてしまったら。・・・僕は君を守るために必死になる。君もそう。虚のいない世界を創ろうと躍起になってしまう」
訥々と語られるそれは、ありえなくもない未来だった。
パワーバランスの崩れた世界が・・・死神と滅却師が手を取り合った世界がどんなに悲惨かを、俺たちは知ってる。
だからこそ。

「僕に触れるな!!」
石田が怒鳴る。
今度は構わずに手を伸ばす。
・・・今、触れてしまわないとダメな気がして。
「黒・・・!!」
「いいじゃん、依存しろよ俺に」
「・・・なんで、君はそう・・・」
呆れた声の石田を抱き寄せる。
ずっと孤独に耐えてきたんだろ?
ならいいじゃん。
例えそれが世界の崩壊になるとしても。
俺がお前を護るから。



孤独に耐えなくてもいい


一緒に生きよう



例え滅却師と死神の共存が無理だと分かっていても



お前とならいけるような気がするんだ


(そこは絶望しかない未来)


ーー
イチウリ・孤独/私に触れないで

鬱的花言葉で1日1題2章・フレユリ(ピナス/ふきのとう・TOVSSS

お前は貪欲だ。


そういったのは誰だっただろうか。
ただ一心に国の平和を守りたくて、僕は強くなった。
・・・いや、国のためじゃない。
ユーリ、君のためだ。
君のために僕は軍に入り、法に縛られて生きてきた。
・・・それなのに。
その君は僕の事なんて何一つ考えずに自由に生きているよね。
本当に羨ましい。
僕はいろんなことを我慢してるのに。
ギルドとして自由に生きる君と、帝都に縛られた僕。
僕としてはそれでも良かったんだ。
自由に憧れないわけじゃない。
でもこういう生き方だってアリだろう?
それにね。
ユーリ、君と全く会えないわけじゃなかったから。

・・・でも。


「フレンは意外に貪欲だよな」
「そうかい?」
ある時、珍しく路地裏で、ユーリが掘り出し物だという酒を飲み交わしていた時のことだった。
楽しそうにそう言うユーリに僕は笑う。
・・・でも心の中では動揺していた。
今、なんて?
僕が、貪欲?
「なんていうか・・・自分の意見ははっきり言うし、我慢してそうに見えて案外・・・」
「ユーリッ!!!」
可愛らしく言葉を紡ぐ彼を僕は大声で制止した。
・・・もう、もう沢山だ。
「うわ、なんだ・・・え?」
「ねぇ、ユーリ」
僕は優しく笑いかける。
ねぇ、ねぇユーリ。
君にはそんな風に見えてたの?
騎士団を辞めて、僕の傍から離れて、君は変わってしまったね。
「・・・フレン?」
「君には処罰を受けてもらうよ」
「はぁ?!何を行き成り・・・。・・・?!」
呆れたような顔をしていたユーリは突然目を見開いて身体のバランスを崩した。
どさりと僕の腕の中に倒れこんできたユーリを抱きとめて僕は嗤う。
ユーリ、ねぇユーリ。
僕の心は壊れてしまったんだよ。

・・・君のせいで。


君の一言がなかったら。

君のあの行動がなかったら。

僕は壊れずにすんだのにね。


ねぇ、ユーリ。


だから。


「責任とってよ。・・・僕の愛しの親友」



長い、夜空と同じ色の髪に口づける。
貪欲・・・貪欲、か。
そうだね。
もっと、自分に正直でも構わないよねぇ?




罪状は僕をこんな風にした事、それに伴う刑罰は・・・

僕の元での終身刑


「さぁ、刑を執行するよ、ユーリ」



(君を手に入れるためなら法を捻じ曲げても良いと、そう思ったんだ)




ーー
フレユリ・貪欲/処罰は行わねばならない

鬱的花言葉で1日1題2章・七陽(朝鮮朝顔/花蘇芳・鳩彼SSS

暖かい風が吹く。
・・・今日も、怠惰な生活を送ってしまいました。
「・・・しまいました、じゃないでしょ?」
「いたっ」
ぼすっと手刀を落とされてぼくは恨みがましい目を向ける。
「痛いよぅ、埋音くん〜!」
振り仰いだ先に居たのは呆れた目でぼくを見下ろす、埋音くんだった。
「僕は君の味方だけど、授業をサボる事に賛成したわけじゃないよ?」
「うぅ〜、そうだけどぉ〜!!」
腕を組む埋音くんにぼくは抗議の声をあげる。
最近ちょっと埋音くんが厳しいよ〜!
「・・・。・・・大丈夫。君には僕がいるんだから」
「埋音くん・・・」
優しく埋音くんが笑う。
やっぱり埋音くんは優しいね。
ぼくだけの・・・社会から締め出されたぼくだけの、味方。
(例えそれが偽りだとしても)

埋音くん、ねぇ埋音くん。


ぼくはね。


・・・今のこの、作られたぬるい幸せに浸っていたいんだ。



キッチンを片付けていた埋音くんの背後に立つ。
「・・・埋音くん?」
「なに・・・。・・・え?」
にこりとぼくは笑う。
ごめんね、知っちゃったんだよ〜。
・・・きみがぼくを騙してるってこと。
優しく笑うその顔が偽りだってこと。
でも、ね。
その魅力に取り付かれてしまったのも事実で。
「埋音くんは、裏切ったりしないよね?」
「・・・」
「ぼくと一緒にいてくれるでしょう?」
ずっと、と彼に囁く。
驚いたような顔をしていた彼がゆっくりと口を開いた。
「・・・そうだね。ずっと一緒にいるよ」
偽りの魅力を振りまいて埋音くんが笑う。
(ああ、ほらまたそうやって)
毒の花の様に笑む埋音くんに、ぼくも笑いかけた。



もし例えきみがぼくを裏切ったとして

きみはぼくを裏切ったことによって死んでしまうよ



だから、ぼくと一緒にいよう?


ずっと、ずぅっと・・・






ーー
七陽・偽りの魅力/裏切り・裏切りのもたらす死

鬱的花言葉で1日1題2章・岩坂(キングサリ/スノードロップ・鳩彼SSS

「坂咲君」
「はい?」
薬品整理をしていた坂咲君が振り向く。
開けた窓から風が吹き込んだ。
「どうぞ」
「え・・・?」
きょとんとする坂咲君に先ほど押し付けられたそれを差し出す。
目を丸くしていた彼はすぐにいつもの調子に戻り、おかしそうに笑いだした。
「珍しいですねぇ、岩峰先生が花なんて」
似合わない、と笑う彼を一瞥する。
「押し付けられたのですよ」
「ああ、なるほど」
くすくすと笑って白い花束を受け取った彼はそれにそっと顔を近づけた。
意外にも彼にはこういうものがよく似合う。
表情に影を落としたのは一瞬で、すぐいつものように笑みを張り付けて彼は「保健室に飾ります?」と言った。
「私は貴方に捧げたのですがね。・・・この、花言葉と共に」
「花・・・言葉?」
「ええ」
私を見た坂咲君が再び小さく微笑む。
その姿はどこか自嘲的にも見えた。
「スノードロップ・・・花言葉は希望、ですか」
寂しそうに坂咲君が笑む。

ああ、貴方でも知らないのですね。


貴方と同じ、白く咲き誇るその花の本当の名を。


「坂咲君」
「・・・え?」
振り仰ぐ坂咲君にナイフを突き刺す。
彼の身体がスローモーションの様に崩れ落ちた。
白い花が紅く染まる。



残念ながらこの程度の出血量では死ぬ事はない。
ぴくりとも動かないのはナイフに塗った神経毒の所為だ。
これも致死量ではない。


何故すぐに殺さないのか?
答えは簡単だ。




折角捕まえた愛しい鳥を


すぐに殺してしまってはつまらないでしょう?




私は、淋しい美しさをまとわせた貴方が

意志の強い瞳が絶望に落ちた瞬間の貴方が



私の手によって

死ぬ瞬間が見てみたいのですよ



ぐったりする彼を抱き上げる。
・・・ふん、片手が使えないというのは不便なものですね。


誰もいない保健室の外に出る。
彼を見下ろし、私はにやりと嗤った。


さあ坂咲君



私がじっくりと時間をかけて殺してあげましょう


二羽きりのこの世界で、ゆっくりと・・・ね


ーー
岩坂・淋しい美しさ/貴方の死が見たい(通常は希望。人に捧げることで変わる)

鬱的花言葉で1日1題2章・アルセイ(みぞはぎ/コケモモ・フラフロSSS

第一に寂しい目をしているなと思った
第二に美しい男だと思った

そして

第三に俺は恋に落ちた




ただただ冷淡なだけの男・・・最初はそういう印象だった。
しかし。

「おい、セイ」
「・・・何?アル」
紺色の長い髪を揺らしてセイ・・・セイリオスが振り返る。
俺たちは逃亡者だ。
国家反逆という大罪ゆえの。
きょとんと俺を見るセイリオスの、幼い表情からは信じられないが・・・こいつは強いのだ。
とてつもなく。
それは目によく現れている。
目は口ほどにものを言うとはよく言ったものだ。
それ以上に濃い蒼の目の奥に秘めた悲哀の色は・・・花の様に美しかった。
「アル?」
「・・・ああ」
首を傾げるセイリオスの髪が風に舞い上がる。
「セイ。何処か行くあてはあるのか?」
俺の問いにセイリオスがまさかと自嘲気味に微笑んだ。
「俺はお尋ね者だぞ?・・・受け入れてくれる町があるとは思えない」
「何故・・・彼を殺した?」
切ない笑みを見せるセイリオスに残虐な質問を投げかける。
「・・・。・・・反抗心、かな」
少し考えてから悪戯っぽくセイリオスが笑った。
反抗心、ね。
「アルは?」
「ん?」
「アルはどうしてリルガードを捨てたんだ?」
「捨てたわけじゃない」
純粋なそれにおれは苦笑する。
リルガードを捨てた・・・それは違う。
俺がリルガードを離れたのは、俺がいなくてもこの国は大丈夫だと感じたのと、セイリオスを護りたかった。
ただそれだけだ。

「国の騎士じゃない。お前の騎士になりたかった」
「・・・俺はお前にとって憎む相手なのに?」
「まあ、そうだが」
自分が傷つくような質問をするセイリオスに俺は笑う。
今のセイリオスはあの時と同じ目をしていた。
誰かに剣を向けたときのセイリオスは切ない表情をしていた・・・俺はそう感じた。
俺が憎んでいる・・・リルガードを崩壊させたファムズ・ロッジのヤツラとは違う、純粋に平和を望む目だった。
俺はそこに・・・惹かれたのかもしれないな。


「それに。俺は護ってなんか欲しくない」
「冷たいな、お前は」
「・・・優しいほうがいいのか?」
くすりとセイリオスが笑う。
まさかと笑って細い手をとった。
ぼんやりと見つめるセイリオスの手に口づける。


ちっぽけな反抗心を抱えて明るい世界から逃げ出した俺は



悲哀を一身に背負った華の騎士になると、決めたんだ



ーー
アルセイ・悲哀/冷淡・反抗心

鬱的花言葉で1日1題2章・ザーイス(枯れた白薔薇/ペラゴニウム・フラハイSSS

「なぁ、ザード」
「あ?」
何時も通りの昼下がり。
飯も食い終わって、久しぶりにイスファルとのんびり過ごしている時だった。
「なんだよ?イスファル」
「あのな」
にこっと笑ったイスファルが立ち上がる。
「俺を、殺して」
「・・・あ?」
綺麗なそれとは似合わない、唐突に告げられた単語におれは思わず絶句した。
今、なんて?
「いつか俺は暴走するかもしれない。その前に俺を殺してくれないか」
「・・・っ、なんで!」
ずっと考えてたんだ、と何でもないように言うイスファルに掴みかかる。
こいつは、イスファルは、誰よりも生きる事を望んでたはずだ。
・・・なのに、なんで・・・っ。
「人間のまま死にたいから」
イスファルが悲しい笑顔でそう言った。
・・・ああ、そうか。
すっと力が抜ける。
そういえば。
「俺の身体は所詮この世のものじゃない。・・・だから」
「・・・暴走しないかもしれないだろ」
「言い切れるか?『神様』だってどうしようもないのに」
イスファルが自嘲気味に笑った。
「・・・」
「この先どうなるか分からない。もうあんな・・・誰かを殺してしまった絶望を味わうのはイヤだ。なら、いっそ」

好きな人の手で葬って欲しい

そう、綺麗に微笑むイスファルは本当に綺麗で。


「・・・分かった」
「ザード」
「けど、おれからも一つ頼みがある」
「え?」
きょとんとするイスファルの冷たい手を握る。
・・・イスファルはこんなこと望んでない。
分かってる、でも。
「おれを、殺して」
「・・・ざー・・・ど・・・?」
「イスファルが、イスファルとしての意志が在るときに、おれを殺して。そうしたらおれはあんたを躊躇わずに殺すことが出来る。・・・一緒に死ぬ事が出来る」
一緒に死のう、とイスファルに甘く囁く。
・・・そうすれば一人ぼっちにはさせない。
ずっと、ずっと一緒にいられるから、と。
(嗚呼、おれは何て酷い男なんだろうな!)

下を向いていたイスファルがゆっくりと顔をあげる。

うん、と微笑んだイスファルの目にあるのは、希望か、絶望か。




枯れ果てた大地で育ったおれが見つけた唯一の白い薔薇が、この美しい庭園で枯れるのを望むなら


それがどんなに悲しく切ない望みでも

おれは叶えてみせるよ



ーー
ザーイス・死を望む(通常は『純潔』)/切ない望み