彰冬

ふ、と冬弥は窓の外、星が輝く空を見上げた。
こんな夜はあの時の事を思い出す。
…彼が、自分を連れ出してくれた…あの夜を。
「あら、また空を見ているの?」
「…ルカ、さん」
くす、と笑うのは冬弥の教育係を勤めた巡音ルカだ。
メイド長でもある彼女は仕事に関してはストイックだが、それ意外には優しいのである。
黒と白のエプロンドレスを閃かせ、ルカは笑んだ。
「ご主人様が帰ってきたら一緒に飲むと良いわ」
「…ありがとうございます」
「ふふ、気にしないで」
渡されたティーポットをテーブルに置き、礼を言えばルカは綺麗に笑みを浮かべて部屋を出る。
冬弥も僅かに笑みを浮かべ、また窓から空を見上げた。
「…彰人」
小さく呟き、そんなすぐには帰ってこないか、と仕事に戻ろうとした時である。
「…呼んだか?冬弥」
ぶわりと風が吹き、白のマントがはためいた。
舞い上がる自身の燕尾服を抑え、見上げたその先に居たのは。
「…彰人!?」
不敵な笑みを浮かべ、仕事から帰った…巷で噂の大怪盗、冬弥の主人でもある彰人…であった。

「…随分早かったんだな」
「まあな。やることもいつもと変わんねーし」
「…それは、そうだが」
シルクハットを脇に置いて伸びをする彰人に冬弥は小さく息を吐く。
彰人の執事である冬弥だが、この口調が許されているのはある理由があった。
…それは。
「お前を『盗んだ』あの時に比べりゃどんな仕事も遥かにマシだっての」
ニッと彰人が笑う。
そう、冬弥は盗まれたのだ。
他ならぬ彰人の手によって。
幼い頃から、クラシック界次世代の宝物、と称されてきた冬弥であったが、それが窮屈で仕方がなかったのだ。
そんな折、まだ見習いだった彰人に見つかり、盗んでもらった、のである。
世間はたちまち大騒ぎになったが、それでも今尚彰人の執事として冬弥が暮らしていられるのは奇跡に近かった。
「冬弥、オレの執事。…お前は一生オレのものだ。そうだろ?」
「ああ、勿論。俺の人生の全てはお前のものだ…ご主人様」
風が吹く。
宝物である冬弥の柔らかい笑みは、夜空のカーテンに阻まれた。

(その宝は、奪った怪盗、ただ一人だけのもの!)


「今日は来てくれてありがとう!」
センターであるカイトが笑顔で手を振る。
きゃあ!と女子が黄色い声を上げた。
…これに意味があるのだろうか、なんて考えるのも馬鹿馬鹿しくなってやめる。
クラシックを辞めたくて、父親に反抗したくて応募した書類選考にあれよあれよと通ってしまったアイドル活動は、冬弥にとっては向いていなかったらしかった。
動機が不純すぎる、と小さく息を吐いて、冬弥は着せられた衣装をつまみ上げる。
「…近未来だって、変わってるよねぇ」
「…カイト、さん」
優しい笑顔で話しかけてくるカイトは、舞台上と態度が変わらない、優しい人だ。
この人がいるから、辞めてはいけないと、この場に留まり続けている。
「ね、冬弥くんは知ってる?この衣装、どこぞの怪盗が狙っているらしいよ?何でも、世界中の金庫全てを開けてしまえるのだとか」
「…本当、ですか?」
「さあ?でももし本当なら夢があるよね」
首を傾げる冬弥に、カイトが笑い、楽屋に帰っていった。
和ませてくれたのだろうか、と少し笑みを浮かべ、冬弥も楽屋に戻ろうと足を踏み出した…その時。
ぶわりと、風が吹く。
思わず顔を腕で庇い、風がおさまるのを待った。
「…?」
なんだろう、と恐る恐る目を開き、顔を上げる。
演出でも見たことがない、それ。
おさまった風の中、一人の男が立っていた。
白いシルクハットと同色の衣装、夜空の色と同じマントをはためかせた…オレンジ髪の男。
変わった出で立ちなのに目が離せない。
「…お前、ステージで歌ってたやつ?」
「え?あ、あぁ。そう…だが」
話しかけてきた男にようやっとそう答えればふぅん、と言った。
そうして。
「…お前、オレと来ねぇ?」
「…え?」
手を差し出す男に、きょとんとする。
何を言っているのだろう、この男は。
「お前さ、歌が好きな割にこの業界は苦手だろ」
「…!」
男の言葉に目を見開く。
…事実でしか、なかったから。
「オレと来れば夢を魅せてやるぜ」
「…夢を…?」
「あぁ」
強く頷く男に冬弥はおずおずと手を乗せた。
ぐっとそれを引かれ、腕の中に収まる。
「オレは東雲彰人。一応怪盗やってる。お前は?」
「…冬弥。青柳冬弥。…俺を、連れ去ってくれ」
「仰せのままに」
冬弥のそれに男…彰人が笑った。
トン、と跳び上がり、体が浮く。
目をぎゅっと瞑る冬弥に、大丈夫、という声が響いた。
その声に身を任せる。
何故だか大丈夫だと…思ったから。

その日、世界の宝である一人のアイドルが姿を…消した。





「…っていうのはどうかと思うんだけど…」
「そっちも良いなぁ!迷うよねー…あ、彰人くん!冬弥くん!」
「…なんの話してんだ、オメーらは…」
ぱや!と嬉しそうにリンが笑う。
その声に嫌そうな顔をしたのはレンだ。
嫌なのはこっちなのだが、と思いつつ彰人はレンに軽い手刀を振り下ろす。
「~っ!もうっ!なんでオレだけ?!」
「嫌なら止めとけ」
「…で、何の話を?」
涙目で反論するレンにいけしゃあしゃあと言う彰人を見ながら、冬弥が首を傾げた。
あのねぇ!と楽しそうに説明しだすのはリンである。
「こはねちゃんの、学校のお友だちが遊園地でショーをやってるんだって!それで、台本を考えるのが大変そうだったから皆でアイディアを出してきたんだよって言ってたの!」
「んで、リンが楽しそうっていうからさ?オレも脚本とかそういうの、興味あったし!」 
「…だからってオレらで考えんなっつー…」
説明する彼らに向かって呆れたような表情をする彰人に、冬弥がくすくすと笑った。
「ねぇねぇ!冬弥くんはどっちが良い?!」
「…俺か?」
「うん!あたしの怪盗とアイドルか!」
「オレの、怪盗と執事か!」
わくわくとリンとレンが聞く。
オレの意見は、だとか、なんでオレが怪盗なんだ、とかツッコミどころは山程あったが言葉にする前に冬弥が手を握ってきた。
「冬弥?」
「…俺は、この…俺の隣にいてくれる彰人が一番良いな、と…思う」
にこ、とリンに向かって微笑む冬弥。
うわぁ!と目を輝かすリンと、「…冬弥って天然無自覚?」と彰人に囁いてくるレン。
それに視線で返事をし、まだ何か聞き出そうにするリンと、何なに?と様子を見に来たミクとMEIKOから逃げるべく、握られた冬弥の手をぐっと引いた。
そして。
「…あー!逃げた!」
「うるっせ!オメーらに構ってる暇はねーの!…走るぞ、冬弥!」
「え、あ、彰人!!」
焦る冬弥を引っ張って彰人は走る。
まるで、宝物を奪う怪盗のように。


風をきる。


セカイを駆けて。


二人ならば何処までも行ける気がした。

同棲することを決めた類冬の話

「ねぇねぇ、類くん!!」
いやっほい!といつも元気なえむが話しかけてきて、類はにこりと微笑む。
数年経っても彼女の元気さはピカイチで、微笑ましいとさえ思った。
「どうしたんだい?えむくん」
「あのねあのね!類くんって、今一緒に暮らしてる子がいるでしょ?どうやって一緒に暮らそーってなったのかなーって!」
「うん?」
「冬弥くん、だっけ!一緒に暮らし始めてから類くん、はぴはぴオーラがいーっぱいだから、いいなぁって!でも、一緒に暮らそーってなった話とか聞いたことないから…およ?」
無邪気に話していたえむが誰かに手を引かれる。
そこには真顔で首を振る司と寧々の姿があった。
「…地雷を踏んだな、えむ」
「どっちかというとスイッチでしょ、あれ」
「え、もしかしてダメだった…?」
ひそひそと話し合う三人に類は気にも留めない。
がしりとえむの手を握りニコリと笑った。
「聞きたいかい、えむくん!そう、あれは2年前、僕の卒業式前夜…」



春の風が吹く、暖かい日だった。
卒業式なんて類にとってはただの1行事、通過点でしかない。
だが、この学校を去るのが名残惜しいな、と思うのはある理由があった。
「…冬弥くん」
「…神代先輩…」
図書室に行くとカウンターにいた冬弥が表情を柔らかくさせる。
嬉しそうなことが見ただけで窺え、可愛いな、と思った。
「やぁ。こんな日まで図書委員かい?」
「いえ。…俺が、変わってもらったんです」
「?わざわざ?」
「はい…先輩に、会いたかったから」
ふわりと笑む冬弥に胸がきゅんきゅんとする。
何故こんなにも可愛らしいのだろう!
「ふふ、嬉しい事を言ってくれるねぇ」
「…それに、此処でこんな風に過ごせるのは…最後ですから」
少し寂しそうな冬弥を、思わず引き寄せた。
先輩?!と驚いた声の彼に類は思わず「最後にはしないさ」と告げる。
「…え?」
「…ショーキャストもあるからね、フェニックスワンダーランドの近くにアパートを借りるつもりなんだ。是非、遊びに来ると良い」
「…はい」
驚いた表情の彼がふわりと笑った。
窓の外ではふわりと桜の花びらが舞い落ちる。
「…でもきっと、先輩のアパートに行ってしまったら…離れ難くなると思います。神代先輩の隣は…とても心地良いので」
「1年の辛抱だよ、冬弥くん」
「…そう、ですね。1年…。…?」
目を伏せていた冬弥が小さく首を傾げた。
何かに気付いたらしい。
クスリと笑った類は跪き、彼の手を持ち上げた。
「…1年後、君が卒業したら僕と共に暮らしてくれないか?冬弥くん」
「…っ!」
「僕は、君の笑顔を見ていたいんだよ…君の隣で」
微笑む類に冬弥が桜が咲くような笑みを浮かべる。
よろしくお願いします、という柔らかい声は、春の風に融けて消えた。


「…と、まあこれが僕と冬弥くんが一緒に暮らし始めた馴れ初めなんだけどね…」
「ほへぇ…!類くん、すっっごいロマンちっくだねぇ…!王子様みたい!」
「ふふ、ありがとう。えむくん」
「…身内の恋愛譚を、割と定期的に聞かされる身にもなってほしいのだが…」
「…それは同感」
キラキラしたえむと、げっそりした司と寧々に類はにっこりと微笑んだ。
…と。
類のスマホが音を立てる。
電話の相手は冬弥からで。
「失礼。…もしもし、冬弥くんかい?珍しいねぇ、如何かしたのかな…」
ウキウキと喋り出す類に他の3人が目配せをする。
「春だなぁ」
「春ねぇ」
「春、良いよねっ!あたし大好き!」
司と寧々のそれに、えむが無邪気に言った。
その声を聞きながら類も内心同意する。


春、君との思い出が詰まった幸せの季節!
(それは春夏秋冬いつだって!)

ほのぼの司冬

「…む?あれは…」
商店街を抜けた脇にある小さなゲームセンター、そこに見覚えのあるシルエットを見つけ、司は駆け出した。
「冬弥!」
「…っ!…司先輩」
びく、と肩を震わせた冬弥がこちらを振り向き、ホッとしたように表情を崩す。
どうやら驚かせてしまったようだ。
「驚かせてすまない!…今日は何のゲームをしているんだ?」 
笑いかけ、ひょいと彼の手元を覗き込む。
いえ、と小さく返してきた冬弥はどうやらもう戦利品をゲットしたようで、小さなぬいぐるみのキーホルダーを2つ手に持っていた。
見た目に寄らず、冬弥はクレーンゲームが得意なのである。
「…キーホルダーのクレーンゲームか。大きいぬいぐるみともまた違ってまた難しそうだな…」
「そうでも、ないですよ」
むむ、と眉を顰める司に冬弥が小さく笑んだ。
柔らかい笑みが出来るようになったな、と司も笑う。
「で?戦利品は持ち帰るのか?困るなら持ち帰っても良いが」
「いえ。…今日は俺が欲しかったので」
微笑む冬弥に司は首を傾げた。
彼はクレーンゲームは得意だが、商品そのものに興味があるわけではない。
特に大きなぬいぐるみは置き場所に困るようで、妹がいる司や、姉がいる冬弥の友人で相棒の彰人に貰ってもらっているのだ。
だから今回もそうなのかと思いきや…珍しいな、と思う。
筐体の中身はごく普通のぬいぐるみキーホルダーで。
マイクを持ったレモン色の犬やステッキを持った青色の猫、本を持った水色のうさぎ等、随分カラフルで豊富なデザインのそれが詰め込まれている。
確かに可愛いし目を引くが…何故これが欲しいのだろうか。
じぃっと見ていると、水色のうさぎがなんだか冬弥に思えて、司は小さく笑う。
「…?あ、の」
「いやぁ、あのうさぎが冬弥に見えてきてなぁ」
「…っ!そう、ですか」
「?冬弥?」
目を見開く彼に思わず首を傾げた。
何か変な事を言ってしまっただろうか。
「…いえ、あの実は…俺も同じことを思っていて…」
「む?」
「…この子が、司先輩に似ていたので…思わず」
そっと見せてきたのは星を抱く黄色の犬である。
少し頬を染める冬弥の手に乗ったそれはどこか誇らしげに見えた。
ぶわりと何とも言えない感情が湧き出る。
「…。…冬弥、取り方を教えてくれ」
「…えっ」
それを悟られないように筐体の方に向き直った。
「水色のうさぎだ、あれを取るぞ」
「司、先輩?」
「…オレも、冬弥が欲しいからな」
「…っ!」
「それに…一人だと寂しかろう?なぁ、オレ」
ちょい、と冬弥の手の中にいる犬を突く。
花が咲くような笑みを見せる冬弥が、そうですね、と小さく言った。


大好きなお前だけが、『オレ』を持っているなんて、不公平じゃあないか!

「司先輩、もう少し左です」
「…ぐぬ…こうか?!!」
(それから、犬『司』の相方が来るまで…数十分かかったのは、秘密の話)

ほのぼの彰冬♀

いつもの放課後、いつもの彼女の教室…だったはず…だった。
「おい、冬弥ぁ、帰る…あ?」
「あ、彰人じゃん!」
教室の入り口で声をかけた彰人に明るい顔でそう言うのは彰人たちの音楽メンバーの一人である杏だ。
「?!彰人?!」
「動かない!今いいトコなんだから!」
驚いたようにこちらを向く冬弥に、ぴしゃりと言ったのは瑞希である。
「…なんだ、あれ」
「可愛いでしょ?言っとくけど、冬弥から言い出したんだからね」
どうやら瑞希にヘアアレンジをしてもらっているらしい冬弥を見ながら杏に問えば、楽しそうに笑いながら彼女は言った。
「あ?」
疑問符を浮かべる彰人に、杏はにひ、と悪い笑みを浮かべる。
その笑みと冬弥の焦り具合に、嘘ではないのだろうな、と思った。
彰人としては瑞希に遊ばれているとばかり思っていたのだが。
「…で?何でこんなことになってんだよ」
「彰人、日曜のイベント覚えてる?対戦形式のやつ。皆で出たよね」
「…ああ。珍しくお前らが髪型揃えてきたやつだろ」
杏に言われて思い出したのは、この前のイベントのときの事だ。
普段ツインテールのこはねやストレートな冬弥、少しウェーブかかった杏も、髪型をセカイにいるバーチャルシンガーのミクに合わせてきたのである。
珍しかったからよく覚えているのだが…それがどうかしたのだろうか。
「あの時、冬弥のこと褒めてたじゃん!冬弥ってば、それが嬉しかったみたいでさ、今日も瑞希に頼みに来たんだよ?」
「…は?」
小さな声で言う杏に彰人は思わずぽかんとする。
確かにあの時「いつもの髪も似合ってるけど、それも良いな」と言った。
何気ない一言だったが、まさか彼女がそれを嬉しいこと、と思ってくれているとは。
「…そんな喜ぶならもっとちゃんと言ってやりゃあ良かった」
はぁ、と溜め息を吐き出し、頭を掻けば、きょとんとした杏がけらけらと笑う。
「だったら、今言ってあげれば良いじゃん!」
「…あぁ?」
「出来たぁあ!見てみて弟くん!ボクの最高傑作!素材が可愛いから勿論なんだけど、100点満点に可愛いでしょ?!」
瑞希の嬉しそうな声が響いた。
ずい!と前に出された冬弥がおどおどとこちらを見ている。
何か言いなさいよー!と笑う杏を睨み、少し目を逸らしながら「…まあ、いいんじゃねぇの」とだけ言った。
「えー?!ボクの最高傑作掴まえてどーいうこと?!」
「っていうか、ちゃんと褒めるって言ったくせにー」
「あぁっ、もうっ、うっせーな!」
ぎゃんぎゃんと責め立てる外野に一喝する。
その横で柔らかい笑みを浮かべる冬弥の手を引いた。
ありきたりな言葉でそんな嬉しそうな顔しないでほしい。
先程の文句は何処へやら、騒ぎ出す杏や瑞希から離れる様に彼女を廊下に連れ出した。
「…?!彰人??」
「…お前も。んな単純な言葉で喜んでんじゃねぇぞ」
「…え?」
向き直り、不思議そうな顔の冬弥に言う。
彼女の長い髪に着けられたアクセサリーが揺れた。
「言っとくけど、そんな事しなくてもお前は、その…良いんだからな」
「…!…彰人」
「だから…あー……くそっ、恥ずいな…」
驚いたような冬弥に、何か言ってやりたいのに言葉が詰まる。
ガリガリと頭を掻けば彼女はくすくすと笑った。
「…大丈夫だ。彰人が、良いと思ってくれていることが分かったから」
「…冬弥」
「まあ…少しこの格好も恥ずかしい…。…?!」
ふわふわと笑う彼女を思わず抱きしめる。
飾り付けた冬弥も可愛いと思うけれど…普段の、いつもの表情をする彼女が一番良いと…そう思った。


キラキラと、彼女のアクセサリーが光る。

それだけで…普段の何倍も輝いて見えた。


(普段ですら、冬弥は輝いてるってのにな!!)



「…おいお前達、ここが学校だというのを忘れているのではあるまいな…??」
「ふふっ、仲が良いのは良いことだけどもねぇ」
「…?!司先輩?!神代先輩も!」
「…んだよ。冬弥はオレのだぞ」

冬弥♀ちゃんをイジメるモブ女子にブチ切れる彼氏ズの話

最初の印象は、キレイな髪で、指の長い女の子だなってことだった。
意外にハスキーな声の彼女は、これまた意外に友だちが多くて。
「…ねぇ、青柳さん。何か探してるの?手伝ってあげても良いけど」
「…。…草薙。…ありがとう、助かる」
「代わりに、読みたい本があって…」
クラスメイトでもある草薙寧々と連立って図書室に行ったりだとか。
「お待たせ、冬弥!!…あれ?なんか寝不足?元気ないけど、大丈夫?」
「…。…いや、新しく買ったミステリー小説が良かったんだ。…白石も読んでみるか?」
「えー、私に読めるかなぁ」
風紀委員の白石杏と笑いあっていたりだとか。
「やっほー!…って、あー!またそんなちょっとしか食べてない!弟くんに言いつけてやるんだから!」
「っ!それだけはやめてくれないか?暁山」
「もー、ならちゃんと食べれば良いのにさぁ」
あの暁山瑞希と昼食を共にしていたりだとか。
どことなくぼんやりしているのに、彼女には隙がなかった。
…いや、多分、これは、皆に守られている。
何故分かるか、って?
…そんなの、見てればわかる。
女の子だけじゃない。
例えば…ほら。
「おい、冬弥ぁ!さっさと帰るぞ!」
「冬弥!たまにはオレが、家まで送り届けてやろうか?ん?」
「やぁ、冬弥くん。それより、冬らしいバルーンアートを考えたんだけど、寄り道して行かないかい?」
同じ学年で隣のクラス、確かストリート音楽をやるチームメイトの東雲彰人と、一つ上の先輩で幼馴染みの天馬司、その彼のショーキャストメンバーで彼女にとっては先輩の神代類。
誰かがいつも一緒にいる。
…忌々しい。
「…おい、類!オレの可愛い冬弥を悪い道に引きずり込むな!」
「おや、司くん。いつから冬弥くんは君のものになったのかな?」
「そーッスよ。大体、冬弥はオレの、相棒だし」
「…彰人。…司先輩も神代先輩も…」
騒ぐ周りに困った顔をする彼女。
綺麗な髪がふわりと、揺れた。



「ありがとう、助かっちゃった」
音楽準備室に連れ込むことに彼女を成功した私はニッコリと笑う。
お人好しっぽいな、とワザとらしく彼女の前で困っていれば彼女の方から声をかけてきたのだ。
…本当に忌々しいったら!
「いや。別に大したことはしていない。…役に立てて良かった」
「本当にありがとう!…ねぇ、青柳さん」
「…?どうし…っ?!」
ふわ、と、首を傾げる彼女の髪を掴んだ。
「い、た…なに…?」
「…いい加減さぁ、ウザいんだよね」
「…え?」
「周りに男侍らせてモテてるつもり?そーいうの、ムカつく」
「…あ、の」
困った顔で私を見上げる彼女にイライラが止まんない。
なんで、そんな顔で私を見るの。
「青柳さんのお父さんって有名な音楽家なんだって?あは、お金持ちじゃん。宮女にでも行ってればこんなことにはならなかったのにね」
「っ、父さんは…っ!」
「そーだ!ピアノ弾いてよ、青柳さん!仮にも音楽家の娘、でしょ?」
「…ぅ、ぁ…」
「やっだぁ、弾けないの?可哀想!なら私が教えてあげる。ほら、来て?」
髪を引っ張って彼女を急き立てる。
…それが、嫌だってことを知っていて。
「ぃ、たぃ…っ!」
「早く来ないからじゃん!それとも何?髪引っ張られるのが好きなんだ??いい趣味ー!なら明日からも毎日、今までのことに加えてやってあげるね!」
「…ぇ?」
呆然とする彼女に私は笑いかける。
絶望を映すその目に私が写りこんだ。
「ね、気づかない??今までの事はぜーんぶ私なんだよ?草薙寧々と探してた貴方の捨てられた教科書も、白石杏が心配してた寝不足の原因である無言電話も、暁山瑞希が怒ってた昼食の行方も!ぜーんぶ私!」
「…っ!どう、して」
「言ったじゃん、ムカつくって。手っ取り早く虐めるなら此処で青柳さんを犯しても良いんだよ?あははっ、彼氏たちは怒るだろうね?」
信じられない、という彼女に私は笑みを作る。
「…今日は一小節弾けたら帰してあげる。弾けなかったら蓋をそのまま閉めちゃうかも?…動けないなら何したって良いよね?」
「…っ!」
「ちなみに明日からも続くからね?逃げたりしたら…分かるよねぇ?青柳さん」
「…わか…」

「逃げたりしたら。…どうするんだい?」

声がした。
振り向いた私に冷水が浴びせられる。
「っ?!!」
「冬弥!…大丈夫か?濡れてないか?」
「…あき、と」
ホッとしたように彼女が息を吐いた。
何するのよ!と激高する私に、東雲彰人は。
「ああ、すみません。…ゴミかと思って」
にこりと笑い、いけしゃあしゃあと言ってのけた。
「ゴミなら処分せねばなるまいな、類!彰人!」
「そうだねぇ、司くん」
ポカンとする私にかけられる二種類の声。
「…人のものに手を出したらどうなるか…教えてやらねば。そうだろう?」
「華は綺麗であるべきだよ。…穢すものはなんであれ排除しないとね」
無表情の天馬司と綺麗な笑みの神代類の対比が恐ろしい。
ちらりと彼女を見れば東雲彰人がこちらを睨みつけていた。
握り締めた拳から血が滴り落ちている。
カタカタと震える彼女は私から目が反らせないようで。
それが何だか堪らなく愉快だった。
だって、彼女が私だけを見ていてくれている!
男たちには目もくれず、私だけを!
「センパイたち、早く片付けてくれねぇとオレがヤバイんスけどね」
「分かっている。オレだってだなぁ…!」
「…ふふ、あはははは!!」
何だか可笑しくなって笑いだした私を、男たちがギョッとした目で見た。
「…行こうぜ、冬弥」
「…彰人」
「僕達はこれを先生に引き渡してから行くよ」
「心配するな、冬弥。もう大丈夫だから」
声がする。
嗚呼、すごく耳障り!
「ねぇ、青柳さん!私、ピアノコンクールで一緒だったんだよ!貴方のピアノ、覚えてる!そんな野蛮な人たちと一緒にいないで私と来てよ!短い髪は似合わない!ねぇ、だから…っ!」
そこまで言った私の意識が揺さぶられる。
数秒遅れて痛みが走り、聞こえてきた声に私は殴られたのを悟った。
そうして、彼女は忌々しい男たちに取られたのだ、ということも。

「…二度と…二度と冬弥に手を出すな!!!」

揺れる、彼女の髪。
歪な旋律は、こうして終曲を…迎えた。

(これは、歪んだ乙女の恋愛狂詩曲)

えっちな彰冬

にょたカイコクさんがアキラ様に尿道開発される話

「ばかっ、やだっ、やめろ、死ねクズ!!!」
部屋に怒声が響き渡る。
身体を丸めてこちらを睨むのはカイコク、対して睨まれているのは『アキラ』だ。
「威嚇したって怖くないんだから止めれば良いのに」
「うるさ…っ!…いい、から…離れ……っ!!」
ジタジタと暴れるカイコクには手枷が付いている代わりに、衣服がなかった。
全裸での監禁状態。
それが彼女にとってどれほど屈辱だろう。
まあ、そんなものアキラには関係ないのだけれど。
「大人しくしてたら気持ち良くしてあげるのにさ」
「…。…好きでもねぇ奴との性交渉に快楽なんざあるもんか」
「…へぇ?」
睨むカイコクに、にっこりと微笑んだ。
なら、彼女は誰が好きなのだろう。
…と。
「…なぁ」
カイコクがこちらを伺うように見つめていて、アキラは首を傾げた。
「…ちぃっと、緩めてもらえると助かるんだがねぇ?」
くい、と腕を持ち上げるカイコク。
そういえば少し強く縛りすぎたかもしれない。
ほっそりした腕に手を伸ばし…枷を緩めた途端。
「…ぐっ?!!」
腹部に走る鋭い痛みと重い衝撃に、彼女に蹴られたことを知った。
勢い良く身体を起こし、駆け出したカイコクの長い髪を、ぐいと引っ張る。
「ひぎゃっ?!!い、た……っ」
「じゃじゃ馬なんだから、さぁ!!!」
ダンッと髪を引き倒し、衝撃に咳き込むカイコクの両足を思いっきり割り開いた。
「げほっ、はっ、ぅあ…!やだ、ぃや…ぁああああ?!!!!」
ひゅっと鳴る彼女の気管と迸る絶叫が耳に心地よい。
目を見開いて無意識なのだろう足先がピクピクと揺れた。
いきなりアナルにバイブを突っ込んだのだ、そうもなろう。
「カイコクさん、本当に後ろ弱いよねぇ」
「ぃや、ぁああっ!!ぅごかさな…っ、ひっ、ぃぐ…っ!!」
ポタポタと流れる血を無視してぐちゃぐちゃと抜き差しをする。
嬌声を心地良く聴きながら、足を持ち上げ固定した。
普段は入り口のところからゆっくり解していくが今日は最初から結腸をゴツゴツと責め立てる。
ぼこ、とバイブによって細い腹が膨らんだ。
苦しいと呻くカイコクの腹を押し、内側からも外側からも容赦なく責め立てる。
バイブのスイッチを押して最大にした。
珍しく泣きじゃくるカイコクは自分がどうなっているか分かっていないのだろう。
手枷はないのに抵抗しないのが証拠だ。
「俺を蹴って逃げようとしたんだから、お仕置きは当然だろ?」
「…ぃいいっ!!やぁ、やら…こわ、ぃ……っ!」
囁き、クリトリスにローターを当てる。
長い髪を振り乱し、カイコクは啼いた。
「~~~っ!!!」
声無き悲鳴を上げ、ビクビクッと震えたカイコクは呆気なく果て、くたりと躰を弛緩させる。
それでもバイブやローターを押し付けるのをやめなかった。
「も、イッた!!イッたからぁあっ!!やめ、やめて、くんな…」
「まだだよ」
躰を跳ねさせ、息も絶え絶えに強請ってくるカイコクを撥ね付ける。
え、という顔をする彼女にちらりとそれを見せ付けた。
「…な、に……?」
「尿道バイブだよ。聞いたことくらいあると思うけど」
ローターを置き、その細いバイブにローションを垂らす。
お仕置きの後はご褒美をあげなければ。
「…?!!む、りだ…そんなの…入らねぇ…っ!」
さぁっと顔色を変え、逃げようとするカイコク。
喉奥を戦慄かせて無理だと思うのは見た目の大きさや長さで入らないと思うからだ。
「大丈夫、ゆっくりしてあげるから」
「無理、無理だか、ら…やぁっ、やらっ…ひっ」
くち、と尿道口を押し開き、ゆっくりゆっくりと埋めていく。
「ぅううううっ!!!」
「ほら、挿入るだろ?ここまでいけば抜き差しだって…」
「ゃああああああっ?!!気ぃ、狂うぅううっ!!!」
クチャクチャと尿道バイブを抜き差しすれば、カイコクが泣き喘いだ。
「いいよ、狂っちゃえ」
クスクスと笑い、アキラは囁く。
幼い顔できょとりとこちらを見るカイコクにあるものを…恐怖からだろうか、存外素直だった…飲ませた。
そして、にこりと笑う。
「カイコクさんの尿道を性感帯にするまで責めて責めて責め続けてあげる。…だから」
そっと頬に手を寄せ、口付けた。
覚悟してね、カイコクさん、と囁く声は彼女の悲鳴にかき消され、霧散した。


飄々とした、存外に仲間思いでプライドが高い彼女を粉々にしてあげる。

【アカツキ(あいつ)】ではなく【アキラ(俺)】が。

…だって、貴女のこと、大好きだからね?


(その大好き、は大層歪んでいたとしても)


「やめ、ろっ!!!やだぁああ!!!!今、抜いた、ら…もれ、る…っ!!出ちゃう、からぁああ!!!」
「漏らしなよ。全部見てあげる。…なぁ、可愛らしい俺のカイコクさん?」

えっち系リクエスト

えっち系リクエスト

ワンドロ隔週/離別・ピアノ

「…?冬弥?」
自分の教室から図書室に行くまでの道、音楽室があるそこを歩いている彰人はふと中にいる人物に目を留めた。
ふわり、冬の夕暮れに髪を揺らし、愛おしそうな目でピアノを撫でているのは、彰人の相棒である冬弥だ。
何をしているのだろう、と思う前に身体が動く。
彼がこのまま何処かへ消えてしまいそうで。
「冬弥!」
「…彰人?」
彰人の声にこちらを向き、首を傾げる。
いつもの彼だと安堵の息を吐いた。
「…何、してんだよ」
「…ああ。…俺は、ピアノが…クラシックが好きなんだと…思ってな」
軽く微笑む冬弥に眉を顰める。
彼はクラシックが、もっと言えば父親にやらされていたクラシックが大嫌いだったはずなのだ。
この前、父親と話をし、自分の思いに決着をつけたらしい…のだが。
「確かに俺は父さんが大嫌いだった。小さい頃の俺をピアノとバイオリンに縛り付けて、俺から自由を奪った、父さんが」
「…」
「…だが、クラシックそのものは、きっと好きだったんだ」
そこまで言った冬弥が綺麗に笑む。
夕陽に照らされたそれは美しく、いつか聴いたピアノの音色の如く儚く…見えた。
「…彰人が、教えてくれた」
「…?オレが?」
「ああ。本当に嫌なら音楽から離れるはずだ、と。だから、気づいたんだ。…俺は、本当はクラシックが好きなんだ。父さんのピアノも、父さんが愛した音楽も」
「…。…だからって、全部許せるわけじゃねぇだろ」
「当たり前だ。俺が好きなのはクラシックそのものだからな。…ピアノやバイオリンはまだ弾けない。音を出すことは出来るかもしれないが、それだけだ」
少し寂しそうな表情をした後、冬弥がくすりと笑う。
「それに、ピアノやバイオリンよりも、彰人と歌う音楽のほうが、愛おしくなってしまったからな」
「…なんだ、それ」
冬弥のそれに彰人は笑みを漏らした。
共に歌う音楽が愛おしいと思っているのが、自分だけだと…思っているのだろうか。
「なら、さっさと練習しに行こうぜ。…愛しの相棒」
「…ああ」
手を伸ばす彰人に、冬弥は綺麗な手を重ねる。
その手を掴み、ぐい、と引っ張った。
音楽室を出る直前、どちらのものか分からない離別の声が夕暮れに溶ける。

(それは果たしてどちらのものだった?)


「…さようなら、 」