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ワンドロ・かぼちゃorさつまいも/デザート
秋だなぁ、とぼんやり思う。 「…彰人」 「おう」 缶コーヒーを選んできたらしい冬弥が、彰人の手元を見てぱちくりと目を瞬かせた。 「…それは?」 「パンプキンマリトッツォと三種のお芋モンブランだと」 どっちにするかなぁ、と悩む彰人に、冬弥が柔らかく微笑む。 「芋栗南瓜がコンビニのデザートコーナーに並ぶと秋だと感じるな」 「まーな。…冬弥、どっちが良い?」 「…。…そうだな…」 掲げて聞いてから、そういえば冬弥は甘いものは苦手なのだっけ、と思った。 だが、デザートを見つめる冬弥が割と真剣で、ふは、と笑ってしまう。 何でも真剣なのだ、彼は。 「…どちらも甘そうだが…色が彰人に似ているパンプキンの方だろうか」 「…なんだそれ」 冬弥の返答に笑い、彰人は選ばれたそれをかごに入れる。 もう一方は棚に戻した。 「?そちらは買わないのか?」 「まあな」 不思議そうな冬弥にそう返して彰人はレジに向かう。 その前に売っていたあるものを注文し、会計を済ませた。 「待たせた」 「大丈夫だ。…その袋は?」 「ああ、これな」 首を傾げる冬弥に袋の中身を取り出して半分に割る。 驚く彼にそれを差し出した。 「ほらよ」 「…!あり、がとう」 ふわ、と冬弥が笑う。 柔らかい湯気がニ人を包んでいた。
彼と分け合える、秋のデザート
頬張る彼が可愛い、それは
「…美味しいな、焼き芋」 「だろ?」
類冬ワンドロ・衣替え/屋上
ひゅうっと秋風が吹く。 随分と冷たくなったそれに、類は冬物を出してきて良かったと思った。 まだ厚手のコートを出すような時期ではないけれど、それでも、こと屋上は寒いのだ。 「…神代先輩」 「おや、青柳くん。…用事なら連絡をくれれば行ったのに」 キィ、と音がして聞き馴染みのある声が届く。 類がにこりと笑ってそう言ったのは、冬弥が高いところが苦手だと知っているからだ。 「いえ。…特に用事はなかったんです」 「うん?」 「先輩と…秋を感じてみるのも良いかと思って」 小さく笑う冬弥に、類もおや、と笑った。 「別に紅葉や夕焼けが綺麗に見えるわけではないよ?」 「夏とは違う風を感じることが出来るのも秋ならでは、ですよね」 柔らかい笑みの冬弥に、敵わないねぇ、と肩を揺らす。 「ココアを持ってきました。…宜しければ」 「では遠慮なく。…僕からはこれを」 彼から缶を受け取った類はその肩に自分のマフラーをかけてやった。 冬弥も冬支度で上着は着ていたが首元が寒そうだったから。 せっかく綺麗な声で歌うのだ、喉を冷やしてはいけないだろう。 「…!ありがとうございます」 ぱちくりと目を瞬かせた冬弥は、ふわ、と嬉しそうにマフラーに顔を埋めた。 理性を総動員させ、類はココアの缶を開け口をつける。 甘ったるい味が類を包んだ。
二人の様相も衣替え。
柔らかい秋風が熱い二人の間を吹き抜ける。
屋上に冬弥がいるのもまた新鮮だなと、そう思った。
(それは秋の新たな風物詩!)
いいタイツの日
ハロウィンザクカイ♀
本日はハロウィンですので、とパカが言った。 だからといってそんなテロ行為が許されるのだろうか。 『性転換薬入りのお茶を飲んでいただきたい』 そう、言われ全員大人しく飲んだのはそれがゲームの一環だったからだ。 そうでなければ一蹴していただろう。 特に、この男に関しては。 「…なんで、俺が」 ブスくれた表情で頬杖を付く男…いや、今は女だろうか…鬼ヶ崎カイコク。 可愛いから良いじゃないですか、とフォローにもなっていない言葉をかけるのはこれまた性別が変わったカリンだ。 「えー、カリリンが格好良くなっちゃったー!」 「不満なんですか?ユズ先輩」 「べっつに不満じゃないけどさぁ」 首を傾げるカリンと口ではそういうものの感情を隠しきれないのだろうユズを尻目にザクロは息を吐き出す。 「…鬼ヶ崎」 「……なんでェ」 「…そう怒るな」 あからさまにブスくれたカイコクにそう言えば、じっとりとした目をして、ザクロの服を指でちょいと引いた。 「…お前さんが傍にいねぇのに?」 「…う……」 「性転換してから3時間、やっと近づいてきたってぇのに?それでも怒るなって??」 上目遣いで睨むカイコクに、ザクロはたじたじだ。 ただでさえ女子は苦手である。 元は男子だと分かっては…いるのだが。 ものの見事に性転換薬入りのお茶を引いてしまい、女子になったカイコクは、ハロウィンとのことで何故か仮装させられていた。 胸が強調されたナイトドレス…ミニではないのが救いだろうか。 「…悪かった」 「悪かったと思うなら、きちんとエスコートしてほしいもんだねぇ」 はっ!と鼻で笑いこちらを見るカイコク。 実は、このゲーム、続きがあった。 性転換した人が相手役を選び、その人とハロウィンパーティに出て踊ること。 二組とも合格して初めてゲームクリアとなる。 ちなみにダンスの出来は合否に影響しないようだ。 そんなことをされれば一生クリア出来ないだろう。 そんなところばかり優しくて、ザクロは息を吐いた。 「分かった。俺も覚悟を決めよう。…『お手をどうぞ、お嬢さん?』」 指示書に書いてあったそれを読めばカイコクは差し出した手にそれを乗せる。 ヒールを履いても自分とそう変わらない身長に、何か違和感を覚えた。 「…歩きにくい」 「我慢をしろ。…掴まっても良いから」 眉を顰めるカイコクにそう言う。 少し歩く練習をしていたとはいえ、やはり歩きにくいものなのだろう、蹈鞴を踏むカイコクに腕を出した。 「ん、どうもな」 迷い無くザクロの腕に細い腕を絡ませるカイコクに、元は男だと言い聞かせる。 そうでなければ逃げてしまいそうだった。 「…忍霧」 「……なんだ」 「…今日はハロウィンだな」 「…そうだな」 音楽が流れ、向かい合わせになり、足をぎこちなく動かしていればカイコクがそう言う。 小さく笑ったカイコクが腕を持ち上げ、ザクロの首に回した。 「TRICKorTREAT?」 くす、と小悪魔的に笑うカイコクに、一瞬固まったものの、それを解く。 そうして。 「俺はTRICKもTREATもいらん。…鬼ヶ崎がいれば、別に構わないからな」 「…!」 そう言うザクロを目を丸くして見つめた。 それから、ふは、と笑う。 ザクロが好きな…笑顔で。 (この笑顔はいつでも変わらないのだな、なんて思ったりして) 「…存外欲張りだねぇ、お前さんも」 楽しそうに笑うカイコクと、ふわふわ揺れるいつもより長い髪。 ゆったりしたワルツが2人を包んでいた。
「…しかしこれ、性転換してまでするようなハロウィンのイベントだったかねぇ……」 「…言うな、それを」
司冬ワンライ・ハロウィン/トリック・○○・トリート
今日はハロウィンだ。 かぼちゃ色のワンピースやら、黒のビニール袋と白のガムテープで作ったであろう骸骨やら、こだわったものからチープなものまで、様々な仮装をした子どもたちがワンダーステージ前を楽しそうに駆けていく。 「お兄さん、トリック・オア・トリート!」 「おお、よく来たな!ほぅら、お菓子だぞ」 「わぁ、ありがとう!!」 嬉しそうな子どもたちに手を振り、司は追加のお菓子を補充しに裏に戻った。 せっかくのハロウィン、そして休日ということもあってフェニックスワンダーランドでは来てくれた子どもたちにお菓子を配っているのである。 「司先輩」 「おお、冬弥!すまないなぁ、手伝ってもらって」 お菓子の籠を手に下げ、ふわりと微笑む冬弥に、司は眉を下げた。 それに冬弥が首を振る。 「いえ。俺も楽しいですし…。…あまり、経験がないものですから」 「そうか。そういえば冬弥の家はハロウィンはあまりしていなかったなぁ」 ほんの少し寂しそうな冬弥に、司も当時を思い出した。 冬弥の家はハロウィンよりもピアノやバイオリンの稽古の方が大事だったようで、知識としてはあったものの彼はハロウィンをやったことがなかったのである。 今日は冬弥の方も練習もイベントもないというから、来てもらったのだ。 貰う側ではなく配る側だが…どうやら冬弥も楽しんでいるようで司は安心する。 「冬弥、そっちのお菓子を取ってくれないか?」 「はい、良いですよ、司先ぱ…」 「あー!騎士のお兄ちゃん、ちゃんとトリック・オア・トリートって言わなきゃだめなんだよー!」 突如鋭い子どもの声が聞こえて2人はそちらを見た。 魔女の衣装に身を包んだ子どもがこちらを…というか司を睨んでいる。 どうやらステージ裏まで入り込んできたようだ。 どうにかして外に出さなければ、と司は黒猫の耳をつけた冬弥の手を取る。 え、という顔をする冬弥をお姫様抱っこし、そして。 「はーっはっはっはぁっ!!例えお菓子をくれたとて、オレの悪戯を止めることはできぬぅ!!」 「司先輩?!」 「騎士のお兄ちゃんずるーい!」 「トリック・イエット・トリート!小さき魔女よ、オレの悪戯を止めたければ自力でオレに追いついてみせるのだなぁ!」 驚く冬弥と怒れる幼女に宣言し、司はマントを翻しながら走り出す。 バラバラとお菓子が辺りに散らばった。
今日はハロウィン。
可愛らしい恋人に、公然といたずらが出来る日!
(貰えるならばお菓子より甘いお前が良い!)
ワンドロ・ハロウィン/仮装
「あっ、彰人くんと冬弥くんだぁ!」 セカイに着いた途端、嬉しそうなリンの声に彰人はほんの少し顔を顰める。 上機嫌なリンなんて嫌な予感しかしなかった。 「…げっ」 「彰人くん、冬弥くん!トリック・オア・トリート!!」 元気に駆けてきたリンが勢いそのままに手を差し出す。 背中の羽根がふわりと揺れた。 「可愛い衣装だな、リン」 「ありがとう、冬弥くん!天使なんだけどね、羽根がもっふもふなんだよー!」 くすくすと笑いながら冬弥が差し出された手のひらにクッキーが入った小さな袋を乗せる。 いいんじゃねぇの、と彰人もその隣にキャンディを一つ乗せた。 「二人ともお菓子持ってるのすごーい!ありがとう!」 「今日ハロウィンだろ。…どーせ、なんかやるのは目に見えてたからな」 「イタズラされないように、先手必勝だと…さっき買いにいったんだ」 「なぁんだ、そうだったんだ」 無邪気にリンが笑い、そうだ!と楽しそうな声を出す。 「ねぇ、二人も仮装しようよー!」 「はぁ?なんでオレらが」 「いいじゃん!せっかくのハロウィンなんだよ?」 首を傾げるリンに、「やんねーよ」と答えかける彰人を、冬弥が遮った。 「そうだな。…少し、楽しそうだ」 「…冬弥」 「でしょ?!衣装はこっちだよ!」 口を挟む前にハイテンションのリンが冬弥を衣装部屋に連れて行ってしまう。 はぁ、と大きなため息を吐き出し、彰人は仕方無しに足を踏み出した。 流石に相棒1人に、リンを押し付けるわけにはいかない。 「見てくれ、彰人。海賊の衣装がある」 「…嬉しそうだな、お前」 存外楽しそうに衣装を見ている冬弥に近づきながら、彰人は笑った。 「そう、だろうか」 首をこてりと傾ける、自覚のない可愛らしい恋人に、彰人は触れるだけのキスをする。 「…Trick or Treat?」 「まだ仮装もしていないのに、それを聞くのか」 「細かいことは気にすんなよ」 小さく笑いそう言う彰人に、冬弥は目を細めた。 「彰人のトリックは、俺にとってのトリートなのだが」 「…そーいうトコな」 綺麗な笑みの冬弥に彰人は敵わねぇな、と笑いながら、今度は深いキスをする。 コーヒーしか飲まない彼とのキスは、とても甘い味が、した。
貴方がくれるそれは、いたずらでもおかしとなりうるのです!!
「わぁっ、冬弥くん海賊さんにしたんだね、格好良い!…彰人くんのそれなぁに?」 「…ゴースト」
類冬ワンドロ・フリー
「あ、類!ちょーどいいところに!」 ぱぁっと顔を輝かせる友人に、類はおや、と笑う。 「どうしたんだい、瑞希。…その看板は?」 「ちょっと交代っ!」 「え?」 首を傾げる類に瑞希が持っていたそれを手渡した。 それには「フリーハグ」とある。 「…ずいぶん楽しそうなことをしているねえ?」 「やり出したのはボクじゃないけどね」 押し付けられちゃってさぁ、とケラケラ笑う瑞希に、某イベントの最後尾列看板じゃあるまいし、と思いつつ類はそれを返さなかった。 思ったより自分が暇だったのもある。 どんな人が寄ってくるかも見てみたかったし。 「まあ、押し付けられたからには、職務を全うしようじゃないか」 「たっすかるー!じゃあ、よろしくねー!」 微笑む類に瑞希が笑顔で駆けていく。 楽しそうで何より、と看板を持ち直す類に、「神代先輩?」と声がかかった。 「…おや、青柳くんじゃないか」 「お久しぶりです。ショーの練習中でしたか」 「いいや、今日はフリーハグだよ」 首を傾げる冬弥に、類は腕を広げる。 きょとんとする彼にフリーハグとは、を説明してやった。 「フリーハグとは街頭で見知らぬ人々とハグ をして、素晴らしい何か…例えば、愛・平和・温もりなどを生み出すために行われる活動のことさ」 「なるほど」 類の返答に、しばらく考えていた冬弥があの、と口を開く。 「どうしたんだい?」 「…先輩が、俺以外の人とハグをするのが…少し嫌なので、その看板を貸してもらえませんか?」 「…ん?」 思ってもみない言葉に、類は目をぱちくりとさせた。 「…えっと?」 「俺が代わりにフリーハグをするので、神代先輩はもうしないでいただけませんでしょうか」 可愛いことを言う冬弥に類は笑う。 無自覚の嫉妬とやらが、何とも愉快で心地よかった。 「僕も、青柳くんが他の人とハグをするなんて見たくはないのだけれどな」 「…」 類の言葉に冬弥は困った顔をする。 それを見、ならこうしよう、と類は看板を置き、フリーの文字を黒で塗りつぶした。 その下に「yours」と書き出す。 「…!」 「これで、僕のハグは君だけのものだよ、青柳くん」 にこりと笑い、類は再度腕を広げた。 おずおずと冬弥がそこに収まる。 彼の鼓動を聞きながら、類は優しく、逃げられないように抱きしめたのだった。
僕のハグは、勿論君だけに捧ぐよ。
ねぇ、青柳冬弥くん?
「…うわ、本当にあんな作戦でいいんだ…」 「思ったより神代先輩ってストレートに弱いんだねぇ…」 「ボクは冬弥くんがあんな真っ直ぐストレートなのが意外だけどなー…」 (こそこそ、仲間や幼馴染の影のサポートだったと気付くのは?)
(もちろん、とっくに気づいていたさ!)
司冬ワンライ・手作り/一緒に
「…む」 「?どうかしましたか?先輩」 本屋からの帰り道、とある場所で立ち止まってしまった司を、冬弥が不思議そうに見る。 すまない、と答えた司は、ほら、と指をさした。 「あそこで、ハンドメイドアクセサリーのワークショップをやっているだろう」 「…本当ですね。ええと、ガラスドームネックレス…?」 看板の文字を読み上げ、首を傾げる冬弥に、司は「行ってみないか?」と誘う。 「…え?」 「こんな機会でもなければ、オリジナルアクセサリーなんて作らないだろう?」 「…そう、ですね。ではぜひ」 微笑む冬弥に、司も笑顔で頷いた。 連立って受付に行けば、優しそうなスタッフが机に案内してくれる。 「まずは、好きな色が入ったガラスドームを選んでくださいね!その後で、ビーズやメタルパーツ、ラメなどを選んでいきます。あまり入れる量が多いと液を入れた時に綺麗にならないので、見本を参考に、指定の数を守って世界に一つのネックレスを作ってください!」 てきぱきと説明され、二人してガラスドームの前で固まってしまった。 作り方としては簡単そうだが、如何せん、己のセンスが問われてしまう。 と、冬弥がレモン色のガラスドームを手に取った。 「?黄色か、珍しいな」 「…司先輩をイメージしたガラスドームを作りたいと、思いまして」 「…なるほど」 冬弥のはにかんだそれに、少し考えた司は、彼の明るい髪と似たようなそれを選ぶ。 「ではオレは冬弥をイメージしたガラスドームを作るとしよう!」 「…楽しみです」 司のそれに、くす、と冬弥が笑った。 その後も、司は濃い青を中心にバランス良くビーズを選んでいく。 メタルパーツは3つ、と言われたので雪の結晶とイニシャル、小さな星を入れた。 透明のラメをほんの少しだけ入れた後液を入れ、蓋を付ける。 接着するまで時間がかかる、というから冬弥が作るのを眺めていれば彼も終わったらしく、こちらを見て軽く微笑んだ。 「存外、何かを作るのは楽しいものだなぁ」 「…そうですね。それに…」 「?それに?」 可愛らしく微笑んだ冬弥が囁く。 それに目を見開いた司は、オレもだ!と笑ったのだった。
大好きな貴方のことを考えて、作るガラスドームのネックレス。 キラキラと輝くラメやビーズは、その笑顔によく似ている気がした。
「…先輩と一緒に、先輩のことを想いながら作る事ができて、とても、幸せな時間でした」
ワンドロ・紅葉/写真
こはねが紅葉の写真を撮ってきた。 上手いもんだな、と眺める彰人を他所に凄い凄い!と杏は盛り上がっている。 「今度みんなで一緒に行こうよ!実際に見た方が綺麗だし」 「いいね!外で歌うのも楽しいし!」 こはねのそれに杏が同意し、彰人が「またお前らは勝手に…」と呆れた。 存外いつもの光景である。 …と、いつも以上に大人しい冬弥が気になった。 「…冬弥?どうかしたか?」 「…え?」 声を掛ければ写真から目を離してきょとんとする。 どうやら、集中して魅入っていたらしい。 「なんかあったのか」 「…いや、上手に撮るにはやはり練習とコツがいるんだろうな、と」 「んだよ、写真撮りてぇのか?」 冬弥のそれに今度は彰人がきょとんとすれば、杏と盛り上がっていたこはねが「私で良ければ教えようか?」と声をかけてきた。 「そうしてもらえると助かる」 「うん!まかせて!」 「冬弥が写真撮りたいなんて珍しいねー。見せたい人でもいるの?」 「…セカイは、季節が変わらないから…写真だけでも、と」 杏の問いに冬弥が微笑みながら答える。 そういえばセカイは季節も変わらないから知らないことがたくさんあるんだとレンが言っていたっけ。 「それ良いね!写真をたくさん撮って壁1面に飾れば紅葉狩りの気分も味わえるし」 「そーかぁ?」 はしゃぐ杏に、彰人は首を傾げる。 そーいうもんなの!と言う杏にこはねと冬弥がくすくすと笑った。 「じゃー予定決めなきゃね!…っと、その前にお店の準備だけしなきゃ」 「あっ、私手伝うよ!」 慌ただしく杏とこはねが去っていく。 騒がしい奴ら、と見送る彰人に、冬弥はまだ写真を見て小さく笑みを浮かべていた。 「…そんなに楽しいかよ、紅葉の写真」 「ああ」 頬杖をつく彰人に、冬弥が頷く。 まさかそうくるとは思わなくて彰人はきょとんとした。 続けてくる冬弥のそれに目を見開く。 まったく、彼ときたら。 「惹かれてしまうのかもしれない。…紅葉は、彰人の色だから、な」 「…お前はー…っ!」 「彰人?…わっ」 照れた顔を見せたくなくて思わず冬弥の頭を撫でちゃくる。 不思議そうな冬弥にそっと囁やけば、彼もほんの少しだけ紅葉色に頬を染めた。 「…。…冬弥を紅葉にやる気はねぇよ」
秋が来る。
綺麗に染まった紅葉を連れて。
紅葉も二人には負けちゃうよねぇ、なんて女子の笑い声が店に響いた。
類冬ワンドロ・おばけ/ハロウィン
さて、もうすぐハロウィンである。 ハロウィンショーをするのだが、ハロウィンにはおばけ、というのは些か安直すぎる気がして、類は悩んでいた。 何かもっと…観客が驚くような……。 「…神代先輩?」 小さな声に振り向けば、後輩であり恋人でもある青柳冬弥がこちらを見ていた。 「やあ、青柳くん。今帰りかい?」 「はい。神代先輩も帰りですか?」 「ああ。…良かったら、一緒に帰らないかい?」 にこ、と笑うと冬弥はすまなそうな顔をする。 不思議に思っていれば、彼は今日買い物に寄るから難しいのだと告げた。 「…せっかく誘ってくださったのに、すみません」 「構わないよ。…ちなみに、何を買いにいくんだい?」 「お化けの、仮装です」 「…ん?」 冬弥の答えに思わず首を傾げてしまう。 彼の口から信じられないそれが飛び出したからだ。 「…もう一度、聞いても?」 「お化けの仮装です。…白石のカフェでハロウィンイベントをやるみたいで…普段からお世話になっているので手伝おう、と」 「…なるほどねぇ」 冬弥のそれにようやっと納得した類は「なら」と提案する。 「もし君が良ければ僕がプロデュースしてあげようか」 「…!でも」 「青柳くんよりは、ハロウィンイベントに詳しいと思うのだけれどね?」 にこ、と笑うと冬弥もそうだ、と思ったのだろうか。 よろしくお願いします、と手を出してきた。 「もちろん。僕が君を素敵なおばけにしてあげよう」 その手を取り、類は笑う。 ハロウィンにおばけ、なんて単純なそれでもありかもなぁ、なんて可愛らしい冬弥を見ながらぼんやりと、思った。
おばけなんてないさ、おばけなんて嘘さ
(だって、ハロウィンに託つけて出てきたおばけなんて、それより怖い魔に食べられてしまうからね)
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