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RPGシェイプの海(ザクカイ←マキ)
「本日こどもの日故、スペシャルゲームをご用意いたしました!!」 そう、パカが言ったのをぼんやりと思い出す。 …それから、確か。 「…ぅ……」 頭を押さえ起き上がったマキノがいたのは空飛ぶ船の上だった。 「…?」 夢、だろうか。 思考を巡らせるがずきりと頭が痛み、これは夢ではないと思い知る。 なら、他の可能性は。 …と。 「お、ようやっとお目覚めかい?」 「…カイコッくん…?」 ひょこりと顔を出した彼の…ポニーテールがふわりと揺れた。 …ポニーテール。 彼は、綺麗な黒髪をしているが、短髪だった…気がするのに。 「忍霧ぃ、逢河が目ェ覚ましたぜ!」 「何?!…マキノくん、無事か!」 カイコクのそれにバタバタと足音を立ててやってきたのはザクロだ。 普段に増して衣装が見たこともない奇っ怪なものになっている。 サバイバルゲームで着るようなやつだな、と思った。 こくんと頷くと、「そうか、良かった!」とザクロはホッとした顔を見せる。 「んで?ここ何処か分かったかい」 「恐らくこの辺りだと思うのだが…」 地図を見ながら二人が何やら作戦を立て始めた。 首を傾げていれば、ザクロがあ、と声を上げる。 「マキノくんは起きたばかりだったな」 「あー…それもそうか」 二人は顔を見合わせ、口々に説明してくれた。 ここはパカが用意した空想世界。 数年前に流行った【フライハイトクラウディア】というゲーム内らしく、出てくる敵が一致しているのだという。 ただ、主人公はおらず、完全にモブ要員のようだった。 「主人公もその仲間もいないよな」 「ああ。その辺は自分の力で頑張れ、ということだろう」 あっさりとそういう二人にマキノはまた小さく首を傾げる。 主人公がいないのにどうやってストーリーを進めるのだろうか。 そう思っていれば、カイコクから指令書なるものを渡された。 「敵を倒せ。今回唯一のルールなんだが…いくら倒してもクリアになりゃしねぇ」 「全員が敵を倒さなくてはいけないのかもしれない。…そんなことをパカが言っていた気がする」 ブスくれるカイコクにザクロがそう言う。 そういえば、とマキノは上を向いた。 「…RPGを…楽しむ……」 パカが言っていたそれを思い出し、マキノは言う。 『子どもは皆RPGが好きなものです。画して!本日のゲームは生き残れ!RPG!!醍醐味でもある戦闘をとくとお楽しみ下さい。じゃんじゃん敵を倒してボスに立ち向かい、経験値を会得してくださいませ』 楽しそうに言うパカは、何やら物騒なことを言っていた。 それが本当ならばボスを倒さなければならない。 だが、主人公はいないのだからボスをどう倒せば良いのか分からなかった。 そも、こういうのが得意なのはアンヤではないだろうか。 「…。…忍霧、今何処だって?」 「へ?…確か……」 カイコクは何かに思い当たったのだろう、再度場所を確認する…暇もなく。 激しい振動と咆哮が聞こえた。 「な、なんだ?!!」 「…くそっ、来ちまったか…」 嫌そうにカイコクが立ち上がる。 「…何が来ているんだ」 「…ザヴェル」 彼が告げたのは聞いたこともないそれだったが…何故か理解した。 …理解してしまった。 フライハイトシリーズでも随一の強さを持ち、主人公たちがレベルを限界に上げても倒せない敵。 魔獣ザヴェル。 「…どう考えたって無理だろう!たったの3人!回復役もいない!」 「んなこと言ってもだなァ!!」 ザクロの言葉にカイコクが反論する。 RPGは敵に遭遇した場合戦うか逃げるかが選べるのが定説だ。 だが、この裏ボスはそれを許してはくれないようで。 取り敢えず、と二人が武器を取る。 飛び出した彼らは敵に容赦などしなかった。 「鬼ヶ崎!」 「へいへいっと!」 ザクロが先行でライフルを撃ち、カイコクが怯んだ隙にカタナで斬る。 息ぴったりなそれに、そういえば二人は付き合っていたのだな、と思った。 二人はバレていないと思っているようだが…あのザクロが仕方ないなと小さく笑むのも、カイコクが優しく楽しそうに笑うのも互いの前だけだとマキノは知っている。 「?!!うわっ?!」 「鬼ヶ崎!」 と、敵の手がカイコクを掴んだ。 「…やめろっ、離せっ、この…っ!!」 じたじたとカイコクは暴れるが敵はびくともしない。 どうやら彼を囮にじわじわと嬲り殺す事にしたようだ。 綺麗な顔が苦しさに歪んでいく。 「鬼ヶ崎!!」 ザクロは必死に助けようとするが…彼に当たるかもしれない、とどこか躊躇しているようにも見えた。 「…ザクロくん」 「?!マキノくん?」 「…投げて」 「…えっ、はっ??」 マキノのそれにぽかんとザクロがこちらを見る。 「…僕、投げて。敵を、怯ませて…くる」 「いや、いやいやいやマキノくん!それは無茶が…!」 「…カイコッくん、助ける」 そう言えば、彼は「あー…!」と声を出し、暫く後、無茶をしないでくれ、と了承した。 それに頷き、マキノはザクロの手に乗る。 彼の咆哮と共に跳び出し、マキノは敵の腕に着地した。 「…あい…かわぁ…?」 ぼんやりと見る彼に「助けに、来たよ」と告げ、抱きしめる。 「…目、見ないで」 カイコクに囁き、敵の目を見つめた。 「…ヴォゴォオ!!」 途端、悶え苦しみ彼から手を離す。 それを待っていたようにザクロがライフルを撃ち込んだ。 「…終わりだ。よくも鬼ヶ崎を傷つけてくれたな…!!」 撃ち込まれる銃声を聞きながらマキノは船の上に降り立つ。 「…カイコッくん、大丈夫?」 「…あ、あぁ…ありがと、な…」 へにゃ、と笑うカイコクは何処か無理をしているようにも見えた。 「…無事で、良かった」 頭を撫でると少し困惑した表情をする。 それが可愛くて撫で回していれば敵を倒したザクロが近くに降り立った。 「マキノくん!鬼ヶ崎!!」 慌てて駆け寄ってくるザクロは、二人の無事を見てホッとした顔を見せる。 カイコクもまた小さく微笑むが、先ほどとは違った笑みに思えた。 ゲームは無事にクリアです、という音声の後、周りの景色が溶ける。 服も元に戻っていて、どうやらゲームは終わったらしかった。 それにしても、とマキノは思う。 ザクロに微笑む彼が、唯一自分を見てくれた際に得た胸の高まりは何だったのだろうか。 普段こちらを見ない彼が見つめた瞬間。 彼の、カイコクの目が欲しいと…そう、思った。
(ゲームを経て得たのは経験値とほんの少しの恋心。
このゲームの終わりは…さてどんなエンドになるでしょうか?)
こどもの日というのは子どもになる日ではないんですよ?(ザクカイ)
「鬼ヶ崎!!!」 「…なんでぇ、朝っぱらから……」 だぁん!と彼の部屋の扉を開き、部屋の主の名を呼ぶ。 迷惑そうに枕を抱きしめるカイコクに近づき、顎をすくい上げた。 「失礼する」 「…なに…んんぅ?!!」 液体を口に含み、彼に口付ける。 途端、目を見開き逃げようと藻掻いた。 「…ん、ぐ、んんーっ!!」 頭を押さえ込み、口に含んだそれをカイコクに移して飲ませていく。 最初こそバシバシとザクロの背を叩いていたが何をしても離れない様子に諦めたのだろう、こくりとその喉が音を立てた。 「…は、ぁ……」 「…あんなに力いっぱい叩く事は無いだろう」 全部飲んだのを確認し、ザクロは離れる。 荒い息のカイコクに、文句を言えば彼はギっと睨みつけてきた。 「お前さんが!いきなり…っ!ぅえ?!!」 珍しく怒りの感情を見せる彼が驚いた声を上げる。 ぽふん、という間抜けな音と共に吹き出した煙の中にいたのは…子どもになったカイコクであった。 言うのを忘れていた、とザクロは小さな手を握る。 「鬼ヶ崎、子どもの姿になってはくれないだろうか?!」
それから数十分後、不機嫌ながらもなんとか話をしてくれるようになったカイコクがじろりとこちらを見る。 「…で?なにかいいてぇことは?」 「…すまなかった」 ザクロの半分ほどに縮んでしまった彼に、ザクロは何度めかの謝罪をした。 「おまえさんは、ことばがたりないんでぇ!」 「だから、すまなかった、と……」 頬を膨らす彼は可愛いしかないが、それを言えばカイコクはこの部屋に引き篭もって出てこなくなってしまう。 それだけは避けたかった。 「…それで?なんだってこんなことを」 「今日は子どもの日だろう」 「あぁ、そういやぁそうだな」 ザクロのそれにカイコクは小さく上を向く。 ゲームをやっていると忘れがちだが、今日は子どもの日だ。 高校生にもなって、子どもの日もあったものではないと思うが…ザクロはあからさまに視線を逸らす。 「…路々森がな、子どもの姿になる薬を作ってみたというから…つい……」 「…。…ろろさん……」 ザクロのそれにカイコクはひくっと表情を引きつらせた。 「…けど、そのようすじゃあじょうちゃんやいなばちゃんもいたんだろう?なんでだれもとめなかったんでぇ」 ムスッとした顔を見せるカイコクに、それが…と重い口を開く。 「俺達が…その、なかげの幼稚園の時の貴様が可愛かったという話をした所為で…伊奈葉が、見てみたいと……」 「……」 ふわぁ、と笑ったヒミコのそれが決定打となり、ザクロが薬を飲ます役目を担ってしまったのだ、と言えばカイコクは嫌そうな顔をより深くした。 あの時の彼はもう少し可愛らしかったが…精神は大人のままらしい。 少し残念に思うが、膨れ面を晒すカイコクは普段よりも可愛かった。 「…なぁ、鬼ヶ崎」 「…なんでぇ、おしぎり」 ブスくれた表情の彼に煮干しを差し出す。 訝りながらもカイコクは手を伸ばした。 それをひょいと取り上げる。 「…っ!おい!」 「ほら」 声を荒らげる彼にまた煮干しを差し出した。 見上げるカイコクが新鮮で、少し意地悪をしたくなったのである。 …と。 「…ザクロ、にいちゃん」 きゅ、と服を握りながらカイコクが見上げてきた。 思わず固まり、ぽろっと煮干しを落とす。 それを器用にキャッチし、彼は満足そうに口に入れてみせた。 「鬼ヶ崎、今のもう一度!」 「いーやーでぇ」 「そこを何とか!!」 肩を掴むザクロにカイコクはつん、とそっぽを向く。 ギャーギャーと騒ぐ彼らのそれは…第三者が来るまで続いたのであった。
(ところで、子どもの日は子どもの姿になる日ではないのはないんだが、それに対してのツッコミは…しないのが野暮ってものだよ!)
リナリア・この恋に気付いて(マキカイ)
窓から花が見える。 …カイコッくんにも、見えているのかな。 ぼんやりとそんな事を考えつつ…僕はふらりと部屋の外に出た。 いつものようにふらふらと彷徨っていれば同じように廊下を歩く、人影を見つける。 「っ!」 後ろから抱き着こうとした僕に、カイコッくんは勢い良く振り返った。 …そういえば…、後ろからぎゅってされるの…苦手、なんだっけ。 「…逢河?」 そのまま正面から抱きしめる事になってしまったけど…カイコッくんは驚いた声を出しただけだった。 …後ろはダメだけど、前からは良いのかな。 「…。…どうしたんでェ。珍しいじゃねぇか?」 くすくすとカイコッくんが笑う。 その笑みは…僕が恋を『諦めた』その人に何だか似ている気が、した。 「話、聞いてやるから…少し離れてくんな?…ここじゃちょいと目立つ」 苦笑するカイコッくんにこくんと頷いて離れる。 ほっとした表情を浮かべつつカイコッくんはそれで?と首を傾げた。 「…リナリア」 「うん?」 単語だけの僕のそれにも、カイコッくんは急かしたりしない。 …好きだな、と、思った。 「僕の部屋の窓…から、リナリアが、見える」 「…。…どんな花なんでェ」 「…ちょっと、金魚に似てる」 「へえ、そりゃあ見てみたいねぇ?」 綺麗な笑みを、カイコッくんは浮かべる。 社交辞令かと思えば、黙っている僕にほんの少し首を傾げた。 「逢河?」 「…?」 「俺ァ…そういうこと、だと思ったんだがねェ」 違ったかい?と笑むカイコッくんの耳が赤い。 可愛いな、と思った。 「…部屋、来てくれる…の?」 「逢河がお誘いしてくれんなら…吝かじゃねぇが?」 にこ、と笑うカイコッくんの手を握る。 「…来て」 「おお」 口数が少ない僕にも、カイコッくんは優しかった。 だから、僕は諦めていた恋をする。 好きだよ、とぎゅっと手を握った。 逢河?と紡ぐ、その声が好き。 不思議そうな黒い瞳が好き。 さらさらと揺れる黒い髪も、握られたまま振り解こうともしないその手が好き。 カイコッくんと過ごす…穏やかな時間が…僕は、好き。 僕は…やっぱり恋を諦めきれなかった。 僕とは違う、強いカイコッくん。 時々、ほんの少しだけ弱さも見せるカイコッくん。 「…。逢河は意外とスキンシップ過多、だよなァ…」 「…嫌?」 「そうじゃねェよ」 僕のそれにカイコッくんは笑って握り返してきた。 きっとカイコッくんは…僕の想いを知らない。 そんなものは必要のない人だから。 「俺ァそういうのは苦手なんだが…。…絆されてるって感じ、だな」 「…?」 くすくすと笑うカイコッくん。 首を傾げる僕にもただ笑うだけだった。 まるで、揺れる姫金魚草みたいだ、なんて。 この思いを何と呼ぶかは僕は知らない。 でも、それでも。 これを恋と呼んで許されるなら。 ぎゅ、と強くその手を握り返す。 繋いだ手から…その思いが伝わればいいなと…僕は…思った。
イースターってご存じですか?できれば一緒にやってみませんか?
「なあ、鬼ヶ崎」 「なんでェ、忍霧」 「イースターを知っているか?」 自室の、ザクロのベッド上にいるカイコクに話しかければ、きょとりとした顔をする。 「…。…なんで急に」 「いいから」 流石に唐突過ぎたかと思ったが押してみれば彼はほんの少し上を向いた。 確か、と言葉を紡ぐ。 「…寒い冬が終わり、キリストの復活祭とともに春の到来を祝う日…だったか?」 「なら、エッグハントは?」 それに正解は言わず質問を重ねる。 不思議そうな顔をするがカイコクは不満は言わなかった。 普段は適当な割に、そういうところは真面目なのだ、彼は。 「…卵を探すやつだろ?模様のあるやつ。イースターエッグ…だったかねェ……一説にゃうさぎが隠したとか言われてるよな」 「そうだ。子どもをたくさん産むうさぎは、豊穣や繁栄の象徴とされている。そのうさぎがたまごを隠した事からイースターバニーとも呼ばれているな」 「…んで?物知りの忍霧クンは何が言いたいんでェ?」 ザクロのそれに、カイコクがにこりと笑う。 流石に隠しきれるものではないか、とザクロは溜息を吐き出した。 「今、逆バニーというのが流行っているらしい」 「…あ?」 唐突に話し出したそれに彼は綺麗な瞳を訝しげに細める。 逆バニー。 バニーガール衣装を敢えて逆転させたもの。 つまりは背中の代わりに胸の辺りがぱっくりと空いた衣装だ。 「衣装も取り寄せた。奇しくも今日はイースターだ」 そう言っただけで嫌な予感を感じ取ったのだろうカイコクの手をぎゅっと握る。 「着てくれないだろうか!」 「断る!!」 食い気味も食い気味、普段は荒らげない声で彼がきっぱりと言った。 ザクロの手を払い、むぅ、とした顔をする。 「お前さんなぁ、どんな衣装か知らないで言ってんだろう」 「……いや…」 呆れた表情のカイコクが、はぁ、と息を吐き出した。 「バニーガールだって見たこたぁねぇくせに逆バニーなんて見ちまったら…」 「…見たら、なんだ?」 とさ、とベッドに押し倒せば彼は綺麗な瞳を大きく見開く。 部屋に来た時点でこうなるとそろそろ理解しても良いのに、とザクロは先程受け取ったばかりの袋を傾けた。 「…え」 中身を認めたのだろうカイコクが固まる。 彼の目の前に落ちたのはよくあるバニーガール衣装を反転させたそれと、うさ耳カチューシャ、そしてアナルプラグ付きのうさぎのしっぽ。 だが、カイコクが顔を引きつらせる理由はそれだけではなかった。 「先程言ったな?イースターバニーがイースターエッグを隠す、と」 「…いや、あの、お前さん、それ…」 じゃらりと目の前で振ってやったそれは…大量のローターである。 「本物は色々大変だと聞いたものでな」 「…そりゃあ、配慮どーも。…俺的にはイースターをやらないって選択肢が欲しかったんだがねぇ??」 「せっかくのイースターなのに、か?」 笑みを見せる彼にそう言えば、なんとも言えない複雑そうな顔をした。 「意外とお前さん、行事好きだよな」 「…そうだろうか」 思いもよらぬことを言われ、ザクロはふむ、と腕を組む。 確かに行事の度に迫っているような気はしないでもないけれど。 「イースターにはうさぎが己の躰に隠した玉子を探すのが決まりだ。でないと春が訪れない」 少し前に聞いた知識を披露すれば、カイコクが頭を抱える。 「…。…誰でぇ、忍霧にんなこと教えたのは…」 「入出と路々森だが」 さらりと言えば彼が説得するように肩を掴んできた。 「ったく…。…なあ、忍霧。あの二人だぞ?騙されてるっつー可能性は…」 「まあ、8割そうだろうな」 カイコクの言わんともするそれにあっさりと肯定する。 意外と悪いことをザクロに吹き込む二人には慣れたもので、嘘かどうかの違いくらいは流石に分かるようになった。 なおも言い募ろうとするカイコクに、ザクロはマスクを外す。 「…なら」 「しかし、騙されていると【知っていて】尚挑戦する、というのも一興だと思うが」 つまりは逆バニーを着たカイコクとイースタープレイがしたいと言外に言えば、引き攣った表情をした彼が息を吐き出した。 「…。…ったく…お前さんのむっつりスケベって設定はどこに行ったんでェ…!」 「設定言うな。…それで?可愛い恋人の頼みは聞いてはくれないのか?」 首を傾げれば、カイコクがこちらも負けじとにっこり笑う。 「その、可愛い恋人に付き合ってちゃあ身が保たねぇんだが?」 「それは大丈夫だろう」 「はぁ?」 根拠のないそれに彼が眉を顰めた。 そんなカイコクに入っていた黒いうさ耳カチューシャを被せてやる。 嫌な予感、と後退りする彼を追い詰め、口付けた。 「なんせ貴様は、うさぎ、なのだから」
黒い、哀れなうさぎさんが隠すことを強要されたカラフルな【たまご】の行方は…春の訪れだけが、知っている。
黒猫ハ【 】ニ溺レ堕チル(ザクカイ)
鬼ヶ崎カイコクがいなくなった。 昨日の朝にくだらない喧嘩をしたのが原因で、そういえばその日は一日彼に会っていないのを思い出す。 気づいたのは1時間程前のこと、そろそろ許してやるかと朝が弱いカイコクをいつも通り迎えに行ったザクロを迎えたのは、主がいないがらんどうの部屋で。 まだ怒っているのかとも思ったがそれにしては室内の様子がおかしかった。 「…鬼ヶ崎?」 部屋に霧散する己の声にゾッとする。 彼が白の部屋に連れて行かれた恐怖を、ザクロは未だに忘れる事が出来なかった。 「鬼ヶ崎!」 呼びかけるザクロの目に飛び込んだのは壁に貼ってあった【ゲストルームへ】の文字。 剥ぎ取ってぐしゃりと握り潰し、ザクロは部屋を飛び出す。 犯人は、分かっていた。 逸る気持ちを抑え、指定された場所へ向かう。 開け放たれた扉の先にいたのは、白い部屋の中ポツンと置かれたベッドの上で憔悴しきったカイコクだった。 「…っ!おい、しっかりしろ!鬼ヶ崎!」 「…ぅ……」 揺さぶりながら声をかけるザクロに、カイコクは小さな声を出す。 うっすらと開かれる瞳に、よかったと安堵を覚えた。 …だが。 「…っ!!…れ、に…触んじゃねェ…っ!」 「…?!鬼ヶ崎…?」 「…く、るな……」 カタカタと震えながら放たれるのは明らかな拒絶。 思わず固まるザクロに、声が…かけられた。 「おや、遅いご到着でしたねぇ…忍霧様」 「…貴様」 睨む、その先にいたのはパカである。 恐らくカイコクを攫った…張本人。 彼を…こんな風にした…。 「鬼ヶ崎に何をした!!!」 「私は、違反者に罰を与えただけに御座います」 「罰?あの鬼ヶ崎が怯えるほどのものをか?」 「はい。…これを使って…ね」 訝るザクロを無視し、出てきなさい、とパカが言う。 現れた相手にザクロは大きく目を見開いた。 己と同じ顔の、男。 それを認識したのだろう、見る見る内にカイコクの表情が削げ落とされていく。 「…や、めろ…いやだ……も、ぃや……っ!」 「…おに、がさき?」 頭を抱えてガタガタと震えるカイコクに、ザクロも動揺を隠せなかった。 見たこともない姿に困惑する。 だが、告げられる真実はそれ以上に無情で。 「ミミクリー・マンイーターの改良種にございます。彼を使い、鬼ヶ崎様を抱かせました。…このように」 チリン、とどこかで鈴の音が鳴った。 途端身体が動かなくなる。 「…なんだ、これ…は!」 声を荒らげるザクロとは正反対に、偽物がカイコクに近付いた。 怯える彼をふわりと抱き上げ。 「…ぃぐっ?!ゃあっ!!い"ぎゃぁあっ!!」 「…は?」 目の前で繰り広げられる光景にザクロはぽかんとする。 …これは一体何なのだろう。 「…やぁあああっ!!も、ぃや、だぁあ!!ぅぐっ、あっ、がっ、ぅうぎゅぅうっ!ぃだぃっ、すけ、で…!」 「…鬼ヶ崎、愛している」 懇願のような喘ぎ声を無視して、偽物が涙を散らすカイコクに愛を囁いた。 「…ち、がぅううっ!お、しぎり、は…おし、ぎりは……あぅっ、ふぁっ、ぁあ"あ"あっ!!」 緩く首を振り、彼が手を伸ばす。 助けてと震えるそれは…一体誰に向けてのものだった? 「…なせ」 低く、恫喝する。 ぴくりと偽物の動きが止まった。 「…離せ。鬼ヶ崎を、離せ!!!」 伸ばされた手を掴み、ぐいと引っ張る。 「…あ……」 支えを無くした彼がザクロの胸に飛び込んできた。 おや、とパカが笑う。 ザクロが動くより早く、パカが何かのアンプルをそれに打ち込んだ。 自分と同じ顔が崩れるのは見ていて気持ち良いものではない。 「鬼ヶ崎様はお返しいたしますよ。…それでは」 立ち去るパカに、何の声も上げられなかった。 代わりにカイコクを無言で抱き上げ、バスルームに放り投げてシャワーを浴びせさせる。 「つ、めた…っ!ひっ、ぅ…ゃ…!」 出てきたのは冷水だがザクロは気にしなかった。 どす黒い何かが心を庇っている。 …彼が、カイコクが自分を見ていないと思うだけで。 「…お、しぎり、…すけ、で…たす、け…っ」 「…っ!!!!!あれはもういない!!俺を見ろ!鬼ヶ崎!!!」 震えるカイコクに頭に血が登り、ガッと肩を掴んだ。 同じように彼を犯せば良いのか、とふと頭に浮かぶ。 自分を見てもらうには、それしかないのだと。 服を脱ごうとすれば、カイコクはびくっと躰を竦めゆるゆると頭を振った。 「…お、れが…穢れた、から……お、しぎり、は…すけて…くれな、い…」 「…鬼ヶ崎?」 聞こえた小さな声にザクロは止まる。 今、なんと? 「…ゆ、め……だった…のか。おし、ぎりが…た、すけて……くれた…のは…ゆ、め……」 どこか諦めたような声だった。 我に返り、冷静になって彼を見下ろす。 知り合いによく似た化物に犯されボロボロになったカイコクの躰と精神はとうに限界を迎えていた。 それを尚押さえつけられ助けに来たと信じた相手から犯されかけている。 …なんてことをしたのだろうと、思った。 違う、とザクロは叫ぶ。 「…遅くなってすまない。…鬼ヶ崎、俺は貴様を助けに来た」 冷水を浴びて冷たくなった体を抱きしめた。 「…おし、ぎり…?」 「…夢ではない。偽物はいなくなった。…戻ってきてくれ」 訥々と囁いて、熱を分け与えるかの様に体を寄せる。 こんな…弱音を吐いて儚げで…壊れてしまいそうなのは彼ではない、と思った。 カイコクは、飄々としていてプライドも高く弱さを見せない。 そんな男の筈だった。 だから、戻ってこい、と。 ザクロは泣きながら抱きしめて囁く。 「お、れ…よご、れて…」 「…。…汚れてなんかいない。貴様は、貴様の魂は…元のままだろう?俺に助けを求めていたのに。俺は…」 「…なんでお前さんが泣いてんでェ…」 ボロボロのはずの彼に笑われてしまった。 …嗚呼、何時も通りのカイコクだ、とザクロはようやっと安堵する。 「…俺は、貴様に酷い事を…」 「…助けに、来てくれた…んだよな。忍霧」 ふわりと彼が笑った。 それを見、ザクロは恋を自覚する。 無意識の内に唇を寄せた。 どす黒い沼から助け出した黒猫を逃がさぬよう抱きしめる。 二人の世界には、ざぁあ、と降り続く水音だけが…響いて、いた。 (終)
開イタ閉ジタ(ザクカイ)
鬼ヶ崎カイコクがいなくなった。 気づいたのは1時間程前のこと、朝が弱いカイコクをいつも通り迎えに行ったザクロを迎えたのは、主がいないがらんどうの部屋で。 「…鬼ヶ崎?」 部屋に霧散する己の声にゾッとする。 彼が白の部屋に連れて行かれた恐怖を、ザクロは未だに忘れる事が出来なかった。 「鬼ヶ崎!」 呼びかけるザクロの目に飛び込んだのは【ゲストルームへ】の文字。 ぐしゃりと握り潰し、ザクロは部屋を飛び出す。 犯人は、分かっていた。 逸る気持ちを抑え、指定された場所へ向かう。 開け放たれた扉の先にいたのは、白い部屋の中ポツンと置かれたベッドの上で憔悴しきったカイコクだった。 「…っ!おい、しっかりしろ!鬼ヶ崎!」 「…ぅ……」 揺さぶりながら声をかけるザクロに、カイコクは小さな声を出す。 うっすらと開かれる瞳に、よかったと安堵を覚えた。 …だが。 「…っ!!…れ、に…触んじゃねェ…っ!」 「…?!鬼ヶ崎…?」 「…く、るな……」 カタカタと震えながら放たれるのは明らかな拒絶。 思わず固まるザクロに、声が…かけられた。 「おや、遅いご到着でしたねぇ…忍霧様」 「…貴様」 睨む、その先にいたのはパカである。 恐らくカイコクを攫った…張本人。 「鬼ヶ崎に何をした!!!」 「私は、違反者に罰を与えただけに御座います」 「罰?あの鬼ヶ崎が怯えるほどのものをか?」 「はい。…これを使って…ね」 出てきなさい、とパカが言う。 現れた相手にザクロは大きく目を見開いた。 己と同じ顔の、男。 見る見る内にカイコクの表情が削げ落とされていく。 「…や、めろ…いやだ……も、ぃや……っ!」 「…おに、がさき?」 頭を抱えてガタガタと震えるカイコクに、ザクロも動揺を隠せなかった。 だが、告げられる真実は無情で。 「ミミクリー・マンイーターの改良種にございます。彼を使い、鬼ヶ崎様を抱かせました。映像もございますよ」 パチリ、とパカの指が鳴る。 スクリーンに映る、カイコクに行われた陵辱の一部始終はザクロにとっても吐き気を催すものだった。 助けて、と伸ばされた手は何も掴めず、ふわりと落ちる。 ごめんなさい、と彼が小さく謝罪する所で映像は止まった。 「ふざけるな!」 怒鳴るザクロに、隣のカイコクがびくりと躰を震わせる。 ザクロが動くより早く、パカが何かのアンプルをそれに打ち込んだ。 自分と同じ顔が崩れるのは見ていて気持ち良いものではない。 「お返しいたしますよ。…それでは」 立ち去るパカに、ザクロは何の声も上げられなかった。 拳を握り締め、ギロリとカイコクを睨む。 「…来い」 「…っ」 手首を掴み、ザクロはカイコクを隣へと連れて行った。 バスルームに放り投げ、シャワーを浴びせさせる。 「つ、めた…っ!ひっ、ぅ…ゃ…!」 出てきたのは冷水だがザクロは気にしなかった。 同じ顔の自分ではないそれに犯された彼を、酷く汚らわしく思ったのである。 ガタガタ震えるのは寒さのせいか…他の何かか。 「…も、やめ…!」 カイコクが息を詰めながら懇願してくる。 怯えた目でカイコクが見つめるのは…一体誰? 「…っ?!おごっ、あがっごぼぼっ!」 怒りに任せてシャワーベッドを口内に押し込んだ。 緩く首を振るカイコクは苦しそうで。 「げほっ、ごほっ、は、ぁ…あ…ひゅっ…ひゅぅ……」 引き抜いた途端、カイコクは咳き込み器官を鳴らした。 「…言え。アイツに何をされた」 「…っ!」 ぐいっと髪を引っ掴んで問う。 冷水に晒されたカイコクの肌は不自然なほど青白かった。 「…見た、だろ…ぅ……」 視線を反らし、ようやっと答えたカイコクに、ザクロはそうかとだけ答える。 一旦髪を離し、ザクロはカチャンとバスルームの扉を閉めた。 「今日からここが貴様の巣だ。汚らわしい。…俺の気も知らないで」 「…おし、ぎり…?」 「…思い知らせてやる」 ぼんやりと見上げるカイコクを押し倒す。 バシャリと水が跳ねた。 「〜っ!!!ぅああああアアッ!!」 カイコクの絶叫が響き渡る。 何の準備もなく突っ込んだのだ。 痛いに決まっている。 「…おし、ぎり…ひっく、ぅう…おし、ぎりぃ…!!!」 「煩い」 縋ろうとするカイコクに、再びシャワーベッドを口に押し込んだ。 彼の頬に流れるのは冷水か、涙か。 許せなかった。 カイコクが誰かに奪われてしまったのが。 赦せなかった。 カイコクが己を怯えた目で見るのが。 ユルセナカッタ。 カイコクが、手を伸ばすその先が…あることが。 …水に突き落とされた哀れな黒猫は、嫉妬と絶望に溺れていった。(終)
君ガ墜チル鬨
重い扉を開けて中に入る。 おはようございます、と彼の美しい瞳から光を奪っている黒い布を解いた。 しゅるりと静かな音が鳴って、彼の…カイコクの黒曜石が細く眇められる。 「…ぅ、く…あ……」 「…随分とお辛そうですねぇ、鬼ヶ崎様」 「…っ!誰の…せい…ぅ、あぁっ!」 睨みつけてくる彼の乳首を抓り上げた。 荒い息のカイコクにパカは囁いてみせる。 「いけませんねぇ。貴方は囚われの身なのですよ、鬼ヶ崎様。…痛いことはされたくないでしょう?」 その言葉に彼はビクンッと躰を跳ねさせた。 最初連れてきた際、手酷く犯されたのはカイコクのトラウマになっているらしい。 言葉を発せない程痛みを植え付けながら犯し、ボロボロになった彼を優しく甘く抱いてやった。 とろりと溶けたカイコクに媚薬を上から下から飲み込ませ放置したのだ、どうなっているかは想像に難くない。 「…鬼ヶ崎様」 ベッドに横たわり、彼を呼んだ。 虚ろ気にこちらを見たカイコクがよろよろと近づいてくる。 「…ぁう、ん、ふ…」 パカの屹立を口に咥え、舐め上げた。 噛み付かれるかと思ったが彼の方も余裕がないらしい。 暫くそうしていたがリップ音を立て口を離し、自身のアナルを先端に押し付けた。 「…ぅぐ…ぅうっ、あ…や…!」 首を振る彼に、パカは何も手伝ってやらなかった。 さらさらとカイコクの黒い髪が揺れる。 「~~っ!」 声にならない嬌声を上げ、ようやっと全て飲み込ませた彼が控えめに動き出した。 ぱちゅん、と小さな音が鳴る。 「良い眺めですねぇ」 「…う、るせ…ぅああっ!や、ふぁあ…っ!」 上下に動きながら子どもの様に首を振り、涙を散らすカイコク。 きゅうきゅうと搾り取るようなそれは愛らしいなと思えるほどだった。 「ひ、ぅ…っ!ぃや…あ、ぁあっ、やぁああっ!!」 白濁が飛び散り、ぐったりと彼が倒れてくる。 その腰を掴みあげ、パカは身を起こした。 え、と、目を見開く彼をこてりとベッドに転がし、体重をかける。 「ぅ、ぐぁ…?!…や、や…だぁ…やめ…やめてくんな…ひぐっ?!!」 「良いことを教えてあげましょう、鬼ヶ崎様。まず、貴方の最奥はここではない」 コツコツと亀頭で結腸の入り口を叩き、ぐぷりと割開いた。 衝撃に呼吸するのもままならない彼の結腸を犯す。 「かはっ…あ、あぁっ…!!ぃぐ…っ!!」 「ああ、後それともう一つ。…貴方に飲ませたのは媚薬などではありませんよ」 酷く喘ぐ彼に囁やけば快楽に溶けた表情がみるみる内に絶望へと変わった。 嘘だ、という小さな声が霧散する。 「嘘ではございません。正真正銘、ただの水です。…鬼ヶ崎様が淫乱なだけにございますよ」 「…う、そだ…っ!だって、俺ァ…!」 「…はしたなく強請った、私の雄の味はいかがでしたか?」 「…ふ、ざけ…!ぅぐっ!あ、ぁあ、やだ、やだぁああっ!!!」 睨む彼が、子どもの様に嫌々と首を振った。 助けて、と手を伸ばす…その先は? 「イ、きたくねぇ…!も、やめ…ふぁ、あ、あ、ぅあぁああっ!!!」 ビクンッと躰が震え、身を守るように丸まる。 そんな彼の結腸奥に熱を叩きつけた。 嫌だ、と漏れる小さな声。 啜り泣くカイコクは綺麗で儚くて…。 …どうしたって壊したくなる。 「貴方が淫乱であると思い知らせてあげましょう」 「…ぅ、え…??」 きょとん、とした彼はもう【彼の理性】を封じ込めてしまったようだ。 ほんの少し幼く見えるカイコクの、仕舞いこまれた理性を引き摺り出す。 …戻ってこい、と。 だって幼い彼を犯してもつまらないではないか! (私は、強くて美しく、私に歯向かう貴方を犯したいのですよ) 「…?!ぅ、あ…」 「良い映像でしょう?…ネットに流せば再生数バク上がりですよ。…尤も、炎上のリスクもありますからおすすめはしませんが」 壁一面に映る映像に、カイコクは絶望の色を濃くした。 そんな彼に、言外に警告する。 夢に逃げたらコレを流す、と。 「ぅううっ…!ゃ……!」 四つ這いにさせ、後ろ手に引いて犯した。 許してくれ、と彼が呟く。 その相手は一体…誰なのであろう。 犯しているパカにだろうか。 それとも、心に秘めている…想い人か。 妬けますね、なんて心にもないことを思いながらぐぷんっと結腸を犯す。 悲鳴にも似た嬌声が…辺りに響いた。
「…」 すうすうとカイコクの寝息が聞こえる。 何度となく絶頂し、メスイキを繰り返した彼を容赦なく犯し、失神してもなお叩き起こして行為を繰り返した。 ぐったりと、意識を飛ばしたカイコクの髪をそっと撫でる。 それでも目を開かない彼には、そろそろ迎えが来るはずだった。 …それが正義のナイトなのか、正義と信じ込んだナイトメアなのかはパカにも定かではないけれど。
「…これで、宜しいのですよね。マダラメ」
パカの声が闇に溶けた。 夜はまだ、明けない。 (終)
溺レル甘味剤
ひゅうひゅうという声が白い部屋に響く。 靴を鳴らし、部屋に入れば彼が涙をいっぱいに溜めながらぐったりとベッドに躰を沈みこませていた。 「…鬼ヶ崎様」 「…っ」 彼、カイコクをパカは見下ろす。 睨みつけてくるカイコクに、懲りませんね、と呟き、パチンと指を鳴らした。 「…ぁぎッッぃ”!!!?、ッ、なっ…なんでぇ…ひぎッッ!?!ッふッぎッぃ”ぁ”…あ”ぅ”ぅ”え”ッ、ッや、やだッ、や”ッッぁ”…ぎ”ッ!!ッ、ッい”、ぃ”う”ーーッ、…!!」 「…鬼ヶ崎、愛している」 汚い喘ぎ声を漏らすカイコクに、忍霧ザクロを模したミミクリー・マンイーターが偽りの愛を囁く。 これは、パカが彼に課した地獄だった。 泣きじゃくる彼は飄々とした普段の様相とは全く違い、無様に弱さを晒している。 「俺を見ろ、鬼ヶ崎」 「…ぃや、だぁあ…っ!ふぁっ、やぁっ、ぃぐっ、ひっ、ぎ、ぃや…あっ、あっ、も、や…〜〜っ!!!!」 大きく躰が跳ねさせたカイコクはポロポロと涙を零し、荒い息を吐いた。 ミミクリーザクロが引き抜いた後はぽっかりと孔が開き、真っ赤に膨れ上がったそこからは朱混じりの精液が零れ落ちる。 「…ご自分が悪い事をしたと、理解できましたか?鬼ヶ崎様」 顎を掬い上げると彼は逡巡した後、こくりと頷いた。 随分と素直になったものだとパカは仮面の下で小さく笑う。 まあ、朝も晩も休みなく犯させたのだから無理はないだろう。 しかも快楽は一切無く本来受け入れるものではないそこに無理矢理挿れられ、強制的に精を吐き出させられるのだ。 直腸には想い人と見紛う偽物の体液を飲み込まされ、愛の言葉を囁かれる。 カイコクの体力も精神も限界値に近いはずだった。 「手当てを。こちらに来ていただけますか、鬼ヶ崎様」 「…っ」 彼の躰が強張る。 本能的な拒否、拒絶。 嫌だと叫びたいのをパカは知っていた。 「…もう一度、あれに犯されたいのですか?」 だからこそ、カイコクの耳に囁く。 ぞっとした顔で彼はパカを見上げた。 「…ぃ、やだ……」 「…鬼ヶ崎様」 「あ、れは…忍霧、じゃねぇ…分かっ、てる…のに…音、音が…気持ち悪ぃ…くちゅくちゅって……いやだ…俺、は…抱かれて…お、れ……」 カタカタと震えながらカイコクが吐露する。 「本当にそうでしょうか」 「…へ……?」 緩慢に、彼がパカに懐疑的な目を向けた。 「あれは確かに忍霧様ではありません。しかし、カクリヨの町で貴方も見た筈ですよ。…鬼の娘にナイフで恫喝する彼を」 「…!あ、れは…敵、だから」 カイコクが可哀想なほど狼狽する。 優しいと、自分には優しいだろうと信じているザクロの…本性に気付いているからこそ。 「…っ!忍霧は!仲間思いの奴でェ!俺、なんかよりも…ずっと……」 「だからこんな事はしないと?鬼ヶ崎様を痛めつけ謝る声も聞かず犯すことはしないと、仰るのですね」 「…っ」 びくりと肩が跳ねた。 ホロホロと涙を溢す彼にパカは手を伸ばす。 手当てを、と差し出すそれにカイコクは小さく首を振りながら己の手を重ねた。 哀れな人だと、思う。 「ああ、腫れていますね。可哀想に…」 うつ伏せにさせ、腰を高く上げさせてパカはふっくらと腫れ上がったそこを撫で上げた。 「…ひっ、う…!」 「薬を塗りますのでお待ちを」 小さな薬瓶の中に入ったクリームを手に取り、パカは表面から塗り込んでいく。 くちゃりと態とらしい音を立てながらゆっくりゆっくり時間をかけて彼を追いつめていった。 今までとは違う、確実に快楽を追わされている感覚が、カイコクを襲っている。 それを証拠に彼はもう息絶え絶えだった。 「…ぅんんんんっ!!!」 シーツを噛み、カイコクは精を吐き出す。 「おや。気持ち良かったですか?鬼ヶ崎様」 「…」 ふい、とカイコクが目をそらした。 それを許さずパカはミミクリーザクロの方に目を向けさせる。 「…また、彼に犯されたいのですね」 「…っ!!!…っ、よ…かった…気持ち良かった、から……や、めてくんな…っ!!」 縋るように彼がこちらを見た。 良い子、と囁やけばあからさまにほっとした表情を見せる。 「?!ゃ、なに…ふぁっ、あっあ、やぁあ!!」 「中も傷ついているでしょう?しっかり手当てしないと、ねぇ?」 鬼ヶ崎様、と囁き、液体を流し入れた。 時間をかけて馴らしたそこに自身を埋め込み、掻き回す。 「ぅあああっ!や、やぁあ!み、るなぁ!見ないで、くんな…お、ねが…おし、ぎり…おしぎりぃいっ!!」 助けて、と持ち上がる彼の白い手。 強姦なら言い訳も立とうが甘く甘く抱かれ一つ一つに感じているであろう彼は哀れな程だった。 「ぃ、あああああっ!!!」 嬌声と共に吐き出される精液と熱い息。 ぐったりとする彼の口に液体を流し入れる。 こくん、と然程抵抗もせず飲み込む彼にこれは媚薬だと告げ、黒い布で目を覆った。 「先程鬼ヶ崎様に塗りこんだ薬にも媚薬が含まれております。…それでは、良い悪夢を」 身支度を整え、パカは外に出る。 甘い絶望は…始まったばかりだ。(終)
ニセモノ アイ 溺レル(ミミクリーザクロ×カイコク)
ジャラジャラと喧しい音がする。 伸ばされる手に、パカはやれやれと溜息を吐き出した。 …事の起こりは数時間ほど前。 ルールを破った彼、カイコクを再び捕まえ、実験室に押し込んだのである。 前回、痺れ薬では何ともなかった彼に筋弛緩剤を飲ませ、無理矢理に叩き起こした。 拉致した過程を説明し、パカはゆったりと言う。 「罪には罰を。そう思いませんか、鬼ヶ崎様」 「…ふざけ…っ!」 それに対してカイコクは案の定声を荒げた。 ギリッと彼が睨む。 何処までもプライドが高い人だと思った。 …だからこそ【彼】に目を付けられるのに。 哀れな人だと思いながらパカは扉を開ける。 「…え?」 「貴殿には絶望を味わっていただきたいと思いましてね」 小さく声を漏らすカイコクにパカは告げた。 その声は聞こえているのかいないのか。 ゾッとした声が響く。 「…おし、ぎり?」 「…鬼ヶ崎」 部屋に入ってきたザクロが目を細めた。 嘘でェ、と呟く声。 「…お前さん、忍霧に…何を」 「残念ながらこちらは忍霧様ではございません」 「…え……?」 パカのそれにカイコクが目を見開いた。 「ミミクリー・マンイーターの改良種とでも言いましょうか。…あまり知能が高くないのですよ」 そう告げて、小さな鈴を鳴らす。 ゆっくり近づいたミミクリーザクロはカイコクを抱き締め。 「愛している」 そう、囁いた。 途端にカイコクの表情が歪む。 彼が、ザクロを想っているのは知っていた。 それ故にあまり踏み込もうとしていないのも。 だからこそ今回はそれを利用した。 「…やめて、くんな……。忍霧、は…そんなこと言わねぇ…っ!」 「…鬼ヶ崎」 嫌々とカイコクが首を振る。 絞り出すような声は筋弛緩剤を使われているからか、それとも。 珍しい表情をするカイコクに、現実は無情だった。 「?!!んぐっ、がっ…!!」 離れたミミクリーザクロが性器を取り出し、カイコクの口に突っ込んだのである。 突然のことに目を白黒させながらえづいた彼の頭を掴み、ミミクリーザクロは無理矢理に前後に動かした。 「おごっ、ぁっ、や…!あぐっ、ひっ…ぐ…あがっ…!!」 汚い声が上がる。 喉を何度も突かれ、カイコクは本能的な恐怖に飲まれているようだった。 かみ切ることだって彼なら考えるだろうにそれをしないのが証拠だ。 「げほっ、ごほっ…!はーっ…はーっ…はー…っ」 数分ほどそうしていただろうか、ずるりと引き抜いた途端、カイコクは激しく咳き込む。 ガタガタと震える彼を、ミミクリーザクロは乱暴にうつ伏せにさせた。 …そうして。 「…っ?!いや、だ…やめろ!!!」 暴れるカイコクの願いも虚しく、ミミクリーザクロの性器が濡らしてもいない彼のアナルに捩じ込まれる。 気遣いなんて知らない、植物たるそれ。 「〜っ!!ぅあっ、あぁっ、いぎ…っ!!」 「鬼ヶ崎、愛している」 「っ!…や、めろ……いや、だ…ァ、あぁあっ!!!」 機械的な愛の言葉にカイコクは悲痛の声を漏らす。 ぽたり、と鮮血が流れた。 息吐く間も与えず、ミミクリーザクロはガツガツと律動を開始する。 愛している、と無感情に囁いて。 「ふぁっ!…やだ、ぃやだ…っ!な、んで…!」 シーツに顔を押し付けながらカイコクが啼く。 快楽も何もない、ただただ痛みを植え付けられるセックス。 想い人から、無感情に愛を囁かれ続けるカイコクの苦痛は如何程だろう。 「…助けて、差し上げましょうか?」 パカはぼんやりするカイコクに手を伸ばした。 ふざけるな、とそれが打ち払われる。 この状況を作ったのはそもそもパカじゃないか、と。 「…っ!俺ァ…!絶対に…屈しねェ…!これ、は忍霧なんかじゃ…!…だ、からぁ…!」 「…残念ですねえ」 パカはその返答に溜息を吐き、小さく鈴を鳴らす。 「?!…ぁ…あ……!」 「…鬼ヶ崎」 緩く首を振るカイコクに、ミミクリーザクロは小さく笑みを見せ…触手を、伸ばした。 無数の触手が、カイコクを襲う。 「ひぎっ、やめ…!ぃぎゃぁアアアッ!!!あぐっ、ぅんんぅ!んぶ、ひぎゅ…っ!」 穴という孔を触手に埋め込まれ、彼の目は絶望に染まった。 ポロポロと涙が零れ落ちる。 それは…苦しさからか、痛みからか。 はたまた別の何かか…パカには分からなかった。 小さく、本当に小さく、ごめんなさい、と彼が呟くのは誰に向けてなのか。 「鬼ヶ崎、愛している」 ミミクリーザクロが囁く。 ニセモノの愛を、ニセモノの【彼】が。 快楽は与えないのに愛の言葉は与えられる。 これほどの地獄があるだろうか。 伸ばされた白い指が震え、絡めとられる。 逃がさない、というように。 …傷ついたカイコクは…確かに『綺麗』だと…思った。
これは、沈むべきアイに溺れた…哀れな黒猫の、始まりのお話。(終)
エイプリルエイプリル!(ザクカイ)
ザクロは今日何度目かの溜息を吐き出す。 目の前にいるカイコクがびくっと肩を震わせた。 さてなぜこの様な状況下にいるのか…事の次第は今から1時間ほど前だった。 「大変な事になった!」とユズがカイコクを引き摺ってザクロの前にやってきたのだ。 どうしたのかと問えば、なんと彼が【根底にある思いとは逆の事を自分の意志に関係なく喋ってしまう薬】を飲んでしまったというではないか。 何故そんなものを、と思うがユズ曰く「ちょっとした手違い」らしい。 「午前中で効果は切れるから、あと頼むぜ!」 「おいこら待て!」 さっさと逃げるユズにザクロは声を荒げるが、追いかけることが出来なかったのはカイコクがぐんっと引っ張ったからだ。 「…っ?!鬼ヶ崎?!」 「…す、き…でぇ」 倒れ込みそうになって慌てて後ろを向けば小さな声でカイコクがそう言う。 その言葉に少なからずショックを受けたザクロは、それでも「…そうか」とだけ答えた。 特別な感情はないだろうな、とは思っていたが「好きの反対」、つまり「嫌い」と言われればそれはそれで傷付く。 「…。…別に無理に俺の側にいる必要はないと思うが…」 「…好き、でぇ」 「…なあ」 「…っ!…好き、でぇ!」 同じ言葉しか繰り返さないカイコクに、おかしいな、と後ろを向こうとした。 だが、彼がそれを許さない。 「…俺だって傷つくんだが」 はあ、と息を吐けば小さく震え、カイコクがそっと離れた。 それから約1時間、無言のままザクロとカイコクは対峙している。 どうすべきかと思ったところで最初に口を開いたのはカイコクだった。 「…好き、でぇ」 その言葉に、またか、と暗い気持ちになりかけたところで、彼が言葉を続ける。 「名前…呼んでくんなぁ?」 呼べ、と言うことは呼ぶなということだろうか。 しかしそれも癪で、「鬼ヶ崎」と呼んでやれば小さく首を振った。 やはり呼んでほしくないのかとも思ったが、彼は「名前」と言ったのである。 「…。…カイコク」 小さく、絞り出すように言えば、何故だか彼はホッとしたように笑んだ。 不思議な表情のカイコクに疑問符を浮かべたが、ふと自室の時計が目に入る。 午前中と言われる時間はとうに過ぎていた。 …と、いうことは? 「…すまねぇ、嘘…なんだ」 「…は?」 小さな声でカイコクが言う。 良く良く聞けば、彼に飲まされた薬の効能は「嘘」だったというのだ。 日付を確認すれば今日はエイプリルフール。 なるほどそれなら合点がいく。 「それで、なんの薬なんだ?」 「…り…」 「は?」 きょとんとするザクロに、だから!とカイコクは大きな声を出した。 「【自分の気持ちに正直になる薬】だって言ったんでぇ!!」 「…へ??」 ぽかんとするザクロに彼が顔をそらす。 つまり、好きだと彼が言ったのは本当で。 「…正直になったからには……受け止められる覚悟はあるんだな?」 とさりとカイコクを押し倒す。 「ま、まて、待ってくんな、おしぎ…!」 「俺も貴様が好きだ…鬼ヶ崎…いや」 カイコク。 慌てる彼に低く囁いてそっとキスを、した。
「どうしよう、カリリン、ひーみん。嘘って言いづらくなった」 そんな二人を見つめる少女が3人。 …そう、実はカイコクには薬を【飲ませていなかった】のである。 珍しく動揺するユズにカリンが「知りませんよ」と呆れながらも一蹴した。 「自分で蒔いた種でしょ。自分でなんとかしてください?」 「そんな!…ひーみん!カリリンがぁ!」 相変わらずな二人にヒミコは苦笑しつつ、ふと首を傾げる。 ユズが作った薬は嘘だった。 ならカイコクのこの言動は? (そもそもどこから嘘だったんでしょう…?) ヒミコのそれは誰に聞かれることもなく、疑問として消えた。
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