ねこ(ねんへし燭ワンドロSSS

ふわふわで、あったかくて、気紛れで。
追いかけたら逃げて、構わなければそっと付いてきて。
「…みつはねこににているな」
「…?」
ねんどろいどへし切長谷部の言葉にねんどろいど燭台切光忠がきょとんとした。
今も寒いのかこたつに潜り丸くなっている。
そういうところもねこにそっくりだ、と思った。
そうだ、と主から頂いたそれを出す。
不思議そうな彼にそれを被せた。
黒い、三角耳がひょこりと揺れる。
やはり似合う、とねんどろいどへし切長谷部は満足そうに笑った。
「ねこはにゃーとなくそうだぞ」
「…?」
「にゃー、だ、みつ」
ねんどろいどへし切長谷部のそれに、ねんどろいど燭台切光忠は口を開き、声を出さず、にゃーお、と鳴いて見せる。
サイレントみゃーお。
好いた相手に見せる、最上級の敬愛表現。

「…みつはやはりねこににているな」
「…?♡」
にこっと可愛らしく笑む彼の頭を撫でながら思わず呟いた。


彼は自慢の俺のねこ!

「なあ、みつ。しっぽ……」
「それは」
「いけない」

勤労感謝(へし燭SSS・ワンドロお題)

勤労感謝。

それは、古くは違った意味を為していた言葉で。
「…燭台切さんは座ってて!」
「光忠さんが仕事してたら意味ないんですからね!」
「…はいはい」
いつからだろうか。
働く者に感謝をする日と位置付けられるようになったのは。
「ってかへし切はぼうっとしない!」
「…そーですよ、長谷部さん。しっかり手伝ってください?」
「…分かっている!」
いつからだろうか。
己が割りと強いたげられるようになったのは…!
「…まったく」
「…。…ね、僕手伝うよ?」
「…いい、座っていろ。あいつらが五月蝿くて敵わん」
ため息を吐く俺にそっと進言してきたのは先程怒られていた光忠である。
可愛らしく笑む様子にほだされそうになるが、それをしっしっと手で追い払った。
「…で、も」
「…普段お前は近衛としてよくやっている。本来近衛の仕事でないことまでな」
言い淀む光忠を座らせながら俺は言ってやる。
彼、燭台切光忠はこの本丸の近衛だ。
主に付き従い、時には現世にも赴き、書類仕事もこなして。
挙げ句、掃除洗濯家事は彼に一存し畑仕事まで任せっぱなしだ。
だからこそこの二人が「今日は燭台切光忠を休ませる」と宣言したのだろう。
…彼自身が落ち着かない様子ではあるのだけれど。
良く働く彼の手を持ち上げ、口付ける。
「…長谷部、くん?」
「少しは手伝わせてくれ。感謝の意味も込めて、な」
「…もう」
目を丸くしていたが、やがてくすくすと笑う光忠。


今日は勤労感謝。

良く働く彼に感謝をする日。


「「そこっ!いちゃいちゃしない!」」

風邪(へし燭SSS・ワンドロお題)

光忠が倒れた。

それを聞いたのは遠征途中の道すがらだった。
倒れた。
光忠が。
…いつ?
…なぜ?
戦闘中か、遠征中か、それとも。
逸る気持ちを抑えきれず、それでも一人だけで帰るわけにもいかず、結局本丸に辿り着いたのは夜も更けた頃だった。
「…光忠!」
「…しーずーかーに」
勢い良く襖を開けた長谷部に言ったのは口に人差し指を当てた安定である。
隣には安定の膝枕で寝息を立てている清光、奥には穏やかな顔で寝ている光忠がいた。
ほっとへたりこむ長谷部に安定が小さく笑う。
「風邪ですよ。ちょっと前から調子悪かったみたいで。さっきまで清光が看病してたんですけど…もう大丈夫ですね」
「…そうか。すまない」
安定に礼を言い、そっと光忠の髪を撫でた。
風邪、といってもどうせ限界まで無茶をしていたのだろう。
まったく。
風邪の如きが一番危険だと彼も分かっているだろうに。

「…早く、治せ」
そっと持ち上げた髪に口付ける。
起きた彼に粥でも、と立ち上がった。

あたためる(ねんへし燭ワンドロSSS

寒い。
ここのところとみに寒くなってきている気がする。
…今年は暑かった期間が長かったからだろうか。
去年より寒暖の差が激しい気がした。
それは冬を迎えるのが2回目である自分達も…。
…初めてである、彼らにしても。


「…さむい」
小さく言ったのはねんどろいどへし切長谷部である。
彼がこの本丸に来たのは9月も終わりの頃で(顕著したのは4月の終わりごろだったが)確かにまだまだ暑い時期だった。
だから寒さになれていないのは分かる。
長谷部とて寒いのが得意なわけではなく、寧ろ苦手なほうで。
故に分身と言うべき彼が【こう】なるのも良く分かる。
分かる…のだが。
「やりすぎじゃあないか?」
「…さむいものをさむいといってなにがわるい?」
呆れ、ころころとした球のようなそれ…ねんに言えばじろりと睨まれた。
思った以上に寒さが堪えているらしい。
どてらに股引、首巻に挙句、靴下まで…どうやら主に作ってもらったのだろう、清光いわく「ねんへしならぬもこへし」と称されるのが良く分かるほどに着膨れしていた。
これがもっと寒くなったらどうするのだろうか。
…前に安定が言っていた、「冬眠とかしそう」というそれが現実味を帯びてきた気がして首を振る。
そんなまさか、小動物でもあるまいに。
と、ふとかたんという音がした。
何だろうとそちらを見れば、畑作業でも行っていたのか鼻の頭と手先を紅く染めたねんどろいど燭台切光忠が障子を開けたところで。
「ああ、ねん光か。おかえり」
「!!」
「!みつ!」
ひょこりと顔を出した相手に声をかければ嬉しそうに部屋に入ってくる…前にねんへしが駆け寄った。
「ああ、またおまえはこんなからだをひやして…」
「?!;;!!」
「だめだ。かぜをひいたらどうする」
己が着ていた防寒具を全てねん光に着せ、満足そうにねんへしが笑う。
「;;」
「おれか?おれはだいじょうぶだ」
心配そうなねん光にねんへしは笑って見せ…ぎゅ、と抱きついた。
やれやれ、と長谷部はまた書類に向かう。





体温を分け合いましょう。

冷たい貴方に暖かい熱を半分こ。



二人でいればあったかい。



(冬の幸せ、醍醐味を)

記念日(へし燭SSS・ワンドロお題)

光忠が怒っている。

なぜ怒っているのかは分からない。
今回は俺が何かやらかして怒らせたわけではないはずだ…多分、恐らく。
「長谷部さん、鈍感ですもんねぇ」
「…お前がそれを言うのか」
けらけらと笑う大和守をじろりと睨んだ。
何だかんだ言ってこいつの無神経な一言で加州を怒らせているのを俺は知っている。
「僕のは良いんですよ、下らないんだから」
「ほう?」
「こないだも記念日がどうとかで言い争いになって…」
「…ん?」
大和守が言った記念日、という言葉に思わず首をかしげた。
記念日。
…記念日?
「…あ」
…思い、出した。
そうだ、俺はあの時…。
『……記念日にしよう』


「すまん、光忠!!」
「…思い出した?」
むっとしたような光忠に袋を差し出す。
「思い出した。今日は鍋記念日だ」
俺の言葉に光忠は漸く微笑んだ。
…鍋記念日。
恋人になり二人で初めて冬を迎え鍋をつついた日。
他人から見ればなんと下らないと言われそうだが、二人にとってはそうじゃないんだ。


何でもない日が、大切な記念日になる

甘酸っぱい(ねんへし燭ワンドロSSS

目の端を橙色がころりと転がった。
何かと振り向けば蜜柑が落ちていて。
はて何故蜜柑が?と疑問に思えばその後ろからねんどろいど光忠がひょこりと顔を出した。
「お前か、ねん光」
「♡」
指で頭を撫でてやれば嬉しそうに笑む。
どうやら書類仕事を片付けている俺に光忠が休憩をしようと寄越したものらしかった。
「ねん!ねん光が来たぞ」
「…?みつ!」
俺の書類を数えていたねんが慌てたようにやってくる。
「わざわざきてくれたのか。すまない」
「!!♡」
微笑ましくやり取りする二人を見ながら蜜柑を剥いてやった。
少し休憩しろ、と差し出せば二人は嬉しそうに蜜柑を手に取る。

「みかんというものは、みつににてるな」
蜜柑を頬張りながらねんが言う。

(甘くて、ほんの少し酸っぱくて、幸せな彼に似てる)

冬の朝(へし燭SSS・ワンドロお題)*大太刀長谷部×織田時代光忠

寒い。
起き上がった長谷部はぶるりと身体を震わせ、再び布団へと潜り込んだ。
普段ならこのような怠惰な真似はしない。
ただ今日は非番だと言っていた…たまには良いだろう。
「…ん…」
隣にいた光忠が小さく身動いだ。
彼もまた寒いのだろう。
そっと頭を撫でて身体を寄せれば光忠の顔が綻んだ。
それを見て長谷部もふっと笑む。
…そういえば、昔にも似たようなことがあったっけ。




昔も昔。
まだ、長谷部が大太刀だった頃。


その日も寒い朝だった。
数日前まで暖かかったはずだが、この寒さはなんだろうか。
「…?」
少し暖が欲しいと思った矢先、体の半身だけが暖かいことに気づいた。
「…これは」
布団を剥がし、目を見開く。
くっついていたのは、黒髪の小さな子ども。
穏やかな寝息を立てる、可愛らしい長船の一振り。
あどけない表情の光忠、だ。
いつも早い時間から起き出し、長谷部を起こしに来る子どもは、朝の寒さに負け長谷部の元に潜り込んだのだろう。
「…ん、ぅ……」
「…仕方がないな」
柔らかな髪を撫で、長谷部ももう一度布団を被った。
たまには良いだろう。
寒い、穏やかな冬の朝。

ハロウィン(へし燭SSS・ワンドロお題)

収穫祭。
万聖節の前日、元々はその年の豊作を願う祭りだった・・・と聞いていたのに。


「あ、長谷部さん」
「え?へし切?」
「・・・長谷部君!」
「・・・。・・・何をしてるんだ、お前らは」
三種三様の反応を返す彼らに長谷部は思わず呆れた声で問いかける。
振り仰いだ安定は白い羽に白い衣装・・・所謂天使というやつ・・・の恰好、眉を顰める清光は黒い羽根に黒い衣装・・・所謂悪魔というやつ・・・の恰好、ぱあ、と表情を輝かせ、座り込んで二人を着つけている光忠は黒い三角耳に燕尾服の間から覗く同色の尻尾、というそれだった。
「何だそれは」
「へし切見て分かんない?・・・仮装だよ。今度収穫祭あるじゃん、その準備」
長谷部の疑問に答えたのは清光だ。
彼は『可愛い恰好ができる』というだけで機嫌が良いのだろう。
「長谷部さんは狼男とか似合いそうですよね」
「やらん」
安定が笑うのに長谷部は嫌そうな表情を隠さずに言った。
「ふふ。長谷部君嫌いそうだもんね。・・・はい、出来た」
にこ、と光忠が笑む。
「ありがと、燭台切さん!」
「光忠さんありがとうございます!・・・行こう!清光!」
「わ、ちょ、待ってよ!!安定?!」
珍しく二人とも楽しそうで、思わず長谷部も光忠と微笑ましく見送った。
まあこういうのもたまにはいいだろう。
・・・巻き込まれるなら全力で拒否するが。
「・・・。・・・ね、長谷部君」
「あ?」
同じように見送っていた光忠が座り込んだ状態でこちらを見る。
長谷部にとって自分より目線の低い光忠は新鮮で、尚且つ懐かしかった。
「収穫祭では色んな家にお菓子を貰いに行くんだって」
「ほう」
「それで、貰う時にある台詞を言うらしいんだけど・・・」
そこまで言った光忠は悪戯っぽく笑い、両手を差し出す。
「悪戯かお菓子か!」
上目使いでにこっと笑う光忠。
・・・煽っているのだろうか。
「ほら」
「・・・あれ?」
その手に飴玉を一つ置いてやると光忠が首を傾げた。
「なんだ、悪戯したかったのか?」
「え、いや、そうじゃないけど」
不思議そうな光忠に小さく笑って言えば彼は飴を見つめて困ったように言う。
「長谷部君が甘いものを持ってたのは意外だなって」
「持ってなかったらどうするつもりだったんだ?」
可愛らしい笑みを見せる光忠に疑問をぶつけると彼はうーんと考えるように上を向いた。
「悪戯・・・。・・・えいっ」
「うわっ」
「え、うわああ!!」
座り込んだままの光忠が長谷部の服をぐん、と掴み、急な事に踏鞴を踏んだ長谷部は光忠に覆い被さる様に倒れ込む。
すさまじい音が辺りに響いた。
「・・・ごめん・・・」
「この、馬鹿力が・・・!」
「うぅ、ごめんってば・・・」
じろりと睨むと長谷部の下の光忠が小さく謝る。
黒い耳がぴくりと動いた。
「・・・燭台切、お前、これ・・・」
「・・・え?ああ。本物だよ。なんでも主の悪戯?みたい」
「・・・主・・・」
光忠のそれに長谷部は頭を抱えた。
・・・今の主は悪い人ではない・・・のだけれど。
「長谷部君?」
「・・・燭台切、お前菓子は?」
「え?あ、はい」
こてんの首を傾げる光忠に聞けば彼は差し出した手に甘食を一つ乗せた。
「さっき作ったんだ」
「そうか」
機嫌の良い光忠ににやりと笑って甘食を齧る。
「長谷・・・んんぅ?!!」
きょとんとする光忠の口に齧り取ったそれを舌で入れた。
そのまま口腔を貪る。
「んふ、ふぁ、ぁうん、や、はしぇべくん・・・?ひっ」
とろんとする光忠の黒い尻尾を握り、うにうにと手を動かした。
「やぅ、や、ぁ、ひぃう!!」
「ほう、感覚があるんだな」
いやいやと首を振る光忠に長谷部はくすくすと笑う。
「な、んで・・・?ぼく、お菓子渡し・・・ぁあう!!!」
「ああ、俺はその台詞とやらを言っていなかったな?」
涙目の光忠に笑い・・・長谷部は黒い耳に息を吹き込んだ。
「ふ、ぇ・・・?」
「覚悟しろ。・・・光忠」
ひぃ!と躰を大袈裟にびくつかせる光忠にくつくつと笑い・・・長谷部は囁く。



「trick but treat」

わがまま(ねんへし燭ワンドロSSS

「おい、みつ!はやくこい!!」
「!!」
「おそい!おれがよんだらはやくこいといってるのに、おまえは…」
ぎゃーぎゃー騒ぐ声が聞こえる。
…全く、煩いな。
「静かにしろ、ねん」
「なんだ、でかいの」
見れば、ねん…ねんどろいど長谷部はねん光…ねんどろいど光忠の膝に頭を乗せて寛いでいた。
所謂、膝枕だ。
何をやっとるんだ、こいつらは。
「…ねん光、嫌なら嫌と言えよ?」
「?…!!」
哀れになって声をかければねん光はぱたぱたと手を振った。
どうしてこうも押しが弱いんだろうか。
「ねん、我が儘ばかり言うと嫌われるぞ」
「ふん。…これはみつのわがままをきいてやってるんだぞ?」
「…は?」
ねんのそれに俺は疑問を返す。
何を、言ってるのか。
明らかにねんの我が儘をねん光が聞いてやってるようにしか見えんが…。
「…!♡」
まあ、ねん光は幸せそうだから、良いか。


二人にしかわからない、二人だけの我が儘を

指輪(へし燭SSS・ワンドロお題)

主の時代には、好いた相手を縛り付けておくものがあるらしい。

「なんだ、これは」
銀色に光る、小さな輪上のそれを見せられ、俺は首を傾げた。
「指輪だよ、へし切知らないの?」
俺に見せてきた相手、加州がこてりと首を傾ける。
「へし切言うな。…指につける装飾品だろう?」
それを返しながら言えば加州は頬を膨らせ、情緒がない、と言った。
なんだ、それ。
「そうだけどさあ!何かもうちょっとさあ?!」
ぷんすこと怒る加州は受け取ったそれを左手の薬指につけた。
あれはあそこに着けるものだろうか。
「…。…燭台切さんにもあげなよ、喜ぶよ?」
「は?」
ふっと加州が微笑む。
それはどこか幸せそうで。
きらりと左手の指輪が光った。



かちゃかちゃと食器を洗う音がする。
台所を覗けば光忠が昼飯後の片付けをしていた。
「おい」
「…長谷部くん。どうかしたかい?」
声をかければ、俺を認めてふわりと微笑む。
白くて長い指。
余り見られるのは好きではないようだが、俺は綺麗だと思う。
その、綺麗な指に俺の印をつけることが出来たらどんなに良いだろう。
ふと加州が着けていたそれを思い出して俺はにやりと笑った。
…ああ、なるほどな?
「…?…長谷部くん?」
不思議そうに光忠が俺を見る。
光忠の手を持ち上げ、俺はそこに口付け。
「痛っ。…え?え??」
左の薬指に噛みつき、歯形を残した。
「後で部屋に来い」
それだけを言い残し、俺は台所を出る。
目に焼き付く、白い肌に残る紅い跡。
それはまるで己に光忠を縛り付けておくような、そんな。

ただ形が見えるそれより強く強く縛り付けたい