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Bella-donna(ストギル・ジニギル)*女体化注意
で?と微笑んだ彼は美しかった。 長い足を優雅に組み換え、ふわりとあどけない笑みを浮かべ…見せつけるように【乳を揺らす】。 彼、ギルティは男性モジュールだ。 罪深い程に美しい、とされていたとて彼はジーニアスと同じ男性モジュールである。 …だったはずだ。 だのに、彼の胸はふくりと膨らみ、全体的にも女性特有の丸みを帯びていた。 理由は簡単。 「貴方が勝手にクスリを飲んでしまうからです」 「人の飲み物に変なもんぶち込んどいて良くまあいけしゃあしゃあとんなこと言えるな?!」 うがあ!とギルティが楯突いてくる。 怖くなどはない。 寧ろ、可愛いとさえいえるほどだ。 …本人に言えばそれ以上に怒るから言わないが。 さて、彼が彼女になってしまった理由はといえば、いつもの診察終わりに出した飲み物をギルティが何の疑いものく飲んでしまった、これにつきる。 何故彼はこう迂闊なのだろうか。 人なんて信用ならんと言いながら簡単に騙されてくれる。 だからこそこのような状況になっているんだろうな、と思いつつもジーニアスは何も言わなかった。 「それにしてもまあ」 「?」 「思った以上に育ちませんでしたね」 しげしげと彼の…今は彼女か……の胸を見ながら呟けばそれだけで分かったのだろう、蠱惑的な笑みを形作り。 「…変態」 可愛らしい笑みを浮かべ、黒いジャケットのボタンを一つ外してみせた。 ふるりと覗くそれは服の上からではわからない程大きい。 「なるほど?」 くすり、とジーニアスが笑った。 着痩せするタイプなのだろう。 「触ってみても?」 「どぉぞ?一回千円な」 可愛らしく笑み、ギルティは突拍子もないことを言い出した。 「お金貰ってどうするんです。貴方、籠の中の猫でしょうに」 「何事も先行投資が必要だろ…ぁんっ」 悪い顔をするギルティの、胸を揉む。 ぴくん、と表情を歪ませる彼にジーニアスも微笑んだ。 「感度が宜しいんですね?」 「はっ、もっと優しくしてもらいたいもんだな、童貞クン?」 ああ言えばこう言う、彼との応酬。 慣れたものだがやはり痛い目は見てもらっておくべきかと少し考えたところで。 「なに、やってるの?」 「…んだよ、旧作」 響く声に、ギルティが胡乱気な視線を投げてよこす。 それにきゅっと眉を吊り上げた彼、ストレンジダークが足音荒く寄ってきたかと思えばジーニアスからギルティを引き剥がした。 「ギルティはボクのでしょ」 「別に誰のものになった覚えもねぇけど?」 ストレンジダークのそれににこり、と音がつきそうな笑みを浮かべる。 彼は彼女になってより可愛らしく美しく可憐に蠱惑的に、…そして我儘になった。 「な、旧作。俺、甘いのが食べたい気分」 「…。…そんなこと言ってる場合…」 「頼むよ。…いいだろ?」 「…はあ……」 可愛らしく、もはや悪魔的といってしまった方が良いほどのそれにはストレンジダークも溜息を吐くしかなかったようだ。 ギルティから離れ、簡易の冷凍庫の方へ向かう。 チョロイ、とピースをジーニアスに見せつけるギルティは…愚かとさえ言えた。 「貴方はもっと喜ぶかと思ってましたよ、ストレンジダークさん」 「言っておくけど、ボクは女性は嫌いだよ。子どもだってほしくないし」 パタン、と冷凍庫の扉を閉めジーニアスのそれに答えながらストレンジダークが持ってきたのは高いことが世間的にも有名な某アイスクリームだった。 最近発売されたものだろう。 カップではなく棒状のそれはギルティの口より少し大きいくらいだ。 「お、気が利くな、旧さ…くっ?!」 「でも、女性の躰に興味がない訳じゃない。何より」 嬉しそうなギルティをベッドに沈み込ませ、彼は冷たい目で言葉を紡ぐ。 「…ボク以外に着いていくのは、赦さない」 「なに…んぐぅ?!!」 痛みに表情を歪ませた彼が大仰に目を見開いた。 アイスバーが口にいきなり入ってくればそんな顔もするだろう。 「美味しい?美味しいね、ギルティ」 「ふぁ、は…ぁぅう…!」 「もっと喰べさせてあげる。例えば…こっちとか」 無邪気な笑みを浮かべ、アイスバーを乱暴に動かしながら、ストレンジダークはするりとギルティの下半身を撫で上げた。 やめろ、よせ、とギルティが首を振る。 「ギルティは何が好き?スイートストロベリー?コーヒー&クッキークランブル?塩キャラメルマカダミア?バニラチョコ?どれも捨てがたいね」 楽しそうに笑み、箱を開け…嫌がるギルティの綺麗な足を ぐい、と割り開いた。 「ジーニアス先生」 「はいはい」 じたじたと暴れ出すギルティの背後に周って、ジーニアスは足を押さえつける。 「ま、全部喰べちゃえばいいよね」 色んな穴があるし、という彼は怒っているのだろう事がありありと窺えた。 少しやり過ぎたか、と掠めるものの反省などは特にしない。 クランチーバーを処女喪失に使うのもなかなか大概だな、と思うがジーニアスは何も言わなかった。 被験者が実験体に何をしようが関係ない。 「〜〜〜!!!!」 声なき悲鳴をあげる彼の肌を舐め上げれば白桃の味が、した。 20180701発行(再掲)20230723 VOCALOID DIVAModule ストレンジダーク×ギルティ←ジーニアス Rose Menuett 桜井えさと pixiv:https://www.pixiv.net/users/2492377 Twitter:@hatoe_sa_to
ストギルジニギルコピー
今日はお祭りなんだって
そう誰かが言った。
「…ギルティ、起きて。ギルティ」 「…ん…ぅ…?」 ぼんやりと彼はその濡れた目を開く。 ほっとした顔を、ストレンジダークは見せた。 この少年もこんな優しい表情を見せるのだな、とジーニアスは思いながら「ずいぶんぐっすり眠っていましたね」と声をかける。 「…夢、見てた気がする」 「ほう。貴方でも夢を見るのですね」 「…どーいう意味だよ」 寝起きの声を出すギルティにそういえば彼は少しだけむっとしてみせた。 どうやらまだ頭が回転しきっていないようで反応は遅めだ。 「…ボクの夢?」 「誰が旧作の夢なんざみるんだよ、馬鹿じゃねえの」 素朴な疑問にギルティがあっさりと言う。 言葉に棘が戻ってきた。 悪い夢を見ていたわけではないらしい。 「…ギルティ、ホントそういうとこ」 「るせぇ。…で?なんで起こしたんだよ」 酷く呆れたようなストレンジダークにギルティは暴言を吐き捨ててから首を傾げた。 さらりと蒼い髪が揺れる。 せっかく寝てたのに、と言いたげな彼に、そうだった、とストレンジダークはそのほっそりとした手を引いた。 「行こう、ギルティ」 「…は?行こう、ってどこに」 「…。…今日は大切な日なんだそうですよ」 目を白黒させるギルティに小さく笑いながらジーニアスが言う。 「ストレンジダークさんがそういうものを大切にする方とは思いませんでした」 「ねえ、ジーニアス先生も馬鹿にしてるよね?ボクのこと」 「いいえ?私は褒めているのですよ」 「…なあ、さっきから何の話…」 楽しそうなジーニアスと少し不満げなストレンジダーク、その二人にギルティは戸惑うようにして問うた。 彼にしてみればそうだろう。 穏やかな夢を見ていたところ急に起こされて 何もわからずに、今まで監禁されていた場所から連れ出されようとしているのだから。 「お祭り」 二人の声が重なる。 え、とギルティの目が見開かれた。 「今日はギルティのためのお祭りなんだって」 「まあ…たまには穏やかなのも悪くはないでしょう」 ストレンジダークが年相応の顔をして笑う。 ジーニアスが優しい顔で目を細める。 それに、ギルティは「ま、たまにはな」と笑った。
有罪の黒猫は穏やかなお祭りの夢を魅る。
それはいつかの、穏やかな刻のユメに似て、いた。
「なあ、旧作。俺、かき氷食いたい」 「だから、旧作って呼ばないでってば。…そもそもあるのかな、かき氷」 「ギルティさん、貴方ブルーハワイ似合いそうですね」 「?どーいう意味…おいこらてめ、ジニ、ジーニアス。何悪りぃ顔してんだ」 「…いいえ?特に何も」 「…ジーニアス先生、意外と嘘つけないよね」 「ふふ。さあ…どうでしょうね?」
しほはるワンドロワンライ・夏休み/予定
「夏休みの予定をお聞きしても宜しいですか、お嬢さん!」 「…なに、それ」 ひょこりと覗き込んで言われたそれに、志歩はふは、と笑う。 それに聞いてきた彼女…遥がふわふわと髪を揺らした。 「ふふ。もうすぐ夏休みでしょう?…普通に聞くだけじゃあ面白くないと思って」 「予定聞くのに面白みなんていらないから」 笑いを堪えてようやっとそう言ったのに遥はそうかな?と何故か不思議そうだ。 「…それで?私の予定が気になるんでしょ」 「!教えてくれるの?」 「そんな面白い予定はないよ。大体は次のライブの為の練習だし。空いてる時間はバイトかな。…桐谷さんだってそうじゃないの?」 「まあ…。来週はテレビ収録とロケ、後はラジオにも出る事になったの」 「へえ、おめでとう」 「ありがとう、日野森さん」 素直に言えば彼女はへにゃりと笑う。 「じゃあやっぱりお互い夏休みは忙しいね」 「そりゃあね。…夢は、譲れないでしょ」 笑う志歩に遥が、目を丸くしてから、もちろん、と言った。 志歩は遥の夢を知っているし、遥も志歩の夢を知っている。 知っていて、そんな夢に直向きな彼女のことが好きになったのだ。 …遥も、そうだったら嬉しいな、と思う。 「…。…ま、夏は予定合わないにしてもさ」 「?」 「…今日のお祭りくらいは一緒に行けるけど?」 きょとりとする遥に手を差し出した。 夏休みに入る前、この地域ではこぞって夏祭りが行われるのだ。 「…いいの?」 「誘ってるんだから当たり前でしょ。…もっと、ロマンチックな方が良かった?」 笑う志歩に、遥がくすくすと楽しそうにその手を取る。 「うーん、日野森さんは変わらないでほしいかも」 「何、それ」 向日葵のように笑う遥に、志歩も肩を揺らしながら取られた手を引き寄せた。 「じゃ、放課後迎えに行くよ、お嬢さん?」 「…もう、日野森さんたら」 彼女が可笑しそうに目を細める。 そんな反応をされる方が何だか恥ずかしかった。 「…やっぱり私にはこういうの、向いてないかも」 「無理しなくても良いのに。私はいつもの日野森さんが好きだよ?」 「…ありがとう、桐谷さん」 はあ、と息を吐く志歩に遥がフォローしてくれる。 …こうなったのも遥のせいなのだけれど、と思ったが不毛なので言葉にするのはやめた。 代わりに、「私も桐谷さんのこと、好きだよ」と告げる。 ありがとう、という彼女の耳は柔らかく染まっていた。 「…ま、夏休みの間ずっと会えない訳じゃないし。予定が合えば遊んだり…メッセージ送ったりは出来るしね」 「…そうだね」 遥が笑う。 夏が良く似合うそれで。
夏休みの予定は合わないけれど
それが全てではないことは志歩が一番良く知っているから。
「じゃ、帰ろ、桐谷さん」 「…!うん、帰ろう、日野森さん!」
照りつける日差しの中、手をつなぐ少女たちが飛び出す
夏休みはもうすぐそこ!
ナナミ誕
七夕は夏のバレンタイン、とは誰が言い出したのだろう。
「いいわねぇ、夏のバレンタイン。ロマンがあるじゃない?」 ナナミがほう、と言うと、隣にいたシンヤが柔らかく微笑んだ。 誰かが…そんなもの、誰かなんて分かりきっているけれど…「ナナミは織姫でも彦星でもねぇじゃん」と言う。 まあその人は後でどうにかするとして…ねぇ、とナナミはシンヤに問いかけた。 「駆堂クンは、七夕ってどう?」 「…そう、ですね。七夕は家族で行うイメージですが…。俺は、夏のバレンタインというのも良いと思います」 柔らかい笑顔でシンヤが言う。 「けれど、ナナミさんは七夕が誕生日ではない、というのも少し納得するんです」 「あら、どうして?」 思っても見なかった言葉に、シンヤは少しだけ困った顔をした。 その表情に、なんだか覚えがあって小さく笑う。 「ナナミさんは、思いや願いを、神に託すのではなく自分自身で叶える人かと、思うので」 「…!そうね」 考えながら答えてくれたシンヤにナナミは僅かに微笑んだ。
確か前にも言われたことがある気がして。
「七夕が夏のバレンタイン…?」 その時の彼は、その言葉を聞いた途端嫌そうな顔をしていた、が、それを教えた少女に強く否定するのは憚られたのだろう。 助けを求めるようにこちらを見たから、あら、と思わず笑ってしまった。 「アタシは良い考えだと思うわ。織姫と彦星みたいに、遠距離恋愛でも離れない二人でありますように、ってことでしょう」 「んなの、自分自身でどうにかしろって俺ァ思うがねェ…」 はぁ、と頬をつくカイコクに、ナナミはくすくす笑う。 ちなみに、少女の方はもう興味をなくしたらしかった。 なので、この話も終わりでよかった、はずなのだけれど。 「ナナミにーさんは、自分自身でどうにかするタイプだろ」 「あら、どうして?」 カイコクがナナミに笑いかける。 意外なそれにきょとんとして聞き返した。 「ロマンチストと乙女チックは違ェからな。…星に願うなら自分で引き寄せるってェ感じがする」 「それは…褒められてる?」 「勿論。にーさんの誕生日が七夕じゃなくて良かったと思うくらいにゃァな」 カイコクが楽しそうに笑う。 「俺ァ、にーさんのそういうトコが気に入ってんでェ」 「ま、光栄だわ」 存外素直な彼にナナミも笑った。
ふふ、とナナミは肩を揺らす。
似ていないようで、やはり二人は似ていると思った。
二人に、そんな風に言ってもらえるなら、七夕から少し外れたこの誕生日も…悪くないかもしれない。
「ところで、ヒロは今日の昼食は無しよ」 「っべ、バレてた!!」
しほはるワンドロワンライ・傘/雨上がり
今日は朝から雨だった。 放課後までには止むかと思ったが…仕方がない。 最近買ったばかりの傘を開いた。 ぱしゃりと雨降る中に足を踏み出す。 「…日野森さん!」 「…。…桐谷さん」 傘に当たる雨粒をかき消すように声が聞こえた。 振り返ると遥が傘片手に駆けてくるのが見える。 立ち止まり、追いつくのを待った。 「良かった、間に合って」 「そんなに必死にならなくても…」 傘越しで彼女がふわふわと笑うから、志歩も小さく肩を揺らす。 「でも、日野森さんとはクラスが違うから、帰り時間もなかなか合わないし…一緒に帰れるなら、帰りたいなって」 可愛いことを言う遥に、もう、と笑った。 「雨なのに?」 「雨だから、だよ」 無邪気に遥も微笑む。 「雨って、人によっては憂鬱じゃない?だから、少しでも…好きな人と一緒にいたいなぁって」 人差し指を自分の唇に当ててパチリとウインクをする彼女に、敵わないなぁと思った。 「…ま、雨だとこういうことしてもバレないしね」 「え…」 そう言って遥の手を握る。 目を見開く彼女に、キスされるかと思った?と意地悪く聞いてみた。 「まあ、ちょっと…だけ……」 傘越しに染まる、遥の耳。 意外な反応に、志歩も思わず目を見開く。 「なんでそんな反応なの…」 「だ、だって…」 呆然とする志歩に、遥が頬を膨らませた。 途端に、二人して吹き出す。
雨、あめあめ梅雨の季節。
たまにはこんな雨の日も。
「あ、雨上がったね、日野森さん!」 「…うん、そうだね、桐谷さん」
司冬ワンライ/梅雨明け・旅行
旅行に行くならどこが良いだろう。 なんて、不毛なことを考えるくらいには、最近天気が悪かった。 雨の日の旅行も風情があって良いとは思うが、どちらかを選ぶなら晴れている方だろう。 「お待たせしてすみません」 「構わん!と、いうか、思ったより早かったな、冬弥!」 少し焦った様子で冬弥がやって来た。 司はそれを笑顔で受け止める。 久しぶりに一緒に帰る予定が、急遽冬弥の所属する委員会で会議が入ってしまったのだ。 だが、別に用事もないから、と司は自分の教室で宿題をしながら待っていたのである。 「はい。虫干しの日程を早く決めてしまいたかったようです」 「ああ。梅雨明け後に決めていたらすぐに夏休みになってしまうからなぁ」 冬弥のそれに笑いながら司は先程終わらせたばかりの宿題をカバンに入れた。 ネックの英語が終わったので少し気が楽になった、と笑みを浮かべる。 「…司先輩?」 「ん?ああ、いや、英語の宿題が終わったからホッとしたんだ」 「…なるほど」 クスクスと笑う冬弥に、そうだ、と司は先程思いを馳せていたそれを聞いてみることにした。 「…冬弥。冬弥は旅行に行くならどこが良い?」 「…旅行、ですか」 司の唐突なそれに彼は小さく首を上に向ける。 しばらく考えていた彼は、「司先輩と一緒ならどこでも楽しそうですが」と笑った。 そうして。 「日本国内でも良いですし、世界を見て回るのも楽しそうです。…日本と異なる季節の場所、というのも良いかもしれません」 「ふむ、なるほどなぁ」 「司先輩は、どこか行きたい場所はありますか?」 「オレか?そうだな……」 逆に冬弥から聞かれ、司は天井を見上げる。 行きたい場所も、行ってみたい場所も、沢山あるが…きっと冬弥と一緒ならどこでも楽しいだろう。 あれやこれや考えるのも旅行の醍醐味といえる…が。 …司はあまりそういう性分ではなかった。 だから。 「冬弥!」 彼に目を向け、その手を取る。 「オレは、考えるのに向いてない性格なんだ。だから」 驚いていた冬弥が、司の言葉に小さく笑って頷いた。
雨の匂いは、やがて太陽を連れてくる。
「梅雨明け、二人で旅行に行こう!」
類冬 類バースデー
冬弥が何か悩んでいるらしい。 らしい、というのは幼馴染でありショーキャスト仲間の寧々が練習に遅れて来たことがあったからだ。 その際彼女は「…青柳くんの相談に乗ってたの」というだけで。 それに一番反応しそうな司やえむが「そうなのか」「解決したら良いね!」くらいだったのは気になったが…類もその時はそうだね、と言うに留めた。 寧々が相談に乗ったのなら大丈夫だろう。 その後も、瑞希や杏が相談に乗っているのを見た。 余程何かに困っているのだろうか。 少し聞いてみようかとも思ったのだが、思い止まった。 彼にだって聞かれてほしくないこともあろう。 何かあれば相談にも来るだろうし。
そうして、数日が経った。
その日は類の誕生日だった。 練習日に突然お祝いされて大層驚いたが、やはり良いな、と思った…そんな帰り道。 冬弥に呼び出され、共に帰路を歩いていた。 「…それで、どうしたんだい?」 他愛ない話をしていたが、いつまで経っても冬弥が話を切り出さないから、代わりに類から話し出す。 あまり遅くなっても彼の両親が心配するだろうし。 「…。…神代先輩」 「うん、何かな?」 改まって冬弥が類を見る。 同じように彼を見ると、少し迷っていた冬弥が抱きついてきた。 「?!青柳く…?!」 「…お誕生日、おめでとうございます。神代先輩」 「…え?」 耳元で聞こえる、お祝いの言葉。 そうして。 好きです、と小さな声が…届いた。 「…青柳くん」 「俺は、何か形に残るものが、と思ったんですが…そっちの方が良いとアドバイスを受けまして」 少し困ったように冬弥が言う。 してやったりと笑う彼女たちの顔が浮かんだ。 …全く、とんだサプライズだ。 「…?神代先輩?…わっ」 「嬉しいよ。…最高のプレゼントだ」 抱きしめ返し、類は告げる。 ストレートな彼の愛の言葉は、一生のプレゼント。
「もう一回言ってくれるかい?」 「…もちろん。今日は神代先輩の誕生日ですから」
(綺麗に微笑む可愛い後輩兼恋人が、誕生日以外でもそう言ってくれるようになるのは、また何れかの話)
司冬ワンライ・おにぎりの日/こだわり
今日は誰が言い出したかおにぎりの日だという。 そんなことを思い出しながら廊下でたまたま出会った冬弥に話していたら、彼の目がきらきらと輝き出した。 「…おにぎりの日、ですか」 「ああ、そうらしい。ニュースのバラエティーコーナーの一場面で言っていただけだから、詳しいことは分からんが…」 「…そう、なんですね…」 なるほど、と考え込む冬弥に、どうしたんだろうかと思いつつ…もしかして、と思い当たったことを口に出す。 「…もしかして…作ってみたいのか?」 「…!な、何故…!」 驚いた顔の冬弥に、やはりか!と司は笑った。 最近は色んな経験をしてみたいと意気込んでいるから、もしやと思ったのである。 画してそれは当たっていたようだ。 「よし、ならば今日の放課後に一緒に作ってみるか!」 「よ、良いんですか??」 「ああ!冬弥が作ってみたい、最高のおにぎりを作ろうではないか!」 再び目を輝かす冬弥に、司は笑う。 なんだか、司までわくわくしてしまって、すぐにでも駆け出したくなった。 …流石にそれをするのはまだ授業があるから憚られるけれど。 だから、ぐっと我慢して、では、と手を挙げた。 「また、放課後にな!」
今日は司も冬弥も練習はなかったからすぐに落ち合い、そのまま買い物に出かけた。 材料にもこだわり、二人で吟味しながら揃えたから、準備は満タンである。 「では、作っていくか!」 「…はい!」 エプロンを着け、冬弥と気合を入れた。 米を炊き、中身を作っていく。 「ふむ。包丁捌きが上手いな」 「…いえ、以前教えてもらったことがあって…まだまだです」 小さく笑う冬弥は何だか嬉しそうだ。 そうこうしている内に米が炊け、いよいよ握る番になる。 「…む…これは…なかなか……」 冬弥が綺麗な眉を寄せた。 どうやら少し思っていたのとは違ったらしい。 司から見れば綺麗だと思うのだが…きっとこだわりがあるんだろう。 「少し良いか?」 「!」 背後から手を添え、共に握る。 「…どうだろう」 「とても綺麗です!流石司先輩ですね!」 きらきらと、とても嬉しそうな冬弥に、司も心が温かくなった。
本日はおにぎりの日
二人で作るおにぎりは、きっと幸せの味
「よし、どんどん作って行くぞ!」 「!はい!!」
第13回しほはるワンドロ・ワンライ【ジューンブライド】・【秘密】
「…ふふっ」 なんだか楽しそうな遥が目に入り、志歩は不思議に思いながら近付いた。 「…何だか楽しそうだね、桐谷さん」 「!日野森さん!」 ひょいと顔を覗き込ませると、驚きと嬉しさを綯い交ぜにしたような表情で遥が志歩の名を呼ぶ。 「見て、ほら」 「…って、これ」 「ふふ。鳳さんから貸してもらったんだ。…良い写真だよね」 にこにこしながら見せてきたのは、確か穂波がブライダルフェアで撮ったとかいう写真だった。 ショーに参加するとウェディングフォトを撮って貰えたらしい。 写真の中の穂波は何だか幸せそうな顔をしていて、志歩も表情が緩んだ。 「まあね。…というか、私の周りウェディング関係のイベントに参加する率凄い高いんだけど…」 そう言えば最初こそきょとんとしていた遥がすぐにクスクスと笑う。 「確かに。杏と結婚式したの、雫だったもんね」 「杏…って、あの時の花嫁、白石さんだったんだ」 遥のそれに思い返しながら言った。 どこかで見た顔だと思ったら。 「…ねぇ、日野森さんはブライダルとか憧れない?」 遥が無邪気に聞いてくる。 それにすぐ首を振った。 「私は特に。ひらひらのドレスも、そういう式にも興味ないしね。…まあ、お姉ちゃんみたいなタキシードならちょっと気になりはするけど…」 「ふふ、日野森さんらしいね」 「…そういう桐谷さんはどうなの?」 楽しそうに髪を揺らす遥に志歩は聞く。 アイドルである遥は、ブライダルについてどう思うのだろう。 「うーん…。人並みに憧れはあるけど…アイドル活動で似たような衣装は着れるし…。…好きな人に選んで貰えたらまた違うのかも?」 首を傾げた遥がふにゃりと笑ってそんなことを言うから。 志歩は持っていたタオルを彼女の頭に被せてキスをする。 花嫁のヴェールの如く。 …初夏の風に吹かれたそれは二人を隠した。 まるで秘密の儀式のようで、口を離した瞬間ふは、と笑う。 「いつか選んであげる。…桐谷さんに似合う、最高のドレスを」 「うん。…それまでは秘密の結婚式で我慢しておこうかな」 志歩のそれにいたずらっぽく笑う遥が可愛くて。 そういうトコかな、なんて肩を揺らし、志歩はまた顔を近づけた。
ブライダルなんて大それた名目がなくたって
二人でいればいつも幸せ
司冬ワンライ・ブライダル/満ち足りて
「ブライダルフェア…ですか」 きょとんと冬弥が目を瞬かせる。 まあそれはそんな反応をするだろうなと司は苦笑した。 「ああ。そこでショーをやるらしいんでな。…とは言ってもオレたちは出ないんだが、その脚本を皆で考えたんだ」 「…!それは…とても楽しいショーなのでしょうね」 冬弥が優しい表情で笑む。 彼は司たちのショーをとても楽しみにしてくれているようのだ。 いつもその話をする時は嬉しそうに聞いてくれる。 司にはそれが嬉しくて堪らなかった。 「そうだな。花嫁たち、花婿たち、皆が楽しんで幸せになってくれるショーだ!少なくとも、オレはそう思っているぞ」 冬弥に笑いかけ、そういえば、と思い返す。 「冬弥は、オレの代わりにショーに出てもらったなぁ。あの時はとても助かった!ありがとうな、冬弥」 「いえ!…俺も、とても勉強になりました。ありがとうございます」 「そう言ってもらえると助かる!…あの時は…花嫁の為に戦いを挑む青年の役、だったか」 見せてもらったビデオを思い出しながら言えば彼は頷いた。 「…司先輩なら、花嫁にどのようなアピールをしますか?」 「ん?そうだな…」 冬弥の問いに少し考える。 花嫁のために、花嫁にこちらを振り向いてもらうように何をするか。 司のアピールポイントと言えばショーだろう。 例えば王子になりきって花嫁が喜びそうな言葉を考える、なんてありきたりか。 けれど、アピールポイントというにはなんだか違う気がする。 とすれば…それは…。 「…オレは、お前が好きだ。アピール出来るような特技は持ち合わせていない。だが、愛している気持ちは誰にも負けない。…オレと共に来ないか?」 「…!!」 綺麗な手を持ち上げ、冬弥を見ながら真剣に言う。 これは、冬弥に向けた言葉だ。 ブライダルフェアに向けたショーではない。 それに、今日は二人とも普段着だ。 ウェディングドレスでもなければタキシードでもない、何も特別ではない。 だからこそ。 「やはりダメだな。花嫁というより、お前に贈る言葉になってしまう」 「…。…司先輩は凄いです」 「む?」 反省していた司に、はにかんだ冬弥が言う。 「…ブライダルフェアに行かなくても、こんなにも満ち足りた気分になりました」 「そうか!ならば、返事は聞くまでもないな?」 幸せそうに言う冬弥に司も笑った。 「…はい」
彼が微笑んでくれるだけで。
ほら、司の心もこんなに満ち足りて。
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