水遊び(ねんへし燭ワンドロSSS

その日、本丸では雨が降った。
随分と降り続いたそれは少し古くなっていた瓦を破損してしまったようで。
「うわぁ?!」
「光忠?!」
何やら驚いた声が聞こえたから慌てて行ってみたら…これだ。
「何をやっとるんだ、貴様らは!」
思わず怒鳴る。
ぴゃ、とねんどろいどの光忠…ねん光がねんどろいどの長谷部…ねんの後ろに隠れた。
膝丈まで履き物をたくしあげ、上着も肘まで捲りあげている。
如何にも水遊びをしていました、という感じだ。
…そう、水遊び。
「へやにみずたまりがあったからな」
「あったから、という理由で遊ぶやつがあるか!」
どや顔をするねんに俺は怒鳴る。
光忠はねん光を庇いながら、まあまあ、なんて宥めてきた。
…まったく。
「雨漏りを放置していた方にも責任はあるし…ね?」
「ぐ…」
光忠のそれはもっともだ。
水溜まりを作っていたのは先日の雨によって出来た雨漏りである。
しなければ、と思っていたがここまで酷いとは…。「みつ」
「…?…!!」
ねんの声にねん光が振り返る。
途端、ぐん、と燕尾を引っ張られ、ねん光は尻餅をついた。
ぽたぽた、黒い髪から滴り落ちる滴が服を濡らし、肌を透けさせる。
「…長谷部くん」
「…光忠?」
静かな光忠の声に俺はひくりと口元を歪ませる。
これは、まさか。
「ねんへしくん、借りるね」
「…あ、ああ」
「なんだ、みつただ。おれはものじゃな…おい、まて、わるかった、わるかったと…!」
哀れ、ねんの声が遠ざかる。
怒らせた光忠ほど怖いものは…ない。
不安そうに見上げるねん光に俺は大丈夫だと告げてから抱き上げ、風呂場に向かう。



水遊びが悪いとはいっていない。

だが。
(何事もほどほどに)

和服・和装/へし燭ワンドロSSS

主が「暑いだろうから」と甚平を本丸全員に作ってくださった。
本当に主の趣味は…と思ったが口には出さない。
今までの「作品」に比べればましだ…そう思っていたのに。
「…あ、長谷部君」
「…は?」
ふわりと笑った光忠に、俺は瞠目する。
…やはり主は主だったか…!
「…?何?長谷部く…うわっ?!」
不思議そうな光忠の肩を掴んだ。
「お前、なんで浴衣なんだ!?」
「え?」
光忠が首を傾げる。
彼の身を包んでいるのは黒い浴衣だった。
それだけならまだ良い。
普段洋装の光忠が和装も似合うのはしっている。
黒い浴衣には藤の模様が入り、ふわりとした帯は黄色に近い金を帯びて、烏羽色の髪には金と榛色の簪が…。
…何が言いたいか。
「お前のそれ、女性用じゃないのか?」
そう、細いとはいえ男性のそれを包んでいるのは女性が着る浴衣だ。
こいつ、見た目を気にするんじゃなかったのか?
「ああ、僕も最初は断ったんだけどね、主が長谷部くんが喜ぶっていうから」
「…はぁ?」
光忠が思いもよらないことを言うから思わず聞き返してしまった。
いや、喜ぶって、お前な…。
「やっぱり変かな…?」
ふわりと、光忠が浴衣の裾を持ち上げる。
「…変じゃない。だから着替えてこい」
「え?」
矛盾したことを言ったのは分かっていた。
だが。
「可愛い格好を見せるのは俺だけにしておけと言っている!」
「…長谷部、くん」
光忠がふにゃりと笑いながら、格好良いの方が嬉しいなぁと言った。
…やはり、光忠は可愛らしいな。


たまには主の趣味が全開の和装も…ありだと思った。




「女性の浴衣ってすーすーするよね。下着穿けないし」
「…は…?」

夢の続きを(メイルカ)

「おめでとうございまーす!!」
「…あら」
「運強いわねえ」
ぽかんとする末の妹…巡音ルカに私はくすくすと笑って見せる。
「どうしましょう、メイコ姉さま」
「まー、海外旅行が当たった訳じゃあるまいし…よしんば当たったら皆で行けばいいじゃない?」
困惑の表情を浮かべるルカに私は言った。
ルカは心配性なのよね。
「そ、そうですが…」
「でも商店街の福引なんてせいぜい近場の旅館、ってトコよねぇ」
「…ふふ、メイコ姉さまったら」
ぼやく私にルカは笑みをこぼす。
やっぱりこの子には笑顔が似合うわ。
「ところで何等だったの?」
「3等ですわ」
にこりとルカが言う。
近所の商店街で行われる福引券を買い物途中にもらったから二人で引いてみた…結果がこれ。
ちなみに私は5等のさくらんぼだった。
まあまあいいところじゃない?
「3等ってことはお米くらいかしら」
「どうでしょう…?」
「何にせよ、荷物もちがいるわね。…っと、もしもしカイト?私」
笑うルカにそう返して私はスマホを操作する。
電話した相手は弟…っていう位置かしらね、一応…のカイト、のはずだったんだけど。
「あら?レン?私間違えた?え?違う?まあいいわ。ちょっと商店街までよろしくね」
耳に聞こえるもう一人の弟、レンに言って私はさっさと切り上げる。
「レン兄さま今日はオフの日では…」
「いーのよ、どーせカイトといちゃいちゃしてんだから」
私のそれにルカがまあ、と笑った。
「お待たせ、お嬢さん!」
「ありがとうございます…あら」
店の主人が出してきた紙切れにルカが目を落とす。
綺麗なアクアマリンが丸くなるのを見、私も横から覗きこむ。
「…随分良いものねぇ?ルカ」
私のそれに困ったような顔をするルカの手にあったのは…ペアのディナーチケットだった。




「何やってんの?」
「早かったわね、レン」
「レン兄さま」
金髪をひょこりと跳ねさせた少年、鏡音レンが少しぶすくれながら私たちを見る。
「公園で休みたいがために俺呼んだんだったら怒るからな」
「んなわけないでしょ」
レンのそれに私はからから笑った。
取り敢えず商店街から一番近い公園に移動して、チケットについて話し合っていたのだけど、まだ纏まっていないのよね。
「ルカがね、ペアのディナーチケット当てたのよ」
「ふぅん?良かったじゃん。それ、今日のやつ?」
「…そうなんです」
「じゃあ兄さんに米無しでいいっつっとくわ。俺らも食べに行くし」
「え?」
「へ?」
「あ?」
私から荷物を受け取ったレンが自転車に乗りがてら言ったそれに私たちは疑問を返す。
「行くんだろ?ディナー」
「え?けれど」
「行ってくりゃいいじゃん。今日はミク姉ぇもリンもマスターたちとPV弾丸ツアーなんだから」
あまりにもあっさり。
でもまあ…そうね。
「ありがと、レン」
「ルカ姉ぇ困らせ過ぎんなよ、メイ姉ぇ」
「え?え??」
片手をあげる私、さっさと自転車に乗るレン、おろおろするルカ。
「…と、言うわけで」
レンを見送ってから私はぴょんとベンチから立ち上がって、ルカに手を差し出す。
「デートしましょ、私と」
「メイコ…姉さま?」
「あら、私とは嫌かしら」
くすくす笑えばルカは慌てて、そんなことないです!と言った。
ふふ、可愛いわぁ。
「…メイコ姉さまとデートなんて、夢みたいですわ」
ルカが顔を綻ばせて私の手を取る。
…ああ、なんて。
「かっわいーわね、ルカは!」
「きゃっ」
勢い良く引き上げて、そのままふわりと体を舞わした。
白のフレアスカートが風に揺れる。
「まだ時間あるわよね。ウィンドウショッピングでもする?」
「はいっ」
可愛らしく私の腕の中で笑うルカ。
そうね、なんだか夢みたい。
くすくす笑って、私たちはどちらともなく手を繋いだ。
いつもなら恥ずかしがるのにね、ルカは。
デートって言ったからかしら。
本当、可愛い。
「ルカ、何処に行きたい?」
「私はメイコ姉さまが行きたいところなら何処でも」
「私は可愛いルカと美味しいお酒を堪能出来るなら何処でもいいわ」
「まあ」
ふわふわ、ルカが笑う。
結局、そのチケットが使える店が入ってるショッピングモールをぶらぶらと廻ることにした。
まあ小物雑貨店やアクセサリーショップは見てるだけでもそれなりに楽しいわよね。
実際、ぬいぐるみを抱き締めて笑うルカを見るだけで幸せだったし。
そのうちルカがお手洗いに行きたいと言うから私はトイレがある前の店で時間を潰すことにした。
「ん?」
私にはあまり興味のないアクセサリーショップだったんだけど…その中のひとつに目が止まる。
これ。
財布の中身を確認して私は店に入った。
…これくらい、許してほしいわね?
「お待たせしました、メイコ姉さま」
「いーのよ」
店から出た瞬間トイレからルカが出てくる。
危ない危ない。
「行きましょうか?」
「はい」
ルカが何度目かの笑みを見せた。
パールピンクの髪が揺れる。
幸せだ、と思った。



「夢みたいですわ」
食事もあらかた終わり、ルカが、ほぅ、と息を吐く。
通されたのは最上階、夜景が見える窓辺だ。
商店街の福引きにしてはなかなかじゃない。
「さっきも言ってなかった?」
「だって」
私のそれにルカがくすくす笑う。
「メイコ姉さまとデートして、この様な素敵な場所で食事なんて…夢みたいで」
「あら」
可愛いことを言ってくれるルカに私は笑って、さっき買ったものを取り出す。
「メイコ姉さま?」
「サプライズプレゼント…かしら。腕出して」
「…まあ」
チャリ、と金属音を立て、私はルカの手首にそれを巻いた。
金とローズクォーツの小さな石が光る、然り気無いブレスレット。
「ルカの髪の色にしてみたのよ。似合うと思って」
「そんな、高かったのでは…」
「んなわけないでしょ。ほら、色違いよ」
慌てるルカに笑って私は腕を上げた。
ルカに買ったら私も欲しくなったのよね。
ちなみに私は金とガーネットだ。
「ふふ、やっぱり良く似合うわ」
「メイコ姉さま…」
腕を持ち上げてキスする私にルカがとろりと破顔する。
「好きよ、ルカ」
「…私もですわ」
笑う、可愛らしい私の天使に、囁く。



こんなに可愛いのに、帰せるわけ、ないじゃない?



「私と、夢の続きを見てくれないかしら」

海(へし燭SSS・ワンドロお題)

海は広く、大きいらしい。


「はぁ?海?」
「うん、海」
俺のそれに、光忠がこくりと頷いた。
珍しく光忠が行きたい場所があるとか言い出すから聞いてみればこれだ。
「なんだ、いきなり」
「前に書物で読んだんだよね!」
にこり、と光忠が笑った。
えっと、と少し上を向く。
「川より広くて水が塩の味するんだって」
「ほう」
機嫌良さそうに光忠が言うから俺も少し興味が沸いた。
海、か。
「行ってみるか?」
「え?」
俺の提案に光忠がきょとりと目をしばたかせた。
「いいの?」
「ああ、たまにはな」
笑ってやれば彼が勢いよく抱き付いてくる。
ふわりと揺れる、黒の着流し。
井の中の蛙に大海を知られては困るのだ。
「楽しみだね、海」
「そうだな」
無邪気な光忠に俺は笑う。
海のように、綺麗なだけではない…深く闇より濃い色をにじませて。


明日は海へ行こう。

ほしいもの(ねんへし燭SSS・ワンドロお題)

「何か欲しいものはあるか?」
「?」
ちてちてと走り回っていたねん光が俺のもとに菓子を持ってきたから礼を言うついでに聞いてみた。
案の定小さく首を傾げる。
「いつも誰かのために頑張っているだろう。お前も何か欲しいものややりたいことがあるのではないか?」
俺の問いにねん光はもう一度首を傾けた。
よくよく聞けば料理も好き、掃除も手伝いも好き、とのことらしい。
やはりこいつは光忠によく似ている。
「?」
「ほう、俺のことも好きか」
指先にぎゅっと抱きついてきたねん光の頭を撫でた。
可愛いやつ。
「でかいの!!」
「五月蝿いぞ、ねん」
「おれのみつになにしてる!」
仏頂面を晒しながらねんが近付いてくる。
こいつの独占欲の強さには困ったものだ。
「!」
「ん?」
ふと、引っ張られたのに下を見ればねん光が手を動かしていた。
さながら、きらきらと星を意味させるように。
「好きだな、お前も」
苦笑しながら引き出しからそれを出してやる。
瓶から転がり落ちるは色とりどりの金平糖。
その中の一つを手に取り、ねん光はねんの元に駆けた。
「おれに、か?」
ずい、と渡すそれにねんは目をぱちくりとさせ、それから顔を綻ばせた。
…ああ、なるほどこれは。


好きなあなたに贈るための、甘いものが欲しい。

君の手/僕の手(へし燭SSS・ワンドロお題)

綺麗な手をしている、と思った。



「光忠?」
「?どうしたんだい、長谷部くん」
部屋に来た俺に、きょとんとした顔で光忠が首をかしげる。
もう寝るだけの時間帯、着流しからのびる白く綺麗な手の先には黒い手袋がついていた。
普段から彼が手を隠しているのは知っている。
どうやらそれが光忠の最期と関係することも。
だから日中は何も言わなかったのだが。
「寝るときくらい外せばどうだ」
「え?ああ」
俺のそれに光忠は困ったように笑う。
嫌なものは嫌だ!と拒まれるかと思ったのだがそうではないらしい。
少しほっとした。
光忠の傍にどかりと腰を下ろし、その手をとる。
するりとそれを外してそのまま彼の手首に口付けた。
「!ちょ、っと」
「綺麗だ」
驚く光忠にそっと囁く。
金の目を見開き、くすくす笑った。
「長谷部くんて、なんか」
「…なんだ」
「何でもない」
含むように言った後、ふわりと光忠は笑む。
「長谷部くんの手も綺麗だよね、働く男の人って感じ」
笑った光忠が今度は俺の手を取り、甲に口を寄せてきた。
軽く触れる、唇。
ああ、やはり光忠は可愛らしい。




手首へのキスは欲望


手の甲へのキスは敬愛


それぞれの意味を、君に。

ねがいごと(ねんへし燭SSS・ワンドロお題)

笹の葉さらさら 軒場に揺れる
お星さま きらきら
金銀砂子




「…何だこれは」
自室に入って広がっていた光景に俺は目を見開いた。
「長谷部くん?どうかし…うわっ」
ひょこりと光忠が俺の後ろから顔を出し、同じように目を見開く。
「なんだ?ふたりして」
きょとんとするのはねんとねん光だ。
部屋の真ん中には大和守安定の羽織が広げておいてあり、その上には金平糖がばら蒔かれていた。
「何だ、じゃない、何だこの惨状は!」
「むっ、ちらかしているわけじゃないぞ?」
怒鳴る俺にねんが得意気な様子を見せる。
「え?天の川を作ってる?」
驚いたような光忠の声。
どうやらねん光が説明をしたらしい。
天の川??
「もうすぐたなばただろう」
疑問符を浮かべる俺にねんが言う。
そういえばそんな行事があった気がするな。
「七夕は別に天の川を渡る行事じゃないよ?」
「?!そうなのか?!」
光忠の言葉にねんたちは驚き顔だ。
知らずにやったのか…まったく。
「短冊に願い事を書いて笹に吊るすと願いが叶うんだよ」
ふわりと光忠が笑う。
ぱあ、と目を輝かせたねん光が何かを囁いた。
「そっか、叶うと良いね」
見た目に幸せそうな光景に頬が緩む。
「みつ?」
「ふふ。ねんへしくんとずっと一緒に居られますようにって」
光忠のそれにねんは呆れた顔をした。
「そんなもの、ねがわなくともかなえてやる」
「…!」
ねん光の頬が赤く染まる。
…まったく。



七夕祭り。

願いを、現実のものとする日。

悪魔(神父)長谷部×聖女光忠♀ R-18

「おはようございます、神父様」
「ああ、おはよう」
教会の前でかけられた言葉に俺は笑顔を浮かべてさらりと返す。
いつも通りの朝。
神父・長谷部国重としての。
「・・・長谷部って笑顔似合わないよね」
「ちょっと、清光?!」
少し後ろでそんな冒涜的な言葉を吐く少女に慌てて少年が止めに入る。
少女の名は加州清光、少年の名は大和守安定。
どちらも教会が面倒を見ている孤児院の、年長者であった。
「お前はいつまでたっても口の悪さが抜けんな、加州」
「うーるさいですぅー!」
「もー。すいません、神父様。こいつには僕から言っておきますから」
盾突く清光を小突きながら安定が言う。
なんだかんだ良いコンビなのだろう。
「ふふ、仲良しだねぇ」
「あ、聖女様!」
ぱあ!と清光の声音が変わった。
振り向くと黒い修道服に身を包んだ女性がくすくす笑ってこちらに歩んでくる。
彼女は長船光忠、この教会で働く修道女だ。
「おはよう、聖女様!」
「ふふ、おはよう。清光ちゃん、安定君」
大きくスリットの入った修道服を翻し、彼女は笑う。
誰に対しても優しく、誰からも好かれる光忠は「聖女」と呼ばれていた。
「きーてよ、長谷部がさあ・・・」
「もう、神父様にそんな言い方だめだよ?」
眼前で幸せな光景が繰り広げられる。
平和だと俺は思った。

突然だが、俺は悪魔である。
悪魔憑き、ではない。
正真正銘の悪魔だ。
恐らくは力もそこそこ強い。
何故俺が悪魔の宿敵である神父などに扮しているのか。
それは俺がこの地に召喚された時に遡る。
誰かに呼び出され、体を得たまではよかった。
しかしその主が誰かがわからない。
俺の力の強さから呼び出したのは相当に強い人物であること、本来毒であるはずの教会の結界が効かないことから恐らくそれは教会の人物であること、俺は他の悪魔のように特定の人物しか見えないのではなく人として肉体のある存在だ、ということだけは分かった。
そこで、流れの神父に扮し、この教会で世話になることにしたのである。
長らく主のいなかった教会に神父を得、人々は喜んだ。
特に喜んだのはこの修道女、光忠である。
「良かった、お父様から受け継いだ教会、僕の代で終わらせてしまったらどうしようかと思って」
ふわりと微笑んだ少女はまさに聖女の名にふさわしく。
俺はどうしようもなく、欲しい、と思った。


その日は意外に早くやってきた。
街で疫病が流行ったのである。
人々は俺に助けを求め、その一方で悪魔の仕業ではないかと実しやかに囁かれた。
悪魔は疫病を流行らすような、そんな低俗な真似はしないと思うのだが。
だがこれは好都合だ。
利用させてもらう他手はない。
「光忠」
「・・・はい」
数日のあれそれに疲弊しきっている光忠を呼び寄せる。
「率直に言う。街で疫病は流行っているのはお前に邪が纏わりついてるからだ」
「・・・え?」
俺の静かなそれに光忠の目が驚きに見開かれた。
嘘だ、と小さな声で呟かれる。
「残念ながら、な。しかし邪を払う方法はある」
「!」
はっと光忠の伏せられた顔が勢い良く上げられた。
「特殊な儀式だ。辛いかも知れんぞ」
「お願い!僕はみんなの為なら何でもする!!だから…!!」
涙目で光忠が俺に縋る。
ああ、と頷きながら俺の口元が歪むのを感じていた。


ステンドグラスから月明りが差し込んでいる。
祭壇に彼女の体より大きな十字架をセッティングし、呼び寄せた。
「はい、神父様」
素直に光忠が歩み寄ってくる。
「これを飲んでおけ」
「分かりました」
光忠は俺が渡した液体を躊躇なく傾けた。
こくりと喉が音をたてる。
祭壇の前に立つように命じ・・・その肩を祭壇に押し付けた。
「・・・?神父、さま?」
「黙っていろ」
少し恐怖に震えたがそれでも彼女は、はい、と口をつぐむ。
素直なのは良いことだ。
それだけ彼女は俺を・・・信用していた。
力を少量解放させる。
びりり、とステンドグラスが揺れた。
「ぅ、あ・・・?!」
「動けないだろう?光忠・・・いや、聖女様?」
「な、に・・・」
くすくすと笑って俺はスリットをまくり上げる。
「・・・ぃや、し、神父さまぁ・・・?!」
「もう少し人を疑うことを覚えたほうが良い」
引きつった顔の光忠を強く祭壇に押し付け、俺は彼女の下着を取り去った。
「・・・に、ぃや、離して、離してぇええ!!!」
ガタガタと光忠は必死に抵抗する。
それをせせら笑い、俺は彼女の中心に己の欲望を突き立てた。
「・・・っぁ、ぃぁあああああああ!!!!!!!!!」
光忠の喉から悲鳴が迸る。
ぶちぶちと処女膜を破る音が伝わってきた。
ああ、どれほどこの日を待ちわびたことか!
祭壇に押し付けられ、ぶらぶらと太腿を揺らすしか抵抗できない彼女の腰を掴み、激しく揺さぶる。
白く、綺麗な太腿につう、と赤が伝った。
「ぅあ、うぁああ・・・いだぃ、よぉ・・・!」
「ああ、綺麗だぞ、聖女様」
「ぜ、何故です、神父様、神父様ぁ・・・!!」
「残念ながら俺は神父ではない」
「・・・ぇ?」
あぐあぐと悲鳴を上げる光忠に俺は告げる。
「俺はな、聖女様。悪魔なんだ」
「・・・あ、くま・・・?ぃっぐぅうう!!きゃぅうう!」
呆然とする光忠を無視し、大きく腰をグラウンドさせ、可愛らしい嬌声を俺は楽しんだ。
ばちゅんばちゅんと暗い教会に卑猥な水音が響く。
「うそ、だ・・・神父様が悪魔・・・ぁ、あああ!!!やらぁああ!!!」
「ああ、可愛いな。お前は」
「お、前・・・僕に憑いてた邪か・・・っ?!神父さまを、返し、てぇえ!」
「そう思いたくなる気持ちもわかるがな、俺はお前に出会った時から悪魔だよ。そら、出す、ぞ!」
くすくす笑いながら抵抗できない躰を揺さぶった。
取り敢えず、と奥に欲望をぶちまける。
「・・・!!!ぅ、ぁ・・・」
びくんっと跳ねる躰から引き抜けばどろりとした精液が太腿を伝った。
赤と交わり、背徳的な色を濃くする。
「処女を散らしてしまったな」
「っひっぅ、ぅう、お赦しください、神様、神様ぁ・・・!」
茫然と涙を零し、それでも十字架を握りしめ、必死に赦しを請う光忠からそれを奪った。
「神は、いない」
「います・・・!貴方がいるなら神様だっている・・・」
ガタガタ震え、強情に言い募る彼女の尻たぶを掴みあげる。
やめて、と小さな声を無視し、俺は欲望を小さなすぼまりに押し付けた。
「訂正しようか、貴様を助ける神なぞいない」
「・・・っ、ぼ、ぼくはぜったぃ・・・!貴方に屈しない、からぁあっ」
睨む彼女のアナルを挿し貫く。
異物感に身を震わせる光忠の、先ほどまで入れていた蕾に彼女に十字架を突っ込み、出した精液をぐちゅぐちゅと掻き回した。
「・・・んで、なんで・・・いや、なのにぃ!!ひぅうんっ!」
先程まで掻き回され、敏感になったそこは痛覚をすっかり快楽に変え、拾うようになっていた。
最初に飲ませたあれ、媚薬のせいもあるのだろう。
大きく背を仰け反らし、甘い声を漏らす。
2か所を責めたてられ、彼女の体はあっさり限界を迎えた。
びくんびくんと震える躰をひっくり返し、顎をつかみあげる。
「屈しない割にアナルファックされてイってるじゃないか、淫乱聖女さま?」
笑いながらイったばかりの躰を揺さぶった。
「ちがぁ・・・ちがいまゅ・・・♡んぐぅううう!」
新たな刺激に光忠は無意識だろうか、ぎゅっと俺にしがみついてくる。
快楽には従順なくせに口では決して認めようとしないのが可愛らしかった。
もっと、酷くしたくなる。
「認めるまでイかせてやろう、強姦してる相手にしがみつくとは・・・聖女さまは変態ドMだな」
くすくす笑いながら俺は十字架でひくつく蕾の中を擦りあげた。
それからアナルを先程より深く抉る。
深々と体重をかけ、結腸を責め立てた。
「いやぁあ!くるひ、もぉやめてぇっ!」
苦しそうに光忠が喘ぐ。
「やめてほしいか?ならやめてやろう」
光忠に囁き、俺は動きを止めた。
涙目の表情が俺を見上げる。
「ひっ、う…ぬいて、はやく抜いてくらさぁ…ああ♡」
「抜いていいんだな?」
ひくんっと喉を震わせる彼女のアナルからずるる・・・とギリギリまで抜いてから、ぱちゅんっと音をたて勢い良く突いた。
「ひゃぅぅう?!!んぁああああっ!!!♡」
抜いてもらえると思っていたのだろう、ほっと力抜いてたところを責められ、光忠は仰け反ってイく。
「やめてと言う割に感じてるじゃないか聖女さま?」
囁きながら十字架でGスポットを擦りたててやった。
「やめ♡そんな冒涜的なぁひぃい!?や、やっ!くりゅ、なんかくりゅ♡」
「悪魔に純潔を散らされて冒涜もなにもないだろう?はしたなくイって聖女さまは淫乱だ」
潮吹きでもしそうなのだろう、無意識に腰を揺らす光忠を絶頂しないギリギリを責め立てる。
「ちがぁ♡ちが、まひゅ♡ぼく、はぁっ♡かみに、ちゅかえりゅみでっ♡こんなはじゅかしめにくっしな…あひ♡ひん!ひぃぃ…!♡いぐ♡あ、あッ♡あうぅ〜〜〜♡♡」
必死に睨みながらイケない苦しさに身悶える、愛液にまみれた光忠のクリトリスを指でいじめながら俺は笑った。
「何が違う?Gスポットと結腸ごちゅごちゅ突かれてはしたなく潮吹きしたいと思っているくせに、早く身を堕とした方が楽なんじゃないのか?」
「ひぅく!あっあっ♡淫奔に身を堕とすなんて…ぁっ、ひ♡おろかな、ことぉンンッ♡ぜった、ぜったぃ屈っし、ません…!ひッ、そこだめ♡あぁっ!♡」
光忠は屈しないとうわ言のように言い続けるが、クリトリスは流石に弱いのだろう、責められてびくっと躰を震わせ軽くイく。
「今軽くイかなかったか、聖女さま?屈しないと言う割に俺の魔羅を締め付けてるじゃないか、これで奥をぐちゃぐちゃに突いて欲しいんだろう?変態淫乱聖女さま」
笑いながら聞けばふるふると首を振った。
「イってましぇ…んんっ♡ちが、ちがぁっ♡も、やめてくらしゃ…こんな無意味な、ことっ、どぉしてっ…あなたを信じてた、のにっ、ひぅう♡」
ぐずぐずと泣きながら光忠は太股をもじもじと擦り合わせる。
「嘘は良くないな、教えてやったろう?無意味?俺は出会った時から聖女さまを堕とし、孕ませることを願っていた…お前の信頼を得るのは大変だったな」
笑いながら内股をぐいと開いた。
愛液がとろぉと伝う。
「そ、そんな…なんでっ、や、だめ開かないでぇっ…!」
嫌々と光忠は首を激しく振り立てた。
ずっと挿入されっぱなし、一種のポリネシアンセックス状態味わっているのだろう、その表情は恐怖に強張っている。
「何故?内股が震えていたからな、ああ、愛液たらたら溢して可哀想だな、派手に撒き散らしイきたいんだろう?早く身を捧げろ聖女さま」
震える内太股を撫で擦り、軽く叩いた。
たったそれだけで彼女は目を見開き、堪えていた絶頂を迎える。
「や、だめ、だめだめだめぇえええ〜〜〜♡♡♡ぁっ、らめらめとまっへ…!とまっへぇえ♡♡」
ガクガクと躰を震わせ、膣を痙攣させる光忠の足を抱えあげた。
「遂に快楽に屈したか、気持ち良いだろう?聖女さま!このまま悪魔の子を孕ませてやる!」
アナルから引き抜いて、痙攣させる膣に突っ込み激しく揺さぶる。
「ああ゛ぁ〜〜〜♡♡あぎ♡ひっ♡らめ、なかださないれっ♡だめ、らめらめッ…ぃいぐ♡やぁあ♡こわれりゅ…!しんじゃ、しんじゃうぅ♡♡♡」
はしたない嬌声を上げ、光忠はかくんっと堕ちた。
「快楽に屈し、あまつさえ失神か…。ほら、起きろ、俺はまだイってない」
頬を軽く叩いて起こす。
ぼんやりと目を開けた所を激しく突き上げて引き寄せて悪魔の力が混じった精液を子宮の奥に叩きつけた。
「あひっ♡いぃぃ♡りゃめ…らえらのぉっ♡あ゛…ぁ…♡♡」
止まらない絶頂に加えて熱い飛沫に光忠は失禁したように潮を吹く。
お陰で祭壇びちゃびちゃだった。
「貞淑な聖女さまは悪魔に屈してしまったな?」
俺は引き抜きながら笑い、僅かな刺激にも身を震わせる彼女を大きな十字架に磔にした。
「…やめ、て」
「良い格好だ、何処もかしこもビクビク震えて、そんなに良かったか?」
緩く首を振る光忠の顎をとらえてしとどに濡れた祭壇見せつける。
「あぅ゛…う、ぅ…♡おゅ、おゅりゅし…お赦、ひ…くださぁ…♡」
絶頂にびくんびくん痙攣し、膣から濃厚な精液がどろぉ…と溢れるのにすら感じているのか、赦しを請いながら光忠は息を荒くしながらうち震えていた。
「お前が言う、神様とやらはこれを見てなんと仰るだろうなァ?」
両孔を指でぐちぐち責め立て、イく寸前で手を止める。
手を拭き、にやりと笑いかけた。
「…ぁ、う」
「楽しかったよ、聖女さま?」
「ひどぃ…っく、ふ…うぅ……」
光忠を磔にしたまま教会を立ち去る俺に、光忠は身体を貪られた屈辱にぽろぽろと涙を流して疲労からやがて気を失った。
「これからが楽しみだな、聖女さま…?」
くったり気を失った光忠を瞳の中に映し、くつくつ笑う。
悪魔に魅入られた者は抜け出せないのだから。

月明かりが闇に溶ける。
絶望にまみれた朝が、始まる。

七夕(へし燭SSS・ワンドロお題)

7月に入り、本丸に大きな笹が届いた。
何のためのそれかと思いきや、七夕祭りのためのものらしい。
「七夕祭り?」
「何、へし切、知んないの?」
ひょこりと顔を見せたのは加州清光であった。
「へし切と呼ぶな!」
「固いよねぇ」
怒鳴る長谷部に清光がけたけたと笑う。
まったく、と息を吐き、ふと清光の肩に見かけぬものがかかっているのを見、首をかしげた。
彼には羽衣が肩からかかっていたのである。
「なんだ、それは」
「これ?知らない。主がくれたの。七夕祭りに使うんだって」
指摘したそれを指で摘まみ、あっけらかんと清光が言った。
初期刀の彼を主が甘やかしているのは知っている。
それが趣味と実益を兼ね備えていることも。
「清光!光忠さんが呼んでるけど」
「燭台切さんが?分かった。んじゃね!」
向こうから来た大和守安定のそれにぱたぱたと清光が走っていく。
安定の肩には羽衣はなかった。
「結局羽衣はなんなんだ?」
「長谷部さん、知りません?」
一人ごちた長谷部に安定が笑う。
何を、と問えば彼は「七夕物語です」と言う。
七夕物語、真面目な彦星と織姫が結婚し、遊び呆けていた為に人々が困り、遂には神から天罰を食らって天の川を挟んで引き離される話と記憶しているが。
あまりに二人が嘆き悲しむから7/7の夜だけ鵲が橋をかけてやり邂逅を赦すのだ。
下らない、と思う。
川なんぞ飛び越えて会いにいけば良いのに、と。
「もうひとつの七夕物語は?」
「うん?」
安定のそれに首を傾げた。
彼が悪い笑みを浮かべる。
こうした時は大概ろくなことはなかった。
今回もそうなのだろう。
「知らないなら教えてあげますよ」





「…あ、の……長谷部くん?」
「なんだ?」
風呂場の扉を挟んで向こう側、困惑しきりの光忠がいた。
彼もまた羽衣を持っていて、主も悪趣味だとくつくつ笑う。
光忠が羽衣を持つのは近衛だからだ。
…そしてもうひとつ。
「…ね、僕の服返してくれないかな」
「駄目だ」
進言する光忠にきっぱり言って風呂場から引っ張り出した。
「なんで?!や、僕裸…長谷部くん!」
光忠が怒鳴る。
彼はは今一切纏うものがなくなった、つまり全裸だった。
せめて下着を、と言い募る光忠を抱き上げる。
「っ?!待って、話聞いて…長谷部くん?!」
光忠がきいっと喚くのを無視して長谷部は自室に向かった。


もうひとつの七夕物語。

織姫の羽衣含む衣服を隠し、天界に帰れなくした彦星は途方にくれる織姫をだまくらかしてそのまま結婚する、という話。
羽衣はそれになぞらえられているのだろう。
全く、悪趣味な。
小さく笑いながら長谷部は暴れる光忠を押さえつけた。
笹の葉がさらさら揺れる。

七夕、会えない恋人たちが逢瀬を通わす日。


(待つより貶めたいのだ、喩え不幸が待っていようとも)

おやすみ/夜

からりと襖を開けた。
すやすやと眠る光忠の足はいつもと同じで綺麗だ。
ゆらりと笑みを浮かべて長谷部は襖を閉める。
「・・・ん」
「光忠?」
軽い声に振り向くとぼんやりと目を開けた光忠がそこにいた。
「・・・長谷部、くん」
ふわりと彼が笑う。
生きる事を諦めた目で。
闘う事を望まなくなった眼で。
光忠は笑う。
降り込んだ雪は黒く汚れていた。
待雪草の花が風に揺れる。
すっかり刀としての生き方を忘れ長谷部のものになった、光忠に「おやすみ」を。