ショタおね/おにロリ(光忠♀ワンドロ・へし燭♀

気持ちの良い朝だった。
昨日は久しぶりに光忠と夜を共にしたからか。
普段より体が軽い。
「・・・おはよ、長谷部くん」
先に彼女が起き上がりふわりと笑いかけた。
「・・・ああ、おはよ・・・う?」
起き上がり、目を擦ろうとしたところで・・・ふと違和感を感じる。
「・・・は?」
「どうかしたの?長谷部く・・・ん?」
きょとんとした声の後、光忠が口を呆けたように開けて固まった。
そして。
「うわっ」
「か、可愛い!!長谷部くんちっちゃい!可愛い!!」
「・・・や、やめろ、みつただ!!」
突如として抱きしめられ、長谷部は苦しい声を上げる。
普段なら嬉しい抱擁だが、今は苦しいだけでしかなかった。
ぎうぎうと豊満な胸を押し付けられる。
「あ、ごめんね?でも可愛かったから・・・」
「おまえ、かわいいってな・・・」
「だって、長谷部くん僕よりちっちゃいんだよ?」
呆れると、光忠がにこにことそう言った。
その笑みは可愛らしいが如何にも腹が立つ。
「いや、ちっちゃいっておまえ・・・」
「え?だって長谷部くん、それ子どもの姿だよね?」
「は?」
にこにこしながら光忠が爆弾発言を落とした。
ひょいとその身体が『抱き上げられる』。
「・・・は??」
普段なら・・・まあ確かに彼女は打撃がトップクラスではあるけれど・・・流石に抱き上げられることはない。
・・・はずなのに。
「お、おろせ!」
「えーどうしようかな?」
「おろせ、みつただ!!」
「あはは!長谷部くんかーわいーー!」
無邪気に光忠が笑う。
焦る長谷部の声は届かず、所謂彼女の『高い高い』は第三者が通るまで続けられたのだった。

それから数十分後に審神者の元を訪れた時には長谷部は疲弊しきっていた。
ぽかんとした審神者が慌てて調べて言うには、【システム上のトラブル】らしい。
よく分からなかったが、1日経てば元に戻る事が出来るようでそこは安心した。
「しかし、ふべんだ」
「大丈夫。僕がお世話してあげるから!」
憮然とする長谷部に光忠は楽しそうに言う。
元々彼女は世話好きだ。
いつも世話されるのを拒否しているからだろう。
公然と世話できるのは嬉しいらしい。
「何は無くてもご飯だよ、長谷部くん!」
にこりと光忠が笑った。
ずるずると手を引かれ、長谷部には拒否する隙もない。
「うわっ、へし切ちっちゃい!!」
「本当に子どもの姿なんですねー!」
「うるさい、さわるな!・・・やまとのかみ、かしゅう!!」
食堂にはいつもの二人がわくわくしながら待っていて、二人に遊ばれながらも食事を大人しく待つことにした。
安定も清光も常識くらいはある。
この二人に遊ばれている方がまだましな気がした。
「お待たせ、長谷部くん!」
大きな皿に乗せてきたのはいかにも短刀が好きそうな食事で。
安定も清光も苦笑いをしていた。
おまけに。
「はい、あーん!」
「いや、じぶんでくえ・・・」
「いいから、ね?」
箸を長谷部の口の前で止めてにこにこと光忠が笑う。
それには逆らえず、長谷部は口を開けた。

「・・・はあ・・・」
げっそりとした表情で長谷部は溜息を吐く。
あれから散々遊ばれた。
悪意があるならまだ全力で抵抗できる。
だが彼女、光忠は全て善意なのだ。
如何すればいいのか分からない。
拒否すれば泣きそうな顔をするし、かといって子ども扱いはもうごめんだった。
「んーっと・・・」
何か高い所のモノを取ろうとしているのか目の端で彼女が背伸びをしながら手を伸ばす。
「とってやろうか」
「今の長谷部くんじゃ届かないでしょ・・・っと」
ふわふわと笑って光忠はそう言った。
中々に心へ突き刺さる。
別に小さいのは長谷部の所為でもないのだけれど。
「うわっ!」
「あぶない!」
ぐらりと踏鞴を踏む光忠を突き飛ばす。
がらがらというすさまじい音が響いた。
「・・・だいじょうぶか?」
「・・・う、ん」
自分の下に居る光忠がぽかんと見つめてくる。
「・・・なんだ」
「ううん。ちっちゃくても長谷部くんは格好良いんだなぁって」
睨む長谷部にへにょりと笑う光忠。
小さいは余計だと小突いた。
「あたりまえだろう。おれはおまえをまもる。おおきかろうがちいさかろうがかんけいない」
「長谷部くん・・・」
「まあ」
引き寄せ、抱きしめる。
「ちいさいとおまえをだきしめるのはふべんだな」
そう言って笑いかければ、光忠は頬を紅く染めて幸せそうに笑うのだった。

小さい身体は不便だが、まあいいか、と思う。
彼女が幸せそうだから。
彼女が可愛らしく笑うから。
一日くらいは我慢してやろうと。

「長谷部くん、そろそろお風呂の時間だね!」
「おい、おまえ、まさか・・・」
「うんっ!一緒に入ろう!」
にこっと笑う光忠。
前言撤回。
早く元に戻りたいと切に願う長谷部であった。

(そうでないと彼女は無自覚に煽り続ける)





「はせべくん、たいへん!こんどはぼくがちいさくなっちゃった・・・!」
「・・・ほう?では今日は俺が一日面倒を見てやろうな?何、心配するな。着替えから風呂に至るまで俺がやってやるからな・・・!」
「や、やだ、はせべくんがこわい・・・!」
「こら、逃げるんじゃない、光忠!!」

桜舞う/そして、また(へし燭SSS・ワンドロお題)*教師パラレル(リアルへし燭)

自分のデスクに戻ると引き出しを片付けている長船先生がいた。
「・・・何を・・・」
そう言いかけて、ああ、と思う。
長船先生、23歳の体育非常勤講師。
比べて俺は27歳にして常勤講師から新任社会教諭に決まったばかりだ。
どちらが優遇されるかと言えば教諭の方に決まっている。
俺はここに残り、長船先生は異動が決まっていた。
今日は長船先生がここで勤務する最終日。
「なんだ、お菓子ばかりだな」
くすくす笑って席に着く。
彼の引き出しの中身は軽食用であろうお菓子ばかりだった。
確かに腹が減るから、俺の引き出しにもいくつか入ってはいるが。
「そうなんですよ、お菓子とか開けてない珈琲缶とか」
「俺が貰ってやろうか?」
俺を見上げて照れた様に笑う長船先生に提案すると「あーもうぜひ貰ってください」と言った。
渡されたのは小さなチョコレート。
「・・・本当にいいのか?」
「はい、是非」
「では貰うな」
他にもありますよ、とにこにこする長船先生に、遠慮なく、とそれらに手を伸ばす。
「珈琲とか、開けてないんですよ?」
「勿体ないなぁ」
くすくす笑いながらそれを受け取る。
僕の形見だと思って、と長船先生が珍しく無邪気に笑った。
「俺、長船先生の隣で良かった」
そんな彼に言えばまた笑う。
引き出しも挟まない、真隣。
普通なら嫌だろうが彼にはそんな感情を一切抱かなかった。
寧ろ真逆で彼は良い匂いで(香水のような爽やかなそれだ)癒される。
「そろそろ6時ですよー」
斜め後ろに座っていた女性の先生が言い、周りが仕事を片付け始めた。
今日は学年で最後の飲み会なのだ。
彼が荷物を纏め、俺もそれに続いて立ち上がった。




以前に夢を見た事がある
俺はこの命を生きる前・・・つまり前世は【刀剣】だったらしいのだ。
へし切長谷部という変わった名前の。
社会専攻というのが幸いし、俺はそれらの資料をすぐに手に入れることが出来た。
それによれば元は織田信長の刀で、部下に下げ渡されたらしい。
織田信長はお気に入りの刀がいくつかあった。
それが光忠・・・後の燭台切光忠、俺の目の前に居る男の前世。
何故彼の前世までわかったのかは知らない。
同じ刀剣だったからかもっと他の何かがあったからか。
「長谷部先生?」
きょとりと長船先生が首を傾げる。
なんでもない、と笑い、ふと空を見上げた。
何処までも黒い空。
「流石に夜は寒いな」
「そうですね」
昼間は暖かかった、と愚痴っぽく言えば彼は小さく笑って同意した。
早く桜が咲く、暖かい時期になればよいのに、と思う。
しかしそれは同時に彼との別れを示していて。
「僕の地元、もう桜が綺麗ですよ」
「見に行ってみたいな」
「・・・。・・・ぜひ、来てください」
ふわり、と長船先生が笑う。
いつか、いつか。
彼が試験に受かって、俺もまだ此処に居て。
そうしていつかその時が来たら。

桜舞う空の下、夢で見た「へし切長谷部」と「燭台切光忠」の様に離れてしまったとしても。



君を思い続け。


そしてまた、君に会おう。



「長谷部先生に質問のコーナー!」
「いえーー!!」
「長谷部先生、好きな女性のタイプは?」
「そうですねー・・・。穏やかで癒し系で僕の三歩後ろを歩いてくれるような」

(彼のような、人)

その顔が見たかった(光忠♀ワンドロ・アイドル長谷部×アイドル光忠♀

『みんなー、ありがとーー!』
わあ!と盛り上がる会場に向かって手を振る。
『今日は最高のライブになったよ!』
ふわふわと笑う光忠に「みっちゃーん!」と黄色い声が上がった。
ウェディングドレス・・・今回の新曲衣装だ・・・の裾が揺れる。
衣装は可愛いがまさかウェディングドレスを仕事で着るなんて思わなかった。
『えーっと、ここでゲストさんからコメントPVきてまーす』
『・・・え?』
その隣で手を振っていた清光が唐突にそう言う。
驚いたのは光忠だけで、他のメンバーはにやにやとこちらを見ていた。
なるほど、教えられていないのは自分だけらしい。
今日は光忠のバースデーライブだった。
だからこそのサプライズだろう。
『はいはーい!モニターにごちゅーもく!』
はしゃぐ彼女らにつられて光忠は後ろを向いた。
大きなモニターに映ったのは長谷部だ。
『・・・長谷部、くん?』
『光忠、バースデーライブおめでとう。お前が俺のバースデーライブを祝ってくれてからもう1カ月経つんだな』
映ったのは公私ともに公認である恋人の長谷部からで。
いつも通りの彼の言葉にくすりと笑う。
画面の中では今回の彼女たちの新曲について意見していた。
・・・と。
『今から花嫁様を・・・頂きに参る』
『うわ、うわぁっ?!!』
下からせり上がって来た長谷部に横抱きにされる。
フレアスカートがふわりと揺れた。
『え、ちょ、ええ?!!!』
『誕生日おめでとう、光忠』
ふわりと笑う顔が近い。
わああ!!と会場の声が光忠を揺らした。
なんで、なんで。
疑問だけがグルグルと回り、端正な顔を見上げるしかできない。
『悪いが貴様らの嫁は俺が貰う。・・・恨むなら俺たちの新曲内容を恨むんだな』
意地悪く笑う長谷部がたん、と床を蹴る。
『えぇえええ?!!』
驚愕する光忠の声ときゃー!ともぎゃー!ともつかない悲鳴が会場を包んだ。
「暴れるな、落ちるぞ」
囁かれた声はマイクには乗っていない。
どうやら下で切ったらしかった。
・・・そう、長谷部は『空を飛んだ』のだ。
そういえば向こうの新曲のテーマは『怪盗』で、今回はワイヤーアクションを使ったPVだったっけ、と思い出したのはライブが終わった後で。
「やだ、ちょっと、下して、長谷部く・・・!ひぃいいやああ!!!!」
その時はただただ悲鳴を上げるしかなかった。
命綱は長谷部の腕だけだ。
意地悪、馬鹿となじり機嫌のいい長谷部を睨む。
「なんで、なんで・・・?!」
「その顔が見たかった」
珍しく無邪気に笑う長谷部。
まんまと騙されたのが悔しくてたまらない。
下では他のメンバーが長谷部のグループの他のメンバーと歌って踊っていた。
「もう少しこの空中デートを楽しまないか?」
「ぅううう!!!」

名を呼ぶ/息を呑む(へし燭SSS・ワンドロお題)

「・・・聞いてる?」
彼の不満気な声にはっと我に返る。
「・・・え?」
「もう、やっぱり聞いてない!」
頬を膨らせた光忠が一度息を吐いてから、あのね、と続けた。
「倶利伽羅がさ、僕の事やらしいって言うんだよ」
「・・・はあ?」
珍しくすっとんきょうな声を上げる長谷部に、酷いと思わない?と言う光忠。
そういえばこの間大倶利伽羅が後ろから抱き付きながら何か言っていたっけか。
いやそれよりも。
「お前、浮気か」
「違うよ、なんでそうなるの!・・・倶利伽羅とはそういう事してない。僕を何だと思ってるのさ?」
むっとして迫る長谷部に光忠が再び頬を膨らませた。
「僕がそんな不誠実だと思うのかい、君は」
「いや、そういう事では」
「もういいよ」
逆に顔をずいと近づけられ狼狽えればはあと溜息を吐き光忠は踵を返す。
そのまますたすたと歩いていった。
「お、おい!!」
慌てて呼び止めるが彼は止まらない。
「待て、おい!!燭台切!!」
機動は長谷部の方が早いはずだが追いつけなかった。
「待てと言っている・・・光忠!!!」
彼の名を叫ぶ。
ふと止まった光忠がふわりと振り向いた。
「・・・っ」
思わず息を呑む。
日を背に背負った彼が・・・美しかったから。
「光、忠」
ゆっくり、名を呼ぶ。
美しい彼の名を。


「一回だけ、赦してあげる」
「・・・感謝しよう」
綺麗に笑う光忠に長谷部は敵わないな、と思う。
息を呑むほどに美しい彼には。
恐らく一生敵わない。


ーー
冒頭のくりみつもどきはリアル大倶利伽羅くん(高2男子)が長船先生(23歳男性)をあすなろ抱きしながら
大「こいつやらしーねん」
光「もう、何それww」
ってやり取りしてたっていう本日の実話です(むしろその話がしたかった)

ラッキースケベ(光忠♀ワンドロ・へし燭♀

その日は疲れていた。
だから、気付かなかったのだ。
暗い所為で良く見ていなかったのもあるが。
「・・・え?」
「・・・は?」
普段ならいたずらだってすぐわかっただろう。

風呂場の表記が入れ替わっていることくらい。

深夜も近くなって、長谷部はふらふらと風呂場に向かった。
あまり考えなしにがらりと脱衣所の扉を開ける。
「あれ、清光ちゃんが遅いの珍し・・・」
「・・・あ?」
明るい声に顔を向ければ光忠が下着を脱ごうとしている所だった。
「・・・え?」
「・・・は?」
余りの光景にひと時ぴたりと止まる。
「う、うわぁああ?!!!」
「す、すまん!!」
最初に動いたのは光忠で、顔を真っ赤にして座り込んでしまった。
慌てて謝りながら・・・その場から立ち去ればよかったのに彼女の方に歩み寄る。
途端、何かにつまづき、つんのめった。
「うわあ?!!」
「へ、ちょ、うわああ!!!」
思わず手が出る。
ひっと彼女の喉が鳴る音が聞こえたと思った刹那、光忠は自分の下にいた。
うにゅ、と掌を柔らかい感触が包む。
「は、長谷部くん、痛い・・・」
小さな声に恐る恐る彼女の顔を見れば、金の目に綺麗な涙が溜まっていた。
「あああすまん、光忠!!」
「・・・え、ううん。大丈夫」
慌てて彼女の上からどくと、ほっとした表情をする。
手を差し出して彼女を立たせようとし・・・引っ張られた。
再び柔らかい感触が今度は顔に伝わる。
「みつ、ただ?」
「ひゃぅっ!」
びくんっと彼女の躰が跳ねた。
「ご、ごめん!!長谷部く・・・?!!」
おろっとした光忠の躰を抱き上げる。
からりと風呂場の戸を開け、湯船に放り込んだ。
「・・・っ!げほっごほっ!は、はせべく・・・ひぃぅ?!」
「あまり男を煽るなよ、光忠?」
にやりと笑いかけ、胸を揉みしだく。
「ちょ、やぁ、ぁ・・・そ・・・っちが悪いんじゃないか・・・ぁ!!」
「ああ、そうだな」
確かに最初はこちらの不注意からだった。
だがその後に煽ったのは彼女の方だ。
ぱしゃぱしゃ。
風呂の湯が跳ねる。
「やら、ぁ、や、だぁ・・・!!」
彼女の高い声が風呂に響いた。

夜はまだ長い。

絆/てのひらの熱(へし燭SSS・ワンドロお題)

その日、夢をみた。
昔々、光忠が織田時代に伊達へ行った時の夢。
・・・朧げながらだったと思ったのに。
「・・・っ!!」
黒い夢に飛び起きた。
冷汗が止まらない。
反射的に部屋を出て廊下を走った。
「みつ・・・ただ!」
彼の部屋を勢いよく開ける。
すぅすぅと静かな息で眠っている光忠がそこにはいて、漸くほっとした。
「・・・ん、ぅ?」
ふわりと金と紫の瞳が開く。
「・・・あれ?はせべ、くん・・・?」
不思議そうな表情で起き上がる光忠に「すまない」と謝った。
「お前の夢をみた。お前が居なくなってしまうかと思って・・・」
はあ、と息を吐くときょとんとした光忠がくすくす笑う。
「何故笑う」
「だって長谷部くんがそんな事言うなんて・・・」
軽く笑いながら光忠が首を傾げた。
「大丈夫。僕は何処にもいかないよ?」
静かに微笑む光忠。
触れようと思っても手が出せなくて、小さく彼の名を呼ぶ。
「光忠」
「え?」
「手」
手?と疑問符を浮かべる光忠の手をぐいっと引っ張り、自分の方に寄せた。
「わっ」
驚いた声を上げ、光忠が胸に飛び込んでくる。
「長谷部くん?」
見上げる光忠をぎゅっと抱きしめた。
「もう二度と離さない」
「・・・ふふ、言うねぇ」
くすくすと可愛らしく光忠が笑う。
「僕の手を離さないでくれる?」
「無論だ。もう約束は違わない」
不敵に笑い、白い手にそっと口付けた。




繋いだ手を離さないように。
もう二度と彼が遠くに行かぬように。
伝わる熱は見えない絆となって二人を強く結びつけた。



(それは確固たる信頼か、それとも相手を破滅させるほどの執着か)

添い寝(光忠♀ワンドロ・へし燭♀

珍しい事もあるもんだ。
ぼんやり天井を見上げ、長谷部は思う。
事務仕事が片付き、ついうっかり寝転んでしまったのがいけなかった。
ここ何日か寝ていなかった事も大きい。
うとうととまどろみながら「光忠が怒るな」と頭の端を掠めたのだけれども人間の三大欲求の一つには勝てなかった。
「長谷部君?」
こんこん、という音の後、すっとふすまが開く。
普段なら起き上がり返事が出来るのに今日は出来なかった。
数秒の後「しょうがないなぁ」という苦笑気味に呟く声が聞こえる。
大方、あの綺麗な瞳を大仰に見開き、それから花が綻ぶ様に笑ったのだろう。
見なくても容易に分った。
あの笑みを見ることが出来なかったのは残念ではあるけれど。
・・・と。
ふわ、と何かが身体にかけられた。
やわらかく、暖かいそれは毛布か何かだろう。
いつもは一旦起こしてくるのに、甘やかしてくれるつもりだろうか。
そのまま立ち去るのかと思いきや、布ずれの音が頭の上でした。
「・・・綺麗な、顔・・・だなぁ・・・」
ふっとかかる息と柔らかい手の感触を頬に感じる。
「・・・無理しないでね、長谷部君」
静かな声と少し迷うような気配。
「ねえ長谷部くん。あのね」
もう眠ってしまったと思っているのだろうか。
ふわふわとした心地良い眠気を必死に振り払い、彼女の声を聞こうとする。
「・・・好き、だよ?」
小さな声と共に頬に何かが掠めた。
それからえへへ、と笑って腕に縋り付いてくる。
ふに、と腕に彼女の豊満な胸が当たった。
なるほど生殺しという奴か。
長谷部の眠気はとうに何処かに行ってしまったのに、隣からすぅすぅと寝息が聞こえてくる。
そういえば彼女も最近働き詰めだったか。
ちらりと隣を見れば目を瞑り、普段よりあどけなく幼い表情の光忠がいた。
手を伸ばし、黒い髪を撫でる。
「・・・お前も無理するなよ、光忠。愛している」
髪に口付け、長谷部も再び目を閉じる。

たまのこういう時間もいいだろう。


穏やかな風が、部屋を抜けた。




「おい、光忠。起きろ。・・・襲うぞ?」
「ふゃ?!ぁ、や、にゃに、おっぱい揉まな・・・っ!!あぅ、も、襲ってるじゃないか、長谷部くんの馬鹿ぁ!!」
数十分後、光忠の悲鳴が本丸に響き渡るなんて・・・まだ知らない。

重傷/長い夜(へし燭SSS・ワンドロお題)

戦況は切迫していた。
次々襲い来る敵に長谷部はいい加減溜息を吐く。
「長谷部君!」
鋭い光忠の声に長谷部は振り向きざま敵を斬り捨てた。
断末魔を上げて敵が消える。
敵の出てくるまま追い続け、辺りの霧は深くなってきていた。
同じ部隊の仲間も疲労困憊で、それでも隊長である自分が先を行くから着いてくる。
「安定、そっち!」
「分かってる、よ!」
古株である二人が少し離れたところで敵を殲滅していた。
「薬研!」
「ほいよ、大倶利伽羅の旦那!」
鋭い声に黒が跳ぶ。
見る見るうちに敵が斬り伏せられていった。
もうすぐ、もうすぐで終わる。
そう全員が信じていた・・・刹那。
「へし切!」
清光の声が飛ぶ。
はっと後ろを見れば敵が刀を振りかぶっていた。
まだ残党がいたのか。
うかつだったと刀を構える。
・・・と。
「ぅ、ぁ・・・」
「・・・あ?」
ぐらりと目の前で黒が揺れた。
「!!光忠!」
「燭台切さん!」
最初に動いたのは誰だったろう。
彼が、己を庇って斬られたのだと分かるまでにずいぶんの時間を費やした。
「・・・!何をやってるんだ、貴様は!」
「・・・長谷部、くん」
怒鳴る長谷部に、へにゃ、と光忠が笑う。
よかった、と血まみれの腕を上げた。
何故こんな血にまみれているんだ。
返り血にしたって多すぎはしないだろうか。
・・・何故、この血は止まらないんだ。
「撤退命令!第1部隊、これより帰還する!異論は認めん!」
光忠を抱き上げ、長谷部は凛とした声で言い放つ。
まるで、もう一人の自分が居るかのような、そんな。
「・・・本丸に帰るまで持ちこたえろよ」
「・・・せ、べくんが・・・無事、でよかった」
囁けば、荒い息遣いの中、光忠がそっと言う。
うっすらと光が見えた。
やめろ、やめてくれ。
・・・頼むから、絶望を見せてくれるな。

夜は更ける。
ひっそりと、死を引きつれて。


薄暗い部屋の中、長谷部は光忠の枕元に正座していた。
どうにか一命はとりとめたが回復までに時間がかかるらしい。
自分が無茶な進軍をしなければこんなことにはならなかったのだろうか。
穏やかに眠る彼を見る。
自分が斬られるのは構わなかったのに。
寧ろ本望ともいえる。
なのに何故光忠は自分を庇ったのだろう。
彼がい無い世界なんて耐えられない。
崩れ落ちる光忠を見て、心底ぞっとした。
何故そんな馬鹿な真似を。
・・・そんなこと、赦すくらいなら閉じ込めてしまった方が遥かにましだ。
人形のように横たわる光忠を見ながら思う。
硝子けぇすに詰めてしまえたらどんなに心穏やかになる事だろうか。
塗り潰したそれは彼が斬られたときに壊れてしまっていて。
静寂、ごぽりと何かが音を立てた。


闇は黒さを増していく。
長谷部の心の中の如く、深い黒。

・・・長い夜は、明けたばかりだ。

お雛様(光忠♀ワンドロ・アイドル長谷部×アイドル光忠♀

その日、幼稚園でひな祭り会があった。
通っていた園は独特で、毎回年長組の園児はそれぞれ男雛と女雛の衣装を着て写真を撮る、という園内行事があって、一か月も前からそれを楽しみにしていた。
「長船光忠さん」
「は、はい!」
幼い声が響く。
途端にみっちゃーん!という男の子たちの声が上がった。
確か、女の子が男の子を選んで写真を撮るという手法で(今思えば誰にも選ばれなかった子どもはどうなったのだろうとか思うのだが)光忠もおろおろと迷っていた。
昔から男子に人気があったのである。
光忠を誰かに渡したくない。
だから、もう写真を撮り終え(長谷部も女子人気は高かったのだ、当時から)待機列に居た長谷部は困った顔の光忠に駆け寄り。
「はせべくん?!」
驚いた表情の光忠の手を取り、叫んだ。

「おれのおひなさまになってくれ!」




「あの時の長谷部くんは可愛かったなあ」
くすくすと光忠が笑う。
まったく、何時の話をしているのだか。
あれから15年。
光忠は長谷部だけのお雛様ではなく、全国のお雛様・・・ではなくアイドルになった。
それは長谷部も同じなのだけれど。
今日はミュージック番組の収録で、たまたま昔の、その写真を出されたのである。
長谷部と光忠は幼馴染で幼稚園からずっと一緒だった。
こうして仕事場まで同じになるとは夢にも思わなかったが・・・それはさておき。
「ふふ。お雛様になって、なんて可愛いよね」
「やめろ、恥ずかしい」
「だって」
楽しそうに光忠が笑う。
この時期になるといつも言われる、いわば恒例行事だ。
「お雛様、かあ。僕はもうそんな柄じゃないよね」
どっちかと言えば格好良いでしょ?と言う光忠。
そう言う所が可愛いのだとは・・・彼女には言えないが。
「・・・ああ、そうだ。お雛様という言葉は間違いだぞ」
代わりに話を逸らす。
光忠も話をすり替えられたと怒るより、その情報が意外だったようで。
「そうなの?」
「ああ。あれは両方とも内裏雛と言う」
「へえ」
驚いたような声が響く。
「良く知ってるね」
「まあな」
「じゃあなんでお雛様って言うの?」
「あれは、童謡を作ったやつが間違えたんだそうだ」
そんな話をしながらふと光忠を見た。
きょとんとする光忠に近付き、彼女の黒い髪を撫でる。
さらりとしたそれはあの時と変わっていなかった。
「・・・っ、待って、今汗臭いから・・・!」
「構わん」
「・・・も、長谷部くん!」
いやいやと光忠が首を振る。
ふわりと漂う桃の薫り。
「俺はくさいとは思わんがな」
恥ずかしそうな表情の光忠に小さく笑う。
「それでも気になるなら早く着替えて来い」
「・・・。うん」
ふわ、と光忠が笑って離れた。
短いスカートが揺れる。
今日の衣装は和風装束を意識したものだろうか、着物のような袖口に膝上の紫色のフレアスカート。
黄色い帯に、それを締める筈の胸元が大きく肌蹴ている。
・・・正直、目のやり場に困った。
「・・・お前、和装やめろよ」
「え?」
それを正してやり、きょとんとする光忠の髪をもう一度撫でる。
「なんで?似合わないかな?」
「似合うから言ってるんだろうが!!」
「ええ??」
理不尽な長谷部のそれに光忠が混乱した声を上げた。
「お前な、揉まれたいのか?」
「・・・?!!」
ずい、と迫り、零れ落ちそうな胸を鷲掴む。
「ちょ、な、な・・・?!!」
「男はお前のこういう姿を見てそういう事を考え・・・おう?!」
「そんな馬鹿な事を考えるのは長谷部くんだけだよ?!!」
ぶんっと拳が長谷部の顎を狙って降って来た。
・・・どこの女性が恋人のアッパーを狙おうと思うのだろうか。
「・・・。・・・和装やめたらお雛様になれなくなっちゃうけど、いいの?」
膨れていた光忠がふとそう言った。
あの時の発言、だろうか。
・・・まったく、何時の発言を引き摺っているのだか。
「良い。お前のそういう姿を見られるくらいならな」
きっぱりと言い、それにと続ける。
「お前はいつでも俺だけのお雛様だろう?」
「・・・もう」
驚いたように見開いた目を細め、くすくすと光忠が笑った。


貴女の晴れ姿を見るのは己だけで十分だ。


(それが、何よりうれしいひな祭り)

立場逆転(へし燭SSS・ワンドロお題)*教師パラレル(リアルへし燭)

初めましては確か9月。
人員不足の高等部に派遣されてから1か月後で。
隣の席がそれなりに整った見た目のやつだな、くらいの印象だった。
「せんせー、前世って知ってる?」
生徒に聞かれ、笑って返していたがふと自分の前世はなんだったんだろうと過ぎった所で・・・その日、夢を見た。
戦場、人を斬る感覚、『使われる』喜び。
思い出した。
・・・思い出して、しまった。
「・・・。・・・人じゃ、ないのか」
夢から覚めた時にぽつりと呟いたそれは一人暮らしの部屋に良く響いた。



一つ思い出せば次々と思い出すもので。
例えば自分が「へし切長谷部」という刀剣だったとか。
例えば人の姿を成して戦っていた記憶もあるだとか。
例えば。
「長谷部先生」
「・・・ん、ああ」
・・・回覧物を回して来る隣の席の同僚は「燭台切光忠」という刀剣だったとか。
同じ時代、同じ主の元で使われた刀剣、燭台切。
己が大太刀だった時代は美術品だった号の無い一振りだった。
「長船先生、サイン忘れてる」
「え、あ」
そんな彼は今書類にサインし忘れて照れた笑みを浮かべている。
長船先生、自分より4つ下の23歳、元陸上部。
前世は自分の方が足が(もっと言えば機動が)速かったと記憶しているのだが。
まあ前世と関係しているといえば自分が高校大学時代に野球部だったことだろうか。
投石が得意だったから「そこに生かされたか」と何となく納得した。
・・・と。
目の前では何やら身長の話に華が咲いている。
此方に振られていないからぼんやり聞いていることにした。
「へぇー、そう。桜井先生身長いくつなん」
「私ですか?170です」
「えっ」
「えっ」
驚いた声を上げたのは聞いた男性教師でも聞かれた女性講師でもない。
「僕も同じくらいです」
「あっ、そーなんですか!」
彼、長船先生のそれに女性講師がからりと笑った。
今の自分は178pと少しある。
確か彼は自分より大きかった気がするのだけど。
いや、小さかった時代もあるかもしれない。
流石にそこまでの記憶まで戻ってはいなかった。
ふと時計を見るとそろそろ授業の始まる時間だった。
席を立ち、教室に向かう。
「長谷部せっんせー!」
「おわっ」
背後からの衝撃につんのめりかける。
「あっ、桜井先生おはよーございまーす」
「はいはい、おはよー」
「・・・おい、こら、降りろ」
生徒の一人に背中に乗られ、思わず低い声を出した。
「へっへー。おっはよー長谷部ーー」
「先生、な!」
「えーだってさー!」
にひ、と笑う男子学生。
自分で言うのもなんだが男子には人気がある。
前世ではこの役目も燭台切の役目だったはずだ。
・・・まあ。
「あー、長船先生おはようございまーす!」
「おはようございます」
にこ、と長船先生が微笑む。
この姿でも女子人気はあちらの方が高いらしいが。
それにしても。
「・・・立場逆転だな」
「えー?長谷部なんか言ったー?」
ぽつりと呟いたそれを目ざとく聞かれ、ぶん、と振り下ろす。
わあい!とはしゃいだ声が響いた。
「言ってない!さっさとランニングに行けっ!」
「長谷部先生が怒るーー!」
あはは、と駆けていく男子生徒と「廊下走っちゃダメなんだよー」と声をかける女子生徒。
まったく、と見送るその横でくすくすと長船先生が笑っていた。
自分よりも背が小さく、力も弱く、それでいて足が速い。
生徒に遊ばれるのは自分の方で、近寄りがたく見られるのは彼の方で。
いつしか逆転してしまった立場だが。
「長船先生」
「はい?」
ふわりと彼が首を傾げる。
穏やかなまなざしは何時だって変わらなかった。
「先生は、前世を信じるか?」








「よぉ、先生」
「うわっ、ちょ、も、何!」
「・・・朝から長船先生にセクハラとは良い度胸だな、相州?!」

(いつだって変わらない関係もそこにあって


前世も今世もなかなか厄介だと思うのです)