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プランツドールパロディ
とーやくんがお人形さんならプランツパロいけるのではと思ってしまった お行儀良くミルクと砂糖菓子でお世話してもいいし、別のもの食べさせて成長させちゃってもいいし…絶望を栄養に歌う人形とか、甘美な憂鬱を餌に育つ青い花冠を咲かせるのもいいですね… 彼は誰を選んで目を覚まして、その人にどうお世話されるんだろうなー
ワンドロ/スポーツ(彰冬)
「東雲ー!そっちそっち!」 「おー」 クラスメイトからの声に彰人は適当に返事をしてボールを蹴る。 今日の体育はサッカーだ。 昔から人並みよりは器用だったので得意とはしてきたスポーツである。 サッカーをやって食べていけたら、なんてぼんやり考えていたのも…まあ昔の話なのだが。 よっと軽く声を出し、相手のゴールに入れる。 ホイッスルの音にホッと息を吐いた。 ハイタッチしに来るクラスメイトに応じ、きゃーきゃー言う女子に外面の笑顔を貼り付けて手を振る。 …そういえば冬弥のクラスはあの辺だったかと思いながら、該当の教室に向かって手を挙げてみた。 何の意味もない行為だな、と苦笑しつつ、呼ぶクラスメイトの元に走る。 真面目な冬弥がこちらを見ているなんて有り得ない、と思いながら。
次の時間は古文だった。 なぜ体育の後に、こんな眠たくなる授業なのだろう。 設定した教師を問い詰めたくなりながら、彰人はぼんやりと窓の外を見る。 この時間は冬弥のクラスが体育のようだ。 冬弥はスポーツが苦手らしく…あんなにダンスは踊れるくせに…サッカーボールにオタオタしていた。 珍しい冬弥の様子に何となしに窓の外を見つめていると冬弥からパスをもらったクラスメイトがゴールを決めた所だったようで何やらハイタッチを求められていて。 「…ん?」 困ったような様子を見せていた冬弥が何やらキョロキョロしていた。 何やってんだ、と不思議に思った…その時。 「…は?」 窓の外を見つめている彰人の方を真っ直ぐ見つめ、ふわりと手を振ったのだ。 まるで、見ているのを知っていたかのように。 …知っていた? 彰人が冬弥に手を振ったのは…見ていないのに? は、と顔が赤くなる。 まさか。 冬弥も、見ていた? 「…ウソだろ」 彰人の小さな声は、チャイムと重なってかき消された。 だってまさか。 真面目な彼が、授業をほっぽって自分を見ていたなんて! 彰人の顔がニヤける。 教室から飛び出しながら口元を手で覆った。 休み時間、体育が終わったばかりの冬弥と会うまで…後数秒。
(『スポーツは苦手だが、見るのは寧ろ楽しみなんだ …彰人が、格好良いから…な』
なんて彼が微笑む未来まで、後何秒?)
お前に溺れるティータイム(彰冬)
自律感覚絶頂反応って知ってるか?
そう問いかけると、その相手、冬弥はきょとんとした。 「確か…ASMR、だったか。聴覚や視覚への刺激によって感じる、心地良い、脳がゾワゾワするといった反応・感覚のこと、だろう?」 「お、流石だな」 ふわりと髪を揺らして首を傾げる冬弥に彰人は笑う。 なんだって急に、という顔をするから、バイトの仲間がそんな動画を見ていて気になったんだ、と、簡単に説明してやった。 「…それと、このカラオケでのお菓子パーティが、何か関係が…?」 まだ納得しきれていない冬弥から出てきた似つかわしくないそれに思わず吹き出す。 まさかお菓子パーティが出てくるとは思わなかった。 確かに、彰人が好きなチーズケーキや冬弥が好きなクッキーと珈琲、更に炭酸飲料まで用意していればそうもなるか、と思いつつ、その手を引く。 「…っ、彰人?」 灰青の瞳が見開かれた。 バランスを崩した冬弥を抱き止め、そのままソファに座る。 冬弥の、形の良い耳をすり、と触り、低く囁いた。 びく、と跳ねる躰に小さく笑う。 「…やってみねぇ?」
ちゃく、とわざと音が鳴るようにチーズケーキを口に運ぶ。 爽やかな酸味と程よい甘みが口に広がった。 美味い、と思うが今日の目的はそこではない。 「…どうだ?」 膝の上にいる冬弥に声をかけると、びく、と震えた。 「…ん…!…変、な…気分に、なる」 耳を赤く染め、小さな声で言う冬弥。 やはり、耳が良いと敏感になるものなのだろうかとぼんやり思った。 「…な、あ…!この、体勢は…やめないか…?」 「なんで?」 「なんで、って…」 態とらしく聞いてやれば冬弥は困った顔をする。 隣に座ればいいじゃないかとかそういう言葉はついぞ出てこないから「理由がねぇならべつにいいだろ」と押し切った。 冬弥の言いたいことなんか分かっている。 分かっていて敢えて教えてやりたかった。 彼の、この顔が見たいから。 …こういうところが、最近知り合ったばかりの小さなバーチャル・シンガーにまで「彰人ってさ、たまに悪い顔するよね」と言われる所以だろうか。 「んじゃ、次は冬弥な」 「…俺、も?」 「当たり前だろ」 熱い息を吐き出す冬弥の小さな口に、手を伸ばして取ったクッキーを入れてやる。 断れば済むのに存外律儀な彼はサク、と小気味良い音を立ててクッキーを噛んだ。 サクサクと噛み砕かれる音が耳元で聴こえる。 こくん、と飲み込むそれは確かにエロいな、とは思うがそれは食べている冬弥に関して思うだけで特にゾクゾクとした感覚は得られなかった。 「…どうだ?」 「…んー、オレは特に何も感じねぇな。お前がエロいとは思うけど…あ、飲み物ならなんか変わる…冬弥?」 彰人が喋っている途中で、限界、というように冬弥が肩に顔を埋めてくる。 驚いていれば、小さな声で冬弥が「…俺もだ」と言った。 「…は?」 「…。…誰かが食べている音、なんて不快でしかなかった。こんなに、頭がボーッとして、ここ、が…疼くのは…彰人、だから」 己の腹を押さえながら普段よりも小さな声で告白する冬弥に目を見開く。 そういうトコ!と思いながら彼の肩を掴んで顔を起こした。 「…煽ってんじゃねぇよ」 「…そんなつもり、は…」 「それが煽ってんだっつー…。…なあ、キスしていいか?」 「…普段は聞かないくせに…んっ」 少しばかり不満そうな冬弥にうるさいとばかりに耳と口を塞ぐ。 おず、と回された手は同じように彰人の耳を塞いできて。 互いを貪る水音が脳内に響く。 周りの騒がしい音は遮断され、溺れるように二人きり。
なるほど、これは確かにゾクゾクすると、思った。
(綺麗な彼が溺れていく、この感覚は
自律感覚絶頂反応とはまた違った扉を開ける、音)
人狼彰人×占い師冬弥
「なあ、知ってたんだろ?冬弥」「…ああ」 から始まる、人狼彰人と予言者冬弥の恋…恋人じゃなくても、次の日自分から追放に名乗り出る彰人も好き。 お前は1人で死なせない、的な。 人狼彰冬だと、一般人のふりした人狼彰人と人狼だと知っていて敢えて言わない予言者冬弥が良いな、と思いますね。 しかも恋人なので、どっちかが死んだら片方も死ぬ、みたいなあれだと良い。 冬弥が彰人に食われて死ぬ、そのせいで彰人も死ぬ、みたいなのでもありなんだろうか、恋人。
類から媚薬を貰う彰冬の話
ワンドロ/読書の秋(彰冬)
紙の捲る音がやけに響く。 壁に貼ってあるポスターには、『読書の秋、本を読もう!』の文字。 …秋じゃなくても読んでいるくせに、なんて心の中で毒づいた。 図書委員である冬弥が一人カウンターで返ってきたばかりの本を読んでいるのはよくある事象だ。 …そのせいで彰人に気が付かないのも。 (…つまんね) 小さく息を吐き、委員の仕事ならばもう少しで終わるだろうかと手を伸ばす。 「…冬弥」 彰人の声にハッと冬弥がこちらを見上げた。 本を取り上げて触れるだけのキスを落とす。 やっとこっちを向いた、と笑えば何故だか彼は頬を真っ赤に染めた。 驚いたのは彰人である。 今更キスくらいで赤面するのは思わなかった。 「はっ、いや、お前、なに…」 「…すまない。その…本を」 動揺を隠せない彰人に目を伏せながら冬弥が言う。 さらりとした彼の髪が真っ赤に染まった耳を隠した。 本、とこの期に及んで何を言うのかなんて思いながらそれを見る。 よくある、ティーンズ文庫、と呼ばれるその本は確かに冬弥が読むには珍しいと思えた。 だが彼がここまで赤面する理由にはならないだろう。 「…」 ぱらりと表紙を捲る。 ああ、と思った。 「…これ」 「…。…白石が、な…友だちの代わり、と先程返しに来たんだが…」 はっきりしない口調で冬弥が言う。 曰く、杏が返しに来た際「なんか、冬弥には返し辛いって言うから代わりに返しに来たんだけど…」と言ったものだから、そんなに怖い顔なのだろうかと心配したが、彼女はカラカラ笑って「違う違う、内容がねー!」とそこまで言って部活の助っ人に呼ばれていた、と慌てて行ってしまったのだ。 男子相手には返し辛い内容の本とはどんなものだろうかと気になったのがいけなかった。 開いたそれは柔らかい青春物を装った、ドロドロした愛憎劇で。 流石に学校の図書館にあるだけあって発禁ではなかったが、近いもののような気がする。 活字として読み取ったそれは脳内で鮮明に描き出された。 閉じたいのに頁を捲る手が止まらなくて、どうしようもなくて。 どうしようと思い、思い浮かんだのは…彰人だったのだと。 「…自分でもよく分からない感情にどうすれば良いか分からなかったが…彰人の声がして、それで」 「あー…分かったわかった」 可愛いことを言う冬弥に彰人はホールドアップする。 「んで?冬弥くんはどうされたいんだ?」 ひらりとその本を揺らした。 表紙が見えるように、わざと。 刹那、無言で投げられる図書準備室の鍵を反射で受け取る。 「…お前」 「…片付けてくる」 ふい、と冬弥が彰人から本を取り返しさっさと本棚の奥に消えた。 可愛いやつ、なんて笑いながら鍵を宙に放り投げる。 ちゃり、と音を鳴らすそれは冬弥なりのお誘いなのだろう。 読書のもたまには良いな、なんて大概不謹慎なことを思った。
秋の風が吹く。 冬の音を連れて。
吹かれた風に煽られて捲られたそれは、二人だけの秘密の1ページ。
薄紅梅(彰冬)
怖いと思うことを、怖いと言えないのは 嘘を吐けないが故の、ただの意地と見栄なんだって
朝から、顔色が悪いなぁとは思っていた。 その相手は自分ではなく、隣をゆっくりと歩く冬弥に、である。 普段なら声をかけることも出来たが、今日は芸術鑑賞会…平たく言えば教師が決めた映画を見に行く、謂わばあまり身にならないような遠足、だ。 クラスが違う彰人と冬弥は朝一瞬会ってから会話すらしていない。 「…大丈夫なのかよ」 ぼそりと呟いた声はガヤガヤとした周りにかき消された。
『貴様は何をやっても駄目だな。まるで出来ていやしない』 『ごめんなさい、お父様』 画面の中の少女が父親に叱られて涙ぐむ。 よくある、成長物語のようだが、つまらないな、と思った。 人からの評価に何の意味があるのだろうか。 『貴様は私の言うことを聞いていれば良いんだ』 父親の台詞が映画館に響く。 序章も序章、ここから大きく成長していくのであろうが大して興味もなかったので、寝るかと目を瞑ろうとし…ふと冬弥が気になった。 「…」 そっと席を抜け出して見渡し、冬弥を見つける。 幸い、一番端だったので近づくのは容易かった。 「…冬弥」 「…あき、と」 腕を引くと、何かを我慢しているような表情の冬弥がこちらを見る。 確か、冬弥は父親に随分と抑圧されていたのだっけ。 彼の自己肯定感が低いのはそれも関係しているのだろう。 じくん、と、心臓に針が刺さったような感覚が、した。 「…出るぞ」 「…だ、が」 「…いーから」 あの映画の少女のような、漫然とした不安と怯えを瞳に滲ませておいて何を言っているのだろう。 ゆっくり立たせて一番近い出口に連れて行ってやった。 教師も見張っておらず、抜け出したい放題だな、なんてどうでも良いことを思う。 明るい中で見た冬弥は不自然なほどに真っ青だ。 「…この見栄っ張り」 「…」 「理由をつけて休めば良かっただろ。見るものは決まってたんだから」 こつん、と冬弥のおでこに自分のおでこをくっつける。 「…見栄、じゃ…ない」 「じゃあ何なんだよ」 「…そ、れは」 冬弥が困ったように口籠った。 彼は真面目なのだ。 自分の感情を押し込めて、正論という名の大人が決めたルールに従おうとする。 人には気を遣うくせに自分の気持ちに気づきもしない。 …気付いているからこその「虚栄心」かもしれないが。 だが、そんなこと、彰人にはどうだって良かった。 「…どーせ、周りに迷惑がかかるとか思ってたんだろ」 「…!」 冬弥の瞳が大きく見開かれる。 あの時だって、今だってそうだ。 自分を、大事にすれば良いのに。 「嫌なら逃げたっていいんだぜ。ま、オレからは逃さねぇけど?」 「…何を、言っているんだ」 彰人の言葉に冬弥が笑む。 漸く笑った、とその頬に手を寄せた。 「…あ、きと」 「…んー?」 「…もうすこし…このまま」 「…仰せのままに」 小さな声で言う冬弥に、彰人は低く囁く。 映画の音楽が、遠くで小さく聞こえた。
お前の白い頬が薄紅梅になるまで一緒にいてやるから
お前はただ、オレの隣にいてくれ
(見栄っ張りは、果たしてどちら?)
東雲色(ザクカイ)
ふと目を覚ますと、ぼんやりとカイコクが窓の外を見ていた。 「…鬼ヶ崎?」 「…ん、あぁ、起こしたかい?」 声をかけると彼はふわりとこちらを見て微笑む。 いや、と否定し、ベッドから抜け出した。 「…珍しいな、朝は苦手な貴様が」 「どっちかってと、寝れなくなった、ってやつかねぇ」 普段は起こしに行ってもなかなか起きないカイコクにそう言ってやれば、彼はくすくすと笑う。 揺れる肩に薄い毛布をかけてやった。 「…」 「…薄着をしていると余計に眠れなくなるぞ、鬼ヶ崎」 「…ああ。そうだな」 少し悲しそうな笑顔を浮かべるカイコクがもどかしくて、手首を掴む。 何かを言おうとして言葉が出ず、白い息を吐いた。 「…忍霧?」 「…いや、すまない」 首を傾げるカイコクから手を離し、ランニングにでもと踵を返そうとした…その時である。 カイコクの綺麗な指先が、ザクロの袖を掴んだ。 くい、と引かれる感覚に思わず振り向く。 見上げた彼は綺麗な笑みを浮かべていて。 息を呑むザクロにカイコクが願いを紡いだ。 「…なあ、花見に付き合ってくんねぇか?」
花見と言われて春地帯にでも連れて行かれるのかと思いきや、着いたのは紅葉地帯であった。 何故ここに、と疑問を浮かべていたが広がった世界に目を見開く。 朝の、冷たい風に揺れる花の名は。 「…秋桜、か?」 「…ご名答」 にこっと笑ったカイコクがちょいちょいと手招きする。 呼ばれるままに足を運べば、その場に座るように指示された。 不思議には思ったが、敢えて何も聞かず、言われたようにする。 「…よっと」 「…おい、鬼ヶ崎!」 自分より大きな体躯の彼がぽすりと収まった。 それに思わず声を荒げるがカイコクは気にした様子でもない。 大きな猫のようだな、なんてぼんやりと思った。 「…綺麗、だろ?」 「…」 「…忍霧、にも…見せて、やりたくて」 ふや、と普段の彼より幼く微笑むから、ザクロはただ、そうだな、とだけ返す。 「…あそこ、黒い秋桜があるだろ」 「…ああ」 「…あれは俺なのかと、少し思ったり…して…な…」 小さな声でカイコクが言った。 黒の秋桜。 初めて見るそれは、彼に似ていると言われればそんな気もする。 だが。 「…貴様は、甘いものは苦手だろう」 「…?そう、だねェ…?」 「黒い秋桜は別名チョコレートコスモスというらしい。甘いものが苦手なのにチョコレートコスモスはどうかと俺は思うが…鬼ヶ崎?」 ザクロのそれにポカンとしていたカイコクがやがてくすくすと笑う。 「なっ、何故笑うんだ…?」 「…や、何でもねェよ」 綺麗に笑う彼が小さく欠伸をした。 何かリラックスしたようで今更眠気がきたらしい。 暫くしてすうすうという寝息が聞こえてきた。 以前は背中を見せるのも寝顔を見せるのも拒んでいたのに、とほんの少し嬉しくなる。 …これが、ザクロだから、だともっと嬉しいのだけれど。
世界が東雲色に染まる。 彼の寝顔も、秋桜も。
指先を取り、マスク越しに口付ける。 カイコクが…暖かく眠れますように、とそっと願いを込めて。
「鬼ヶ崎、そろそろ起きないか、鬼ヶ崎!」 「…んぅ…後、5分…」 「そう言って何分経っていると…!!」 (ザクロの声が響くまで、まだもう少し)
男は犬ではないのですよ?(レンカイ+彰冬)
「あ、見てみて、レン!」 此処はストリートのセカイ。 楽しそうに呼ぶのはバーチャルシンガーであるKAITO、その傍らで珍しく柔らかな笑みを浮かべるのは青柳冬弥だ。 見ない組み合わせだな、と思うがそういえば最近仲良くなったのだっけ、と思い出す。 「何なにー?…犬?」 覗き込んだ先にあったのはスマホで、その中には可愛らしい犬の写真が収まっていた。 「ぽちくんって言うんだって。可愛いよね」 「よく行くゲーセンの近くにいる子なんだ。…セカイには動物がいないというから」 ニコニコと笑うKAITOと、柔らかな笑みで言う冬弥に、なるほど、と思う。 「ぽちは可愛いし…賢いんだ。芸もする」 「へぇ?どんな?」 「一般的だぞ?お手とかおかわりとかお座りとか」 冬弥はそう言うものの、画面の中の犬は芸をしている様子はなかった。 首を傾げていれば、あ、と冬弥が小さな声を出す。 「…この時は俺の手が塞がっていたから…芸はしなかったんだ」 「ん?」 「犬を撫でながらの撮影は俺には難しかった」 そう教えてくれるが、彼には相棒がいたはずで、とそこまで思い、少し離れた場所で立っていたその人が浮かんだ。 「…犬、苦手なんだね…彰人くん」 そうっと耳打ちするKAITOに冬弥がこくりと頷く。 ギロリと睨まれた気がしたから慌ててその話題を終えた。 「でも良いよね、動物って。可愛いもん」 「…そう、ですね」 ふふ、と微笑み合う二人に、随分仲良くなったなぁと思う。 衣装もいつの間にか揃いで、何だか悔しいくらいだ。 「…レン?」 KAITOが首を傾げる。 別にぃ、と返せば青い目を瞬かせてくすくすと笑った。 そうして。 「んえっ?!」 「大丈夫、レンも可愛いよ」 にこにこ笑い、KAITOがレンの頭を撫でる。 「可愛くねぇし!オレが目指すのは格好良いだし!」 「ふふ、ごめんね?レン」 言い返すがKAITOはあまり気にしていないようだ。 …これもいつもの事なので気にしてはいないが…それでも凹んでしまうのは何故だろうか。 「…何やってんだよ…」 「…彰人」 いつの間にかこちらに来ていた彰人が呆れた声で言う。 「彰人も何とか言ってよー!KAITOってばオレを子ども扱いすんだよ?!」 「そんなことないよ?可愛いなぁとは思うけど」 「それが子ども扱いなんじゃん!」 可愛らしく笑うKAITOに文句を言うが、彰人はいいんじゃねぇの、と言うばかりだ。 「?彰人も撫でてほしいのか?」 「いや、何でだよ。オレ犬でも子どもでもねぇし」 不思議そうに言う冬弥に嫌そうな表情を浮かべる彰人。 「…なら」 「あー…。…甘えられる内に甘えとけってことだよ」 レンにそう言いながら、彰人は冬弥の肩に顎を乗せ、のしかかる。 重いんだが、と言いながらも嫌がりはしない冬弥に、なるほどなぁ、と思った。
使えるものはなんだって使うべきだろ?
それが男ってモンなんだからさ!
(犬だって可愛いふりして実は肉食獣なんだぜ!)
「彰人も見るか?ぽちの動画。可愛いぞ」 「いや、オレは…。…なあ、こいつ冬弥の股の下しつこいくらい潜ってねぇ??」 「気のせいだろう。俺の顔を舐めたりはするが、基本的には良い子だ」 「…お前、こいつのトコ行くの禁止…!!」
セカイの邂逅で想う思いを(彰冬+レンカイ)
ストリートのセカイを、パタパタ走る人物がいた。 彼の名は鏡音レン…バーチャルシンガーだ。 3月ウサギよろしく、時計を見ながら遅刻遅刻!と走る、レンのポニーテールがひょこひょこ揺れる。 蒼い髪が見えてレンは、おぅい!と手を振った。 「KAITO、お待たせー!」 声を張り上げたはずなのに彼、KAITOは俯いたままだ。 あれ、と思う。 「KAITOー?!」 「…レン?」 近づき、もう一度声をかけるとようやっと顔を上げた彼が名を呼んだ。 「…あれ?冬弥?」 首を傾げたのは最近この世界にやってきた青柳冬弥である。 どうやら髪型や背格好が似ていたから間違えたようだ。 「あははー!ごめんごめん!間違えちゃった」 「…それは構わないが…。…約束していたんじゃないのか?」 「…あ」 冬弥に指摘され、レンはようやっと気付く。 「冬弥さ、青い髪のバーチャルシンガー見なかった?!ここで待ち合わせ予定なんだけど」 「青い髪の…?いや、見なかったが。本当にここなのか?」 「えー、確かにここだってー…」 不思議そうに首を傾げる冬弥に、約束を交したメールを見直した。 添付された画像と目の前の落描きを見比べる。 「…猫だね」 「…猫だな」 のぞき込んでいた冬弥と顔を見合わせそう言った。 画像は犬なのに、目の前にあるのは猫で。 「…致命的な間違いぃい…!!」 頭を抱えるレンに、冬弥が優しく笑んだ。 「今からでも間に合うんじゃないか?確か、この近くだったはずだろう」 「本当?!ありがと、冬弥!!」 手を振って駆け出そうとするレンを冬弥が止める。 「…一緒に行っても良いだろうか」 「…いいけど…なんで?」 「レンが間違える、その人に会ってみたくなった。それから、レンが迷わないように」 「…。…タスカリマス」 柔らかく微笑む冬弥に、レンが拝んだ。 さり気ない気遣いが出来る人だなぁと思う。 こっちだ、と案内されるまま走ればぼんやりとするKAITOがいた。 「あ、いたいた!KAITOー!」 ぶんぶん手を振れば、こちらに気付いたKAITOがにこりと笑う。 駆け寄った勢いのまま抱きつけば彼は、わっと小さな声を上げた。 危ないよ、というKAITOにえへ、と笑いそれから精一杯の謝罪をする。 「ごめん、遅くなって!」 「大丈夫、そんなに待ってないよ。…えっと?」 優しく笑ったKAITOが冬弥を見て不思議そうに首を傾げた。 「…青柳、冬弥です」 「冬弥くん。…こんにちは、始音カイトです」 にこっとKAITOが笑みを浮かべる。 それに、あ、と冬弥が声を上げた。 「…ドクターファンクビートの」 「あはは、気付いた?」 「KAITO、またその名前使ってんの?」 軽く笑うKAITOにレンが呆れたように言う。 その名前は確か随分前に使っていたようだが、どうやら冬弥たちと歌った時にも使ったらしかった。 「ふふ、たまには良いかなって。ごめんね。改めまして、KAITOです。よろしくね、冬弥くん」 「…よろしくお願いします、KAITOさん」 柔らかく微笑み手を差し出すKAITOに小さく笑みを浮かべた冬弥がそれを握り返す。 やっぱり似てるなぁと思った。 「…あのさ、二人ともおそろいの服着てよ!」 「…え?」 KAITOが不思議そうにこちらを見る。 冬弥もまた同じような顔で首を傾げた。 「…それで間違えるのはレンだけだと思うが」 「…ああ、そういうこと」 その発言にKAITOがくすりと笑う。 「あっ、言わないでよ、冬弥!」 もう!と怒ってみせるが次の瞬間にはケロッとした表情で、「それもあるけどさ」とピースサインを作った。 「二人が歌ってるとこ、見てみたいんだよねー!」 「…だ、そうだけど」 「…俺は、KAITOさんが良いなら」 「そう?じゃあよろしくね、冬弥くん」 「こちらこそ」 ふわりと二人が笑う。 着替えてくる、と手を振る二人にひらひらと笑顔出軽く手を振り、見えなくなってから表情を戻して「居るんだろー」と声をかけた。 「…んだよ、バレてんのかよ」 「バレバレだよ。…何してんの?彰人」 その声に、建物の陰から出てきたのは東雲彰人、冬弥の相棒でもある。 猫っ毛の髪をガシガシ掻きながら、別に?なんて悪びれる様子もなかった。 「冬弥がオレとの約束を破って向かう相手が誰か知りたかっただけっつーの」 「うーわ、彰人ってば独占欲強め?」 「どーだかな。ってか、それはレンもだろ」 軽く言う彰人にレンはん?と疑問符を浮かべる。 「抱きついた時こっち睨んでたくせに。…と、KAITO、だっけ?わざと待たせてんだろ」 「ありゃ、バレた?」 ニッと悪い笑みを浮かべるレンに、彰人は呆れたような顔をした。 そうだ、KAITOがこのセカイにいるのは珍しいから、わざと時間に遅れて自分と居る時間を長くしたのだ。 KAITOは、優しいから。 きっとレンの言うことは聞いてくれると。 「べっつにレンが独占欲強めなのはいいけどよ、冬弥まで巻き込むなよな」 「あ、歌ってるの見たいのは本当だよ。二人の声、合いそうだし。ダンスも映えるだろうし」 「…ま、それには同感するけど」 レンのそれに彰人が頭を支えるように手を組んだ。 どうやら今回は不問にしてくれるらしい。 「意外と猫かぶりだよな、レンも」 「彰人には言われたくないかなぁ」 くすくすと二人で笑う。 もうすぐ帰ってくるだろう二人を待ちながら。 少年たちの思いは、セカイの空に吸い込まれて行った。
「お待たせ、レン!見て、この服。差し色にレンの色が入っててね。冬弥くんのも相棒の色なんだってー…」 「KAITOさん!…遅くなってすまない、ダメージジーンズが意外と穿きにくくて…彰人?何故ここに」 「「チェンジで!!!」」
(少年たちの声がユニゾンする。
だって、こんなエロい服、許されるわけ無いだろ!!)
(そんな目で見るのはセカイでただ二人だけ!!)
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