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にょたカイちゃんがアカツキに放置プレイからの玩具責されて潮吹きさせられる話
「ふぁっ、ぁああっ!!?ぃ、くっ…ぃ、ちゃ、ぅぁ、あ、ぁああっ!」 カイコクの足がびくっびくっと跳ねる。 部屋に響くは彼女の悲鳴と機械音。 「なん、でぇ…?!ぃった、いっ…たのにぃい…っ!」 泣きじゃくるカイコクの目の前にいるのは…僅かな笑みを浮かべたアカツキだった。 さて、何故こんなことになったのか。 それは数時間前に遡る。
今日はゲームもないというから、全員が思い思いに過ごしていた。 そんな中アカツキは、本でも読もうかと図書室に向かう。 階段近くにカイコクを見つけ、声をかける。 「カイコクさーん!」 ふわり、と長い髪を揺らして彼女が振り向いた。 今日はオフだからか、いつものポニーテールは下ろされていてギャップだなぁ、なんてのほほんと思った…その時である。 「…入出…っ?!ぅわっ?!!」 「?!カイコクさん!」 ふっ、とカイコクがアカツキの眼前から短い悲鳴を残して消えた。 足を踏み外して落ちたのだろう。 だが、いつまで経っても凄まじい音は聞こえてこなかった。 「大丈夫ですかー?」 ひょこりと覗き込んだアカツキが見たのは、階段の下、マキノにお姫様抱っこされ、ぽかんとした彼女で。 「…カイコッちゃん、大丈夫…?」 「…ぇ、あ、あぁ…すま、ねぇ」 「…気をつけて、ね…」 何とか答えたカイコクにマキノが優しく笑んだ。 頭上にアカツキを見つけ、大丈夫だと思ったのか、マキノはそっと彼女を下ろし、頭を撫でる。 呆然とそれを見上げていたカイコクが数秒遅れて顔を真っ赤にさせた。 …あんな顔もするんだなぁ、と思う。 「カイコクさん!」 「っ!入出」 マキノが立ち去った後をぼんやりと見ていたカイコクに声を掛ければ、彼女は一瞬びくっと体を揺らし、アカツキを認めてへにゃりと笑った。 「大丈夫でした?」 「あぁ。…逢河が助けてくれたからなァ?下にいたのが入出だったらどうかは分かんねぇけど」 アカツキのそれに、カイコクは面白そうに笑う。 それは言外に、「お前さんには無理だろう?」と、言っていて。 そんなことを言うんだな、と…思った。 にっこりと笑うアカツキに、カイコクは首を傾げる。 「?入出?」 「足、怪我してないか見ますよ。来て頂けます?」 「…あ、あぁ」 有無を言わせないそれに彼女は言い返すこともせず、素直に着いてきた。 近くの部屋に入り、ベッドに腰掛けるように言う。 ちょこんと座ったカイコクの足を形だけ触診し…押し倒した。 「入出…?」 「カイコクさん、俺、存外嫉妬深いんですよ?」 ぽかんとする彼女に笑いかけ、アカツキはポケットの中にあった瓶を取り出す。 「これね、さっき貰った媚薬なんです。飲んでくれますよね、カイコクさん」 「…?!な、んでそんな…んんぅ?!」 驚いた表情のカイコクに液体を口に含ませたまま口付ける。 薄く開いた口から液体を流し込めば苦しさからかこくん、とその喉が上下した。 「けほっ、けほっ…!は、ぁ…っ!!」 「良い子ですね、カイコクさん!」 にっこりと笑い、苦しそうに咳き込む彼女の手首を縛ってベッドヘッドにくくりつける。 足を大きく開けさせ、液体をたっぷりと含ませたディルドをアヌスに擦り付けた。 「んぁあ?!い、りで…そこ、やだぁっ!!」 少し怯えた表情の彼女にただ笑みを見せ、ズプンと埋め込む。 息を詰めるカイコクの綺麗な目を布で隠せば出来上がりだ。 「では」 「…ぇ?…待てっ!!どこ行…っ?!」 短いそれにカイコクは焦った声を出す。 それを無視し、アカツキは外に出た。 無情な音を響かせて。 さて、これからお仕置きの道具をとってこなければと…足を向けた。
戻ってきたアカツキが見たのは不自然に躰を跳ねさせる彼女の姿だった。 「か、ゆぃい…ぁ、あ…ぁつぃ…も、おかしく、な……っ!!」 囈言のように言葉を紡ぎ、躰をくねらせるカイコク。 先程のディルドには痒み剤を含ませている。 快楽に存外弱い彼女には耐えられないのだろう。 アカツキは黙ってカイコクに近づき、躰を反転させた。 「ふぁっ!?だ、だれ…でぇ……入出?入出、だよな?入出だろ…ぅ?!」 四つ這いになった彼女の尻を思い切り叩く。 バチン!!!という音が響きわたった。 「ぅあっ?!ぃだ…なんで、ぇ…?!ひぎゃぁあっ?!!」 2発、3発と打ち据え、ふた桁を超えた頃にはすっかり大人しくなる。 可愛いなぁと思いながらまた仰向けにさせた。 「…」 声には出さず、持ってきたバイブをすっかり愛液でぐしょぐしょになった膣に埋め込む。 可愛らしい悲鳴を上げるそれを聞きながらもう一本。 「く、るし…ぃい…!ぃりでぇ…!た、すけて、助け、て…くんなぁ…!」 泣きじゃくるカイコクを無視し、アカツキはローターをふるふる揺れる両乳房に固定させた。 ピンと立ったクリトリスに電マを押し付け、すべてのスイッチを入れる。 途端、彼女の絶叫が部屋に響きわたった。 急速に追い詰められた躰は限界を振り切り、激しく絶頂する。 「ふゃぁぁあああっ!!ぃぐっ、ひっ、ぃりでぇ、いりぇえ…っ!!」 絶頂してもなお止まらない機械に舌っ足らずに喘ぎ涙を流した。 それでもまだ止めてやらない。 膣に埋め込まれた二本のバイブを激しく動かした。 「ひぎゅぅううっ?!ぁあ、あ…っ!つよ、ぃい!!は、はぅっ、また、イ…っ!!」 ビクンビクン!とカイコクは躰を揺らす。 媚薬なんぞ入ってもいない躰は、アカツキのそれだけに振り回され翻弄され、快楽を貪った。 真実を告げた時のカイコクは可愛いんだろうな、と思う。 そのためにはもっともっと快楽に溺れてもらわなければ。 「ぃ、りで…いり、で…っ!!」 己の名を呼び、見えない誰かに犯され、無理矢理に快楽に溺れさせられた哀れな少女は。 ここからもう逃げだせない。 クリトリスに押し付けていた電マを最大に強くした。 「…ぁ…も、やぁああああっ!!!!!」 嬌声を上げ、カイコクはぷしゃぷしゃと潮を吹く。 くたりと弛緩した躰を更にバイブで追い詰めた。 「…カイコクさん」 そっと目隠しを外してやる。 彼女は知らない。 あの液体は媚薬なんかではないことを。 彼女は知らない。 アカツキがどんなに嫉妬深いかということを。 「…ぃ、り…で…」 カイコクは笑む。 ハイライトを無くした目で。
(彼女は、知らない。
ここから逃げ出せなくなってしまったことを…。)
睡姦ザクカイ
「…ん、ぅ……」 頭が重い。 それ以上に下半身が重かった。 「…ん…?」 夢現の中、脳が快楽を告げていて、俺は疑問をもたげる。 確かに最近、ゲームやら何やらで処理はしていなかったが…。 淫夢を見ている訳でもないし…いや、何を持ってして夢というのかは分からないが…ともかく目を開けてみなければ…と重たい瞼を開いた…刹那。 「お、おひぃふぁ」 もごもごとした声がする。 「おはよーさん、忍霧♡」 「……は?」 ぷは、と【それ】から口を離し、綺麗な笑みを浮かべるのは…紆余曲折あって恋人になった鬼ヶ崎であった。 …いや、それはいいんだ、それは。 「…何をしてるんだ、貴様は」 俺の股の間から顔を出す鬼ヶ崎に胡乱気な目を向ける。 「ん?いや、若い忍霧クンにちったぁサービスしてやろうかな、と」 「…その割には手首を縛られているようだが??」 「流石になぁ、俺だって自分がいっとう可愛いんでぇ」 「本音は」 「…嫌がらせ?」 にこっと鬼ヶ崎が笑みを浮かべた。 思わず溜息を吐き出す。 「あのなぁ…」 「おっと、お説教は後でな、忍霧♡」 「うぁっ?!」 小言でも、と口を開く俺から出たのは短い悲鳴。 ちゅ、と鬼ヶ崎が先端に口付けたからだ。 「おい、ばか、やめろ!」 「なんでぇ、気持ち良くなりてぇだろ?」 きょとんとした顔の鬼ヶ崎に俺は声を荒らげる。 確かに身体は快楽を望んではいるが…鬼ヶ崎の手の上なのは腹が立つな。 と、鬼ヶ崎が、なんつったか、と少し上を向く。 ああ、そうそう、と何かを思い出したらしい鬼ヶ崎が笑って。 「ご奉仕するにゃん?」 へにゃ、と笑う鬼ヶ崎。 …は? 「…。…なんでぇ、何か間違っ…?!!」 あれ?と言わんばかりの鬼ヶ崎を引き上げる。 目を見開く鬼ヶ崎に今度は俺が笑う番で。 「は?!!ちょ、忍霧?!目が怖いっつーかなんでお前さん手枷取れて…?!」 「…ご奉仕、してくれるんだろう?」 慌てる鬼ヶ崎に、なあ?と笑ってマスクをずり下ろす。 「待て待ておしぎー…っ!」 引きかける鬼ヶ崎の頭を引き寄せて口付けた。
どうせ、入出か路々森からの入れ知恵だろう。 だが、なら逆に利用するのも手ではないだろうか?
せっかくあちらから誘ってきたのだから。 据膳食わぬは男の恥。 ならば、しっかり食わせていただかないと、な…鬼ヶ崎?
童貞を舐めてるにょたカイさんがザクロにはちゃめちゃに犯される話(諸刃の剣ザクカイ♀
忘雪のアキカイ♀
雪が降った。 …もう、3月に入ったっていうのに。
「雪が降ったよ、カイコクさん」 にっこりとアキラは笑う。 それに何の返事もなかったけれど特に気にしなかった。 代わりによいしょ、と彼女がいるベッドに腰掛ける。 「…」 「雪が降ったよ、カイコクさん。暦の上ではもう春なのにねぇ」 もはや元の口調を隠すこともなく言うアキラに、彼女、鬼ヶ崎カイコクはこちらを睨むばかりだった。 長い月日共に過ごしてきた仲間が敵だったのだからそうもなるか、と嘆息する。 本性を隠したまま接する方法もあった。 それでもアキラはカイコクが欲しかったのだ。 ユコとは違う、プライドが高くて飄々としている割に男勝りで意志も気も強いカイコクが。 こんなにも敵意丸出しなのに自身の危機管理においてうっかりしているカイコクが。 本来の感情の機微を忘れてしまったアキラにとって彼女は体の良い実験体だった。 …ただそれだけだったのに。 カイコクがこちらを避けるように寝返りを打つ。 はぁ、とため息が聞こえた。 「…春になったら逢河に花見をしようって誘われてる。約束は守んねぇとな」 「…他の男の名前を出して、気を引いたつもり?」 「…さあ、どうだか」 くすりと彼女が笑う。 嗚呼、本当に。 カイコクのそういうところが……。 「大体、君は俺から春までに逃げられると?」 「それを聞いてどうすんでぇ。仮に話したところで、そいつが本音だとでも?」 質問が質問で返ってくる。 綺麗な、偽物の笑顔を引っ付けて。 …そんなことをしたら、余計に引き剥がしたくなるだけなのに! 「…雪が降ったよ」 「…。…何回も聞い…。…え?」 鬱陶しそうに身を起こしたカイコクがゾッとしたように凝視する。 彼女の綺麗な目に映るは開いた扉と一面の雪景色。 …それから。 「…知ってる?スノードロップの花言葉」 部屋中に敷き詰められたスノードロップを一輪取って彼女に【捧げた】。 意味は、知っているはずだ、と。 「…っ!!」 「…今なら逃げられるよ。尤も、逃げられる保障は何処にもないけれど」 「…は…」 ぎゅ、と布団を掴むカイコクに笑い、囁く。 気丈に振る舞おうとして失敗しているのが手に取るように分かった。 布団ごと彼女の手を引き外に突き飛ばす。 雪が降り積もる、正真正銘の外へ。 スノードロップの花弁がふわりと舞い上がった。 「…な、にす…!や、返せ…っ!」 カタカタ震える彼女から布団を取り上げる。 今走り出せば逃げられるかもしれないのに、カイコクがそれをしないのは絶対に捕まる、と分かっているからだ。 …捕まれば今より酷いことが待っていると…分かっているから。 雪の中、裸足で…薄い浴衣一枚で耐えきれるわけがない。 何より。 「元々極度の寒がりである君が耐えられる訳がないじゃないですか…そうだろ?」 カイコクさん。 アキラは囁き、ニコリと笑う。 彼女はアキラに逆らえないのだ。 死を…捧げられてしまったから。 「…ひ、きょ…もの……っ!」 せめてもの抵抗か、こちらを睨むカイコクの顎をすくい上げて口付ける。 深い深い、口づけを。 段々と冷えてくる身体には触れず、口づけだけを施した。 寒いと、入れてくれと彼女が縋るまで。 帰りたがっていた外の世界ではなく、アキラが作り上げた部屋の中(じっけんしつ)に。 「…ふぁ、あ…」 「愛してるよ、カイコクさん。…愛がどんなものかは知らないけど」 白い肌の彼女に手を伸ばす。 スノードロップと良く似たカイコクに。 彼女を押し倒した途端、冷たい雪が音を立てた。 忘雪の名の如く、儚いそれは目の前にいるカイコクの様で思わず笑みを零す。 死を捧げられた黒き和服の少女は白の悪意に飲まれ溺れていった。
雪が降った。 春になる前の…最後の雪が。 (彼女に春が訪れるのか、なんてシュレディンガーの猫もいいトコでしょう!)
梅雨のパカカイ♀
ザァア…と雨が降る、音が聞こえる。 今日は朝から雨が降り続いていた。 雨はあまり好きではない。 …だが。 パタン、という音にパカは振り向かずに口を開いた。 「外に行かれていたのですか?」 「…。…別にいいだろ」 その問いに固い声で答えたのは鬼ヶ崎カイコクだ。 ふい、と音がつきそうなそれで彼女はそっぽを向く。 「良くはございません。…貴女様は今回のゲームの【人質】なのですから」 「…」 「その自覚はお有りですか?鬼ヶ崎様」 振り向き、つかつかとカイコクの方へ向かった。 警戒するようにこちらを見る彼女の顎を指で持ち上げる。 「…。…外には出てねぇ。俺に触んな」 その手を払い落とし、彼女が睨んだ。 まったく、学習しない人だな、と思う。 まあそういうところも可愛らしいのだが。 「透けておりますよ」 「…っ!どこ見てんでぇ、変態っ!」 水滴が床に落ち、うっすらと肌色透けるそれを言葉少なに指摘すれば、それだけで分かったのだろう、ぎゅっと己の身体を抱きながらカイコクが怒鳴る。 意外とそういうのも気にするのだなと仮面の下で笑った。 彼女はあまり頓着しないかと思っていたのだが。 「教えて差し上げたのにそんな事を言われるとは!私のことを何だと…!」 「変態家畜野郎」 「…駆堂様のようなことを仰いますね」 「事実だろう」 そう言いながら鬱陶しそうに濡れた髪をかき上げる彼女にパカは「いらっしゃい」と告げた。 それだけで警戒しきった表情をするから、やれやれと息を吐いてみせる。 「風邪を引かれては困ります。拭いて差し上げますので、こちらへ」 「…。…そんくらい自分で出来らァ」 「貴女様に選択の余地があるとお思いで?身体を暖めるだけなら他にも方法は御座います。例えば…そうですねぇ、無理矢理熱湯の張った浴槽に突き落とされる、そういった方が宜しいので?」 「…っ!」 びくっと身体を震わせた彼女がお面の紐を解き、こちらへ足を進めた。 賢い子は好きですよ、とパカは取り出したタオルを目の前で止まったカイコクの頭に乗せる。 「変なことしたら殺す」 「おやおや、物騒ですねぇ。もう少し可憐になられては如何です?我が愛しの伊奈葉様のように」 「たたっ斬られてぇのかい?」 にこっと彼女が笑って見上げてきた。 もちろん目は笑っていないが。 「まったく。ハイドライジアのようでございますね、鬼ヶ崎様は」 「…。…貴女は美しいが冷淡だ、ってか」 少しの沈黙の後、カイコクが笑む。 とびきり綺麗なそれで。 ハイドライジア…紫陽花の花言葉を知っていたのだろう、挑戦的に笑う彼女に、いいえ、と言ってやった。 その途端にきょとんと表情を崩すカイコクは雨を好むその花にとても良く似ていると思う。 土によって色を変えるハイドライジアのように、彼女自身は気付いていないだろうが人によってその表情はくるくると変化するのだ。 それが…愚かしい、と思う。 「ハイドライジアには【辛抱強い愛】というのもございます」 「…へえ?俺ァ短気な方だが?」 「ご自分の気持ちは忍ぶ方でしょう。違いますか?」 「…。…どうだかな」 くすりと笑うカイコクを拭いてやりながらパカはおや、と態とらしく言った。 「その身体に直接聞いて差し上げましょうか?鬼ヶ崎様」 「…どうやら死にてぇらしい」 本音を隠して笑うカイコクを、パカは無言で抱き上げる。 途端に顔色を変える彼女は可愛らしく、愚かに感じた。 賢い割に迂闊なのだ、カイコクは。 「っ?!何しやがる!!下ろせ!!」 「言ったはずですよ、鬼ヶ崎様。無理矢理浴槽に突き落とす方法もある、と」 「…っ!!や、め…っ!!」 「ご自身の言動は良く考えてからなさった方が良い」 暴れるカイコクを風呂場に連れて行く。 窓の外では赤に近い紫陽花が雨に打たれ、雫を落とした。 響く水音は梅雨のそれか別のものか。 室内は光をなくし、暗闇に包まれた。
冬のアカカイ♀
「クリスマスですよ、カイコクさん!」 ワクワクと、サンタコスにまで身を包んだアカツキのそれは、彼女のふぅんというあっさりしたそれで躱されてしまった。 「…え、それだけですか?」 「…。…他に何があるってェんだい?」 あんまりにあっさりした返答に聞き返せばカイコクは嫌そうな顔でこちらを見る。 同じ年上コンビであるユズならもうちょっと乗ってきそうなものだが…随分まあ簡素だ。 確かに彼女は行事事にあまり興味がないようなのである。 聞けば、「この歳にもなって行事ではしゃいだりしねぇだろう?」とのことで、どうやら性格差らしかった。 しかし、クリスマスは特別苦手なようで。 「クリスマスですよ?クリスマスー!カイコクさんもケーキ食べたりシャンメリー飲んだりしましょうよー!」 「甘いの嫌い」 ごねるアカツキに、子どもっぽい返事が寄越される。 こんなにきっぱりと嫌いを出してくるのは珍しいから、余程なのだろう。 だが、アカツキだって引いてはいられない。 何と言っても今日は彼女と過ごす、初めてのクリスマスなのだ。 「カイコクさん、行事苦手なんですか?」 「ん?そんなことねぇぜ?…節分は楽しみだし」 「じゃあ」 「…。…クリスマスには良い思い出ねぇからな」 はぁ、と息を吐く彼女がようやっとそう言う。 「じゃあ、俺と良い思い出にしましょう?」 「…。…言うねぇ」 詰め寄るアカツキにカイコクはきょとんとしてから、ふは、と楽しそうに笑った。 それからイタズラっぽい表情を作る。 「それで?どんな風に良い思い出に変えてくれる気でぇ、入出君は?」 「…!まずこれを着てください!」 可愛らしく笑う彼女に持ってきていた衣装を見せた。 途端に嫌そうな表情になる。 「…コスプレはしない」 「えー、サンタさんですよ?」 「ミニスカサンタはサンタじゃねぇ!!!」 全力で拒絶するカイコクに上目遣いで手を握った。 …この表情に、彼女が弱いのを知っていてなお。 「…だめ、ですか?」 「…う…」 「…良い子の俺にプレゼントはくれないんですか…?」 じぃっと見つめていれば、分かったわかった!とホールドアップの姿勢を取った。 何だかんだ、カイコクはアカツキに甘いのだ。 「…すぐ脱ぐからな」 「はーい!」 ブスくれながらシャワー室に消える彼女を元気な返事と共に見送る。 …そうして。 「…可愛らしいですよねぇ、カイコクさん」 にっこりと笑って窓の外を見た。 いつの間にか雪が降っていて、今日は奇しくもホワイトクリスマスであったらしい。 「…君にはあげませんよ。俺のカイコクさんですから」
ねぇ、もう一人の『俺』。
独りごちてアカツキは立ち上がった。 彼女は、己のものだ。 絶対に、絶対に渡したりなどしない。 …いつの間にか芽生えていた独占欲にくすりと笑い…気分を切り替えた。 まだカイコクが着替え終わるまで時間がかかるだろう。 一旦外に出てパカメラを呼び寄せた。 彼女の機嫌が悪くなる前に、寿司を頼んでおかなくてはならないから。
今日はクリスマス。 サンタはプレゼントを配る存在だ。 …ならば、自分へのプレゼントは自分で用意しなくては。
「わぁ、カイコクさん可愛いです!やっぱり思った通りですよー!」 「そりゃあどうも。…って、入出、お前さんどこに手ぇ入れて…っ?!」 「すぐ脱ぐんですよね??…カイコクさん?」 「そういう意味じゃね…!や、だ…っ!!」
(甘ったるい彼女の悲鳴が上がる、せいなる夜、の漢字変換が聖だなんて誰が言ったんでしょうね!)
秋のザクカイ♀
秋にしては珍しく暖かかったから忘れていた。 そも、この島に季節感というのがないから、忘れていて当然とも言えるのだけれど。 「忍霧!良いとこに!」 ぱあ、と明らかに顔を輝かせる彼女に嫌な予感しかしなかった。 「頼む、匿ってくんなぁ!」 手を握り、真剣に言うカイコクにその予感は的中したことを悟る。 「…一体貴様は何を…」 呆れながら聞こうとした、その時。 誰かが探している声が聴こえる。 あれは。 「…入出?」 小さく名を呟けばカイコクはびくりと躰を強張らせた。 仕方ない、と近くの部屋に引っ張り込む。 「…暫くは大丈夫だろう」 「…助かった」 「…で?何があった」 へにゃりと笑う彼女に、ザクロは問いかけた。 忘れたのかい?と不思議そうなカイコクが、着ていた【制服のスカート】をつまみあげる。 「今日は、ハロウィン、だぜ。忍霧」 笑う彼女に暫く考え、ようやっと、ああ、と思った。 ハロウィン。 仮装をして街を練り歩き、お菓子を貰う日。 元々はヨーロッパの収穫祭を元にした行事だとか…そんな事はどうでも良くて。 妹であるサクラも好きだったな、とか思いながらカイコクを見た。 「ハロウィンと、貴様が逃げているのに何か関係があるのか?」 「着せ替え人形にされてる」 ブスッとした顔で答えた彼女によれば、ハロウィンなのに菓子を持っておらず、ならばとイタズラと称して色んな衣装を着せられているらしい。 ようやっと、なるほど、と思った。 随分珍しい格好をしていると思ったら。 眼鏡なんかかけているから最初は誰か分からなかったくらいだ。 「…なあ」 「?なんでェ」 きょとんとするカイコクに、それは本来着ていたものかと問う。 「…ああ。何故かタンスに仕舞いこまれてたんでな」 首を傾げながら、膝まであるスカートを摘み。 「…似合うかい?」 どこか自嘲するように笑う。 カイコクはあまりこういった、女性らしい格好は嫌っているように思えた。 ザクロとしては似合っているのだから嫌わなくても良いのに、と思うのだが。 何を着ていたってカイコクはカイコクだ。 …まあ、あまり露出が多いとこちらが困るのだが…それは置いておいて。 膝丈のプリーツスカートに、紺のベスト。 薄ピンクのYシャツに臙脂のリボンネクタイ、それにメガネ…どれも彼女によく似合っていると思った。 だから。 「似合うに決まっているだろう。本来貴様が着ていたものなのだから」 きっぱり言えばカイコクは目を見開く。 「…!」 「…俺は、普段の鬼ヶ崎も、良いと…思うが、こちらも良いと思う」 「…そうかい」 ザクロのそれに、ふやぁ、と柔らかい表情で彼女は微笑んだ。 「…と、いうかそれは仮装なのか?」 「さあ?…まあ、地味ハロウィンってぇのもあるくらいだしなぁ」 二人で首を傾げ、ぷっと吹き出す。 「これで仮装なら俺ぁ毎日仮装して行ってた事になるな?」 「現役との差じゃないのか、それは」 ふわふわと楽しそうなカイコクにザクロはいってやった。 それにしても、と彼女の眼鏡を外す。 やはりカイコクはこの方が良いな、と思った。 ただでさえ…普段と違うからドキドキするというのに。 「…制服プレイかい?お前さんもマニアックだねぇ」 「五月蝿い。普段見られないのだから、仕方が無いだろう?」 軽く笑う彼女にぶすくれながらも、トッと肩を押した。 マスクを外し、距離を近づける。 「なあ、鬼ヶ崎。…トリック・オア・トリート?」 「…俺が、甘いもの嫌いって知ってるくせに」 くすくす笑い、お互いにキスをした。
今日はハロウィン。 仮装と嘯くカイコクに、いたずらと言う名の菓子をねだる、日。
「忍霧、忍霧ぃ!せ、いふく…汚れ…!」 「…はっ、煽っておいて何を…!」 「…煽って、ねぇ…んぁあ!!」
(彼のトリックによって彼女の声が甘く甘く響くのもハロウィンの夜ならではなのです)
夏のアンカイ♀
「…夏祭り?」 ふわり、と彼女が首を傾げる。 それにアンヤは、おぅ、と頷きながらミントガムを口に運んだ。 「なんつったかな、カラカラ遺跡の?近くにあるシーサイド?で祭りをやるんだと」 「…へぇ…??」 「女子共が無理やりに頼み込んだらしいぜ。楽しみがなさすぎるっつって」 「…俺も女子なんだが」 カイコクのそれに、アンヤは知らん、と返す。 彼女は祭りの件に関して噛んではいなかったようだ。 「…駆堂は…行くのか?」 「あ?…あー……ゲームやるわけでもねぇし…」 どこかそわそわしているカイコクに、わざとらしく言えば、少しだけしゅんとした。 面白いな、と思う。 「オメーは?」 「え?」 「…オメーが行くなら、一緒に行ってやってもいいけど?」 きょとん、としてみせた彼女が意図を理解したのだろう、小さく笑った。 「俺ァ、駆堂から誘ってくれると思ってたんだがねぇ?」 くす、と挑戦的に笑う彼女には敵わないな、と早々に諦める。 代わりに手を差し出した。 「夏祭り、一緒に行かね?鬼オンナ…や、カイコク」
「んで、結局こうなるんだよなぁあ!」 ある一点を見つめ、アンヤははぁあとため息を吐いた。 視線の先にはカリンと話すカイコクがいる。 二人きりだと思っていたそれは、どうやら全員参加だったようで。 女子の着付けから何から担当した彼女は先程からちやほやされているのである。 カイコク自身も普段とは違う、烏羽色に女郎花が散った浴衣で(普段は小紋、といって全く違うらしい)、長い髪もアップにしており、そこも話題の一つのようだ。 すっかり彼女を女子に取られてしまったアンヤはもう一度溜息を吐き出してから踵を返す。 仲間たちからの同情の目が居たたまれなかった。 歩き出したところで、くん、とシャツの裾を引かれる。 「おわっ、何しやが…!…って」 「…置いてくこと、ねぇだろう?」 たたらを踏み、怒鳴りながら振り返ればカイコクがほんの少しブスくれた目でこちらを見ていた。 「…あいつらとは行かねーの?」 「?夏祭りはお前さんが誘ってくれたんだろ?」 少し意外に思いながら聞いてみれば、カイコクは首を傾げながらそう言う。 そういやそういう女だった、とため息を吐いた。 「く、駆堂?」 「…ほら」 「へ?」 おろっとこちらを見るカイコクに向かって手を差し出す。 目を丸くする彼女の、白い手を取った。 「…祭り、行くんだろーが」 「…あぁ」 そっぽを向きながら言うアンヤに、カイコクが小さく笑う。 暗闇に響く、カランコロンという下駄の音。 「…歩きにくくねぇの?」 「…や、大丈夫でぇ。慣れてるからな」 「あっそ」 短く返すアンヤに彼女はへにゃりと笑んだ。 ふ、と手を引くカイコクが立ち止まる。 「おわっ、なんだ…よ…」 急に立ち止まられ文句を言いかけたアンヤは口を噤んだ。 立ち止まったカイコクは何かをじぃっと見つめていて。 視線の先にある出店には色とりどりの指輪やアクセサリー類と、穴の空いた箱がある。 どうやらくじの一種のようだ。 だが彼女はやるか、と問うても首を振るだろう。 普段は気にしないくせに何故だかこういうところは気持ちを押し殺すのだ。 やりたいならやりたいと素直に言えば良いのに。 「え、あ、駆堂?」 「…そこ、座って待ってろ」 ベンチを指差し、一旦荷物を押し付けてアンヤは出店に走る。 ついでに食べ物も色々買って持っていくか、と思いながら、出店の主人に声をかけたのだった。
それから数十分後。 「…NPC(モブ)にまでナンパされてんじゃねーよ!!」 「っ!…駆堂」 別れた場所に戻れば彼女は何やら仮面をつけた男たちに言い寄られていて思わず怒鳴る。 ホッとしたようにこちらを見るカイコクを引っ張り上げ、抱きしめた。 「何許可なくオレのカノジョに声かけてんだ?あ??」 恫喝し、モブたちを散らす。 それから腕の中にいるカイコクにもじろりと睨んで見せた。 「…つか、テメーも」 「…え?」 「あれくらいのモブ、蹴散らせるだろーが。なんで言い寄られっぱなしなんだよ」 隙だらけの彼女に文句の一つでも、と思いきやカイコクもカイコクで言い訳があったらしい。 ムッとした表情で「あいつらが気になること言うから」と言った。 「あ?気になること?」 「この祭りの中にある、約束の木の下で指輪を貰ったら、幸せになれる…って」 聞き返すアンヤに、彼女はこくり、と頷く。 興味なさそうに見えて存外世迷い言を信じるタイプらしいカイコクに呆れた表情を向けた。 「べっ、つに良いだろ!…幸せを信じたって」 「…悪いとは言ってねぇだろーが」 不満そうな彼女にそう言い、腕の中から解放する。 そのままその白い手を取った。 先程くじで勝ち取った赤い石がついた陳腐な指輪を嵌めてやる。 「…っらよ」 「…!こ、れ」 「…悪かったな、おもちゃで」 目を見開くカイコクにふい、とそっぽを向きながら言えば彼女はふにゃ、と表情を和らげた。 「…これが、良い」 「…そーかよ」 ただのおもちゃだろ、と言いかけアンヤは止める。 捨て台詞を吐くには彼女は幸せそうに見えたのだ。 提灯に向かって手を翳し指輪を見つめるカイコクに、ため息を吐いた。 「…そんなん見て楽しいのかよ…」 「まぁねぇ」 にこにこ笑う彼女に、あっそ、と返す。 早く大人になりたいな、と…ただそれだけを思った。 早く大人になって、彼女に本物を贈りたい、と。 「なあ、これ、秘密?」 「あ?…いいんじゃねーの、言いたきゃ言やぁ」 「…ん」 上機嫌なカイコクの手を取る。 駆堂?と首を傾げる彼女を引っ張った。 「…あっちに美味い唐揚げ屋があるんだと」 「唐揚げ…んぐ?!」 「イカ焼きやるから着いて来いや」 アンヤの誘いに、少し迷うから先程買ったそれをカイコクの口に押し込む。 ムッとしていた彼女が、咀嚼をし、しゃあねぇなぁと言った。 思ったよりもお口に召したらしい。 「駆堂、ししゃもの唐揚げも食いたい」 「へーへー」 笑う、カイコクの手に光る…己の目と同じ色の石。 牽制や予約を込めたそれを見せつけるように、アンヤは手を繋いだのだった。
(今はそれで我慢してやるよ、なんて強がって)
「あ、なぁ、忍霧!見てくんなぁ!駆堂が…!」 「てっめ、一番バレたくねえやつに報告してんじゃねぇよ!!!」
春のマキカイ♀
うとりと瞼が落ちる。 今日は天気が良く、昼寝日和だった…マキノにとってはいつも昼寝日和なのだけれど。 「…い、…わ」 「……」 「あ…ぃ…わ」 「…?」 「逢河!」 鋭い声に眠たい目を擦りながらそれを開く。 目の前にいたのは少しムッとした鬼ヶ崎カイコクだった。 長い髪をサッと避け、「漸く起きたかい?」と頬を膨らませる。 「…カイコッちゃん」 「お前さん、まさか約束忘れたわけじゃああるめぇな?」 にっこりと音が付きそうなほど綺麗な笑みを彼女は見せた。 約束、と小さく呟き…ようやっと思い出す。 そう言えば、花見に行きたいと言ったのはマキノだった。 「おっ、その顔…思い出したな」 満足そうに笑うカイコクは寝ているマキノの手を引っ張る。 「んじゃ、早速行こうぜ。早くしねぇと日が暮れちまう」 「…お弁当、は?」 「は?」 「…アルパカの人…お弁当、あるよって…」 「あいつの用意したもん食べるくらいなら花の蜜でも吸ってる方がマシ」 そう言えばと思い出したマキノのそれに、ぷいっと顔を背けるカイコク。 自分の意見がはっきり言える、意志の強い彼女はどこかスミレとよく似ていた。 羨ましいなぁとさえ思う。 …自分には、持っていないものだから。 「あーいーかーわっ」 「っ」 むぎゅ、と両頬を彼女の手が挟んだ。 「行こうぜ、桜を見に」 笑う彼女にこくりと頷く。 春の陽気の如く、綺麗な笑みを見せるカイコクが「よし」と息を吐いた。 何故だが満足気な彼女が可愛くて。 「うわっ?!あ、逢河?!何し…っ!」 「…?頭、撫でてる」 思わず腕を引き、頭をワシャワシャと撫でていた。 頭につけられたお面のリボンが揺れる。 「んなもん、見りゃ分かる……も、恥ずかしい、だろ、ぅ…!」 頬を薄紅に染めながらカイコクがマキノの手から逃れていった。 少し残念だな、と思う。 実況者メンバーの中でも年長な彼女は、甘やかされることに慣れていないのだ。 …もう少し、甘えてくれても良いのだけれど。 と、彼女のそばに何かが置かれているのに気がついた。 「…それ」 「…花の蜜…ってやつでェ」 首を傾げるマキノにカイコクが目を逸らしたままそう言う。 ベッドから降り、置かれていたそれを覗き込んだ。 目に飛び込んできたのは手毬の形をした小さなお寿司たち。 「…!」 「悪かったな、俺にとっての蜜、で」 「…。…ううん、嬉しい」 小さく言う彼女にマキノは答えた。 きっとわざわざ作ってくれたのだろう。 普段は料理をしないと言っていた…はずなのに。 ありがとう、と伝えれば「…ん」と簡素なそれが返ってくる。 だがその表情は言葉よりも雄弁でマキノはそっぽを向く彼女が、純粋に綺麗だと…思った。 「…桜の花、みたいだね」 「…はぁ…はぁ?!!」 その言葉に素っ頓狂な声を出すカイコクが可愛い。 以前見た花と同じ色に染まる彼女の頬を撫であげた。 …無意識に、表情を緩ませて。 「カイコッちゃん、可愛い」 「…んぐ…っ!」 ストレートな言葉にカイコクは何も言えないようだ。 存外褒められるのには慣れていないらしい。 「…お花見…」 「は、ぅ、ぇ??」 「桜より綺麗な花、見つけた」 唐突な呟きに戸惑ったようなカイコクへ手を伸ばす。 桜色に耳を染める彼女が可愛くて。 マキノはそっとキスをした。
頭を撫でるマキカイ♀
ゆっくりと廊下を歩く。 今日はあまり眠くならなかったから…タワーの外にでも行こうかと珍しい事を思った…ところで。 「…」 どこか覚束ない足取りの彼女、を見つけた。 「…うわっ?!」 「…っ」 声をかけようとしたところで、つんのめりかける彼女に手を伸ばす。 とさ、と腕の中に引き込んだ。 「…え、あ、逢河…?」 「…大丈夫?カイコッちゃん」 腕の中から己を見上げてくるのは少し驚いた顔をする鬼ヶ崎カイコクである。 珍しく眼鏡をかけており、新鮮だな、とぼんやり思った。 「ああ。お前さんが助けてくれたからな」 「…なら、良かった」 柔らかく笑う彼女に、こちらも自然に笑みが溢れる。 「…カイコッちゃん、眼鏡……」 「ん?あー…ちょっとな、忍霧たちに勉強を」 指摘したそれに、カイコクはへにゃりと笑った。 よく見れば彼女は教科書を抱えている。 方向からして、図書館でも行っていたのだろう。 彼女は頭が良いから、色々頼られたに違いなかった。 「…カイコッちゃん」 「ん?なんでぇ…?!!」 不思議そうなカイコクの頭を撫でる。 その途端、目を丸くさせて彼女は固まってしまった。 「え、あ、逢…河…?!」 「?何?」 「いや、その…なんで、頭なんか…」 しどろもどろになるカイコクに、首を傾げる。 …何かおかしなこと、しただろうか。 「…?カイコッちゃん、頑張ってる、から…」 「?!!いや、そりゃあ買い被りすぎ…」 「……撫でられるの、いや?」 「…そうじゃ、ねぇけど」 「嫌、なら…やめる…」 小さな声でボソボソと言う彼女から離れる。 …と。 「嫌じゃねぇ!…じゃねぇけど…なんだ、その…落ち着かねぇっていうか…」 くん、と袖を引っ張り、言い訳じみたように言うカイコクに、また首を傾げた。 「…ほら、ここにゃ、俺より背が高いやつなんて限られるだろう?ゲームの外でだって頭なんか撫でられねぇし…くすぐってぇっつーかな…」 「…。…カイコッちゃん、可愛い…」 思わず言ってしまったそれに、カイコクは目をそらす。 可愛いって言うな、と言う、その目元がほんのりと赤く染まっていた。 それも可愛らしく、また彼女の頭を撫でる。 暫くそうしていたが、ふとカイコクにも用事があるのでは、と手を離した。 「…ぁ…」 小さな声を漏らす彼女に首を傾げながらも廊下を歩き出す。 どこに行こうか、なんて考えながら暫く歩いていたが…ふと背後の気配が気になった。 「…?何」 「…?!!いや、あの、別に、その」 わたわたと手を振るのは別れたはずのカイコクで。 何やら羞恥と戦っているような彼女に、ああ、と思う。 「…撫でて、ほしい?」 「…っ!!ち、ちがっ!!」 かあっと顔を赤くするカイコクが可愛らしく、思わず腕を引き、抱きしめた。 教科書が床に落ちる。 だが、気にも止めなかった。 「ふえ?!あ、逢河?!!」 「カイコッちゃん、可愛い…」 「…可愛く、ねぇから!!なぁ、離して、くんなぁ…?」 困ったように見上げる彼女に首を振る。 そのまま壁にもたれるように座り込んだ。 「あ、逢…河…?」 「…頑張った、ね…」 「?!!」 頭を撫でながら笑みを向けると、カイコクは驚いたように目を見開く。 「…僕と、ゆっくり…しよ?」 「…」 ぽかんとしたカイコクの表情がゆっくりと崩れた。 しゃあねぇなぁ、と笑う彼女は幸せそうで。 「…なら、お言葉に甘えて」 「…ん」 可愛らしく笑ったカイコクの目が次第にとろりととける。 微睡む彼女が幸せな夢を見られますように、と…頭を撫でたのだった。
いつも、一人で抱え込む貴女が…少しでも安心できますように。
「…なぁ、マキノと鬼オンナが落ちてんだけど」 「あらぁ、眠っちゃったんでしょうかね?でも、カイコクさんの寝顔、可愛いです!」 「…たしかに人前で寝顔を見せない奴にしては珍しくはあるが…一体どんな経緯で廊下で寝るに至ったんだ…??」
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