司冬ワンライ/イルミネーション・コート

急に寒くなった。
はぁ、と息を吐く度に白いそれが霧散する。
普段より街がきらびやかなのは、イルミネーションが輝いているからだ。
世間はもうすぐクリスマス。
フェニックスワンダーランドでもクリスマスショーが繰り広げられていた。
見に来てくれる人が皆楽しそうで、司も嬉しくなる。
今日は特に。
「…司先輩!」
「おお、冬弥ではないか!」
駆け寄ってくるのは恋人の青柳冬弥。
ぶんぶんと手を振る司に息を切らせて駆け寄ってくる。
彼にはチケットを渡していたのだ。
「お疲れ様です、先輩」
「おぉ!見に来てくれてありがとうなぁ、冬弥!!」
「いえ。先輩の素晴らしいショーを見る事が出来て嬉しいです」
にこにこと微笑む冬弥に、昔より表情が豊かになってきたなぁと思う。
「そうだ、この後何か用事は…」
「あー!雪の精のお兄ちゃんだぁ!」
聞く司を遮ってキラキラした声が響いた。
声がした方を見れば少女がこちらを見ていて。
そう言えばまだ衣装であるフワフワしたコートを着たままだった。
「…前もこんなことがあった気がするな…」
「司先輩?」
思わず苦笑いをし、きょとんとする冬弥の手を引く。
「そうだ!今から彼とこの街に幸せの雪を降らさねばならないからな!では!」
ショーのセリフと同じ事を少女に告げ、冬弥の手を取り走り出した。
キラキラと煌めくイルミネーションの中を、ニ人で。
ふわりとコートの裾が揺れる。
「…せ、先輩!」
「なぁ、冬弥!このままデートしないか!!」
振り返り、司は笑いかけた。
驚いた顔をした彼がふわりと笑う。
その表情に。

雪の精は冬の名をした彼に、何度めかの恋をした。


(キラキラ、イルミネーションが輝く光の下で


特別なデートをしようではないか!)

司冬ワンライ/おうちデート・休日

「冬弥!今週末遊びにこないか?両親も咲希も不在でなぁ。ちょうど、お前と一緒に見たい映画がいくつかあるんだ」
「…!是非お願いします!」
嬉しそうな冬弥に司もニコリと笑う。
昔から表情変化に乏しい彼だが、最近はよく笑うようになっていた。
とても良いことだと思う。
こうしていると、彼もきちんと高校生だなぁ、などと思うのだ…自分も高校生なのはおいておくとして。
「では、土曜日と日曜日、どちらが良い?オレは土曜日にショーがあるが日曜は無くてなぁ」
「…珍しいですね。休日はかき入れ時の気もするのですが」
冬弥が小さく首を傾げる。
ああ、と笑ってみせた。
「ショースケジュールの都合だな。ステージによって休みが決まっているんだ。そうでもしないと毎日が出演日になってしまうし、次公演の練習期間も取れないだろう?」
「…なるほど。…俺の方は土曜日にイベントがあります。日曜は特に練習もなかったので…」
「?イベントの次の日なのに練習なしなのか?」
今度は司が首を傾げる番である。
彼らはストイックで、イベントの次の日だろうが何だろうが厳しい練習をしているはずなのに。
「はい。日曜は小豆沢も白石も、彰人も用事があるんだそうです」
「なるほどなぁ。なら、日曜にするか」
冬弥の答えにそう言えば、彼はほんの少しだけ眉を寄せて頷いた。
きっと、彼自身も気がついていないほど小さなそれ。
「…もしや、何か用事があったか?」
「…いえ。…あの…」
心配になって聞いてみれば冬弥がおずおずとこちらを見る。
言ってみろ、と促してやると彼は小さく口を開いた。
「…ご迷惑でなければ…その、土曜日の…夜にお邪魔したいな、と…」
「オレは構わんが…そちらは大丈夫なのか?」
「はい。父さんも、司先輩のところであれば文句はないと思いますので」
頷いた冬弥に、それならまあ、と思いつつふと気になることがあった。
何故、土曜日の夜から来たいと言ったのだろう。
イベントの後であれば疲れていそうなものなのに。
「それに…イベントの後すぐ、良い歌を歌った状態のまま、先輩にイベントの話を直接したかったんです」
「…!なるほど」
はにかんだ冬弥に司も小さく笑った。
なら、と彼を引き寄せる。
「たくさん、たくさん話をしよう。何せ、次の日は休み。しかも家で映画を観るという素晴らしい予定があるだけだ。これぞ、おうちデートの醍醐味だとは思わないか?なぁ、冬弥!」
囁いてにこりと笑う。


ふたりきりで過ごす素敵な休日。


好きな映画を見てたくさんたくさん話をして。


ほら、おうちデートをしよう。


(たまにはこんな休日もありだよな!)

司冬ワンライ・ホッと一息/お気に入り

なかなか忙しい日々だった。
学校が終わった後はワンダーステージでショーをしていたし、そんな週に限って不意打ちの小テストが立て続けだったのである。
もうすぐ合唱祭だからクラスの決めごとも多かったし、息つく暇もなかったのだ。
…そう、例えば。
「…!司先輩、こんにちは」
ショーで使った資料を図書室に戻しに来た司は、かけられた声にホッと息を吐き出す。
青柳冬弥。
司が最近一番会いたくて会えていなかった愛しの…恋人だ。
「久しぶりだな、冬弥!」
「はい。…最近お忙しそうにしていたので…会えて良かったです」
「うむ、オレもだ!」
へにゃ、と笑う冬弥に司も笑いかける。
やはり彼の笑みは癒やされるなぁとこちらも笑顔になった。
忙しかったそれが瞬く間に解けていく。
冬弥は本当に可愛らしく笑うなぁ、とぼんやり思っていた…その時だ。
あの、と冬弥が何かを差し出してくる。
彼の綺麗な手のひらに乗っていたのは小さなキャンディで。
「もし宜しければ。俺のお気に入りなんです」
「そうなのか!では遠慮なく貰うとしよう」
キャンディを摘み上げ、嬉しそうな冬弥を見ながら口に放り込む。
口いっぱいに甘いミルクが広がった。
「…美味い、が、甘いものは苦手ではなかったのか?」
「そうですね。これは一番司先輩を思い…出すので……」
首を傾げる司に冬弥が言いかけ、止まる。
耳元が見事に紅く染まった。
「…冬弥?何を思い出すんだ?」
「…ええと、あの……」
可愛い、と思いつつ聞けば彼は小さな声で「…キスです」と告げる。
「…一息つくどころではなくなったな」
「…す、すみませ…んぅ?!」
小さく笑い、司は冬弥を引き寄せた。



ホッと一息、お気に入りの場所で可愛い彼と二人きり。



(別の意味でホッと出来ないなんて、お約束もイイとこでしょ!)

類冬ワンドロ・準備/頬

寝不足・匂い

司冬ワンライ・ロミオと白雪姫/指輪

鏡よ鏡よ鏡さん 私の恋を悲劇のジュリエットにしないで!


ふ、と、上の方に目をやると恋人である冬弥が見えて、司はおぅい!と手を振った。
それに気づいたのだろう冬弥も微笑んで手を振ってくれる。
嬉しくなり、劇で使った余りのそれを取り出した。
跪き、それを高く掲げる。
え、という顔をする冬弥に、司は芝居がかった口調で語りかけた。
「おお、私の愛しいジュリエット!今すぐ救いに行くからな!この真っ赤なリンゴを私だと思っていてくれ!!」
言い終わり、掲げていた真っ赤なリンゴ型の箱を冬弥の方へ放り投げる。
一瞬びっくりしていたようだが、冬弥は無事に放り投げられたそれを受け止めたようだ。
流石だな、なんて笑いながら片手を上げ走り出す。
愛しの可愛いジュリエットに、会いに行くために。



「…司先輩」
「お、冬弥!まだ待っていてくれたんだな!」
図書室に着くと冬弥がふわりと微笑む。
あんな無茶振りなのに律儀に待っていてくれたらしい冬弥に、司は笑った。
「はい。司先輩から『愛』を受け取ったので」
柔らかい笑みで冬弥がリンゴの箱を見せる。
「ちゃんと分かってくれたのだな。流石は冬弥!」
「…はい。けれど、司先輩は以前ロミオをやっていらっしゃったから分かりますが…俺はジュリエット、という柄でしょうか」
「む、というと?」
冬弥のそれに首を傾げれば彼は優しく微笑んだ。
「俺は、あなたはどうしてロミオなの?と悲観したりはしませんから」
「なるほどな。オレも、ジュリエットが死んでいたからといって後を追う事はしないだろう。まあ、キスくらいはするかもしれないが」
「キス、ですか」
「ああ。生き返ってくれるかもしれないだろう?」
くすくす笑って冬弥を抱き上げる。
びっくりしている冬弥に向かって笑いかけた。
「ロミオの熱烈なキスで生き返る、なんてロマンチックだと思わないか?」
「…まるで白雪姫みたいですね」
楽しそうな冬弥に、たしかにそうだな、と思う。
「オレは、冬弥が白い棺にいようとも、必ず連れ出してみせるぞ。狭い狭いヴェローナの外、広く自由な世界までな」
「…!…はい」
へにゃりと冬弥が微笑んだ。
柔らかいそれに、司は触れるだけのキスをする。


ロミオは赤い甘いリンゴを食べて眠った白雪姫を、キスで目を覚したのでしたとさ



「ところで、このリンゴはなんですか?」
「ああ、これか?実は箱になっていてな…ほら」
「…!指輪…ですか」
「ああ。……オレと永久に共に、リンゴを食べてくれないか?」

いい兄さんの日の彰冬とレンカイ

「やぁ、いらっしゃい」
カラン、とカフェの扉を開けると珍しくカイトが出迎えてくれた。
「こんにちは、カイトさん」
「珍しいッスね、1人なの」
「ううん、奥にレンがいるよ」
呼ぶかい?と聞かれ、返事をする前に大きな声が二人を迎える。
「あー!彰人と冬弥だ!いらっしゃい!」
「声がでけぇっつうの…」
「こんにちは、レン。今日も元気だな」
嫌な顔をする彰人と、くすくす笑う冬弥にカイトが目を細めた。
「二人とも、珈琲飲むかい?」
「今日はカイトが淹れてくれるんだよー!ブラックでも美味しく飲めるんだって!」
首を傾げるカイトと、嬉しそうなレンにへぇ、と彰人、お願いします、と冬弥が言う。
「彰人くんも、いいかい?」
「じゃ、お願いします」
答える彰人に、はぁい、とカイトが微笑んだ。
カップ持ってくるね!とレンが奥に引っ込む。
「はい、持ってきたよ!」
「ありがとう、レン」
カップを受け取り笑みを見せるカイトと、少しドヤ顔のレンを見ながら、冬弥が小さく笑った。
どうかしたのかと見れば彼が柔らかい笑みを見せる。
「こうして見ると、なんだか兄弟みたいだな」
「えー?オレとカイトが?そうかなー?」
「ああ。何だかたまに逆転する兄と弟、という感じがする」 
「あー…。カイトさん、普段は頼りねぇもんな」
「あれ?ボク褒められてないね?」 
きょとんとしたカイトに、そんなことは、と冬弥がフォローしてくれた。
そんな彼の袖をレンが引く。
何故だがレンはわくわくした表情で。
「普段はオレが兄ってこと??」
「ふふ。二人に会ったのはレンの方が先だからね」
「まあそれもそっか…。…って、頭撫でるなってば!」
もー!と怒るレンにカイトがごめんごめん、と軽く謝る。
冬弥が楽しそうに笑った。
「そういえば、彰人くんと冬弥くんは、お誕生日はどっちが早いんだっけ」
カイトが首を傾げるから、二人して顔を見合わせる。
それから。
「あー…冬弥ッスね」
「俺が五月、彰人が十一月です」
「じゃ、冬弥君のほうがお兄さんだね」
二人の答えを聞き、カイトが楽しそうに笑った。
その言葉にまた顔を見合わせる。
「…冬弥が兄さん、ねぇ…」
「あまりそんな気はしないな」
悩む彰人に冬弥が肩を揺らした。
「まあな。オレも冬弥も生粋の弟だし」
「面倒みが良い彰人はともかく、俺は弟気質かもしれないな」
「そ?冬弥もお兄ちゃんっぽいとこ、ちゃんとあるよ!冬弥は優しいし!!」
笑顔のレンに冬弥も、ありがとう、と微笑んでレンの頭に手を伸ばす。
くしゃ、と髪を撫でる冬弥に、「冬弥まで!」とレンが膨れた。
確かにそういう面を見れば兄っぽいような…気もするけれど。
つい、と彼の服を引いてみる。
首を傾げこちらを見る冬弥に、彰人は笑った。
「冬弥兄さん?」
「…!」
目を丸くし、冬弥がこちらにも手を伸ばして来る。
え、と思えば彰人の頭にそっと手を乗せてきた。
「どうした、彰人」
優しい声音の冬弥に、今度はこちらが目を丸くする番で。
「何だか、照れるな」
「なん…っ、お前なぁ……」
珍しく照れた表情をするから、彰人は、はぁ、と息を吐いた。
やはり冬弥とは対等な関係が一番だ。
相棒で、それから恋人で。

(別に彼に良い兄さん、は求めてないしな!!)




「…つーか、レンは弟で良いのかよ」
「可愛い弟が、時折見せるギャップで雄になるのもまあありかなーって」
「…そういうトコな、お前」

ツインテールの日と猫耳パーカー

わんわんニャーニャー

司冬ワンライ・わんわんにゃーにゃー/いい夫婦の日

「しばお、待ってー!」
後ろから聞き覚えのある声がして、司と冬弥が振り返る。
「おぅわ?!」
「司先輩?!」
その途端、柴犬が飛びついて来て、司はバランスを崩した。
尻もちを付きかけ、何とか耐えたのは飼い主である穂波が何とか止めてくれたからである。
「すっ、すみません、司さん!」
「いや、オレは大丈夫なんだが…。何かあったのか?しばおは無闇矢鱈と走り出す性格ではないように思っていたが」
平謝りの穂波に首を傾げれば、彼女は申し訳なさそうにこちらを見た。
「…実は……」


穂波に連れられて現場にやって来れば、妹である咲希やその友人の一歌と志歩がいて。
「司さん!…と……」
「お兄ちゃん!とーやくん!!」
「おお、咲希!一歌に志歩もいたのか」
ぶんぶんと手を振る妹と、驚いた目でこちらを見る一歌と志歩。
駆け寄ると一歌が「ありがとうございます。私達だけじゃどうにもならなくて…」と言った。
「なぁに、気にするな!…それで?子猫はどこに?」
「あそこです」
尋ねる司に志歩が指をさす。
その先、少し高い木の上では子猫が震えている。
実は、練習の後久しぶりにしばおに会いたい!と咲希が言ったようで、三人が待つところに穂波が連れてきたようだ。
その時に木から降りれなくなった子猫を見つけたらしく、どうするかと思っていたところにいきなりしばおが走り出した、というのが経緯だったらしい。
「しばおがお兄ちゃんととーやくんを連れてきてくれたんだねーっ!」
「…なるほど、賢いですね」
「えへへ、でしょでしょ!」
「…なんで咲希が自慢げなの」
頭を撫でる冬弥に咲希が嬉しそうに言った。
それに志歩が呆れたように突っ込む。
くすくす笑う穂波と、もーと困ったような一歌に、仲が良いなぁと思いながらも司はふむ、と子猫を見上げた。
「冬弥」
「…はい」
呼びかけると冬弥が駆け寄ってくる。
彼にプランを話すと彼はすぐに頷いてくれた。
よっと木に足をかけて登り、細い枝に体重をかける。
「ええっ?!危ないよっ!」
「大丈夫だ!…ほら、子猫、あっちだぞ!」
驚く咲希に笑いかけ、司は誘導した。
その下では冬弥がブレザーを広げて待っている。
にゃ、と小さな声で鳴いた子猫があまり高くなくなったからだろうか、しばおがわん!と吠えた瞬間そこに降りた。
「…お帰り」
優しく抱きとめ、冬弥が微笑む。
「無事に降りたなっ…と」
それを確認して司も木から飛び降りた。
「まったく、可愛い顔して無茶をするやつだな」
「もうしては駄目だぞ?」
冬弥が抱く子猫を撫で、司は言う。
彼も軽く笑いながらそう続けた。
「お兄ちゃんすごーい!とーやくんもありがとう!」
「ありがとうございます。…無事で良かった。ね、志歩」
「なんで私にだけ…」
「ふふ。…急だったのに、ありがとうございます」
「…俺は何も」
みんなに礼を言われ、戸惑った様子の冬弥の肩を抱く。
「何を言う!冬弥がいなければ子猫は降りることが出来なかったかもしれないからな!なぁ、子猫?」
猫の頭を撫でると、にゃぁ、と鳴いた。
それに、冬弥も目を細めて優しく笑う。
「…お前の役に立てたのなら、良かった」
「うむ!…そういえば、こいつはなんだか冬弥に似ている気がするな?」
「そうでしょうか?俺はここまで無茶をしませんが…」
「そうか?未知の世界に迷い無く飛び込んでいく姿勢は、何だか似ている気がするぞ」
「…でしたら、飛び込んでいくことが出来るようにしてくれた先輩はこの子猫にとってのしばおのようなものですね」
ふわふわと言う冬弥が可愛くて司は息を吐いた。
にゃあ、と鳴く子猫が冬弥の肩に収まる。
ずるいぞ、と見つめたそれは伝わらず、司は手を伸ばした。



「…お邪魔そうだし、行こっか」
「だねぇ。子猫ちゃんもとーやくんに預けてたら大丈夫そうだし!」
「…。…なんか、司さん、お母さんを子どもに取られたお父さん、みたいだったね」
「し、志歩ちゃん。…わたしもちょっと思ったけど……」
「アタシも!なんだか良い夫婦って感じだよね!」
「…あはは…。…そういえば今日は十一月二十二日だよね」
「ああ、そういえばそうだね」
「確か、語呂合わせで……」

(彼女たちの脳裏にチラつくそれ

今日は一体なんの日?)