|
姫始めで媚薬で!(ザクカイ)
「ザッくんー♡」 「…っ!路々森」 上機嫌で抱きついてこようとするユズを避けながらザクロは、何か用か、と聞いた。 ユズがこのテンションの時は大概良い事がないのである。 そしてそれは今回に関しては当たっているようだった。 「もー、相変わらずローテンションだにゃー、ザッくんは♡」 「ゆーず先輩?!また忍霧さんに絡んで!」 無駄にテンションが高いユズにかけられたのはカリンの声で。 「なんだぁい、カリリン♡ヤキモチかにゃー?」 「言ってませんて。もー、すみません、忍霧さん」 申し訳なさそうに…なぜ彼女が申し訳なさそうにするのかは疑問ではあるが…謝るカリンにザクロは、いや、と言った。 「ところで、なんです?それ」 「あぁ、コレかい?…媚薬だよ。カリリンには見せただろう?」 ふとカリンがユズが持っていた小瓶に目を留め聞けば、ユズはあっさり答える。 思わずザクロはきょとんとした。 「…媚薬?」 「そうとも!ボクがね、研究に研究を重ねて作った最高傑作でさぁ!」 聞き返すと、ぱあ!とユズが嬉しそうな声で説明してくる。 「まだ持っていたんですか?それ」 「だってぇ!ボクがせっかく作ったのにカリリン使ってくれなかったじゃないかぁ!」 「誰がそんな妖しい薬使うんですか。大体、媚薬なんて効能的に信じられると…」 「…何の話だい?嬢ちゃん」 うわぁあん!と抱きつくユズにやめてください!と言うカリン…仲が良いな、とぼんやり思っていたところにかけられた声はザクロもよく知るもので。 「…鬼ヶ崎」 「よっ。伊奈葉ちゃんがぜんざい作ったから食べに来ませんか、だと」 「おお、ひーみんのぜんざいかぁ、良いねぇ」 「ユズ先輩、おせち料理あんなに食べたのにまだ入るんですか?」 「甘い物は別腹だろう?カリリン」 「…まあ、そうですけど」 きゃっきゃと言い合う女子二人をくすくすと笑って見ていたカイコクが小さく首を傾げる。 「路々さん、それなんでぇ」 「ん?あぁ、これかい?…媚薬だよ。ボクが作った」 「へぇ…」 ちゃぽんと小瓶を振りながら笑うユズに、カイコクがにやりと口角を上げた。 何だか嫌な予感がする。 じり、と逃げようとするザクロにカイコクがにっこりと綺麗な笑みを浮かべて見せた。 そして。 「忍霧、飲んで?」 とんでもない事を言い出すカイコクに思わずぽかんとする。 「…はぁ…??」 「いやいやカイさん、それはいくらなんでも無茶ぶりが過ぎるんじゃないかい?」 「そうですよ、鬼ヶ崎さん!忍霧さんにそんな…可哀想です!」 焦った女子二人が止めてくるが、カイコクはそうかい?と涼しい顔だ。 「俺ァ媚薬の一本や二本飲めない奴ぁ男じゃないと思うがねぇ…?」 「…何…?」 「ま、忍霧にゃ難しい案件だったかもなぁ」 けらけらと楽しそうに笑うカイコクにユズが「煽って大変なのはカイさんだぜ?」と言う。 「大丈夫、忍霧にそんな勇気ある訳…」 「…路々森、それをくれるか」 尚もそう言うカイコクを尻目にザクロは低い声でユズに手を伸ばした。 え、と三人がこちらを向く。 「…忍霧?」 「…忍霧さん…?」 「ザッくん、あのな、これは……」 「いいから」 何かを説明しようとするユズから、問答無用、と瓶を半ば無理矢理奪い取り、中身を全部煽った。 「…これで満足か?鬼ヶ崎」 「~~っ!ったく!すまねぇ、伊奈葉ちゃんにぜんざいキャンセルしといてくんなァ!」 ギロリと睨むザクロの手を取り、カイコクが自室に向かって走る。 「…大丈夫ですかね、鬼ヶ崎さん」 「…あれ、飲み物に数適入れるだけで効果が出るんだが……」 そんな二人を見送ったカリンとユズは顔を見合わせ、そっと手を合わせたのだった。
さて、カイコクの部屋に連れて来られたザクロは何故か彼の手拭いで縛られていた。 「…おい、外せ鬼ヶ崎!!」 「だぁめだ。お前さん、普段でも手加減しねぇのに媚薬なんて俺がどうなるか分かったもんじゃねぇ」 「…貴様がっ、悪いんだろう!」 ハァ、と荒い息を吐き出す。 ユズが作った媚薬は正真正銘本物のようで、目の前のカイコクにブチ込みたくて仕方がなかった。 全部飲んだのは流石に失敗だったろうかとぼんやりする頭で思う。 体はどんどん熱くなる一方なのに…これでは生殺しだ。 「…辛そうだな?忍霧」 くす、とカイコクが笑う。 最初からそう言っているだろうに、と睨むが彼はどこまでもいつも通りだった。 「しゃぁねぇなぁ」 「…なに、をっ」 「気持ち良く、させてやる」 妖しく笑い、カイコクはザクロのスラックスを脱がせ前を寛げる。 やめろ、と声を上げる前に彼はパクリとザクロのものを口に含んだ。 「ん、ふぁ、ぁ…」 ジュルジュルと音を立てながら舐めたり吸ったりを繰り返すカイコクが上目遣いで気持ち良いか聞く。 もちろん気持ち良い、が、それどころではなかった。 「お、い…鬼ヶ崎……っ!頼む、もうはな、せっ…」 「んー?りゃえー♡」 「出るっ!出るからっ!離せっ…っ、ぁ、あぁっ!」 ザクロの必死の願いも虚しく、びゅるびゅると精液が飛ぶ。 ぴしゃりとカイコクのキレイな顔にかかった。 「…すっ、すまな…!」 「ん、いっぱい出たな、忍霧?」 慌てて謝ろうとするザクロに、カイコクが笑む。 ゴクリと思わず喉が鳴った。 「…ここに、出してェか?」 トン、とカイコクが己の腹に手をやり、聞いてくる。 激しく頷くザクロに彼は美しく笑い、下着を脱いだ。 「…ま、て…鬼ヶ崎。これを解け!」 「駄目だって言ったろう。いつも好き勝手やられてるお返しでぇ」 手の拘束を解けと懇願するザクロにカイコクはあっさり言ってのしかかって来る。 ん、あ、と鼻にかかった甘い声がザクロの脳天を貫いた。 「んぁ、あ…はい、る…っ!ん、くぅっ!」 甘ったるい声を上げ、カイコクはザクロのものを飲み込ませる。 「ぁは…っ、入った、ぜ…忍霧?」 へにゃりと笑い、カイコクが緩く腰を揺すった。 それだけでイキそうになるが、カイコクはそれを許さない。 「…お、いっ!」 「きもちいか?忍霧」 「…良いっ、からぁ…っ!イカせてくれ、たのっ、む!」 「早すぎやしねぇか?もうちょい楽しませてくれ、忍霧♡」 可愛らしく笑い、カイコクがゆるゆると腰を振った。 激しくしたり、それでイキそうになればぴたりと止めたりしてザクロを翻弄する。 ただでさえ若い身体なのに、媚薬が入っているのだ。 我慢なんて出来るわけもない。 それなのにただカイコクは笑うだけだった。 「…鬼ヶ崎、鬼ヶ崎ぃ…!」 「イきたい?だめ♡」 好き放題腰を振り、さんざ寸止めをしては極限まで煽ったカイコクからお許しが出たのは何度目の懇願のあとだったか。 「鬼ヶ崎ぃ、頼、む…イカせて、くれっ…!」 「良いぜ、んっ、忍霧♡」 「…ぅぐ、ぁ、あああっ!」 「ふぁ、ああっ!!…は、ぁ…」 びゅくびゅくとカイコクの腹の中に精液を吐き出し、カイコクもそれを受け止めて自身もイッた。 「…ふふ、姫始めってやつだな、忍霧」 にこ、と笑い、引き抜こうとしたカイコクの…腰を掴む。 え、とカイコクが綺麗な目を見開いた。 「忍霧、お前さん…なんで拘束が取れて…?!」 「…鬼ヶ崎、よくも散々俺を煽ってくれたな?」 怯えた表情の彼にザクロは笑顔を見せる。 「…覚悟は出来ているんだよな?鬼ヶ崎」 ばちゅん、と奥まで突き入れ、ひっと喉を鳴らすカイコクをガツガツと突き上げた。 「ふぁっ、あぁあっ!!やめっ、やだぁっ!ごめ、ごめん…っ!」 「何を謝っているのかわからんなぁ、鬼ヶ崎!」 「ひぐっ、ぁっああっ!!!」 カイコクの躰がビクビクと跳ねる。 イったと分かっても止めてやる気はなかった。 それに、まだ全然足りない。 数時間後、彼の躰には数回分の精液が埋め込まれていた。 ぐったりとザクロに体を預けてくる彼から引き抜き…ころりと体を反転させる。 「も、もう勘弁してくんなぁ!」 「ダメだ。…あぁ、俺を弄んだ仕置をしないとな?」 泣き叫ぶカイコクに笑い、先程拘束されていた手拭いを彼の目に当て頭の後ろできゅっと結んだ。 「…鬼ヶ崎、パカが言っていたんだが…ゲームは正月中はしないらしい」 「…ぁ、あ……」 「貴様が考えた姫始めに付き合ってやったんだ。俺の考える姫始めにも付き合ってもらうぞ、鬼ヶ崎」 敏感になっているであろう耳元にそっと囁き、ザクロはバックから突き入れる。 「ぃううっ!ぁ、ああっ!やだぁっ!おしっ、おしぎりぃ…!取って、取ってくんなぁ!」 「貴様、俺が頼んでも取ってくれなかっただろう?」 「ふぁあっ?!ぁあ、あ、はんせ…してる…からぁ!!」 「今日は意識が飛んでも続けるぞ。媚薬を飲ませたこと、後悔させてやるからな…!」 「そ、そんな…ひぅう?!ぁ、あ…だめ、だ…や、やぁあっ!!ぅあっ、ああっ!」 ザクロの恐ろしいそれにカイコクがひっと声なき悲鳴を上げた。 カイコクの嬌声が部屋に響きわたる。 ザクロの宣言通り、カイコクの意識が飛ぼうがもう無理だ壊れると泣きじゃくって懇願しようがメスイキを繰り返そうが止めず、犯し尽くし、媚薬がようやっと切れ理性が戻った頃にはどろっどろになったカイコクがいて。 「…おし、ぎりぃ…?」 枯れた声で首を傾げる彼を、甘く甘く抱くのは…また次の話。
black prism/ザク→→←カイ前提マキカイ
彼を見た時、僕は 驚くほど白く、美しい人だと…思った
「カイコクさんは黒、でしょう?」 きょとんとした顔をするのはアカツキ君だ。 「あー、鬼ヤローは黒だよな。なんつーか、見た目が」 アカツキ君の答えを受けてそう言うのはアンヤ君。 「白か黒かで言えば黒だな。大体、あいつが白なんて純粋たる色ではないだろう」 それを聞いてあっさりと答えたのはザクロ君だった。 「…何の話でぇ?」 と、ふわりと首を傾げて寄ってくるカイコッくん。 「お前さん方もパンツの色の話かい?」 「貴様と一緒にするな。…イメージカラーの話だ」 笑いながら言うカイコッくんに、そう答えるザクロ君…とても仲が良さそうに見える。 何だかとても…楽しそうで。 「はーん、俺のイメージカラーが白、ねぇ…」 なるほど、なんて頷いてみせたカイコッくんが優しい笑みを見せた。 「そりゃあ逢河、お前さんの買い被りだな。俺はそんな…綺麗な色じゃねぇよ」 「…黒が醜いだけとは、限らない」 カイコッくんのそれに僕は答える。 「あ?」 「ん?」 「…マキノ君?」 その声は届かなかったのか、皆は不思議そうな顔をした。 …でも。 「…それでも充分、俺にとっては白は綺麗な色なんだ」 小さく言ったカイコッくんの声は…僕だけに聞こえるもので。 ああ、やっぱり彼は白い人だなぁ、と…そう思った。
白の部屋は驚くほど、色がなかったらしい。 同じだ、と思う。 この…僕の部屋は…真逆の黒、だけれど。 黒だけの部屋に一点、白を滲ませたら何かが変わるんだろうか。 「…カイコッくん」 「…?逢河?」 僕の呼びかけにこてりと首を傾げるカイコッくん。 「なんでぇ、俺に用事でも?」 にこ、と笑うカイコッくんは僕の目を見ようとはしなかった。 僕の目は人を魅了してしまうから。 多分、何かが変わるのを…カイコッくんは酷く恐れている。 「…部屋、来て」 「…。…珍しいな、逢河がんなこと言うなんて」 少し驚いた表情をしていたカイコッくんがくすり、と笑ってそう言った。 「いいぜ。今日はゲームもねぇし。…忍霧に伝えてくらぁ」 「…ザクロ、くん?」 「ああ。…行き先は伝えておけって言われてるしな」 首を傾げる僕に、心配症なんでぇ、と笑うカイコッくん。 その表情は迷惑なんかじゃなく…少し幸せそうで。 嗚呼、なんて、白い。 「?逢河?」 顔を覗き込んでくるカイコッくんに、僕は…拳を叩き込んだ。 「ぅ、ぐぅ…?!!」 「…ごめんね」 どさりと倒れ込んでくるカイコッくんに僕はそう言う。 そのまま抱き上げてみると思ったより軽かった。 ザクロ君に細いとか言う前に自分も食べなきゃ駄目だよ、なんて今はどうでも良い思いが頭を過ぎる。 「…」 まるで陶磁器のお人形さんみたいにぐったりした彼を、僕は自分の部屋へと連れて行った。 「…ぅ…」 それから、彼が目を覚ましたのは数十分経ってからの事だった。 「…こ、こは…」 「…起きた」 「…。…あい、かわ……?」 ぼんやりしたそれはどこか幼くて。 「…何処でぇ、ここ」 「…僕の部屋、だよ」 「…逢河の…?」 疑問に答える僕のそれを、呆けた声でカイコッくんが反芻する。 まだ分かってないみたいだ。 「…なぁ、さっき…お前さん、俺を…殴らなかったか…?」 「うん、殴った」 「…。…なんで、そんな…」 あっさりと白状した僕に、呆れたような困ったような声でカイコッくんが聞く。 怒っているわけではない、純粋たる疑問。 「…来てくれないと、思ったから」 「はぁ?…俺は、約束も守らねぇ…薄情な奴だと思われてんのかい?」 「違う。…ザクロ君が」 「…忍霧?」 意外な名前が出てきた、と不機嫌になりかけていたカイコッくんが首を傾げた。 「ああ、忍霧に伝えに行って帰ってこなくなるって?…そこまで独占欲強かぁねぇよ、アイツは」 こくん、と頷く僕にカイコッくんはくすくす笑う。 「逆に逢河が心配されんじゃねぇのかい?」 楽しそうに笑うカイコッくんは…きっと多分知らないんだ。 ザクロ君がどんな目でカイコッくんを見ているかを。 その視線が、友愛のそれをとっくに通り過ぎていることを。 そして…カイコッくんも。 少し諦めたような瞳は、僕がよく知るそれだった。 「カイコッくん」 「…んー?なんでぇ…」 「愛って、何」 僕の質問はかなり意外だったみたいで、カイコッくんは動揺したように僕を見る。 「…いきなりっ、何を…!」 「…僕は、愛されなかった。喧嘩ばかりの両親、人のモノになってしまった好きな人」 「…」 「…カイコッくんは、愛を知っている?」 疑問をぶつける僕に、カイコッくんはふいと目線を逸した。 「…知らねぇな。興味もねぇ。…俺は、愛されたい訳じゃねぇんだ」 静かに感情を押し殺して告げられるそれは、嘘、でしかなくて。 「だからって誰かを愛せるとも思ってない。俺は…あれが愛、だとは認めねぇ」 低い声は、僕に向かって言っている訳じゃなかった。 …ねぇ、カイコッくんは、誰を…見ているの? 「…好きだよ。僕は、カイコッくんを…愛してる」 「…は…?」 僕の言葉にカイコッくんがぽかんとする。 「僕を見て」 「…何を…っ、寄せ、逢河!!!」 目を合わせようとする僕に声を荒げて嫌がるカイコッくん。 どうして、そんな事言うの? 「どうしたんでぇ、逢河。今日のお前さんは何だかおかしい…」 へら、と笑いかけたカイコッくんが怯えた目をして止まる。 漸く、首輪と鎖の存在に気づいたみたいだ。 「…あい、かわ?」 「好き、だよ」 おびえを含ませた烏羽色の瞳をじっと見つめる。 嫌だ、と小さく呟かれたそれは…何に対してだったんだろう。 白い白い君を真っ黒に塗りつぶしたら、僕も愛を知ることが出来るのかな。 (それはまるで、シュレディンガーの猫のようだな、と僕は思った)
閉じ込められた世界の時計台より幸せの音を込めて(ザクカイ
「知っているかい?こんな世迷い言を。…寒い朝、ゲノムタワーより北の、雪降る街にある時計台の頂上で永遠の愛を誓う。そうすればカミサマが叶えてくれるんだと」 さてそれは誰が持ってきたおまじないだったか。 何処にでも転がっている、ありふれたジンクス。 眉唾でしか無い話。 女子が盛り上がっていたから(ついでに入出も)、やはりそういう話は好きなんだな、とだけ思った。 「くっだんねぇ!」 そう言ったのは駆堂で。 まあ俺も確かにくだらないとは思ったがあまりの言い草に少し眉を潜めた。 「もう少しマイルドな言い方は出来ないのか、貴様」 「んだよ、テメーだってそう思ってるくせに」 「…なんだと?」 突っかかって来られ、思わずムッとする。 もはや条件反射のようなものだった。 「俺は別にそんなこと思ってはいない!」 「あー、そーかよ!んじゃあ試してみろよ!!」 ギャーギャー言い争いをしている間に「止めてくださいよ、カイコクさぁん」と入出が情けない声で鬼ヶ崎に縋る。 それに鬼ヶ崎が小さく肩を揺らした。 「まあ退屈しのぎにゃなるんじゃねぇか?」 ふわふわと、楽しそうに言うから。 なんだか無性にむしゃくしゃした。 「…分かった」 「あ?」 「え?」 「お?」 「試してみるだけだからな」 そう、ぽかんとする全員に俺は言い訳する。 別に…駆堂に煽られたからでは、なく。 俺が気になっているだけだと。 呆けた顔をする鬼ヶ崎の手をぎゅっと握り、俺は宣言した。 「明朝、鬼ヶ崎と共にそのおまじないとやらを試してきてやる!!」
「…忍霧」 「…すまない、鬼ヶ崎」 吐く息白い朝、太陽すらいない無人の街に向かいながら、俺はムスッとした鬼ヶ崎に何度目かの謝罪をする。 「…俺が低血圧なの知ってんだろ」 「…悪かった」 ぶすくれ、文句を言いながらも鬼ヶ崎はきちんと着いてきてくれた。 嫌なら嫌と言うタイプだから、今回は俺を立ててくれたらしい。 その辺は真面目というか何というか。 「ほら着いたぞ鬼ヶ崎!」 「…寒ぃ…」 ようやっとお目見えした時計台を指をさして言うが鬼ヶ崎は寒さに身を縮め、あまり動く気がなさそうだった。 不味い、このままだと見たから帰る、と言いかねない。 「実際に見るとテンション上がるな、なあ鬼ヶ崎、そう思わないか?!」 「…まあ、なあ…」 強引に同意を得て、時計台の中に入った。 中はがらんどうで何もない。 古ぼけた室内でステンドグラスだけが俺達を迎えてくれていた。 「どうやって上がるんだ?」 「…さあ?」 「…。…少し見てくる」 やる気のない鬼ヶ崎を置き、俺は細い廊下を進む。 薄暗いが見えないほどではないそれは進むに連れ急な坂になっているようで。 「おい!置いて行くなら帰るぜ、忍霧!」 「へ?あ」 ふと聞こえた怒鳴り声に下を向けば、ステンドグラスに照らされた鬼ヶ崎が不機嫌そうに俺を見上げていた。 どうやらそれなりに上へと来てしまったらしい。 「すまない、鬼ヶ崎!奥の廊下を進んできてくれないか!」 「はぁ?!廊下ぁ?!」 手摺から下に声を投げた。 不満そうなそれが飛んできたものの、鬼ヶ崎は指示を聞いてくれる気でいるらしい。 廊下の奥に進んだ姿を確認し、ホッとした。 「…永遠の愛、な」 おまじないの内容を思い出し、俺は息を吐く。 こんなことで永遠の愛など、確実になるのだろうか。 …と。 「おーしーぎーりっ!」 「おぅわ?!」 後ろからいきなり抱きつかれ、俺は蹈鞴を踏んだ。 「何をする!!」 「俺を置いてった罰でェ」 くすくすとたいそう楽しそうに鬼ヶ崎が笑う。 まったく、と呆れながら置いていったのは俺なので何も言えなかった。 ドキドキするからやめてほしいのだが。 「…行くぞ。…っ、いつまでくっついているんだ貴様は!」 「あぁ、ほら、前見てねぇと足滑らせるぜ、忍霧?」 「誰のせいだ!」 くすくす笑う鬼ヶ崎に振り向いて怒鳴りながら俺は小さく溜め息を吐き出す。 楽しそうに笑う、年相応の無邪気なそれを可愛いと思ったり思わなかったり。 「…雪だ」 「…寒ぃと思ったら」 暫く無言で歩いていた俺の声に鬼ヶ崎が眉を顰めるから、俺の白いマフラーを被せてやった。 「…」 「少しはマシだろう」 「…借りておく」 そういうと、鬼ヶ崎はマフラーを頭に被せたまま歩き出す。 良いんだろうか、と思いつつ俺は深く突っ込まないことにした。 「…っ!」 「こりゃあ……」 ふと、視界が開ける。 ぶわりと目に飛び込んできた景色は…今まで見た中で一番美しいそれだった。 恐らく、賑わうはずだった街に降る…白い雪は。 深く優しく降り積もり、眠りについた街を劇場に変えていく。 それを…綺麗だと、思った。 まるで、過去をなかったことにする…鬼ヶ崎のようで。
嗚呼、誰かの作り話だって良いじゃないか。 俺が、俺達が本物に変えてしまえば。
二人きり、廃墟寸前の時計台で愛を誓うなど、疑似結婚式のようだな、と思った。 「…鬼ヶ崎」 「忍霧…?」 ふわ、と白いマフラーを揺らす鬼ヶ崎に口づけをする。 少し震えたが、鬼ヶ崎は従順に受け入れた。 『廃都アトリエスタにて、永遠の愛を誓う』 どちらともなく重なる唇の下、そっと呟く。 ふわふわと、雪が手摺に降り積もった。 誰も居ないはずの時計台、今まで鳴ったことがなかった鐘の音がカランコロンと音を立てる。 それはまるで、俺達を祝福しているように思えた。
「で?どうだったんですか、おまじない!」 「…内緒だ」
マジックシェフ×リクルーター
カチャカチャと泡立て器で卵を混ぜる音が響く。 今日は来てくれるだろうか。 いつもの時間、水曜日の午後2時40分。 私が一番楽しみにしてる時間だ。 「こんにちは!」 カランコロン、という音と共に飛び込む、可愛らしい声。 「いらっしゃい、リクルーター!」 慌てて、泡立て器を置いて私は顔を出す。 私の顔を見るなり、ローズクォーツのポニーテールがぴょこんと揺れた。 彼女はリクルーター、私の店が出来た頃からの常連さんなの。 「ちょっと遅くなっちゃった」 「来てくれるだけで充分!で、何にする?」 メニューを差し出すとぱあっと表情が華やぐ。 ふふっ、可愛いなぁ! ブラックコーヒー頼んで、でも苦いの苦手だから後で砂糖とミルク足しちゃうのも、それが分かってるから紅茶にしようか迷ってるのも可愛いんだよね、リクルーター! でもやっぱりブラックコーヒーにしちゃうんだけど。 「はい、これ」 「わぁあ、良いの?!」 だから、私は最近試作として作ったスイーツをサービスしてる。 こんなキラキラした顔されたらつい作っちゃうの、仕方ないよね? 「いつも頑張ってるから」 「えへへ、ありがとう。…わぁあ、黄色い葡萄なんて初めて見た!」 嬉しそうな声。 彼女の目の前にあるのは、最近作り上げた三種の葡萄パルフェ、だ。 いただきます、と手を合わせるリクルーター。 匙に掬われた生クリームとマスカットが口に消える。 「んー、美味しい!こないだのイチゴソースが付いたブラックチェリータルトも、ラムネ色のメレンゲが乗ったブルーベリーマフィンも、青リンゴのミルフィーユもバナナオムレットも美味しかったけど、このパルフェもすごく美味しいわ!」 「ありがと。リクルーターが美味しく食べてくれるから頑張っちゃった」 「…」 そう言うと、リクルーターは小さく溜め息を吐いた。 あら、どうかしたのかしら? 「…何か、あった?」 「…上司に怒られちゃった」 困ったように笑うリクルーター。 「もう、何がしたいのかよく分からなくって…」 目を伏せるリクルーターに、私はパルフェに乗っていた巨峰を口に突っ込む。 「?!シェフ?!」 「今のリクルーターは、私のパルフェを食べて幸せになること。それが出来れば充分だわ」 「…シェフ……」 アクアマリンの瞳が大きく見開かれた後、とろりと溶けた。 「私、魔法が使えるのよ。一つはリクルーターを元気にする魔法」 一匙掬って、今度は自分の口に放り込む。 甘ったるく口に広がるのは、私が秘めた恋の味。 「…一つ?まだあるの?」 ポニーテールが不思議そうに揺れた。 それに内緒、と笑ってみせる。
背伸びして頑張るコーヒーな彼女に、私は甘い甘いスイーツの恋を、した。
汝、人狼成り也?~夜の始まり~(カイコク総受け風味)
最後の投票、あっきーは自分が勇者だって気付いて自ら毒を飲むと良いです。 人狼カイさんがザッくんに渡した薔薇を取り上げて「君に幸あれ」って3本渡して息絶えるやつ…
あっきーが毒を飲んだ時点で人狼側、つまりカイさんが勝利なんだけど、ザッくんが埋毒者だから心中エンドなんだよね。 「昼間、ないし夜に二人犠牲者が出ていない時点で埋毒者がまだいるという可能性を考えなかったのか?」「…っ」「哀れな人狼、可哀想な鬼ヶ崎。貴様は俺から逃げられない」みたいな 一日目から順に追放者(毒を飲む人)がユズちゃ、シン兄、ひーみん、チヒロ 犠牲者がカリリン、アンヤ、サクラ、マキマキ。 サクラが視たのが両方人狼だったんだよっていうあれ。
狩人カリリンが初日に護ったのがひーみんで、そのひーみんに襲われる。 サクラちゃんは2日目で身バレ、シン兄を人狼と言い当てる。その時点で襲っておけば良いのに狐(狂信者)アンヤを襲ってあげる優しい人狼ズ。ひーみんが3日目で予言者騙ってサクラ嵌めようとして逆に嵌められる。
3日目夜にサクラを襲い、4日目に実はグルなんじゃ疑惑をかけチヒロを嵌めようとするけど霊能者マキマキが「ユズちゃんは白、シンくんは黒、ヒミコちゃんは黒だよ」とか言い出すから現場がパニック、毒を飲む方が楽かも、なんて空気が流れる中上手いことチヒロを追放者として持ってく人狼カイさん。 4日目夜、マキマキを襲って運命の5日目朝。 ザッくんはカイさんに、カイさんはザッくんに投票する中、「アンヤくんがそろそろ寂しがってる気がするんですよね」って自ら毒を飲むあっきー。 ちなみに、ザッくん追放したらあっきー道連れで死ななきゃいけないのを何となく悟った所為。 …いや、これ、敢えてのあっきーを4日目夜に襲って勇者の加護で死ななかったあっきーと、霊能者マキマキと埋毒者ザッくんが残った、絶望的にピンチな人狼カイさんでも良い。 で、あっきーが毒を飲み、マキマキを襲い、ザッくんと心中エンド(そこ変わんないのかよ)
「どうやら貴様の独り勝ちの様だ」「あぁ、そうみてェだな。お前さんが毒を飲んでも道連れには出来ず、俺に襲われるしかねェ。どっちにしろ村は滅び…」「貴様が俺を襲えば道連れに貴様も死ぬ。貴様は毒を飲むしかない。…ああ、俺は毒を飲んだ際ランダムに道連れにするんだ。人狼除外とは言ってない」
…人狼除外、ではなかった気がするけど味方一人だったかな……どうだったかな…。 俺の毒で死ぬか、何の変哲もない薔薇の猛毒で死ぬか…選べ、鬼ヶ崎。って言われてたら良いな!!
埋毒者ザッくんに、死ぬときは一緒だ鬼ヶ崎、貴様が俺を早く殺しておかなかったことを後悔すると良い、って言われる人狼カイさんだよ!! ザッくんの毒に緩慢に殺されていく人狼カイさんのザクカイ楽しいけど絶対そこ行くまでが時間かかるやつ。
早々にザッくん襲って道連れに殺されるカイさんも可愛いけどな!! 死ぬ時は一緒だ、鬼ヶ崎。って言われるやつ。
2日目に人狼シン兄が追放(毒を飲まされた)後の狐(狂信者)アンヤくんが「シン兄のトコに行けんなら本望だよ。…ほら、とっととやれ」って言った後、カイさんの胸元掴んで引き寄せて「…地獄で待ってる」っていうアンカイも可愛いなって思うんです! (狂信者は誰が人狼か知ってる人狼は知らない)
ユズちゃが最初に追放されるのは弁が立つから、カリリンが最初に襲われるのは護る人考えなくて済むから、です!
マキマキ襲うとき(昼か夜はまだ迷ってるけど、取り敢えず夜の場合)、「…待ってたよ」って静かに微笑んで「……殺してくれて、ありがと」くらい言われてたらカイさんの罪悪感も上がるんじゃないかな……
これ、何が辛いって人狼のシン兄とひーみん見殺しにしなきゃなんないんだよね。 ひーみんがサクラちゃんの予言者対抗で出るなら三日目じゃなくて二日目かなー。 シン兄を人狼だって言われた時に「ちがっ、違います!」って言っちゃうひーみん。白か黒かはっきりしないからいっそ追放したら、って言う…
シン兄追放の場合、アンヤくんは絶対身内には投票しなさそうなんだけど(なのでひーみんが怪しんだチヒロとかに入れる)そうするとシン兄に投票するのってサクラとあっきーとマキマキとチヒロになるよね…ザッくんは最初からずっとカイさん狙ってて欲しいんだがそうすると決選投票になるね…
決選投票の場合は誰が入れたかわからないからシン兄のが多くなって負けちゃう感じかな、アンヤくんはシン兄が人狼だって知ってるし。 毒を飲む前、綺麗に笑って「どうか素晴らしい世界で生きていてくれますように」って言うシン兄。 それを見て「兄弟なんだから死ぬ時は一緒だ」って思うアンヤくん。
人狼と狂信者(狐)の兄弟なんて救われる訳ないと思ってるアンヤくん。 助けられないと知って見殺しにしたカイさんも同様に。だから「地獄で待ってる」になるんだよね。 ひーみんには生きて欲しいと思ってるのかもしれない、カイさんとは違ってシン兄助けてくれようとしたから。
汝、人狼成り也?~五日目~(カイコク総受け風味)
*あっきー自ら処刑、マキマキ死亡
汝、人狼成り也?~四日目~(カイコク総受け風味)
*チヒロ処刑、あっきー襲われるも死亡せず(勇者の力発動)
汝、人狼成り也?~三日目~(カイコク総受け風味)
*ひーみん処刑のサクラちゃん死亡
汝、人狼成り也?~一日目~(カイコク総受け風味)
さて、と白髪の少女…ユズが周りを見渡す。 いよいよ始まるのか、と全員が息を呑んだ。 「話し合いを進めていくわけだが…あまりにも情報が少ない。かといって役職はまだ明かさない方が良いだろう」 「な、なんで役職を明かしちゃいけないんですか?」 ユズのそれにおどおどと最年少でもあるヒミコが聞く。 「人狼が襲うのは日に一人と決まってる。なんでかは知らないが…人狼にも考えがあるんだろう。対してこちらも処刑出来るのは日に一人だ。…役職を明かしたとして村にとって重要な役職持ちを人狼にくれてやるわけにはいかないからね」 その質問に、ユズがにこりと笑って答えた。 なるほど、とヒミコが頷く。 「つか、なんで処刑は日に一人なんだよ?」 すると今度は目つきの悪い少年…アンヤが疑問を呈した。 「例えば二人処刑し、二人ともが村人なら村にとって損害になる…そんなことも分からないのか、貴様は」 「んだと、コラ!!」 ギロリと睨むマスクの少年…ザクロにアンヤが噛み付く。 「テメーマスクなんかしやがって怪しいなぁ?オメーが人狼なんじゃねぇの?」 「…なんだと?」 アンヤのそれにザクロが立ち上がった。 「アンヤ!」 「もー、ザクロ?!」 「元気だねぇ…。…喧嘩も良いが、そういうのは無事に人狼を倒してからにしてくれねぇか?」 シンヤとサクラがそれぞれを止める中、ゆわりと微笑むのはカイコクと名乗った青年である。 その、最もな意見に二人は大人しく黙り込んだ。 どうやらこの二人は性格が合わないらしい。 「あの、どうして投票は薔薇の花なんでしょうか?」 はい、と手を挙げたのはアカツキだった。 ああそれか、とユズが言う。 「処刑に使われる毒にこの薔薇が使われているからだよ」 「なっ、なんでそんなこと…」 あっさりと答えたユズに怪訝そうに聞くのはカリンだった。 「当たり前さ。…この毒薬を完成させたのはボクだ」 その答えに全員が目を見開く。 「なっ」 「言ったろう?ボクはしがない探求者だと」 ふわりとユズが笑い風に白衣をたなびかせた。 「ボクは姉と小さな研究所で化学者をしていてね。毒を集めるのはまあボクの趣味の一環でもあったのだけど、この度ボクが精製した薔薇の毒が狼狩りに利用される運びになったわけさ」
「人狼よりも狂信者な感じもするけどな」 「それでも、人狼寄りな事は変わりないでしょう?」 「ピエロを演じるのはボクの得意分野だけれども、命がかかってあるというのに危険な橋は渡らないさ」
「自分の命も危なくなるようなものを作ると思うのかい?ボク自身が?」 「作ったからこそその対象から除外されるように仕向けてる、ってのはあらァな」
「第一印象から決めていた。…貴様が人狼なら怖いと思う。俺は貴様に入れよう…鬼ヶ崎」 「人狼だから怖いんじゃねぇのか?」 ザクロのそれにカイコクが小さく笑う。 それに続いたのはユズだった。 「だがボクも同意見だ。君は真実が見えない。ねぇ、カイさん。君みたいな人が人狼なら…村が滅びる理由も頷けるだろうな」 「褒め言葉として受け取っとくぜ…路々さん」 薔薇を受け取りながら綺麗にカイコクが笑む。
くすりと、だが寂しそうにユズが笑う。 「自分で作った毒を飲み、最期を迎える…まあ、人狼に殺されるよりもボクらしい結末と言えるのかにゃ?」 白衣を翻し、瓶を手に取ったユズは…そのまま一気に煽った。 「良い結末になることを祈っているよ、諸君」 柔らかく笑んだユズが、倒れる直前「…おねぇちゃん…」と呟いた事は…誰も、知らない。
夜を迎え、それぞれが眠りについた。 「…あの子を、護ってあげなくちゃ」 一人、テントから這い出た人物が、小さく呟く。 投票を終え、一番気になった ふと自分の上が暗くなっている事に違和感を覚え上を見る。 そうして、息を呑んだ。 「そんな、まさか!あんた達が人狼だなんて!」
汝、人狼成り也?~ニ日目~(カイコク総受け風味)
*シン兄処刑、アンヤ死亡
|